George Sound Track



George Sound Track

Chris:スイス人教師。George Sound Track(以下GTS)に行く前にTe Anauで滞在していた宿のフロント係に「GSTに一緒に行く人を探して いるんだ。泊まりに来る客に聞いてくれない?」と募集をかけていた ら、GTSに向かう前日に「オレも行きたい!」と名乗りを上げた。


その頃の日記はこんな感じ。


4月25日(火)
 8時に迎えの車with boatがやってきた。D.O.Cに寄り、Intention
Card(登山者名簿)を記入し、Chiharuさん、クリスは地図を買う。こ
の時にも、出発直前だと言うのにD.O.C 職員は僕らにネガティブな情
報しかくれない。まるで「行くな!」と言っているようだ。
 Lake Te Anau からLake Hankinson まで少し歩く。再び30分ほどボ
ートに乗り、Hankinson Hutへ。ここでChiharuさんと別れ、クリスと
二人でThomson Hut まで歩く。2.5hと書いてあるがもう少しかかった
だろうか。クリスのペースは僕より少し速いくらいだろうか。この
Hutまでは天気良好

4月26日(水)
 7:50出 6:30着 10h20m 歩行 George Sound Hut泊
 今日は疲れた。Chiharuさん来なくて良かった。他人のことどころ
ではない。

4月27日(木)
 昼から2人さまよいながらLake Aliceへ。今はもうメンテナンスさ
れていない、D.O.C から見放されたルートだが、ほんとうに所々マー
クが残っており、それを掻き分け掻き分け進んでいく。しばしばルー
トを見失うと、僕かクリスが丁度かわりばんこに「こっちがTrack(ル
ート)だ!」と見つけ、やっとこさLakeにたどり着いた。
 たどりついた湖は、こここそLake Unknown 誰もここに来たことは
ないんじゃないかという感じの静かで、鳥の多い湖だった。往復2h
の軽い散歩くらいの気持ちで行ったのが、けっこう大変だったが、行
った甲斐があった。

 一昨日の晩、Thomson Hut の外でタバコを吸っていると ひゅ~っ
と流れ星。2秒間くらいだった。けっこう流れ星って長いんだなぁ。
すっごくはっきり見えたし、考えて見ればあれだって大気圏内の光な
んだもんなぁ。
 昨晩、今晩とSound の岸でタバコを吸った。Sound の水面に周りの
丘と一緒に空の星がはっきりと映っていた。フロリダでK.H が帰る前
の晩 U.Hと3人で練習場の水面を見に行ったのを思い出した。
 自分で言うのもなんだけど、なんてロマンチックなことしてるんだ
ろう。これでかわいい子が隣に居てくれたらなぁ。もっともこんな所
、一緒に来れないけどね

 しかし本当にここに来て良かった。高い交通費と高いriskをかけて
くる甲斐のある場所だと思う。クリスと会えた、というより一緒に来
れたのもすごくLuckyだったと思う。まったくクリスは今まで会った
ヨーロッパ人とはまったく違っていい奴だ。苛立つことが全くない。
すごくきちんとした(僕よりも遥かに)性格だし、歩きについても僕よ
りもうまい。ルートを見つけるのも僕と同じくらいのレベルなのが良
かった。

4月28日(土)
 昨日はクリスのテントで寝る。George Sound からの帰り道は思っ
ていたよりも辛かった。Henry Pass(峠)に着いたのが2時過ぎだった
から、もしThompson hut まで歩いていたら6時は越していただろう
。山あいにあるこのHut、3時過ぎには陽は山に隠れ暗くなり始める
。6時といったら、もうあたりは真っ暗。スリッピー(滑り易い)道で
今日でさえ転びながら来たのだから、昨日、強行していたら結構危険
だったろう。
 はじめてのテントは快適だった。外でキャンプファイアーを囲んで
各自夕食。火を囲んでクリスと談笑。昨晩は今まで晴れ続きだったせ
いか風もいつもよりも暖かく、テントの中も寒くない。Hutの夜より
も暖かかったような気がする。一つ言えば、寝ているとき、マットを
敷いていても背中がとても冷たかった。
 今日は8時過ぎに起床。11時間くらい寝ていたことになる。10時出
発、2時(小屋)着。4h弱の歩行。それでも今までのHut生活の疲れ
が出たのか、あまりにも滑り易く、一歩一歩気を使って歩く上に急な
下りだからだったか、このHutに着いた時は疲労困憊。Hankinsonまで
一気に歩こうかという話もあったが無理をせずにここで休むことにし
た。

(日付なし おそらく5月1日に記した)
<GST George Sound Track まとめ>
 GSTが今までのうち一番印象深いTrampingなのでは? 難易度、達成
感、自然美ともにGreat!ヨーロッパ人とは思えないような清潔さ、
人に気を使う心を持ったクリスと一緒に行けたのも良かった。
 全て晴天、とまではいかなかったが、雨に濡れることもなく、何度
も言い合ったが「We were very Lucky!」。GSTを一度も濡れずに往
復できた人が今まで何人いただろうか?
 GSTからTe Anauに戻った日から極度の精神的、身体的疲労に見舞わ
れた。緊張の糸がブッツリと切れてしまったようだ。準備から出発ま
でのストレス。Track中は一歩一歩足元を確認しながら歩いた一週間
の疲れがドッと噴き出した。その為かどうか、僕のNZでのTramping(
山歩き)生活、いやNZ旅行自体が潮時なんじゃないかと強く感じた。
 NZでのTramping生活で、自分で言うのもなんだが、心身共に以前よ
りタフになっていると思う。Hutでの生活はNZ人も含め、たくさんの
外国人、日本人と知り合い、話すことができた。日本のことをすごく
好きになってきた。日本で自分がやりたい事、どんな暮らし方がした
いのかも、たくさん出来た。
 これ以上、NZでの旅行を続け、僕はこれ以上のものを得ることが出
来るだろうか?そんな考えで頭がいっぱいになった。でもこれらも、
ただ単にホームシックなのだろうか?それとも本当にもう日本に帰る
べきなのだろうか?わからん…




George Sound Trackの{Sound}とは、フィヨルドのように内陸部を
深くえぐったような湾のことを言うのだと思った。(後日、調べてみます)
 GSTは年間入山者数100人ほど(当時)の所で、情報が極度に少なかっ
た。わかったことは雨が年間200日(だったかな)降る地域であり、そ
の為に道は泥地が多く、岩は滑り易いということ。
 歩き始めた初日、途中で6人くらいのNZ人パーティーとすれ違った。
その人たちのボロボロの姿がすごかった。額や足に包帯を巻き、敗
残兵のようにヨロヨロと歩いてきた。僕らと交わす言葉も微笑にも力
はなく、ただ「Good Luck 」と言ってすれ違った。この人たちは5
日間、雨にたたられたようだった。思わず、クリスと顔を見合わせた。
 GSTに入るにはTe Anau湖を横断する為のボートをチャーターする必
要がある。たまに猟師などが近くの山に入るので、その人たちと割り
勘にすれば安くなるのだけど、僕とChiharuさんが予定した時には誰
もいなかった。なので、僕らは、そのときに泊まっていた宿のフロン
ト係に「誰か行きたい人を探しておいて」と頼んだのだ。
 このフロントの人がTramping好きの人で、「GSTかぁ!いいなぁ、
オレも行きたいと思ってるんだよ。この仕事さえなければ行けるんだ
けど。残念…。人は探しておくよ。この宿には山好きがたくさん来る
から、きっと見つかるさ。帰ってきたら、話を聞かせてくれよな」と
いう感じの親切な人だった。
 で、出発前日の夜にクリスが僕の部屋をノックしてきたのだ。クリ
スは本格的なクライミングをやりにNZへ来て、そのときにもどこかの
山からの帰り道だと言っていた。「あした出発だけど、食料とかは大
丈夫か?」と聞くと「あぁ、食料はいつでも用意してある。是非一緒
に行きたい」とスイス・ジャーマンらしく勤勉で深刻そうな顔で話し
たのを覚えている。

 山行中の日記は途切れ途切れで、書いていない日もある。Hutでは
ぐったりとして日記を書く気力がなかったためだ。いつか思い出して
、抜けている部分を補足していきたい。


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