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ひげGの電子本屋、P.2
第1話 愛のカマイタチ
第一話 愛のカマイタチ
ヒゲG70著
テーマ DV 身体的暴力、性的暴力、子どもへの暴力。
プロローグ
「やっと着いたね」と、峠の頂から、振り返り小首傾げながら話す。まだ、あどけない少女がいった。頷く父親にしては、無理があるようなスラット背の高い男。
手には古めかしい杖を持つ。この時代では、珍しい魔法使いの杖だ。
「あともう少しで都だ!」
別の方向から嘶く様な甲高い声で話す。イ・ナ・ナ・く?
そう、声の主は馬である。人の言葉を理解し、そして、言葉を話す馬もどき。
かつて、ユニコーンとして生きてきた不思議の森の住人だった。
ハンターにユニコーンのシンボルである角を折られて瀕死の状況時に、ウイン・リューガーとサファイアの賢明な看病を持って息吹き返した。それ以降、命の恩人として、二人と連れ添っている。義理堅い元ユニコーンだ。
おっきな湖と指を差しながら、峠の頂からはしゃぐサファイヤである。
その昔、太古の時代。
大きな火の玉がこの地に災いをもたらした。
その時に出来た窪みが、今立っている峠の頂であり、多くの川が出来、中心に向って水が集まり、多くの時をかけながら湖が形成していき、湖と周りを取り囲むように盆地が出来上がっていった。
朗々と話すウイン・リューガーだ。
まるで、その場に居合わせたような感じで、目で細めて遠くを見るめている老人のようでもあった。
「早く行こうよ。待っている人が居るんだろ」
催促をする元不思議の森の住人であったグランが言った。
頷きながら、峠から湖のほとりに立つ王都「ラ・ムーン」へ足早に歩く。
これから、王都「ラ・ムーン」を舞台にして、色々な騒動が起こることを、予感を感じさせる奇妙な二人ずれと一頭であった。
ふと、ある方向を見つめているウイン・リューガー。
どうやら、女性が何者かに襲われているようだ。
サファイアと、グランと共に助けに行ってくれないか。素直に応じるサファイアとグランであった。
一章
1 遅い
「遅い」
腕組みをしながら忙しく行きかう往来の最中で、仁王立ちの如何にも腕っ節は、誰にも負けない風のがっちりした体格の男が、正門を睨みつけている。
さぞ長きにわたり、その場所に突っ立っているのであろう。
「あんた、あちらさんも遅くなるのなら、それなりの理由があるんじゃないの、まったく、セッカチなんだから」と、男の強い視線にひるむことなく、長い髪を束ねて、周りの男たちの視線を感じながら、艶っぽい微笑みを振りまくイカス女。
彼のいる所に歩み寄ってきた。どうやら、夫婦のようだ。
二人の周りがざわざわしている時に、奇妙な二人と一頭が、正門から入ってきた。
目ざとく「おやっさん、あねさん。あれじゃないですか、手紙に書いていたように、二人と一頭」と使い走りのイダテンの言葉が終わらぬ間に、二人は駆け出して行った。
「遅かったじゃないか、ウイン」と話す。と、くだんの男。
「お帰り」と、笑顔で出迎える粋な女。
二人を互いに見つめ直して、「道中で人助けをして、少し遅くなったと」苦笑しながら言い訳を話すウイン。
そのウインのローブに隠れるように佇む少女と、目線があったイダテン。
けれど、少女には、イダテンの姿は映っていないようだ。ある所を一点を見据えていた。これが、養い子兼見習い魔法使いのサファイヤ・リューガーです。
サフィと呼んでくれ。と三人に紹介するウイン。
おお、可愛い子じゃないか。と、俺はアトラスだ。よろしく。
ウインにはもったいない子だね。私はローザよ。と、愛想よく話す夫婦たち。
2 火事
それでも、まだ、アファイヤは視線を逸らさず、一点を見つめている。やがて、不振に思う大人たち。
「あそこ、燃える」と、ふと、指を刺し示すサファイヤ。
よく気がついたと、鋭い目をしているウイン。
ギョ!とする周りの大人たち。
少女の言葉だけだったなら、いぶかしむ大人もいるだろう。けれど、ウインも気が付いていた。
事の重大さを知って、アトラスとローザたちも、指の先に視線を移す。
その時、サファイヤの言った事が現実を結ぶ。そう、唐突に火柱が立ち上がったのだ。
慌てる夫婦とイダテンたち。
サファイヤが指をかざした方向は、夫婦と下っ端たちが、切り盛りしている食堂兼旅館『炎たちあがるサラマンダー亭』があるからだ。
その食堂兼旅館の名の通りが火の手があがったときゃシャレにならない。と、愚痴る三人。
再会の言葉もゆっくりと交わされないままに、慌てて駆け出す五人と一頭の馬もどき。周りの人たちは、あっけに捕らえて走り去る方向を見つめていた。
3 魔法
いち早く韋駄天の名の如く、誰よりも走りイダテンの速さに驚く、ウインとサファイヤ。
折り返し返って来たイダテン。
荒き息を立てながら「おやっさん。火事の火元は『炎たちあがるサラマンダー亭』の路地を面したライバルの食堂兼旅館『黄昏の風雲亭』でありんす」と、器用に並走しながら、その言葉を聞いてホッとした表情を浮かべる夫婦たちであった。でも、炎は天をも焼き尽くす勢いだ。
ウインたち一行が着いたおり、一人の母親と思われる女性が、炎に包まれ行く『黄昏の風雲亭』に向って「息子が、娘が」と騒ぎながら、町の顔役のチョーさんに、羽交い絞めにされながでも、子ども達を助け出そうと、けなげに先進しようとする女性であった。
出切るか?と、ウインの声。そして、頷く少女。
「サフィは風を、俺は水を呼び、結界を張る」
同時に、周りがあっと驚く中、魔法の詠唱をする二人。
鋭い視線で天を見ているウイン。間をおかずに大きな水溜りが中に漂う。
そして、隣では、燃え盛る炎に向って両手をかざすサフィ。
ほぼ同時に魔法が放たれた。上から降り刺さる多量の水とお魚たち。そして、一陣の風。
固唾を呑む野次馬たち。不思議なことに、一瞬で炎が消えるだけの多量の水だが、ウインらの所までには水が来ない。
あの、のっぴきならない時にでも、素早く結界も張られていた。
まわりはその冷静な判断に感謝と羨望の目で二人を見ている群衆の目。
あと、、周りでいた野次馬どもは、別の意味で大騒動を起こしていた。
それもそのはず、ボイルしたお魚たちが降ってきた物だからである。
さもバーゲンセールで群がる主婦の合戦上の様相に呈していた。
4 犯人
お魚騒動が鎮静化した頃。
焼け跡から馬らしからぬグランが、どのように背に乗せたか不明だが、無事に二人の子ども達を乗せて、腰を抜かしている母親の方に歩み寄っていった。気を失っているが命には別状がないことを確認した母親は安堵のあまり気を失ってしまった。
慌てた夫婦であるアトラスとローザは、『炎たちあがるサラマンダー亭』に三人を保護することを周りの火消しや野次馬に宣言した。
その一部始終を見ていた少年が居た。顔がこわわり唇が震えている。微かに俺じゃないと言っているような表情が見受けられた。その肩をポンと叩く人がいた。
町の顔役のチョーさんであった。
「お前が火を点けたんだな」と、正気に戻った少年に向って言葉を紡いだ。
思わず頷いてしまった少年。
名前はマリス・グランドール、普段はマリスといわれている。
誰もが、これで一件落着かと思った。
その時に、ウインは、まだ、俺じゃないとつぶやいている少年の元に行き。じっと観察している。
おもむろに、この一件は、私、ウイン・リューガーが取り仕切る。と大見得を切って、周りの野次馬たちは騒然となった。
アトラスとローザは、何か考えてのことだろう。目を細めて、回りの動向を見守っていた。
二章
1 使い魔
火事の犯人に対して何故、庇いだちを隠そうとしない凄むチョーさんと、とぼけて顔を決めているウイン。この二人の中を取り持とうとするアトラスとローザも大変だ。
しかし、火事を消火して、二人の子ども達を救い出した手前、あまり強気にも出られず、しぶしぶ折れたチョーさんであった。
当の母親と子ども達は『炎たちあがるサラマンダー亭』の一室で保護されて、火事の一件で、疲れ果て休息を申し出てきた。
そんな折、旅の埃を取るために、サフィはすっきりしたいと言い張り風呂に行った。
それを確認して、おもむろにマリスと共に、外に出ようと誘うウイン。別に拒否することもなく付き従うマリス。
だが、ウインのする事に対して、抵抗しようと思った時、すでに時遅しだった。
『誰!』外に向って叫ぶサフィ。以前よりも察知する時間が早いな。のたまうウインと、この日、二度目の青い顔をするマリス。
やがて、察知したサフィは、窓を開けるや否や「どスケベ!」と鋭い声を叫ぶと同時に、二人に向って、水が矢のように飛んできた。
しかも、本当の氷の矢になって、ウインとマリスの頭上に降りかかる。慌てる二人。
その騒動にまぎれて、一本の氷の矢が、夜にもかかわらず飛ぶ周りに不似合いな鳥もどきも打ち落としていた。
にんまりするウインと怪訝な表情を浮かべるマリス。
そして、サフィは氷矢の魔法を得た。
覗く事によって、魔法の力を開花させようとするとんでもない師匠である。
それでも、敵の使い魔を、無茶なやり方で、自然な形で排除した狡猾さも持ち合わせている年齢不詳のウイン・リューガーでもあった。
厩で、密かに見ていたグランは、面白くなってきたと呟いている。
2 裏切り
明けて夜の騒動を知った回りの人たちをしりめに、その場を取り仕切ろうとするウイン。
サフィをなだめるアトラスとローザたち。
的の使い魔を排除するための行為だと、証拠の品を関係者に見せびらかすウイン。
俺も被害者だ閉口しているマリス。
食堂を借り切って、昨日起きた火事の検証をしようしている最中に、けたたましく登場した一人の恰幅のいい貴族。王から西地区の取締役を使わされている。ワンダー卿だという。
犯人である少年マリスを番所に引き立てようとするが、それを制してウインは言い放つ。
「真犯人は、別に居る」と、唖然とする周りの関係者たち。
「そうだ!俺には、炎の魔術で、家一件丸ごと燃やせる力はない。せいぜいボヤが関の山だった。もしろ火事を消そうとまでしていた」と居直るマリス。でたらめを言うなと、犯人と決めてかかるワンダー卿。
その一部始終を食堂の片隅で、肩を寄せ合うように、この場の雰囲気から固唾を呑んで見守っている母親と子ども達の姿。
ワンダー卿の言葉を無視して、おもむろに、三人の所に行くウイン。
優しい口調で、名を聞く。
母親の名はエルザ、上の娘はアリサ、下の息子はマサルと名乗った。
焼け出されて衣服は汚れているが、上質の服を着ていることが外見からでもうかがえる。
これは、一筋縄では行かない事件だな。直感で感じている町の世話役のチョーさん。
機嫌も直ったサフィに対してウインは、これから、小難しい大人の話をするから、脅えているアリサとマサルと三人で、外に行って遊んでいきなさい。
ハーイと、素直にこの場を立って、アリサとマサルの手を繋いで外へ行く。アトラスが目配せして、その後をイダテンとワンダー卿に付いてきたローブ姿の女性アスカも出て行った。
さてと、皆の視線はマリスに注がれる。三度目の青い顔で引きつっているマリスだった。
3 炎の魔法
子ども達が店から出て行った。
あと、重苦しい沈黙が残った人たちの中に広がっていた。
誰ともなしに、深いため息が聞こえてくる。
意を決してチョーさんが、口火を切る。
まずは、自己紹介と行きましょうか。
はじめに、俺は、今は町の揉め事や問題に対して熱くなる奴らに対しての火消し役にしているチョーと言う者だ。
次に、隣に居たアトラスに目線を差す。
俺はこの『炎たちあがるサラマンダー亭』を切り盛りしている料理長ケン主人の元傭兵あがりのアスラスだ。以後よろしく。
私は、同じく『炎たちあがるサラマンダー亭』の看板女将のローザよ。ウインとはある冒険から腐れ縁でいるわ。
次は、髭を蓄えた恰幅の良い騎士だ。国王から王都の西地区を取り締り言い渡されている。総責任長のワンダー卿である。
この度の『黄昏の風雲亭』全焼の件を速やかな解決を取り仕切りたい。と、ウインに睨みを利かしながら言い放った。
一方、素知らぬお顔をしているウインは、おもむろに言葉をついた。
わたしはさすらいの魔術師のウイン・リューガーだ。
防人モーライの巨像群のあるイースーターから、弟子のサファイヤ・リューガーと人の言葉を理解するグランと連れ立って、王都に昨日ついたばかりで、今回の騒動に巻き込まれてうんざりしている。緊張しまくっている。マリスに視線をあずけた。
しばし、沈黙しているマリスを見つめながら、落ち着いた太い声で、言葉を継げる。チョーさん。
「話しにくいであろうが、何故、火を放った」と、ずばりと切り込む。
「昨日も話したように、俺には全焼させるほどの魔力は持っていない。
それに、俺は頑張って周りに火が回らないように炎のコントロールをしていた。天命に誓ってでもいい」と、叫びに近い声で言い放った。
それを受けて、ワンダー卿は、ウインに訊いた。
「この者の自供は真実であるか」
頷きながら、「確かにマリス・グランドールには、家一軒。丸ごと焼失するだけの魔力はないでしょう。
それに、結界を弾く時に、悪なる災いを発する使い魔の存在を知った。
だから、私があの場を強引に取り仕切った」
その後、店の隅で呆然としながら両腕抱かかえている三十手前の二児の子どもを儲けているとは思えない美しい顔立ちの女性に対して、言葉を紡いだウインである。
「ご気分は如何かな」と、エルザに語る。
一昨日から王都に入っているとの事、落ち着かない面立ちで言うエルザであった。
なにやら、昨日の服装から、身分の高い訳ありの親子と踏んでいたチョーさんとワンダー卿だった。
さすがは目が肥えている二人である。
その時、『タイヘンだ!』と叫びながら、血相を変えてイダテンが転がり込んで来た。
4 毒矢
外に出て行ったサフィとアリサ・マサルの兄妹、それと、鋭い視線で周りを見渡すイダテンと魔導師のアスカ。
サフィと子ども達のたわいのない話をしながらしばらくたった時に事件は起こった。
危ないとサフィの鋭い声が飛ぶ。ざわざわと、十数人の荒ぶれ顔の男たちが、五人の周りを白昼堂々と賊に取り囲まれてしまった。
子どもたちを奪いにきた連中だ!と、悟ったイダテンたち。
けれど、奮起した俺様と、サフィとアスカの魔法で撃退した。
男一人で、後は女子ども楽勝と思っていた賊どもだったが、二人の女が魔法使いと知るや、これは形勢不利と思い。
悪党がよく言う。
「覚えてろよ!」と捨て台詞を放って、あっという間に逃げ出していった。
覆面で身を隠した賊とは一線をかいた頭と思われる賊が逃げる途中に、イダテンの放ったナイフが、見事に方に当たり取り押さえた。鼻高々に話すイダテンであった。
アトラスに対して、面もくねぇ。と首をうな垂れるイダテン。
「別の方向から矢が飛んできて、賊と一緒に矢に射られる所でした」
サフィの機転でオレッチは大丈夫でしたが、捕まえた賊は、急所は逸れていたんですが、矢じりに猛毒が塗ってあり即死状態でっした。
ありゃ、アサシンの仕業というまでも無い話だ。
後から、戻って来た、魔導師アスカは、ワンダー卿に、こう告げた。
「まだ、息のある内に、微かに言葉を紡ぎ『サイファン様』と一言」
大泣きしている子ども達を抱いてなだめているエルザに、アスカのいった言葉が、耳に届いたのか、悲鳴をあげて倒れるエルザであった。
その場で転がっていた男どもは居なくなっていた。鮮やかな逃走。
プロの仕業でしょう。
ウインたちは、何処から見ても、事件の複雑さを再認識する事に十分の出来事であった。
慌てて、ワンダー卿は、国王に報告をすることを告げて、皆の者、この店から一歩も出てはならぬと言って、魔導師アスカと共に下っ端も連れ立って城に急いで帰っていった。
その光景を他人事のように眺めているグラン。
あの母親の身体をなめるように窓の外からローザにもたれながら部屋に連れて行かれるエルザを視ていた。
三章
1 沈黙の親子
さーて、問題のワンダー卿がお役所に戻ったことだから、ざっくばらんに。
今、思っていることを語ろうじゃないかと、仕切るチョーさんだった。
おもむろに、ウインに向って言葉を切り出すローザ。
「そういや、王都に来て早々、あの火事だったからね。何かよもやまばなしもなくだったね。
それで、遅れることは少ない律儀なウインが何故、待合場所に遅れてきたんだね」
ウイン曰く、「峠から降りていた時は、しばらくは至って順調だった。
グランの聞き耳で、ある女性が賊に襲われてるというもんだから、サフィも気にするし、仕方なく少し距離があるが、女性の救出に行ったんだ。その為に、アトラスは不機嫌だったようだが」
ずぼしをウインから言われて、頭をかきながら、グランしてはお手柄だったな。
アトラスは知った顔で話す。
それにしても、女の一人旅は危険なのにさ、よく、無事でいられたよね。
グランの聞き耳サマサマじゃないかねェのローザ。
いつの間にか窓から首を部屋に向って突っ込んでいるお茶目なグランだ。多少は鼻息が荒いが。
でも、何で一人で旅をしていたんだろう。と疑問を浮かべるローザ。
「あの女の子は、侍女だよ。主と別れて、自分の故郷に戻る途中に襲われたといっていたよ」と、サフィが答えた。
突然、マリスが叫んだ。
「もしかしたら、おかっぱ頭のそばかすだらけの女じゃないか?」
「おや、どうして知っているんだ」と、チョーさんが突っ込みを入れる。
「お頭から、手配書が回ってきて、三人の親子ずれと、一人で旅する娘の二組に分かれての行動だったから、俺は炎が使えるので、三人ずれの親子を見張っていろと言われた。
この分だと、侍女の所に回った奴らは、大変な目に遭ったようだな」、グランの方を見ながら言った。
ふと、視線を感じて出入り口の方に振り向くと、当の親子が血相を変えてその場に立ち尽くしていた。
2 妊娠
突然、蒼白な顔になりエルザは苦しさを訴えた。
あなた、もしや妊娠しているのじゃない。ローザが尋ねる。
周りの男どもは、おおっとエルザの押さえている下腹部をこわごわ見つめなおした。
つわりがキツイのか、周りの人たちの目線を浴びながら、サフィに背中を擦られながら耐えているエルザの姿に注目の目が痛いほどわかった。二人の子ども達も駆け寄ってきて、心配顔で苦しんでいる母親をどうすることも出来ず見つめていた。
まずは、エルザに心が安定する薬を与えてから、おいおい、これからの事柄を考えて行こうではないかと、提案するチョーさんの言葉で、その場をつくろった。
エルザを目新しい清潔な寝台に横たわらせるローザ。
薬をのみ少し落ち着いたのだろう。
唐突に話し出すエルザであった。
「侍女は、私のお世話をしてもらっていたものです。王都に来た時点で、娘がお暇を願い。確か、この近くの町の出身だということで、わずかばかりの路銀を与えかわれました。
子ども達も懐いていたので残念に思っていました。
まさか、野党に襲われそうになっているとは・・・、でも、無事で何よりで、少し安心できてホッとしています」と、やつれた表情を浮かべながら話すエルザであった。
「お腹のお子さんのことは、ご存知なのかな」とウインが問う。
「はい、夫に無理やりに求められた時の子どもなのでしょう」
「無理やりとは、それは難儀でしたね」
「お気使いをして頂きありがとうございます。
いろいろと、奉公人の娘を含めて、私と子どもたちを、あの火事から助けていただき、なんのおもてなしもできずに、残念でございます」
神妙に面持ちで語るエルザと、二人の子ども達も感謝を表す言葉を述べる。
いやいや、いいんですよ。乗り掛かった船でもありまからね。
グランの聞き耳と、サフィの予知の賜物でしょう。
それに、サフィも実践の魔法が使えたことは、これからの魔法を使うことへの自信にもなりますからね。
新たな氷の魔法も覚えたことで嬉しい限りですよ。と、微笑むウインだった。
そんな所に、威勢よく現れたアトラスだ。
「ヘイ、おまち、腹の子の為に、精の付くものを食べないといけないよな」と、ご馳走を作ってきた。
なーに、ウインクしながら、外には捉えきれないに落ちて来た。ボイルしたての魚もあるからな。落ちてきた魚をちゃっかり、拾って来ていたお茶目なアトラスであった。
「いくら、無理やりとはいえ、身ごもったのだから産むのだろう。赤ちゃんには罪の欠片もないからね」と語るローザである。うなづくエルザと、じーと見つめていた子ども達。
その会話を眺めているウインはサフィに、今晩かな。とつぶやく。
3 城内
一方、その頃。『黄昏の風雲亭』の放火の件の報告に上がったワンダー卿と魔導師アスカたちは、城内に入ってから、意外な展開を見せていて戸惑っていた。
たかが一介の料亭兼旅宿の放火の報告なのに、何故、いつもは待たされる事が通常なのだが、今回に至っては、スムーズすぎるぐらいにストレス無く上部の役人たちへ取次ぎがなされる。
長き回廊を進む二人と案内係。
城の深部へ行くことは、滅多とないワンダー卿。緊張のあまり両手両足がいっしょに出そうな衝動をこらえていた。わずか後ろをうつむき加減で歩く、若き魔導師アスカに気を配りながらごちる。この魔導師がこの度の『黄昏の風雲亭』の放火の件で同行する時から、何か上層部、特に宮廷魔導師所で、引き合いがあったのだろう。
それにしても、何処まで行くのだ。
これ以上進むことは、王との会見になるのじゃないかと、つぶやく、ワンダー卿であった。長き回廊の奥にそびえ立つ仰々しい開閉式の扉の前で、案内役人とワンダー卿とアスカは着いた。
案内役人の野太い声が長き回廊に響き渡る。
「王都西地区取締役ワンダー卿、ならび、宮廷魔道師助 アスカ参上」
同じ詠唱と共に、仰々しい開閉式の扉がわずかな音と軋みながら開く。
中央の祭壇の玉座に座る王が悠然と座していた。神秘の湖を称える国。先の国の王女を生贄に差し出せ湖に棲む大蛇とそれに群がる闇の住人たちの脅威から、数人の仲間と共に、
果敢に戦い王女を救い出し、そして、見事、大蛇を倒した王その人である。冒険王とも下々の民から言われている。
二十年前に、この神秘の湖を称える国の王女シルヴィアを娶り、国の名も王国「ラ・ムーン」と変えヘンリー一世と、周りの国々に名を馳せた。
一連のあった出来事を国王に、汗だくになりながら、身振り手振りを合わせて話すワンダー卿。
相づちを打ちながら聞く国王。控えている魔導師アスカはと言うと、不思議そうに国王とワンダー卿のやり取りを見ている。
やがて、アスカに対して、国王の側で控えていた宮廷魔導師ジーザス老が話をするようにといわれた。
おもむろに、ギクシャクした礼をしながら、アスカは話をした。
「ジーザス様の予知が当たっておりました。私が現場に到着した折には、店は火の海で、中に居た子ども達は助からないだろうと感じておりました。
けれど、何処からともなく駆けつけてきた二人の魔術師と奇妙な馬が、見事に火を消し、子どもたちを助け、そして、悪意ある魔法を退かれました」
鷹揚に紡ぐ国王。
「して、大きな魔法を唱えた疑惑の魔術師は、そちの目にはどのように映った」と訊く。
目を輝かしながら、素晴らしい魔力の持ち主です。弟子の娘もあの歳では、目を見張るものを持っていると感じます。派遣していただいたジーザス様には、大切な経験が出来て光栄に感じています。
「そうであろう。その者たちは、我と共に、悪鬼の大蛇を滅ぼすため同行した魔術師であるからにして、我も国賓級のもてなしをしたいものだ」
ワンダー卿は青天の霹靂だったのであろう。国王の御前でぼーとつたっていた。
ジーザス老の咳払いで、ハッと自分の礼に背く事態に狼狽を隠せなかった。
別に気分も害さずに、国王は、ワンダー卿に話を進めさせた。
「ウイン・リューガーとその弟子は、どのような感じに見えたかな」
汗だくのワンダー卿は、自分が見た感じでは、二十台後半のやさ男のように見えたとの事、ジーザス老のような風格には気がつきませんでした。と、疑問の顔をしていた。
したり顔の国王は、不気味まで微笑をたくわえながら、ワンダー卿に今後の勤務遂行を言い渡した。
あと、後ろに控えているアスカは、ジーザスと共に、控えの間に来るように言いつけて、
奇妙な報告を終えて、噴出す汗を拭いながら、あの魔術師の実際の歳はいくつだ!
ぼやきながら、また、長い回廊を一人で戻っていった。
4 国王と魔術師
先ほどの大広間よりすこし手狭な国王の控えの間に、国王と宮廷魔導師のジーザス老と、その見習いのアスカは入っていった。
座るが否や国王はアスカに微笑みながら、質問をした。
「実際に見るウイン・リューガーの趣はどうじゃったかな」と含みのある言葉を残した。
問われるアスカは、王様の御前でもはっきりとした口調で話し出した。
それを横で聴くジーザス老も微笑が隠せないでいるようだ。おもむろに、口を開くジーザス老。
「色々な報告を受けているよアスカ」
湖水の水がイキナリ目に見えない不可思議な力で、ごっそりと抉り取られて、近くで魚を獲っていた者の船が、あわや転覆する危険があったとか、街道を馬とは思えないほどの物凄いスピードで過ぎ去ったとか、あの火事場で、多量の魚や貝がボイル状態で落ちていて、魚屋が商売あがったりだという苦情などで、公務に支障を来たすほどの役人共が不平を漏らしておったようだ。
実際の所はどんな感じだったんだ。
国王に理解できる範囲で話をしてくれないか。
イキイキとした様子で手振りも交えて、国王に子と細かく事件の真相を報告した。
それと、ある市民の陳情書も、アスカは陛下に手渡した。
陳情書を読んだ国王は、この上なくにんまりと微笑んでいた。
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