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大手製造業出身取締役の「暴力肯定」発言


戸坂潤一郎2009/10/19
http://www.news.janjan.jp/living/0910/0910161733/1.php


 昨年来、世間を独占禁止法違反で騒がれている日鉄住金鋼板だがご当地滋賀にもその製造拠点がある。亜鉛メッキ鋼板の販売をめぐる価格カルテル事件で、独占禁止法違反(不当な取引制限)の罪に問われた新日本製鉄子会社の日鉄住金鋼板(東京)であるが、まさにその事件の中心にある製品を世に送り出している拠点である。

 地元の地図には今も大同鋼板と記されているものが多いが、湖南市高松の工業団地の古株で地域の雇用を提供しているという点で、ながらく嘱望されてきた大手製造事業者だと思ってよい。
 日鉄住金鋼板株式会社

 ところが、最近この工場の所轄であるハローワーク甲賀を始め草津、大津などで解雇された方がビラを配布している姿が目につくようになった。その内容によれば、相当な長期間の退職強要に、暴行傷害といったパワーハラスメントの域を遥かに越えた労働者虐待行為があったと述べられている。

 労働者のMさんは、この製造所の作業を請負する元請会社の正規雇用職員だ。大同商運という会社で、旧大同鋼板時代から当地で日鉄住金鋼板の構内作業を担当している。派遣労働者もこの大同商運との契約という事だ。
 雇用調整助成も受けているMさんらが、8月20日即日解雇を申し渡しされているのだがその内容が、予告手当てを午後3時に手渡して4時に構内から退去を強いられたというので驚く。当人は、いまも会社側と交渉を続けているという。

 ビラの内容は、激越なものでハローワークや湖南市の住民から表現にやや過剰なものがあるのではないかと思う向きも多い。ところが、昨日早朝からMさんらが日鉄住金鋼板湖南製造所正門前で街宣活動を行っているのだが、その内容を聞いて驚くばかりだ。現在Mさんは京都に所在する個人加盟労働組合「きょうとユニオン」に加盟して争議を重ねているとの事だ。
 きょうとユニオン
http://web.kyoto-inet.or.jp/people/kyotama/

 ところが、その団体交渉の席上で、大同商運の取締役の許可を取った議事を録音していたそうなのだが、この中で堂々と取締役が構内における暴力的な業務指導を肯定する発言を残しているのだという。大同商運の取締役といっても、もともと日鉄住金鋼板の製造所勤務歴のある出向役員である。

 またMさんの所属班の長も、日鉄住金鋼板の出身者である。当然、暴行事件や傷害事件を承知している。それだけでも十分、大事件なのだけれどもこの班長は、その刑事事件性のある傷害事件を示談するようにMさんに強要したという。この示談強要は、ほとんど恐喝行為に近い。これが継続して行われた果ての解雇なのだとすれば、この事件性は日鉄住金鋼板の「環境配慮義務」に及ぶ可能性も濃厚である。

 ところがそれらの一連の行為を重々知ったる上で、なおかつこの日鉄住金鋼板出向者である大同商運側取締役部長が、団体交渉の席上で暴力肯定発言を記録に残した。同取締役は、Mさんと団体交渉に参加した組合員の前でまたこの構内で、正規雇用者を数名解雇する予定だと言明したとの事。

 独占的カルテルで課徴金を55億円支払い命令を受けているこの製造者は、ほかにも罰金1億8千万円(東京地裁 半田靖史裁判長)の支払いを言い渡されている。地裁判決などによれば、この9月15日に執行猶予3年(求刑懲役1年~同10月)を受けたばかりである。この罰金の規模などを考えれば、今回の即日解雇にはどのように考えても当事者のMさんを含め近隣地域住民の釈然としない思いがわくのは致し方ないであろう。

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