熊五郎の部屋

熊五郎の部屋

May 30, 2009
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私が小僧の頃(昭和三十五~六年)、今、不夜城と化した六本木界隈には、

昔、狸がいた。その狸の掘った穴があちこちにあったので
狸穴(まみあな)。
箪笥を作る職人が大勢住んでいたから箪笥町。
箪笥の材料に使う木材業屋さんがあったから材木町。
六本木に限らず東京の町にはこのように、
その町の歴史や物語を含んだいい名前がたくさんあり、
それがいつ頃だったかは忘れたが、

一丁目とか二丁目と云う味もすこけもない町名になった。
当時私が住んでいた町は白金三光町、その隣が白金台町、
その辺りから港区、目黒区、品川区、渋谷区の区界が微妙に交差し、
目黒駅は品川区の中にある。
その目黒駅の裏には、青々とした木々に囲まれた長者丸と云う
ユニークな名前の町もあった。
今の西麻布は霞町と呼ばれていた。
霞町は六本木通りの六本木と高樹町の両方から長く下る緩い坂の下にある町で、
いつも霧や霞が漂っていた。まぁそれで霞町と云うことなのだろうが、
私が働いていた工場に最古参で○○さんと云う人がいた。
腕はよかったがギャンブルが好きで、金が無くなると、

私は○○さんから連れられ何度か、そして時折一人で行かされた。
用件を伝えたときの妹さんの、その困り果てた顔は忘れられない。
霞町は人々の様々な出来事やロマンチックな出会い、物語をその名の如く、
ボンヤリと霞や霧で覆う町であっただろうが、若かった私に、
『ギャンブルは儲からないぞ』、

と教えてくれた町だった。





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Last updated  May 30, 2009 06:26:24 PM
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