風の吹くまま 気の向くまま

風の吹くまま 気の向くまま

恩田陸

『ネバーランド』

『禁じられた楽園』

『中庭の出来事』

『まひるの月を追いかけて』

『球形の季節』

『クレオパトラの夢』

『夜のピクニック』

『ネクロポリス』

『puzzle』

『象と耳鳴り』

『図書室の海』

『月の裏側』


『麦の海に沈む果実』

 メフィストに連載されていたときに断片的に読んでいたのですが、何せ断片的なものでその時はよくわからなかったのでした。でも今回きちんと読んでみて、なんだわかりやすいじゃないかと思った次第です。

 閉ざされた学園。全寮制とかファミリーとか親衛隊とかお茶会とか、いかにもの道具立てで、「そういう雰囲気」をつくり出している。ゴシックというかオカルティックというか悪意に満ちたというか。雰囲気に取り込まれて読んでしまうという感じでした。
 変なところだけど親衛隊の生徒の名前がないところも少し不気味でした。
 『六番目の小夜子』の時も「雰囲気」があって、うまいなあと思いました。理瀬と小夜子はちょっと似てるかな・・・。

 連載でも印象に残っていたのですが、張り出し窓の場面が一番好きですね。

 これを読んだらもう一つの本も読まないといけないでしょうか。『三月は深き紅の淵を』・・・(2004.3.10)


『三月は深き紅の淵を』

 『麦の海に沈む果実』を読んでしまったので、やはりこれも読まないといけないような気になって、読んでしまいました。
 幻の本『三月は深き紅の淵を』をめぐる4つの物語。
 これは本好き、物語好きのための小説のような気がしました。

 4つ目の「回転木馬」で、美内すずえの『聖アリス帝国』と、山田ミネコの『死神たちの白い夜』が言及されていたのに引かれました。う~ん(かなり)マニアック。
 山田ミネコ先生。今は思うところあって、商業誌には描いてらっしゃらないそうですが、ず~っとファンです。
 美内先生の『聖アリス帝国』も好きな作品だったし・・・。そうか、『麦の海に・・・』にはこういうイメージがあったのか、と納得。(雰囲気は全然違いますが・・・)

 話がずれておりますが・・・、この本から、また新しい小説が生まれているようですので、やはり読まなくてはならないなあ、と思っているあたりは、「三月病」に侵されてきたということでしょうか。(2004.3.20)


『黄昏の百合の骨』

 『麦の海に沈む果実』の続編です。理瀬が亡き祖母の館に住み、何かの秘密を突き止めようとしているのですが、何を探しているのか本人にもなかなかつかめないのがもどかしい。
 いくつかのなぞめいた事件があり、物語は最後二転、三転。
 理瀬の探っていた秘密は「今頃そんなのアリなの?」という感じはしましたが、理瀬の周囲の深い闇を感じるには十分な秘密かなあ。
 住む世界がちがうというか、人間のダークな部分を受け容れている理瀬なのですが、そんなふうには感じられないさわやかさがありました。(2004.4.25)


『黒と茶の幻想』

 『三月は深き紅の淵を』からつながるこの世界は、どんどん広がっているようですね。

 Y島の深い森を旅する4人の男女。学生時代の同級生が十数年たって一緒に旅をすることになった。
 4人の多岐にわたる会話、「謎」の解明、「過去」の真実と向き合い癒されていく4人。
 「森」というのが大きな役割を果たすこの作品。

 4人の会話を読みつつ、断片的に共感したり、私もそういうことあるなあ、ああこういうことだったんだと思わされるところがあり、いろいろ考えるところがありました。
 大きな事件はなく、ただ4人の会話と独白で成り立っているだけですが、引きこまれて読んでいました。
 日常的にこういう会話ってしていないなあ、でもたまにはできたらおもしろいだろうなあと思いました。

「我々は過去を取り戻すために旅をする」by彰彦

 ところでY島ってどこのことだかすぐわかるんですが、私がぜひ行ってみたい場所の一つでもあります。J杉は一度は見てみたい。(なんでイニシャルなんだろう)
 あと行ってみたいのは熊野古道。(山ばっかりだ?)(2004.8.13)


『夏の名残りの薔薇』

 恩田さんの作品の多くにこういう体裁が使われているのですが、語り手が次々に交代して、一連の事件なり謎解きなりが進行していきます。
 一人の視点で語られるものが多い中、こういうふうに、さまざまな立場や思いを持つ人たちによっていろいろな視点から語られる形は、この作品ではさらにミステリの度合いを深くしていると思いました。

 一時期だけあるホテルにあつめられる客たち。毎年そこで主人である三姉妹の不思議な話を聞かされる。
 その数日間の出来事が、個々に事情を抱えた数人の視点によって語られるなか、奇妙な変死事件が起こる。
 現実なのか、妄想なのか。
 語り手のマジックというかトリックというか、ふしぎな感覚が後を引く作品でした。(2004.11.3)


『Q&A』

 あるショッピングセンターで起きたパニック事件を、Q&Aだけで描いていく小説です。
 パニックの原因を突きつめていくのかと思いきや、その事件を通して、様々な人たちの生き方やものの考え方・有り様の変化を描いているのかなと感じました。社会風刺も入っています。

 形のない恐怖、不安。
 本当にそういうパニック場面に出会ったら、自分はどういう行動をとるだろう・・・と不安にもなりました。
 動物的に、無表情に逃げる人々の群れ。ホントに怖いな・・・。(2005.1.30)


『ユージニア』

 最近は完全に恩田ワールドにはまっております。

 ある事件について、多くの話し手によって語られていく手法は、恩田作品ではよく使われていますが、多視点からの語りによって、姿があぶりだされていくというか、作り上げられていくというのがけっこう不気味な印象も受けたりします。

 この話で聞き役になっている人物が、中心人物と話す場面。勝手に作り上げられた偶像とでもいうのか、それが崩れていくさまはなかなかのものでした。
 聞き役がどういう人物かというのに興味を持っていたので、あれ?という感じでしたが・・・。

 あと、幼い少女の時の記憶がキーでもあるのですが、作者は何かこだわりがあるのかなあと思いました。『Q&A』でも幼い少女が出てきたし・・・

 やっぱりふしぎな作品です。

 そうそう、装幀もふしぎな感じ・・・おもしろいです。(2005.2.26)

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