逆さの町



「―――で、どうなってんだコレは」
彼の名は、エドワード=エルリック。
「ボクに聞かないでよ・・兄さん」
そして彼の名は、アルフォンス=エルリック。
彼等は、『ある理由』で旅をしている。
しかし、その『ある理由』は、この話には直接関係無いので、語らずに話の続きを書くことにする。
「でさ。結局買うの?」
アルフォンスが言った。
「買うにも買えないだろ」

           ・ ・
2人が悩んでいる問題は、『買い物』についての問題だ。
しかし、『物』で悩んでいるわけではない。『値段』で悩んでいるのだ。
「小数点のつく値段なんて反則だよ・・」
           ・・
「ああ・・・払うにもコレじゃあでかすぎるもんな」
・・・と、エドワードは、財布の中で1番小さい額の紙幣を取りだした。
「とりあえず、1000円だしてお釣りもらおうよ」
「そうだな」
結局2人は、”小数点”で払わずに(払えない)、適当な紙幣を出して、お釣りをもらうことにした。

「―――――――足りません」
店員にそう言われた2人は、暫くアゼンとしていた。
「どうして”0.0001円”(物の金額)なのに”1000円”出しても足らないんですか!?」
2人は思わず店員にそう聞いてしまった。
「あら?お客様は、この街のことを知らないんですか?」
店員がそう言った。そして、続けてこういった。
「この街は、大体の物、数字の見方が逆なんです。しかし、見てのとおり建物などの向きは”逆”にはなりませんが」

「では、なぜ”紙幣”の数字の読み方は逆にしないんですか?」
アルフォンスが聞いた。
店員は、アルフォンスのその質問に、
「混乱しますよ?」
、と答えた。しかしアルフォンスは、それでもいいです。と答えたので、店員はアルフォンスの質問に答えてくれた。


「――――アル。・・・・よく分かったな・・・・」
エドワードが言った。
「なにが?」
「ほら。さっきの店員の”質問の答え”さ」
「えっ!兄さん”答え”わかんなかったの!?」

エドワードが”店員の答え”の意味が分からないのも無理はない。なぜなら、
『この街では、この街だけのオリジナル紙幣を旅人などのお金と一時的に交換する・・・ということは、この街に入る時に教えてもらってるはずです。
そして、なぜそのオリジナル紙幣の数字の読み方を逆にしないかというと、”物”に対して、”紙幣の単位”が逆でないと意味がないんです。
ですから、例えば”0.001円”の物があったとします。
そして金額は”物”の数字の数え方が逆なわけですから、”0.001”を逆から読むと、”1000”になるはずです。
このように、物の金額を数えるわけです。お客様の場合は”0.0001円”ですから、その逆。”10000円”になるわけです。
お分かりになられましたか?』
などと、(約200文字・早口)いきなり覚悟無しで聞かされたら、一発で意味の分かる人はなかなかいないと思われる。
しかし、アルフォンスは分かってのけたのだ。


2人が歩いているうちに、街1番の商店街にたどり着いた。
すると、エドワードはその商店街の”ある異変”に気がついたのだ。
「逆じゃない・・・・」
そう。エドワードは、ショーウィンドウに映っている自分の姿が、『逆ではない』ことに気がついたのだ。


「まったく・・・・聞くからだよ・・・・」
アルフォンスが呆れ顔で言った。
そして、
「アルは分かったのか?」
とエドワードがアルフォンスに質問した。
「もちろん。聞きたい?」
・・・とアルフォンス。
「結構・・・」
そう言うエドワードの顔は、あまりかっこよくなかった。


◎オマケ◎
「まぁまぁ・・・そういわずにv」
「いいってば・・・」
「いいんだね!」
「ちがーう!」
「あの鏡はね・・・」
「スト――――ップ!」

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