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【memo】富士山
だから、冒頭の文章は、核心でありながら、全然説明になっていない。
登山初心者の人は、持ち物、アイテムに目を奪われがちである。持ち物の話はわかりやすく、しかもアメイジングだ。勿論持ち物の選択も重要なのだが、だが、それをいつまでもグチャグチャとやっていても仕方ない。登山に絶対必要なものは、実はおカネさえ出せば山小屋で買える。確かに高いが、でも財布に入っているおカネで買えないほど法外にメチャメチャ高いわけではない。
5合目に到着してすぐ出発してはいけない。5合目は標高が、2000~2400mある。ちょっと走ってみれば息が切れるのがわかるくらいの高さだろう。まず、この高さに体を慣らしておいたほうがいい。5合目に、できれば2時間くらい滞在して、体を2000mに慣らす必要がある。2時間が無理でも、最低1時間。うどんくって、まったりしてちょっと腹ごなしして、荷物の整理して、準備体操をすると、だいたい1時間になるだろう。
で、うどんの汁の水分。高山病はまだ学術的に完全に解明されたわけではないが、高山病には、体内の水分不足と、酸素不足がおおきく関わっているらしい、ということはわかっている。ここで水分とっとくのが、効果はあるとは言わないが、とりあえずおまじないである。
尚、うどんが嫌いな人や、5合目についたときにすでに満腹だったりした場合は、無理に食べなくてもいい。あんまり食べ過ぎるとおなかが重くて動けなくなる。そばよりは多分うどんの方が良質な炭水化物のような気がするが、別にそばでいけない理由はなにもない。要するに出発までに1時間くらい5合目で時間をつぶせということである。
靴擦れ。やってしまうと非常につらいです。僕は富士山で2度やりました。
靴擦れの処方箋は、ごく一般的に言われているものばかりです。
まず、「足にあった靴を履くこと」です。手元に足にあった運動靴と、イマイチ足に合わない軽登山靴があったとしたら、運動靴で登った方がマシくらいのものです。
靴擦れを作ってしまったら、テーピング用のテープ、ないしはばんそうこうなどを貼って、その場所が擦れないようにします。でも、作ってしまうと何をしても辛いので、できれば作ってしまう前に気づいて、できるだけ早めに対処してください。皮がむけたらもう痛みをこらえて登るようなので、少し皮が浮いてきたら、もうばんそうこうかテープを貼って、その場所が擦れないようにします。もしくは、いつも靴擦れをつくる場所が決まっているようなら、登り始める前にそこにテープを貼っておいてもいいでしょう。
靴擦れは一種のやけどなので、靴が不調だったら休憩のたびに靴下を脱いで、湿気を放出してやるとだいぶ延命できると思います。
その前に、ご来光待ちの基礎知識。
富士山山頂の日の出前直前の気温は、だいたい2~3度くらいまで下がります。ここ数年は都会ではここまで気温が下がることは滅多になくなったので、だいたい冬の一番冷え込んだいちばん寒い日を目安に考えてください。で、無風ということはまずありません。そこで、30分ないし1時間(もしくはもっと)ぼーっとしてつったってるわけです。
基本的な考えとしては、それに耐えられるだけの装備で臨めばいいわけなのですが、かといってやたらと装備を増やせば今度は荷物が重くなってしまう。
多分北海道の寒さ対策というのをどこかで1度くらいは耳にしたことがあると思いますが、やたらと上から着こんでもダメで、まず下着をしっかりしないといけない。ところが、下着をあまりしっかりしすぎてしまうと、今度は登山中に暑くて死んでしまいます。このへんのバランスをとって1枚で済ますか、それとも登山中の下着とご来光待ちの下着をかえてみるか、そのあたりが「ご来光待ち上級者」の勘所ではないかと思います。それでは、どうぞ。
山頂へ向かっている間、上へ向かって歩いて運動しているときは、夜中でもさほど寒さを感じないと思います。ところが、ご来光待ちのために立ち止まれば、運動による発熱がなくなるから急速に冷えてくる。そして、もう1つ、体を冷やす要素があります。それは、自身の汗で濡れた肌着。ご来光待ちの時間でいちばん辛いのは、汗で濡れた服が体を冷やしてしまうことなのです。
酸素の薄さ
富士山の山頂における気圧というのは、地上のおよそ3分の2に相当します。普通に呼吸すると、入ってくる酸素の量も3分の2。
標高2400mの登山口に降り立ちますよね。で、たぶんここでは何も気づかないと思います。でも、ちょっとそこで走ってみてください。地上では何ともなくても、2400mのところでちょっと走るとぜーぜーしちゃう。まあ、地上でもぜーぜーしちゃう軟弱な人もおりますが、それはさておき、2400mというのは、すでにそういう標高です。3000mを越えると、何もしないでも酸素の薄さが気になりだします。登山というのは、時間あたりの酸素要求量はジョギングにかなり近いですから、この薄い空気をうまく使うことが登頂のポイントでして、時間あたりの酸素摂取能力を上げるか、もしくは酸素消費量を減らして、酸素摂取量>酸素消費量、とならないようにしてあげなければなりません。酸素摂取量<酸素消費量、となりますと、体が無酸素運動モードに入ってしまいまして、長時間の運動ができなくなってしまい、あえなく敗退、となってしまいます。
酸素消費量を減らすアプローチとしては、まず、ペースを落とす(笑)冗談ではなくて、富士山登山者のおよそ9割がたは、スタート時のペースが速すぎます。とくに、何も考えていないと普段地上で歩くようなペースで歩くことになりますが、これは最悪です。上り坂で酸素が2割薄いのですから、普段地上を歩くのの5割のペースでも良い位です。逆に酸素摂取量を増やすアプローチとしては、僕からは水泳とジョギングをおすすめしておきますが、エアロビや合唱・吹奏楽の類も効くそうです。
雨具は最も重要な装備。必ずセパレート式のものを持参する
雨具は、雨が降らなければ(一応)必要のない装備ではありますが、とはいえ雨が降ったときは命を左右する装備に変身します。
で、雨具は、ご来光待ちの時の防寒具にもなるので、必ず持参してください。
夏場、平地で雨に打たれたところで、ほっておけば勝手に乾いてくれます。しかし、山の上で雨に降られて服を濡らし、その後風に吹かれると気化熱で急速に体温が下がり、最悪の場合凍死することもあります。
もう1つ重要なファクターとしては、汗。蒸発した汗が雨具の中で冷やされて水に戻って、雨具を着ているのに中がびっしょり、ということは十分ありえます。これが体を冷やしてしまい唇を紫にして冷たい思いをすることになる。
悪いことに、山は天候が急変しやすく、しかも午後の夕立は夏山のお約束だったりします。さらに富士山は独立峰で風が強い、ときている。ですから、雨具を持たないのは論外としても、できれば、いい雨具を持っていってもらいたい。
さて、表題の件ですが、なぜ上下別体のセパレート雨具でなければならず、傘やポンチョではダメなのか、と申しますと、富士山の雨はかならずしも上から降ってくるとは限らないからです。富士山の雨は下から降ることもあるのです。と、いうのも、山頂の高さより下で雨雲が発生し、強い上昇気流に吹かれて雨が飛んでくるのです。
つまり、ポンチョでは雨が防ぎきれないばかりか、風を孕んでしまって危険でさえあります。傘は論外。さした瞬間に折れると考えておけば間違いありません。
ではどんな雨具を選べばいいのか。素材については別項で書くとして、雨具のキーワードは、「セパレート」と「防水透湿素材」です。セパレート型で、透湿と謳っているものなら100%問題ない。このクラスなら、多分ホームセンターかアウトドア系のお店で、4000円内外で買えるでしょう。登山用品の店でも、1万1千円か、もう少しするくらいです。
透湿を謳っていないものでも、セパレートであり、なおかつ薄いビニールではない、裏地のついたものであれば大丈夫ですが、このクラスだとのぼりはじめから雨のときは少ししんどい思いをするかもしれません。ホームセンター、アウトドアショップのほかに、ワークマンなどの作業着屋でも取り扱っており、3000円前後で買えると思います。
富士登山であれば、このいずれかの雨具を用意するのがおすすめでしょう。
●ヘッドライト
懐中電灯でもかまいませんが、基本的には両手があくもののほうが良いように思います。
夜間登る人が必携なのは当然ですが、昼間行動する予定の人も必ず持ってください。予定通り歩けず、行動が日没まで及んでしまう可能性もあります。富士山には街中と違って明かりがありませんから、ヘッドライトがなければまったく動くことができなくなってしまいます。
防寒具
富士山の山頂の気温は、およそ3~7度前後。時間によっては東京の真冬より寒いと思っておいたほうが良いでしょう。と、いうことは、これに準じた防寒具が必要、ということになります。特にご来光組は、もう1枚余計に持ったほうがよいかと思います。
まず行動中ですが、基本はTシャツ+長袖シャツ。行動中は運動量が多いですから、薄手のもので充分です。といいますか、厚手のもので保温をしてしまうと、汗をかくための余計な体力が必要になる上、水分や塩分が失われることからその補充も考えておかないと体調を崩す可能性もあります。また、服が汗を吸ってしまいますと、それが蒸発するときに体熱を奪いますから、秋口に着るような薄手の格好が良いでしょう。
で、歩行中は良いのですが、止まると急激に冷え込みます。このときに、「保温をするもの」と、「風をさえぎるもの」が必要になります。前者はセーターもしくはフリース。後者は通常雨具を使用します。特に後者を忘れると悲惨な目に遭いますのでご注意ください。
おやつ・行動食
登山によって消費されるカロリーは、およそマラソンの1.5倍、と考えてください。このエネルギーを「消費されるがまま」にしてしまうと、エネルギー不足によりバテてしまいます。そして、一度バテてしまうと山上では(酸素が薄いので)回復は難しいのです。で、行動中なにがしかを口にしたいところなのです。
行動食なのですが、キャラメルか、小分けにしたピーナッツ(ピーナッツは喉が渇くかと思います)が良いように思います。また、ウィダーインゼリーやカロリーメイトのような、簡易朝食食品もまた有効で、今回の朝食はウィダーインゼリーを2つ、歩きながら飲んだというか食べました。また、酸味のある飴も疲労回復に効果があると思います。よくチョコレートが良い、といいます(処女峰アンナプルナという本の中でチョコレートで飢えを凌いだ話は有名)が、チョコレートは日中解けてベタベタになってしまいますので、チョコレートを持っていくようでしたら、午前中はやい時間に食べきるような食糧計画でいかれると良いと思います。
スナック菓子は喉が渇くため、またかさばるためおすすめできませんが、袋のまま持って上がると気圧の変化を目で見て楽しむことができますので、それもまた一興かと思います。最悪の場合非常食にもなりますしね。飴玉の袋でも結構ふくらみますから、大きいのがいや、でしたらこちらをお持ちになると良いでしょう。
僕はお昼も行動食で済ませるので、お昼はおにぎり×4、という体制ですが、お昼を別途取る方は、お昼も用意する必要があります。
あまり関係ありませんが、登山前はパスタやごはんを食べて炭水化物によるエネルギーを貯えておくと良いかと思います。とくに、パスタについてはホノルルマラソンの前夜にパスタがふるまわれる話は有名かと思い、持久性の運動前の炭水化物は後半の頑張りに効いてくるという科学的なデータも存在します。
最低限の救急用具
登山中の事故として、やはり多いのは捻挫で、富士山の場合骨折は考えにくいですが、骨折の場合でもテーピング用のテープが1本あると添木の固定ができます。傷口の止血にもこれ。たいていの外傷はテーピングテープ1本で対処できます。それにガーゼがあれば完璧でしょう。捻挫やひざをいためた、といったケースではマメ用のコールドスプレーが効果を発揮します。
風邪薬の包みには頭痛を抑える成分も含まれているので、風邪薬を1包持っていくと良いと思います。アスピリンは初期高山病による頭痛の症状をやわらげる効果があります。(実際に病状が回復するわけではありませんので、ドーピングして登ることのなきようお願いします)私は持っていきませんが、胃薬もあると良いといいます。
止血についてですが、知識のない人があまり縛りすぎるのも問題で、あまり傷がひどくないのに縛って血行が止まってしまった結果、切断寸前までいった、という人もいるそうです。ですから、応急処置は最小限にとどめて、山小屋の人なり、もしくは下山するなりしてできるだけ速やかに専門家の手に委ねるようにしたほうがよいでしょう。
●水筒・・・水の量は本当に難しい
今回、飲み水としては水は500mlのペットボトルを3本持っていきました。うち、1本はポカリスエット、2本は真水(スポーツドリンクは吸収が早いので登山向きなのですが、大量の発汗後は真水がほしくなることがあるのと、場合によっては怪我や熱射病の手当てなど、別の目的に使うことがあるので最低1本は真水にしておきます)だったのですが、今回飲んだ水は500mlでした。しかも、山頂までいくのに飲んだのはたったの250ml!持っていくべき水の量の判断は本当に難しいものです。
やはり、日中登る方は1500mlを目安にされると良いのではないかと思います。日中は摂取する水分の量も増えていますし、1泊2日の行程ですと、就寝中汗や息で失われる水分もあります。ただ、最悪の場合山小屋で買うことができますので、予備用の水まで持つ必要はないと思います。お茶は良いですが、炭酸飲料は疲れているとのどをとおりませんし、気圧が低いので吹いたりしますから避けたほうがよいかと思います。
●トイレットペーパー、ウェットティッシュ
富士山のトイレ、トイレットペーパーは用意されてない方が大半だろうと思います。また、それ以外にも使途は広いですので、お持ちになると良いと思います。丸々1つだと200g近くありますので、半分位使用した使いかけのものを、芯をぬいてつぶして持っていけば完璧です。ウェットティッシュは、手や顔を拭く(どうしても岩などにつかまって登りますから手は汚れますが、水が貴重ですから洗うのは難しいのです)のに使用します。
ティッシュペーパーは水にとけずに残ってしまうので、山上のトイレでティッシュペーパーを使うことは避けてください。
●携帯電話
今や携帯電話は登山界でもライフラインとして有効に使われるようになりました。富士山でも大抵のキャリアは登山道全域で通じると思います。グループで1つ、誰か代表で持って行けば十分ですので、持参することをオススメします。
全員で持っていくと、重いからね…
●現金
富士山では、大抵のモノは現金さえあれば買えますので、現金は多めに持っていくことをおすすめします。3万円くらい財布の中に入れておけば、多少の何かがあってもかなり安心できるはずです。あと、100円玉は使う機会が多いと思いますので、100円玉は10枚くらい持っておくことをオススメします。
ビニールシート、があるといいかも
地面に敷くのではなくて、休憩時やご来光待ちのときの風除けにする他、せっぱつまった時の目隠しであるとか、病気や予期せぬけがで動けなくなってしまったときに風を凌ぐような用途にも使えます。
登山の道具には、ツェルト(=主に非常用のための簡易テント)という専用の装備があるのですが、そんなに安いものではないですし、ビニールシートでもそこそこ活用できると思いますので、もしあれば、グループに1枚でいいです。持って行くといいかもしれません。
みんなで1枚づつ持って行くと、重いからね…
○日焼け止め
標高が高いですから、ひとたび晴れると猛烈な紫外線にさらされます。日焼け対策はしっかりしておかないと腫れ上がってしまうかもしれません。目が弱い人はサングラスも用意したほうが良いでしょう。帽子は風で飛ばされることがありますから、コードのついたものなら便利です。
止まると猛烈に寒い!
すでに書きましたが、明け方の山頂は氷点下になることもあります。それに風が加われば・・・富士山の山頂というのは、そういう寒さです。連れはTシャツ-長袖シャツ-フリース、と着て、それで寒くて雨具まで着込んでいました。僕の場合天候が良ければTシャツと長袖シャツだけでご来光を迎えてしまいますが、一般の方は真似されると風邪をひきます。そんな僕でも冷え込みの厳しい日にはフリースが欲しくなることがあります。
特にご来光をみたいようでしたら、セーターは必携です。また、セーターは風を通しますから、風を遮るもの(雨具が良いです)も必要でしょう。天候によっては「それでも寒かった!」という話も伺っております。
動いた後止まったときに、もう1つ考えないといけないのは、行動中にかいた汗が冷えてつめたくなる、ということです。対策としては、汗をかかない程度の薄着で行動するか、化繊のTシャツを使用する(後段で説明)か、もしくは乾いたものに着替えるか、ですけど、富士山で着替えるのは結構大変ですので、できるだけ前の2つの方法で対処するのが賢明でしょう。
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