◆ラテン旦那と大和撫子妻◆

私立探偵現る！【藁をもすがる思い。。。】

前回の日記の続きです。

私達素人だけの力では限界があると判断した末に、
イエローページの“探偵”の項目を母と探して見ました。

こうして探してみると結構有るものなんですね。
浮気の素行調査や結婚前の相手の事を調べたり。。。と、
ズラリと並ぶ広告の量に驚きながらも、一つ一つ目を通しました。

中でも一際宣伝文句が良心的だった探偵事務所に電話をして見ることにしました。

母：「探偵なんて初めて利用するんだけど、大体幾ら位かかるのかしら？」

私も全然検討が付きません。

私：「多分、何十万単位って所じゃない？」

不安を抱きながらも、母は受話器を取って
探偵事務所へ電話をかけました。

私は脇で椅子に座って耳をダンボにして聞いていました。

母は大まかな相談内容を伝えると、

相手先が、電話ではなく直接会って
もっと詳しい話を聞きたいのと、そうすれば大体の費用をその場で伝えられる。というので、

私達は明後日の午後３時に、実家の近所の喫茶店で会う約束をしました。

さて、約束の日が来ました。
私と母は、プロに頼めば簡単に事が済むのだろう。という期待と不安の混じった面持ち手で、
待ち合わせの喫茶店へと向かいました。

約束の時間きっかりに、

トレンチコートをキリッと着こなした、
目つきの鋭い、正に“敏腕私立探偵”を地で行っているかのような、中年の紳士が現れたのです。

私は内心、ボロボロヨレヨレのコートを着た、
コロンボ刑事みたいな人を想像していたから、ちょっと嬉しいズッコケ方をしてしまいました。

彼の、“鋭くて隙が無く、妙に落ち着きのある目”は、

私が子供の頃、
近所で空き巣が多発した時に、家へ聞き込みに来た刑事さんと同じ目をしていたので、

こういう関係の仕事をしている人って、同じような目つきになるのだな。等と一人感心していました。

彼は丁寧に挨拶をすると、コーヒーを注文してから
早速事の経緯を私達の話を黙って、時折軽く頷きながら休む暇なくノートにとっていました。

たまにペンを休めては、私達の目をじーっと見つめて話を聞くシーンもありました。

やはり彼の職業柄、私達のようなケースは何度も扱った事が有るそうですが、

彼の今までの経験から言って、詐欺師Ｓは 並大抵の詐欺師ではない。 と断言されました。

かなり手強いのではないかと。。。。

よりによって筋金入りの詐欺師に、
１０年近くもの間私達家族は、甘い汁を吸われ続けて来た。という訳です。

話の中で、勿論父とＳとの男女関係についても触れましたが、
私にはそう信じたくない気持ちがあるからなのか、
何故かあの２人には、そういう生臭い関係は無かった。
と唯の私の感ですが、そう思っています。

父はあの女を、女性としてではなく
父が居心地の良いように、事細かくお世話をしてくれたから
傍において居たのではないか？って、今でも思っています。

父は特別、殿様のようにあれこれ人から細かくお世話をして貰うのが大好きな人でしたので。。。

多分Ｓは、父のそういう痒い部分を“天性の詐欺師の感”で早急に見抜き、
弱いツボをくすぐり続けて来たのでしょう。

このＳ、実は父の元に来る前にも他の先生の元で弟子として
入門していたのでした。

そしてその先生に近ずき、会計を牛耳ろうとしたけれど、
その先生の奥さんは非常に性格の強い人で、
奥様を第一に考えておられた先生は、会計は全て奥様にやりくりをさせていたのです。

だからＳの入る余地など全く無かった訳です。

そこで新たに白羽の矢が立ったのが、不幸にも私の父だったのです。

父は業界でも有名なお人好しです。
毎回何十人も引き連れて、銀座の料亭やステーキハウスに行き、
お会計は全額、いつも父が払うという、
家族にしてみれば、こんな腹立たしい話は無かったです。

お金も無いのに見栄だけは人一倍あったのか、
とにかく大盤振る舞いをする事で自己満足していたのでしょう。。。

世の中、こういう“お人好し馬鹿”に集って来る、ハイエナの様な人は本当に多いです。

こういう人達に限って、お金が無くなったり
本当に助けが必要な時には、引き潮のようにさぁ～～っと居なくなってしまうのです。

父の周りには、“友達”と称した集り(ハイエナ）が、いつも群がっていました。

Ｓはそんな所にも素早く目を付けたのでしょうね。

こんな都合の良い鴨は他には無い！ってなもんでしょうか。

話を戻しますが、

探偵は母の顔を見ると、はっきりと力強い口調で

｢こんな人非人は許せません。御主人がお亡くなりになって大層お辛いとは思いますが
私も出来る限りの事は致しますので、１５日程のお時間を下さい。」

そして金額の話になりました。

早く済めばそれで良いんですが、
経費も全て入れると大体この位はかかります。

そう言って探偵は、白い紙の上に数字を書き始めた。

そこにはくっきりと、

“百万”と書いてあった。

｢百万円ですか。。。。。」

母は口篭った。

百万とは想像以上だったので、私も暫し言葉を失った。

母は下を向いて考えていたけれど、急に意を決したように
探偵の顔を真正面から見据えて、

｢百万という金額はちょっと驚きましたが、
でも、ここまで来て引き下がるのも後々まで悔いが残ると思うから。。。。。
○○さん、お願いですからＳの件、宜しく頼みますよ！」

私は母の決心にちょっと戸惑いましたが、
私も探偵にまで頼んだのは自分達ではどうしようも出来なかったからだった。
という事を思い出し、

百万なんて。。。。後で後悔しないだろうか？

という半信半疑の気持ちもあったけれど、勢いに乗って探偵にＧＯサインを出したのでした。

母は自分に言い聞かせるかのように、
｢大丈夫、その位だったらどうにか都合出来ると思うから。。。」
そう呟いていたのでした。

家へ帰ると妹が子供達の面倒を見ていてくれ、不安げに待っていました。
一部始終を話すと、

｢それはちょっと高すぎる！
早合点だよ。　頼まない方が良かったんじゃない？」

とは言っていたけど、それは母も私も思っていた事。

今更乗り出した船は止められる事は出来ませんでした。

あの探偵に賭けてみよう。
そう、今はもう祈るような気持ちで居たのでした。

探偵に頼むまでは、いつも家であれこれ調べたり
色々な所に電話を入れたり、

借金の事での手続き等に追われ、まともにゆっくり過ごした事は無かったのですが、

今は彼に任せたので、ゆっくりコーヒーを飲んだりして母と話をしました。

子供達には慌しい中で余り構ってやれなかったので、
申し訳ない気持ちで一杯でした。

久し振りに近所の公園に連れて行ったりして
つかの間の楽しい一時を過ごしました。

そしてお待ちかねの、

調査の結果報告の連絡が来ました。

分厚い書類を持って、探偵が自宅へやって来ました。

結果は期待とは裏腹の、満足のいく物では有りませんでした。

これだ！という所までは調査が出来ていなかったのです。

Ｓの住所や、旦那の事、Ｓ家の借金の詳細等は明らかになりましたが、

今一詰めが成されていなかったのです。

唯調査報告の内容を大まかに挙げると、

Ｓの 元自宅の近所での、Ｓの旦那やＳの評判や人物像はというと、

旦那は実直であるとも言えないが、不真面目でもない。
口数少なく、割と常識のある人だった。
広告代理店に勤めていてバブルで大儲けをし、近所では一番の裕福な家庭だった。
退職した後は、唯ブラブラと隠居生活を送っていたようだった。

妻のＳは、とても社交的な女性で、特に近隣の奥さん達とは親しく交際していた。
人物像としては、明るい性格で、学区内のＰＴＡ役員を自ら志願してやっていた事から、
積極的で表に出るのが好きな女性だった。
しかし性格的にはルーズな面もあり、他人から借りた本や服、傘、その他の物などは
なかなか返さず、結局そのまま返らなかった人も居る。

ひとつ気になるのは、
平成２年に親しくしていた近所の人達にも何も告げずに
殆ど夜逃げ同然で出て行ってしまった事。
そして誰も転居先は知らなかった。
当然、土地や立派な家は売却された事になるが、
その時の家の中の状態はかなり酷く、必要な物だけ持ち出し、後は掃除も何もされていない汚れた状態だった。

そして転居の理由は、誰も知らなかった。
このような事から、元近隣の人達は多額な借金が出来てしまったのだろうと認識していた。

今考えると不可解な面もあり、転居する数年前から自宅にＴＥＬをかけても
息子か娘しか出ず、旦那やＳには一度も取次ぎが無かった。

ここでＳの借金借り入れ状況は昭和５５年から６３年にかけて、７件の

合計８千万円に及ぶ借金があった。

そして夜逃げをした後の現住所での聞き込みでは
近隣との付き合いが全く無く、

旦那は仕事をしている風でもなくブラブラしている。
それなのに不可思議にも、あの８千万円の借金は
今現在、 全て弁済されているのでした。　

以上の事が、今回の百万円をかけた探偵の調査で判った事でした。　

先に、調査内容にがっかりしたような事を書きましたが、
これらの情報はやはり、私達素人には入手する事は不可能だったでしょう。

得るものは沢山有りましたが、私達の期待は満たしてはくれませんでした。

内心がっかりしたのは否めませんでしたが、
ここでがっかりしたままではいられません。

こうなったら意地でも手当たり次第、やれる所までやってみよう！

そう心新たに、

私達はとりあえず今度は、

無料の弁護士相談を尋ねて,専門家の意見を聞いてみよう。と思い立ったのでした。　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　

続く。。。。 (ごめんね、又続くなの～～～～！）

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