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~13~(最終話)
夢を見てた。
覚えてるのはそれだけ。
どんな夢だったのか、ついさっきのことが思い出せない。
ただ、なんとなく楽しかったような、いい気分でいた。
遠くで彼女の声が聞こえる。
夢のつづきなのか、現実なのかわからないまま、返事をしようとしていた。
思うように声を出せずに、大きく息を吸い込む。
記憶の片隅に残る香り。
少しずつよみがえってくる。
彼女の香りだ・・・っと気づいた瞬間、
頬に冷たいものが押し付けられる。
同時にバイブ音と不快な振動。
一気にいい気分が吹っ飛んだ。
「もぉ~~~~っ!! 」
~ケータイ、鳴ってるよ。~
「あ~・・・。」
ケータイだったんだ・・・。
瞼は開かないし、状況がつかめないまま
宙で掴んだケータイの通話ボタンを勘で押して、耳に当てた。
「なんだよ~!」
こんな朝早くから電話かけてくるやつはだいたいわかる。
マネージャーか・・・。
ということは・・・?
「もしも~~~しっ!! どこにいんの!?」
「あ~・・・?」
「電車乗ってなかったのかよ~!」
「・・・・?」
ニノの声だ・・・。
電車? どこって・・・?
「どこだっけ~・・・、あれ? 何時?」
ぼやけた視界の先に見覚えのない時計が差し出された。
その先には・・・、
「うそっっ!!」
跳び起きた。
時間にもびっくりしたけど、実物?のまいちゃんがいた。
「えっ!? なんでっ!!」
「あ~、悪いね~起こして~・・・、って何やってんだよっ!!
もー完全に遅刻じゃねーかよーーっ!!」
やっと状況がつかめてきた。
ニノと同じ電車で集合場所まで行く約束をしてた。
で、もう集合時間になる・・・。
「あ、えっと・・・! 間に合う間に合う! 都内だからっ!!」
「・・・え?
・・・あぁ~・・・、そーいうこと~・・・。
じゃ、いっか! 直接来れるよね!? 」
「あ~、うん、わかった。」
「そこからだったらなんとか間に合うだろ?」
「うん~・・・。」
「じゃ、すぐ出てこいよっ! ちゃんと服着てなっ!!」
「・・・はぁ?」
「まっぱで来るなよっ!!」
「・・・・・? あっ! ばかやろー!うっせーっ!!!」
ニノだけじゃない、何人かの笑い声をケータイで断ち切った。
そーだよな・・・。 みんな集まってるんだった~・・・。
すっかり目が覚めた。 まいちゃんのベッドの上にいた。
彼女は心配そうな顔でこっちを見ている。
「時間、聞いてたらよかったね・・・。 間に合うの?」
「・・・うん・・・。」
頭はハッキリしてるけど・・・、記憶がない・・・。
「オレ、なんにも覚えてない・・・。
いや、覚えてるような、覚えてないような・・・。」
「うん・・・。」
さっきからずっと、彼女の表情は固いまま。
ぜんぜん笑ってくれない。 ・・・なんで? 恐る恐る聞いてみる。
「・・・オレ・・・、なんかヘンなこと、した?」
悲しそうな顔で、じっとこっちを見てる。
「・・・した・・・。」
「え~~~~っ!? どんなっ!?」
「・・・・・言えない・・・。」
「うそっ!!」
「もうたいへんだったんだから・・・。 ・・・重くて。」
「おっ、重くて~~~っ!?」
「・・・うん・・・。」
そのあとすぐに、ガマンしきれなかったように彼女が笑い出した。
「えっ!? な、なにっ?」
「だって・・・。 置いて帰るわけにいかないでしょ?」
「あ・・・そっか、そーいうこと・・・。
えっ? ちゃんと歩けてた??」
「うん。 楽しそうだったよ。 楽しかったけど♪」
「・・・そっか~。 で、それから・・・。」
「もういきなり熟睡だったよ~。
だって、ほとんど寝てなかったんでしょ?」
「・・・・うん・・・。 そっか・・・。 よかった~。」
笑いながら、コーヒーをカップに注いでる。
「あっ、まいちゃんは? 寝れたの?」
「うん。 お布団あるから。」
「・・・そっか。」
一緒に寝てたんじゃなかったのか・・・。 んなわけないか~。
「アラーム、鳴らなかったよ。」
「うん、セットしてなかったし~。」
「え? 相葉くんセットしてるって言ってたよ・・・。」
「あ~、それいい加減に返事してる、酔ってたから~。」
「・・・まだ時間、大丈夫?」
「あっ! もう行かなきゃ!!」
「タクシー呼んでるんだけど・・・間に合うかな?」
「えぇ~~っ!? いつの間に??」
「ケータイで話してたとき。」
「すっげ~、さっすが・・・。」
ゆっくり話す余裕もなく、身支度するのが精一杯で
この状況がすごくもったいなくって、妙に悲しくなる・・・。
その時、無情のインターホンが鳴った・・・。
用意してくれたコーヒーも、ゆっくり座って飲めなくて、
なんか学生の頃の朝の風景のまんまだった。
「ホントごめんっ! バタバタして~。」
「ううん、でもホントに忙しいんだね、朝も早いし・・・。」
「ん~、たまにだけどね。」
「ごめんね・・・、寝不足だったのにゆうべは振り回しちゃって・・・。」
「えっ? そんなんカンケーないよ!
オレが会いたかったんだからさ・・・!
それにさ~、実はおかげでいつもよりゆっくり寝れたっていうか~。」
かっこ悪いけどね・・・。
歩道橋から見た夜空は、もう今は遠い国に行ってるんだよな。
朝の日差しの中の彼女は、
夏の終わりのカフェで初めて笑いあった日とおんなじ笑顔だった。
ちょっとでも気を抜くと、ゆうべの彼女をぼ~っと思い出してしまいそうで
ムリヤリ振り切ってドアに向かった。
「んじゃ、行ってくるっ!」
「行ってらっしゃい!」
ドアを開ける前に、いちど振り返った。
「えっと・・・、あとで連絡するから。」
「うん。」
「また、会いに来るから・・・。」
「うん、待ってる。」
「ここに、来ていい?」
「うん、いいよ。」
ふたりでだんだん笑顔になる。
「また、泊めてもらってもいい?」
「ふふっ、・・・状況しだいね。」
「今度はさ、酔っ払ったりしないから・・・。」
「・・・どうだか?」
いたずらっぽく笑った彼女を引き寄せて抱きしめる。
なんかさ、これが限界なんだよな・・・。
これ以上は、ヤバイよ。
タクシー、待ってるし・・・。
イチバン大好きな笑顔を見ながら、ドアを閉めた・・・。
「相葉さーん! チコクの割にはテンション高いっすね~!」
待ち時間にニノが声をかけてきた。
「おー!絶好調だぜっ!ってチコクなんかしてねーだろっ!」
「すっげーな・・・連日寝不足なのにさぁ~。」
「えっ? 7時間は寝れたけど?」
「またまたぁ~~。」
「スッキリしてんだろ?」
「・・・マジで? あれからカノジョといきなり??」
「ばーかっ! んなワケねーだろっ!?
マジで寝れたのっ!!」
「はぁ~? だって彼女んとこに泊まったんだろ?」
「うん。」
「で、ホントに寝てたんだ・・・。」
「うん。」
「はぁ~? マジで愛想つかされるぞっ!!」
「ほっとけよ! プラトニックなんだからさっ♪」
「ありえね~・・・。別人じゃねーの??」
「へへっ、実はさ、見事に酔いつぶれてしまいまして~・・・。」
「アホかっ!! もっとカッコわりーよ!!」
「まさかさぁ~、自分がそーなるとはな・・・。」
「あ~あ、そりゃ完全に命取りだな・・・。」
「フツーはな・・・。」
つい顔がヘラヘラしてしまう。
「ふぅ~~ん・・・、オリジナリティってワケか・・・。
いいんじゃね?・・・うん。」
ニノが笑顔でうなずいた。
「うん・・・。
いろいろあったけどさ・・・。
ニノのおかげだよ、カツ入れてくれたし・・・。」
「えっ? ・・・あ~、あの時な・・・。」
「うん・・・。」
「あの時、オレおかしかったろ?」
「えっ? ・・・うん・・・。」
「フラレたばっかでさ・・・。」
「えっ・・・?」
「イチバンキツイ頃だったよ。」
「マジで? だってさ、・・・長かったろ?」
「もうすぐ3年・・・だった・・・。」
「なんで・・・。 あっ、ごめん・・・。」
「一緒に遊べないカレシはカレシじゃないんだよ。
寂しかったんでないの??」
「だからって・・・。」
「オレもさ、甘えてたとこあったんだよね。
引きこもりっぽかったし・・・。」
「・・・・・。」
「なんかさ、もう当たり前に近くにいると思ってたんだけどさ、
それだけじゃダメなんだよな。
キモチが動いてることに気が付かないなんてさ・・・。」
「ごめん・・・。 オレ、知らないではしゃいでばっかで・・・。」
「えっ? なんだよ!そんなんカンケーないって!」
「・・・・・。」
「あの時さ、相葉ちゃんが彼女の気持ち確かめもしないで
あきらめようとしてたろ?
それにすっげー腹が立ってさ・・・。」
「・・・うん・・・。」
「だからっ! 彼女のこと大事にしろよなっ!
ま、相葉ちゃんはマメだからな、遊ぶことに関しては!」
「・・・・・。」
何も言えずに、微笑んでるニノの横顔を見ていた。
「なに見惚れてんだよっ!」
こっちを向いて一瞬笑って、ニノは席を立ってリーダーに飛びかかっていった。
じゃれあってるふたりを見ながらいつの間にか考えてた。
3年も一緒に過ごしたひとがいなくなるって、どんなキモチになるんだろう・・・。
自分には経験のないことだった。
3年も続いたことないし・・・。
たとえ半年付き合っただけでも、彼女にフラレるとキツイのに。
3年後って、2006年も終わる頃か・・・。
どんな風になってるのか、想像もつかない。
仕事は? 今のまま、5人でやっていけてるのかな?
仕事、あるのかな?
曲も、出せてるのかな・・・?
不安になる必要ないよな、そのために、今がんばってるんだから・・・。
まだまだがんばり足りないくらいだよな・・・。
まいちゃんの笑顔を思い浮かべる・・・。
3年後も、その先もずっと、一緒にいたいと思った。
彼女のことを考えると、仕事もなにもかも、うまくいくような気がした。
彼女の存在だけで、何よりも勇気になった・・・。
☆彡 ☆彡 ☆彡
街にクリスマスのディスプレイが目立ってくると
年末の特番やコンサートの準備で慌しくなる。
まいちゃんと出会ってからこの秋はずっと
撮影やイベント続きで珍しく忙しい日々が続いた。
だから、空き時間にカフェで待ち合わせたり、公園で昼休みを過ごしたり、
少しの時間でも一緒にいられるだけで嬉しかった。
今までの自分と違うのは、
真夜中に会いに行こうと思わないことだった。
仕事のピークは夜の時間になるから、
すべて終わるとどうしても真夜中になってしまう。
でもどんなに会いたくても、
遅い時間に彼女のところに行こうとは思わなかった。
メールか電話でやり取りをするだけ。
彼女が仕事を持ってるからってだけではなくって、
なぜか、簡単に彼女の居場所に踏み込むわけにはいかないような気がした。
深夜までの仕事が終わった帰り道、
彼女と過ごした歩道橋の上で、ひとりで星空を見上げたり、
すぐ近くにいることを言えないまま長電話したり、
まるで好きな女の子の家の近くに行くだけで
ドキドキしてる中学生みたいなことをして、
そんな状況も楽しんでる自分がいた。
ひとを好きになるって、
ココロが静かに震えるような感覚なんだって、初めて気づいた。
妙に突っ走ったりすることもあるけど、
静かに、長い時間をかけてあっためたいキモチもある。
今までの自分にはありえない感情だった。
きらびやかな世界で仕事をしていると、
彼女との穏やかな時間がここちいい。
彼女の声を聞くだけで、
その日のいろんなゴチャゴチャ落ち着かなかったキモチも
静かにリセットできる。
だから、次の日にはもっとゲンキに仕事に向かうことができた。
少しずつ、自分のまわりが変わっていくような気がしていた。
なんでもできるような気がするって彼女に言ったけど、
ホントに、どんなことでも頑張れると思えるようになってきた。
大切なひとが、いるってだけで。
でもそれが、今の自分にとっては
何よりもイチバン必要なことだったんだ・・・。
冬コンの構成や振り付けがほとんど決まって、
明日から流れに沿ってのリハーサルが始まる。
連日ミーティングやレッスン続きだったし、
明日からの本格的なリハーサルに向けて小休止ってことで、
珍しく早い時間に解散になった。
「みんなで飲みに行くけど、どーする?」
ニノが声をかけてきた。
「え? どーするって、行くよ!」
「へぇ~? いいのかよ!」
「・・・? なんで。」
「帰らなくってさ。」
「あ~、今日は別行動だから。」
「今日は、って~・・・。 いっつもだろ?」
「ははは~。」
まいちゃんは友達の結婚式だって言ってたし。
せっかくの休みなのにさ・・・。
「なんかさ、・・・今までと違うよな~。」
「はぁ~?」
「相葉ちゃんってさ、好きな子できるとすぐわかるんだよな。
な~んか、みょ~に変わるんだよね。 足元が1ミリ浮いてるっていうか。」
「へぇ~? そっかあ?」
「でもさ、今度はなんか違うよな。」
「・・・なんだよ。」
「う~ん、マジで言わせてもらうとさ、
地に足が着いてるっていうか・・・。」
「なんかおっさんくせーな!」
「ふははっ! そうとも言う!」
「マジかよぉ~・・・、アイドルなのにさぁ~・・・。」
「なんか意識変わったろ? メリハリつくだろ?」
「・・・あ~、うん、そーかな。」
「あ~~~! メリハリある生活してーなぁ~!!」
「してねーのかよ~・・・。」
「仕事と家との往復だけだしなぁ~。
な~んかこの生活が定着しそーでさぁ~・・・。
実はすっげー楽なんだよね・・・。」
「うわ、それあぶねー・・・。」
「・・・だろ? でもさぁ、出会いがないんだよね・・・。」
「ニノだったらいくらでも出会いってあるだろ?」
「う~ん、ないことはないけどさぁ~・・・。
同業者はもういいや~・・・。
でも誰かさんみたいな奇跡の出会いってありそーでないもんなぁ・・・。」
「・・・それリアクションしづれーよ。」
「まいちゃんのお友だちとかさ、あたってもらおーかな?」
「・・・あ、いないことはないけど~・・・。」
「マジ? いくつ? 年上?」
「・・・中学生・・・。」
「おまえさぁーっ! オレを犯罪者にする気かよっ!!」
「ん~・・・、じゃ3年後に紹介するわ~。」
「・・・ちょ、なんか気になるだろっ!?」
「じゃその気になったら紹介するよ~。」
「えっ、・・・うん・・・。」
珍しくニノが探りを入れるような目をしてた。
結局気になってんじゃん・・・。
けど、坂井さんがオッケー出すかなぁ・・・。
ふと見ると、リーダーがノートパソコンを開いていて、まわりにみんな集まってた。
今から行く店を探してるみたいだった。
「あっ! こないださ~!」
ニノが突然叫んで肩をバシバシ叩いた。
「いってーなっ! なんだよっ!!」
「なあ、まいちゃんとこのプラネタリウム、ホームページあるの知ってるか?」
「えっ? 知らねーよ。 パソコンあんま見ないし。」
「ほんっとにかわいいよな、キレイなお姉さんだなぁ~・・・。」
「うっそ! 顔出てんのかよっ!!」
「知っとけよっ!」
「えっ? ちょ、ちょっと、見たい見たいっ!」
「今見てみれば?」
「あ・・・やっぱやめとこ。」
みんながいる前で見るわけにはいかないし・・・。
「すっげープロフィールだよな、見かけによらず・・・。」
「えっ? どーいうことだよ。」
「なんかいろんな肩書きとか資格とかあってさ~。」
「ふう~~ん・・・。」
「研究分野とかめっちゃサイエンスだったし。
ただのプラネタリウムのお姉さんじゃないよな~・・・。」
「あ~、そういえばときどき大学に行ったりしてるし、
2~3年したらまた戻るって言ってた。」
「ええ~~~っ!? それって、やっぱ学者になるんだよっ!」
「あ~、そうなんだ~・・・。」
「おいっ! わかってんのかよっ!」
「ん~?」
「末は大学教授だってことだよっ!」
「へぇ~~~。」
「ありえねーカップルだな!! いいのかよっ!」
「あ~、オレたち尊敬しあってるからなっ♪」
「はぁ~・・・?」
「オレはさ、そう賢くないけどさ、歌って踊れるだろ?」
「なに言ってんの・・・?」
「彼女は賢いけど、歌って踊れないだろ?」
「・・・・・。」
「つまりはそーいうことだよ。」
「・・・はぁ~?」
「だからさぁ、研究分野が違うってことだよっ♪」
「おまえいつ研究してんだよっ!」
「どっちもプロってことなんだよねっ♪」
「・・・ん~~?・・・、いや、それにしても・・・、
美人教授とおバカアイドルって・・・、おもしれ~。」
「そっか?」
「なんかさ、コメディドラマになりそーだなっ!」
「おまえっ! バカにしてんのかよっ!」
「ふはははっ! 今頃気づいてやんの~!」
「お~い! 店決まったぞーーーっ!!」
翔くんがこっちに向かって叫んだ。
「あ、相葉さんは欠席だからっ!」
「えっ? 言ってないよっ!」
「こんな早くに終わんないぜ、これから・・・。
マメに動けって言ったろっ?」
「・・・・・う、ん・・・。」
反論できなかった。
けど内心、ちょっとホッとした。
やっぱ付き合いも大事だしな・・・、自分から断りにくい雰囲気だったし。
またニノに背中を押されたよ・・・。
「あ~、あんだけキレイなおねえさんだったらな~!」
「また明日っから帰り遅くなるだろーしな!」
「行って来い行って来いっ!!」
「・・・・・はぁ~?」
まさか・・・? リーダーが意味深な笑顔でノートパソコンを閉じた。
「おまえらっ! 見たのかよっ!!」
「いーじゃん、減るもんじゃないし!」
「減るよっ!!」
ニノが思いっきり笑ってる。
「オレだって見たことないのにっ!!」
「あ~、見るか? リーダーがお気に入り登録してるから!」
「消せって! そんなん勝手に見んなっ!!」
「彼女に言えよなっ!」
「明日チコクすんなよ~~~っ!!」
「だからチコクなんかしてねーだろっ!」
ひとりになってから、まいちゃんにメールした。
返事が来ないまま、とりあえず車を走らせる。
途中で彼女からメールが来て、
待ち合わせの約束をすることができた。
昼間の曇り空もすこしずつ明るくなっていて、
今日はキレイな星空を見られそうだ。
土曜日のホテルのロビーは、結婚式帰りのひとたちで賑やかだった。
吹き抜けのロビーを見下ろすテラスで彼女を待つ。
通りかかる人はほとんどいなくて、下のロビーと違ってひっそりしていた。
ロビーにできた、いくつもの人の輪を見下ろす。
その輪のひとつひとつに、いろんなドラマがあるんだろうな・・・。
笑ってる人たち、泣いてる人もいた。
ひとりでソファに座ってるひとも。
こんなに小さな場所で、いくつもの人生があって、
お互いにまったく知らない同士なのに同じ場所にいる。
すぐそばに立っていても、、関わることもなくまた離れていく。
彼女に出会ってなかったら、今この場所にいることもなかった。
もちろん彼女のことなんか知らずに・・・。
ふと、初めて出会ったときのことを思った。
あの双眼鏡って、古いものだって言ってたけど、
誰かから譲り受けたものだったのかな?
まだ聞いたことなかった。
知らないこと、聞きたいことが、まだいっぱいある。
彼女のこれからの夢も聞いてみたい。
一緒に、いろんなことを話したいと思った。
今日、もう少しだけ彼女に近づけるといいよな。
会うたびごとに、少しずつ、いろんなことを知っていけたらいい・・・。
「こんにちは・・・!」
後ろから声をかけられて、あわてて振り返った。
「あっ!こんにちはっ!」
笑顔で彼女が立っていた。
・・・・・すっげーキレイ・・・。
「・・・・・。」
クチを開けたまま、じっと見るだけで・・・。
「お待たせして、ごめんなさい・・・!」
「・・・・・あ、いや・・・。」
「・・・・・?」
もちろん、普段もかわいいけどさ、
今日は華やかっていうか、メイクも違うし、衣装が違う・・・。
こんなフォーマルなドレス着てるのも初めて見たし、
大きく開いた胸元が、まっ、まぶしすぎる~・・・。
「えっと・・・、お疲れさま・・・。」
的外れな返事に、彼女が笑った。
「ごめんね、もう少し待っててくれる?
着替えてくるから。」
「あ、・・・えっ!? いいよ!そのまんまで!」
「えっ?」
「あ、あのさ・・・・、車だし・・・。」
これまたワケわかんない返事・・・。
つまりは、ドレスのまんまでいてほしいってことなんだけどさ・・・。
「でも・・・、このカッコじゃどこにも行けないよ・・・。」
「う~ん・・・、それなりのトコに行けばいいじゃん!」
「え~・・・・?」
「オレがなんとかするからっ!」
「なんとかって・・・。」
「行こ行こっ!!」
戸惑ってる彼女の肩を強引に抱いて歩き出す。
駐車場を出ると、雲はすっかり消えていた。
陽が落ちた後の西の空が金色に光ってる。
「ね、すっごいキレイだよ・・・! どこかで停められる?」
「あ~、うん。」
「一緒に見ようよ・・・!」
「うん!」
海に面した公園の駐車場に車を停めて、
ドレスにコートを羽織っただけの彼女と手をつないで走った。
行き止まりの柵のところで並んで夕焼けを見送る。
「まにあったね!」
息を弾ませながら笑う。
「すっげーな、キレイだよなぁ~・・・。」
深い茜色に変わった西の空を見ながら・・・。
「一緒に見たかったから・・・。」
「うん、ひとりで見るよりゼッタイいいよな・・・。」
「・・・石垣島の星?」
「うん、あれはすっごかった!」
「ね~、おんなじ空なのにね・・・。」
「うん・・・。 一緒に見たかったよなぁ~・・・。」
「うん・・・。」
「いつかさ、南の島、行こうなっ!」
「・・・うん。 いつかね・・・。」
“いつか”って言葉、今まで何度口にしただろう・・・。
約束なんかしちゃいけないってわかってるのに。
特別にはしゃぐわけでもない彼女の返事は、
なにもかもわかってるように思えた。
でもさ、いろんな現実があるとしても、
やっぱ言いたいんだよ。
いつか一緒に行けたらいいね。
どこか遠くの南の島、
宝石をちりばめたような、星空のしたで・・・。
遠くの街灯からひとつずつ、灯りがともっていく。
西の空がだんだん色あせて
アタマの上から、濃い夜の色が迫ってきていた。
「寒くない?」
「さむいよ~、こんなカッコだもん・・・。」
「だよなぁ~。」
「なんとかするって言ったくせに~・・・。」
「ごめんごめんっ!」
自分のジャケットごと彼女をくるむように、うしろから抱きしめる。
そばにいる時だけに感じる、懐かしい、優しい香りがした。
なんかカッコつけすぎじゃね? 自分に突っ込みを入れる。
ま、いっか、せっかくこんなシチュエーションだしね。
「あったかいね・・・。」
「うん・・・。」
「なんだか、夢見てるみたい。」
「えっ?」
「ホンモノだよね?」
「・・・・・? あ、オレ?」
「ふふっ、だってこんな風に過ごすこと、ずっとなかったし・・・。」
「うん、ホント久しぶりだよな・・・。」
「・・・相葉くんのお仕事のこと知ってからね、
いろんなとこで見かけるようになったんだよ・・・。」
「うん。」
「それまでぜんぜん気がつかなかったのにね・・・。」
「あははっ!」
「コンビニなんかで雑誌の表紙とかでこっち見てるでしょ?」
「あはは~! 見てる見てる!!
顔がぜんっぜん違うって言いたいんだろっ?」
「ふふっ、そんなこと言ってないよ~、それもそうだけど・・・!」
「いーよべつに~・・・。慣れてるから~。」
「ううん、そうじゃなくって・・・・・。」
「・・・どうした・・・?」
彼女の指が、ためらいがちに手首に触れる。
突然やってきた静けさに、なぜか、胸が痛んだ。
なぜか・・・、じゃない。
わかっていた。
そのことを伝えたくて、彼女の手を握りしめた。
なんで、わかったんだろう。
自分でも不思議だった。
きっと、お互いに同じ想いだったからなんだ・・・。
うつむく彼女の髪に頬を寄せて、しっかり抱きしめる。
「オレも、ホンモノのまいに会いたかったよ!
ほら、こーんなにくっついてんだからさ、
もうぜんっぜん寂しくないだろっ?!」
「うん・・・。」
遠い水平線に、夜の幕が下りてきた。
空と海とが、ひとつの色になろうとしている。
こんな風景の移り変わりをゆっくり見ることも、
今までなかったよな・・・。
彼女に出会って、いろんなことを知った。
想いあうからこその、伝えきれない、せつないキモチがあることも・・・。
「あーーーっ! 流れ星っ!!」
「えっ?」
うつむいてた彼女が顔を上げた。
「おっそいよ~。」
「ホント?」
笑顔で振り返って、無邪気に見つめる彼女に笑いかける。
「うっそ・・・。」
海からわずかに吹く風は、冬のニオイがした。
けど、彼女の唇はあったかくて、優しかった・・・・・。
「実はさ、オレさぁ~、
夜中にまいちゃんちの周りうろうろしたりしてるんだよね・・・。」
「え~~~~っ!?」
「ストーカーだよな・・・。」
「なんで・・・? 電話くれたらいいのに・・・。」
「真夜中だしなぁ~~・・・。」
「・・・・・いいのに・・・。」
「ん~・・・・・。」
「ヘンだよね・・・。」
「えっ?なにが?」
「お互いに、ひとりでいろいろ考えてばっかりで・・・。」
「ははっ、そーだよな・・・。」
自分でもわかんなかった。
今までにはありえないキモチがいっぱいで。
想いが通じても、わかりあえても、まだわからないことだらけで・・・。
いつも、誰かと付き合い始めた時って、自分の中ではゴールだった。
あとはノリで楽しくやってけばそれでいいって。
でも彼女とは違っていた。
ずっとずっとゴールなんかなくって、
でもぜんぜん悔しいキモチではなくって、
先になにも見えなくっても、不安になることはないような気がした。
人の気持ちは、どうしようもできないこともあるけど、
ずっと先に転がってる、ひとつひとつの楽しいことなんかを
ふたりで拾っていきたいような、そんなキモチだった。
だからさ、今、すべてわかりあえなくても、
お互いのココロが見えにくくっても、
こうやって思いやる気持ちとかあれば、
ずっと一緒に歩いていけるよね・・・。
今日もまた、いろんなことがわかったし、
少しずつ、歩いていこうよ・・・。
腕の中で、まいちゃんが顔を上げた。
ずっと上の空を見上げてる。
一緒に、夜が始まった空を見上げる。
「火星、どこだっけ・・・。」
「・・・あ、あのいちばん星だよ。」
彼女が指をさす、斜め後ろの空を見上げる。
「ちいさくなったよなぁ~・・・。」
「うん、だんだん遠くなるよね・・・。」
「星空ってさ、ホントいいよなぁ~・・・。」
「癒されるでしょ?」
「うん、今までぜんっぜん気にしてなかったから・・・・。」
「そうだよね・・・、ふだんはなかなかね・・・。」
「でもさ、今は上ばっか見て歩いてるよ!」
「えっ、それはそれで心配だよ~・・・。」
「うん、みんなにぶつかって文句言われる。」
「あ、なんか想像できる~。」
「え~? どーいう意味だよーー!」
「だって、相葉くんそのまんまだもん~。」
明るく笑う彼女の横顔を覗きこむ。
ホントに、ちょっとしたことが今は楽しくて仕方ない。
そう、シアワセって、すごいシンプルでわかりやすい。
必死に探さなくっても・・・・・。
少しずつ、夜の海風がキツくなってきていた。
「車戻ろっ。 寒いし、ハラ減ったし~。」
「うん。」
「どこ行こっか~。」
「このカッコで・・・。」
「そーだなぁ~・・・。 ちょっと目立ちすぎじゃね?」
「え~~っ! ひどい~! だから着替えたかったのに~!」
「あーーっ、だいじょうぶ!! いいこと考えた!」
「え~?」
「寒いしさ、鍋なんかいいよな!」
「・・・うん・・・。」
「だからさぁ~・・・。」
「うん・・・、どこかお店知ってる?」
「店じゃなくって~・・・。」
「・・・・・?」
じっとこっちを見られて、目が泳いでしまう。
「お、送ってくよ! なっ?」
「えっ?もう帰るの?」
「うん! 一緒にっ!」
ちょっと考えて、困ったような顔でまいちゃんがつぶやく。
「駐車場、あいてるかなぁ・・・。」
「えっ?」
「路上駐車って、やっぱりダメだよね?」
「う、うん・・・。」
「駐車場があいてたら・・・ね。」
まいちゃんの笑顔でイッキにテンションがあがる。
「あいてんだろっ? あのヘンなら!」
「う~ん、いつもいっぱいなんだけど・・・。」
「んじゃ、あいてるとこ探すからさっ!」
「うん・・・。」
「もー最悪うちに置いてくるからっ!!」
「・・・すごい、必死・・・。」
「えっ!? そりゃ必死になるよっ!!!」
「ふふっ・・・。」
「・・・
アラームセットしとかなきゃな~
・・・。」
「えっ? なに?」
「あっ、なんでもないなんでもないっ!!」
ごまかしながら、彼女の肩を抱いて一緒に歩き出す。
「あったかいとこ、行きたいね・・・。」
「うん。もうどこでもいいから、どっか行きてーなぁ~。」
「いつごろ?」
「えっ?」
「南の島に行けるの・・・。」
わざと困らせること言ってるってわかる。
彼女の声のカンジで・・・。
「えっと・・・。
今年いっぱいは、ムリ・・・っていうか、
来年は・・・どうかな・・・。」
「そっかぁ~・・・。なぁ~んだ・・・。」
立ち止まってぶつぶつ言ってるあいだに、
まいちゃんが急ぎ足で歩き出した。
あわてて追いかけて、手をつなぐ。
「来年は私も忙しくなるからねっ。」
「えっ? そーなんだ。」
「うん、いろいろ・・・。」
「そっかぁ~。
じゃあオレもがんばるよ!
まいちゃんが忙しくってオレがヒマだったらツライもんな!」
「うん、いつでも会えるしね。」
「うん・・・、連休は、ムリだけどね~・・・。」
「ふふっ、ホントに、前途多難で、波乱万丈・・・。」
「うん~・・・。」
ホントはさ、波乱万丈ってきっとこんなもんじゃないんだろうけど・・・。
だけどさ、しっかり守るから、約束どおりに・・・。
「でも・・・。」
「うん?」
「お互い好きな仕事ができて、
必要とされてるってシアワセだよね・・・。」
「・・・うん、そーだよな。」
忙しくなくなったら、実はマジで困ったことになるんだし、自分のばあい。
「あ、仕事って言えばさぁ~・・・。」
「うん。」
「コンサート、来てくれるよね?」
「えっ、チケットまだ買ってないよ?」
「・・・は? マジで言ってる?」
「もう売ってるの?」
「あ~、とっくに売り切れたよ~。」
「え~、そうなんだ・・・。」
「な~んて、ちゃんと取ってるからっ♪ 坂井さんのぶんもっ!」
「・・・ありがとう~、よかったぁ~・・・。」
フツーにチケット買うつもりだったんだ・・・。
こういうとこが、かわいいんだよね・・・。
「だからさっ、見に来てくれるよねっ?」
「うん、・・・がんばる!」
「え~? なにをがんばるんだよっ!」
「途中で帰らないように・・・。」
「え~っ!? そんなんじゃ気になって踊れねーーよっ!!」
すっかり暗くなった公園には、あちこちに寄り添うカップルがいた。
その中で、ふたりでうるさいくらい笑いあってた。
ちょっとロマンチックには程遠いけど、
急がなくてもいいよね、これからいくらでも時間があるんだから。
毎日は会えなくっても、きっと無限の時間が・・・。
そう信じたい。
クリスマスも誕生日も、いろんな記念日に
充分な時間は取れないかもしれないけど、
ときどき文句言い合ったり、ワケわかんなくなっても、
最後はこんな風に思いっきり笑い合いたい。
何万年かに一度きりの夏の夜、
ほんの一瞬のタイミングでふたりの時間が重なること、
あの星は知っていたのかな、ずっと昔っから・・・。
「あ、帰っても服はそのまんまでいいからさ!」
「えっ? うちでお鍋なのに?」
「いーじゃん!」
「それって、・・・セクハラ~。」
笑いながら顔をのぞきこまれる。
「はぁ~!? そんなんでセクハラだったらその先どーすんだよっ!」
「・・・ばか・・・。」
立ち止まって軽くにらみつけられた。
でもこんなんでひるむワケにはいかない!
つないだ手にチカラを込めて、思いっきり笑いかけた。
「ほらっ! 早く帰ろーよっ!」
彼女の表情がだんだん柔らかくなる。
そして、優しい笑顔でうなずく・・・。
ずっとその笑顔を見ていたいよ。
少しでも長く・・・。
今はそのためにも急いで帰ろう。
早く、ふたりっきりで向かいあいたいからさ・・・。
一緒に駆け出しながら、ニノの言葉を思い出していた。
“美人教授とおバカアイドル”っかぁ~・・・。
教授になるのって何年かかるんだろーな。
そのときも、きっとそばにいてくれるよね?
こっちもさ、何年先でも何十年先でも、
アイドルやっててやろーじゃねーのっ!
“おバカ”ってーのは返上したいんだけどね・・・。
おしまい~(*^。^*)
《さいごに。》
とにかく無事?終わってよかったです。
嵐ファンじゃなくなるか、ブログ閉鎖する前にケジメつけられて~~(^_^;)
2003年夏の『How'sコン』でナマ嵐を初体験し、相葉くんに惹かれ、
その月の終わりに火星の観測会へ出かけ、
宇宙の神秘と、プラネタリウムのステキなお姉さんと出会い、
イッキにイメージが広がりました。
なんかいろいろ、あーでもないこーでもないと、
アタマに映像は浮かぶんだけど、
それを文章で表現することのむずかしさを痛感し、
妄想は妄想するのがイチバン楽しいんだ、って再認識しました。
ドラマで観たいキャラクター、シチュエーション、言ってほしいセリフ・・・
現実にはムリなこと(笑)を妄想する♪
個人的な秘密のお遊びではありますが、
縁あって、遊びに来てくださったお客さまにも
しばし夢の世界で、現実逃避していただけたら幸いです。
最後までおつきあいいただきまして、
ほんとうにありがとうございました。
文句も言わず(笑)見守ってくださってありがとう・・・m(__)m
16,Mar.2007
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