ファズ・ギターが終始騒々しく鳴り響いている割に全体の雰囲気は驚くほどクール。私はお定まりの(?)ロンドン・パンク経由で Stooges に辿り着いたクチなので、「暴力的」なイメージばかりが先行し、実際にアルバムを聴いた時にはかなり拍子抜けしました。但し、ここにあるのは剣呑な素振りは露程も見せないそんな裏側で、来るべき跳躍に備えて体中の力を一点に絞っている、そんなクールさです。この辺りの感触は元 Velvet Underground の John Cale の手腕に拠るところが大きいのでしょうか。
かつて Rolling Stones は「なにをやっても満足出来ないんだ」("Satisfaction") と歌い、一方で Who は「歳喰う前に死にたいぜ」("My Generation") と歌いました。それらはあくまでも個人的な感情の発露を出発点としたものではあったのでしょうが、自分達の所属する「世代」が抱える共通の認識であると偽装することで大義名分を手にし、それを梃子にして世界的なヒットに結び付けました。しかしながら、ここで Stooges が歌っているのは、「去年のオレは 21/良いことなんてなかったぜ」("1969") と言うあまりに見も蓋も無い、ある種の信仰告白とでも言ったものでした。1969 年と言えばヴェトナム戦争に倦み疲れたアメリカで、「愛と平和」のウッドストックと「血と暴力」のオルタモントと言う表裏一体のイヴェントがあった年でしたが、彼らはそんな社会状況や時代背景に触れることも無く、また主人公の心象風景を丹念になぞることもせずに「良いことなんてなかったぜ」とたった一言言い放つのです。そんな一個人の言い掛かりめいた呟きを、一切の前提条件や保留条項なしで突きつけてきた Stooges の潔さ(もしくは、間抜けさ加減)がたっぷり楽しめます。
但し、John Cale の趣味が全面に出過ぎて Velvet Underground にか聴こえない読経調の不気味な楽曲 "We Will Fall" が、本作における唯一の欠点を成しています。
【Track Listings】 01. 1969 02. I Wanna Be Your Dog 03. We Will Fall
05. Real Cool Time 06. Ann 07. Not Right 08. Little Doll