工事中。
此処は、木の葉の国が友好を結んでいる、とある小国。
その小国が、最近何かと他国から怪しげな物資を多量に仕入れているとの
情報を受け、木の葉選りすぐりの忍者達が、こうして密かに小国へと
侵入したのだった。
国境の守りはなるほど常に無く固められ、見張りの数も一際多い。
見張りたちに気取られぬよう、忍者達はまるで木の間を渡る風のように
それぞれの持ち場へと散って行った。
イルカはこの小国の総督府、国の中でも最も高い建物の
ファサードの陰にその身を潜めていた。
この総督府に、夜な夜な物資が運び込まれているという。
今はまだ夕刻、役人達がうろうろと出入りをしているのが
イルカの所からでもよく見える。
彼は中忍になって、まだ半年ほどだった。
厳しい試験を突破し、晴れて中忍となって以来これが初めての大きな任務だった。
彼は緊張にこめかみの血管が脈打つのを覚えた。
出入りする役人の中には、今回の密輸事件に関わっているとされる
人物の顔も見える。イルカは体を強張らせ、大きく息を吸い込んだ。
｢そーんなに肩肘張ってちゃ、見つかっちゃうよーん｣
急に耳元で囁かれた。
イルカは血液が驚きの余り沸騰したかのように感じ、思わず身を引いた。
その背中をトン、と突付かれ、慌てて振り返ると、其処には灰色の髪の、顔の殆どを
マスクで覆った忍者が居た。
"何時の間に？全く、気配など感じなかったのに？"
戸惑うイルカには全く構わず、灰色の髪の忍者、はたけカカシはそっと下を
伺った。それから体を戻し、イルカの方を向いてぽつりと言った。
｢んーー、まーー、まだいいんじゃないの？｣
｢いいんじゃないのって？どういう事ですか？｣
｢君、声でかいねえ。｣
カカシはぼりぼりと頭をかいて、それからイルカの目をじっと見詰めて言った。
｢どうせ昼間なんか動くわけ無いでしょ。こんな早くから張り込んでたって、
疲れるだけですよ｣
｢し、しかし｣
｢諜報部からの報告にも、物資の運搬は夜、港が閉まってからって
あったでしょ。さ、帰ろ帰ろ｣
ふっと肩に腕が廻り、それに驚く暇も無く、視界が白い物に覆われた。
カカシ得意の、瞬間移動の術である。
あらかじめ幾つかの場所に自分のチャクラで印を付け、それを拠点に
瞬間移動をするのである。勿論、これは相当の使い手でないと出来ない技で、
イルカもかなりの熟練者では有るが、これを使いこなすのは困難である。
｢ほい、着いた｣
視界が急に晴れ、其処は木の葉忍者部隊が連絡所として用いている
秘密の建物の中だった。しかしイルカが更に戸惑ったのは、其処がイルカの
寝室だったからだ。
｢カ、カカシ先生」
｢んー、なに？｣
｢な、何でこんなとこに戻ってくるんですか？大体、何でこんな所にチャクラを
つけておくんですか？普通、自分の部屋でしょーが！！｣
｢いーじゃないの、そんな細かい事｣
ポン、と肩を軽く叩いて、カカシは部屋を出て行った。
ドアを閉める直前、こう言い残して。
｢イルカ、忍者はそんなに張り詰めてたら、すぐに切れちまうぞ。
てきとーでいいんだ、てきとーで｣
にやりと笑って、カカシは出て行った。
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