暇日記

暇日記

乙一


1978年10月21日、福岡県生まれ。本名は安達寛高。
17歳のとき「夏と花火と私の死体」で第6回ジャンプ小説・ノンフィクション大賞を受賞し、衝撃のデビュー。
現代日本ホラー小説界の若き俊英として注目を集めている。

夏と花火と私の死体



面白さ★★★☆☆

■あらすじ
表題作「夏の花火と私の死体」
花火大会を間近に控えた9歳の夏休み、五月は、友だちの弥生ちゃんによって殺される。
弥生と健の兄妹は、五月の死体を隠すことにするのだった。

「優子」
鳥越家に清音が奉公にきて1ヶ月。
屋敷には、旦那様と優子という病気で寝込む奥様がいるはずだったが、清音は一度も優子の姿を見たことはなかった。
あるとき、庭からふと見た旦那様の部屋に、布団に横になる人形の姿を見つける。

■感想
乙一のデビュー作。
17歳でこの作品を執筆されたのは天才だと思った。
「夏と花火と私の死体」は弥生が"私"を殺し、弥生の兄の健と"私"の死体を隠そうとするサスペンス物語です。
私=死体の一人称という斬新な語り口。
この語り口が実に面白かった。さすがは乙一といったところか。

「優子」は展開が途中で少し読めてしまったかな。
短くて少し物足りなかったという気持ちが多々あった。





天帝妖狐





「A MASKED BALL ア マスクド ボール―及びトイレのタバコさんの出現と消失」と「天帝妖狐」の2作を集録。

評価★★★☆☆

■あらすじ
「A MASKED BALL」
学校の裏庭のトイレで隠れてタバコを吸っていた「ぼく」は、ある日「ラクガキスルベカラズ」という自己矛盾する落書きを発見する。
その日から、顔も知らないもの同士数人でトイレの落書きを介したコミュニケーションが始まった。
悩み事だったり、教師の悪口だったり、気になる女の子の話題だったり。
そして、「コノガッコウニハ アキカンガ オオスギル」の落書きがあった日、学校中のジュースの自動販売機が破壊され、それ以来、落書きに予言されるように学校に異様な事件が起こり出す。

「天帝妖狐」
町中で倒れそうになっていた青年夜木を助けた少女杏子。
顔中に包帯を巻き、人とのふれあいを避けていた夜木だったが、純朴な杏子に次第に心を通わせてゆく。
杏子にだけは、自分の素性を明かす夜木。
彼は、少年時代にコックリさんで遊んだ結果、何者かに永遠の命と決して傷つかない体をもらったのだという。
そしてある日、夜木を襲った事件のせいで、彼の隠された本性がとある町で行き倒れそうになっていた謎の青年・夜木。彼は顔中に包帯を巻き、素顔を決して見せなかったが、助けてくれた純朴な少女・杏子とだけは心を通わせるようになる。しかし、そんな夜木を凶暴な事件が襲い、ついにその呪われた素顔を暴かれる時が・・・・。

■感想
「A MASKED BALL」のトイレの落書きという匿名性。
まるでインターネットのチャット、掲示板のようだったが、トイレでそれが行われていたのが面白かった。
トイレの落書きに書かれたことが現実となって起こり、次第に落書きの内容がエスカレートしていく。そして、命を狙われるヒロイン。事件を食い止めようとする主人公。
その後の展開も意外だった。

「天帝妖狐」は自分への傷が、人間の部分を消していく。
最初は夜木が杏子に宛てた手紙から始まります。
孤独だった夜木に、杏子は優しかった。
その時の夜木の気持ちを考えると夜木はものすごい感謝の気持ちがあったのだろうけど、謝罪の気持ちもあったんだろうなと思う。
手紙のラストは杏子への感謝、そしてなぜ自分がこういう姿になったのかという説明。
結末はとてもせつない気持ちになりました。




平面いぬ。



肌に棲む犬と少女の不思議な共同生活を描く表題作ほか、その目を見た者を、石に変えてしまうという魔物の伝承を巡る怪異譚「石ノ目」など、天才・乙一のファンタジー・ホラー四編を収録する傑作短編集。

「石ノ目」「はじめ」「BLUE」「平面いぬ。」
の四編

評価★★★★★

■あらすじ
わたしは、ちょっとした気まぐれから謎の中国人彫り師に犬の刺青を彫ってもらう。「ポッキー」と名づけたその犬が、ある日突然動き出す。
表題作「平面いぬ。」他、その目を見たものを石に変えてしまうという魔物石の目の伝承を巡る怪異譚「石ノ目」など4作。

■感想
「夏と花火と私の死体」「天帝妖狐」と違って、本作に収められている4作はどれも切なく、感動する物語でした。

特に「はじめ」「BLUE」「平面いぬ。」が良かった。

「はじめ」は非現実的な話であるが、なにか本当のような話で親近感がでてきた。
はじめは気が強いが、優しさもあり、そしてある弱さという一面もみせる。
こんな女友達が欲しかったw

「はじめ」は小畑健による漫画化もされていて、私はこの物語を読む前に漫画の方を先によんでいたので少し内容がわかってしまったw


「BLUE」はある特別な布で作られた人形のお話。
この特別な布で作られた人形は動き出し、人同様の心を持った。

BLUEという青い布で作られた人形は飼い主に気に入られたくて、いろんな事をするが、ことごとく気に入られなくなってくる。

結末は本作では一番切なかった。


「平面いぬ。」は主人公の腕に書いた、刺青の犬が動き出すというお話。
刺青の犬は「ポッキー」と呼び、主人公とポッキーの日常生活がとても面白い。



今回の作品は非現実的な話が多く、そして動き出すという物語が多かった。
私はこういうファンタジー的な物語の方がホラーより好きかもしれない。



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