マジックの世界

マジックの世界

マジックの終わり方



「しっかりと終わらせる事が大切です。」というのはコンバージョン基本原理にもなっている部分です。

これを私は「着地感」と呼んでいます。

この「着地感」という言葉は聞きなれない人もいるかもしれませんが、要は全てを終えた時「安定できる状態」をさすもので、結局「コンバージョンが出来ている。」と同じような意味だったりします(笑)。

また、これはただ終わらせるというだけの意味ではなく、段取りよく終わることを意味しています。

着地感は何も最後のアクトの後だけ気をつければ良いものではありません。

あくまで観客が心地よく終わりを迎えられるような配慮をするという意味なのです。



せっかく上手く演じても終わりが尻つぼみではなんとも後味が悪いものです。

クライマックスをしっかりと捉えて、はっきりと終われるように練習をしておきましょう。

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着地できない状態とは?

終わり方で気をつける点は、終わった後に不安定な心理が残らないような配慮をしておくことです。



では「不安定な心理が残る終わり方」つまり「着地できない終わり方」とはどういうものでしょうか?

それは「観客が演技が終わった後もしきりに頭を働かせている状態」と言っても良いかもしれません(まあ、他のシチュエーションもあるにはありますけどね・・・)。

「演者は演技が終わっているのに、観客はまだ考えている」という状態はとても「着地できている。」とは言えません(だって、観客はまだ不思議の世界を飛び回っているのですから・・・汗)。



こう考えると、逆に演技の終わりにマジシャンが”してはいけないこと”が見えてきます。

それは「観客に余計な雑念を持たせるような行い」です。



例えば演技が終わったあとに「どうぞ確かめてください。」と言ったとします。

こうすると観客は”現象は見終わったのに”まだ頭を働かせなくてはいけません。そして観客が考えを止めるのは観客自身が「もう確かめるのはやめよう。」と思った時です(つまり着地するタイミングを観客に委ねてしまっているわけです)。

これでは観客はなかなか着地できません。

他にも演技のあとに「不思議でしょ?」などというのも好ましくありません。

「不思議かどうか?」はそれがしっかりと解明できることかどうか頭を働かせて、「解明できない」と結論がついて初めて感じるものです。

よって解明できなければなかなか着地が出来ないわけです。



細かい点を言えば、終わりに近づくにつれて使っていた道具をさりげなく片しておくことも一つのポイントになります。

カードマジックなら最後ケースにカードをしまったら何も残らないような形が良いかもしれません(終わった後にやたらに散らかった状態だと観客の気が散ってしまうからです)。

もちろん演技中に片付けるのは難しい場合も多いですから、こういった場合はトリネタを演じる前に片しておくと良いでしょう。






『受け止めの時間』を作る

こう考えると、最後のアクトを演じる際にはその前にある程度余裕を持った時間を作っておくと効果的だと思います。



例えば三つのマジックなら二つ演じて、その後一回やめるようにするのです。

こうすると観客は色々な感想を言ってくることでしょう。

「どうなってるんだろう?」とか、「あれはこうなっているんじゃないの?」とかのセリフがあったりもすると思います。

これに答えたり軽く談笑をしながら、観客の気持ちを徐々に安定させていくわけです(道具を片すのもこのタイミングで行なえばよいでしょう)。

実はこの談笑には大きな意味合いがあり、この段階でマジックの感想をあらかた言わせてしまうのです。

つまり先程言ったような「不思議かどうかを考えさせる」や「改めを行なう」といったことをこの段階でやってしまうのです。

そしてある程度場が整ったら「それじゃあ最後にもう一つやってみようか?」と言ってクライマックスを始めるようにします。。

こうすることで本当のクライマックスの後では素直な感想しか残らなくなるわけです(考える事はつい先程やっていますからね。またもう一度する気にはなりません。笑)。



「演技が終わってから考えさせる」のではなく「一通り考え終わってから、演技を締めくくる」というようにするだけでずいぶんと着地感が生まれるものなのです。





通常マジックの印象は『驚き』があり、それを観客自身が心の整理をしながら『受け止める』という時間が必要になります。

この時間が無いと受け止めがどんどん後回しにされてしまい、最終的には演技が終わった後にまとめて行なう場合があるのです。



もっとも、クライマックスがとてつもなく感動するもので、それを見れば一瞬で満たされてしまうものであるなら問題ないですが、それ以外の場合は様々な形である程度の『受け止め』の時間を作ってあげるのが親切なことでだと思います。

そして最終的に観客が受け止め終わった後ならもう一つくらいは素直に演技を楽しむ余裕が出来、その演技が面白いものであれば後には賞賛しか残らない状態が出来上がるわけです。



もちろん、連続した演技のままクライマックスを迎える方法だってあります。

ただこれは、ある程度観客がマジックに対して好意的で、アクトを見た後にそれほど疑問を持たないようなタイプの時にした方が良いでしょう。

そうでないと多かれ少なかれ某かの感想を言いたくなってしまうものです







着地感でクライマックスを活かす

さて、このようなことを応用すると、一つ一つの演技でも効果的にクライマックスを見せる演出が見えてきます。

それは「クライマックスの一段前には観客をリラックスさせるポイントを作る。」という手法です。

マジックの演技をしている場合は大体ある程度の段取りを踏んだりします。

この時そのままの流れでクライマックスまで演じてしまうと、観客は情況をしっかりと飲み込めないままクライマックスを見てしまうので、クライマックスを見たあとに今までのことを整理しようと考えてしまうのです(これは連続現象などを行なった場合も同様です)。

ですから、クライマックスの前にはホンの一拍でも間を置いて、お互いリラックスした状態を作ると良いのです。



例えばメンタル系の不思議を主張したトリックの場合は、クライマックスを迎える前に軽く今までの段取りを説明して理解させてからエンディングを迎えるのが良いでしょう。

段取りを正確に把握する事で、この後のクライマックスの現象がクリアーに感じる事が出来るようになります。



もちろんこれは「つねに情況をしっかりと理解させる必要がある。」と言っているわけではありません(もちろんそういうことができればそれにこした事はありませんが・・・)。

要は「思考を止めるキッカケ」があれば充分です。

こういった意味で、コメディーマジックとかでしたらクライマックスの前に軽い冗談などを言って周りを和ませてからクライマックスに繋げるという方法も効果的です。

こうする事でリラックスが出来、リラックスしてしまえばそれまで積もっていた「思考」をチャラにできるのです。



そしてスライト・オブ・ハンド系ならば一端手を止めてたりして、間を作ってからクライマックスをつけると効果的だと思います。

スライト・オブ・ハンド系は連続現象などで次々と驚くことが起きるシチュエーションが多いと思います。そこで一端間を作り、ホッとさせてから最後にインパクトのある現象を見せることで爽快感が生まれるのです。



「それまでの手順の流れ」と「クライマックス」は分断して考え、区切り(何度も言うようにはこれは一瞬でも構いません)を意識して演じる事ができるようになると、着地感は生まれてくると思います。


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