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2005.08.12
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カテゴリ: 洋画
スタートレック ネメシス

 アメリカを代表するSFシリーズ「スタートレック」の第10作。本作品で、「Star Trek: The Next Generation」のキャストが出演するシリーズには終止符が打たれることになっている。
 公開当時は「スタートレックがタイトルにあると誰も観てくれない」ということでタイトルが「ネメシス:STX」だったが、ファンから批判された為か、DVDでは本来のタイトル「スタートレック:ネメシス」となっている。


粗筋

宇宙連邦軍のエンタープライズ号に、外交ミッションが突然与えられた。これまで宇宙連邦と対立してきたロミュラン帝国で政変があり、新執政官となったシンゾンが接触を要望していると。
 ピカード艦長が指揮するエンタープライズ号は、ロミュラン帝国の主惑星に到着。そこで出迎えたシンゾン執政官は、ピカードのクローンだった。シンゾンは和平交渉を持ち出してくるが……。



感想

本作品の問題点の一つは、過去のシリーズ製作者が長年にわたって構築してきた数々の「法則」を当たり前のように無視していること。本シリーズに詳しくない者なら違和感を覚えることなく楽しめるかも知れないが、それなりの事前知識を持っている者だと、かえって困惑するかも。
 最初に無視しているのが、プライム・ダイレクティブである。プライム・ダイレクティブでは、ワープ技術を確立していない文明と無闇に接触してはならない、と定めている。技術水準が低過ぎる文明が高度な技術を持った他の惑星の文明と接触すると、混乱が生じるからだ。が、本作では、アンドロイドの破片を回収する為に、ピカードらは文明が未発達(技術革命がようやく始まった程度)の惑星に降り立ち、そこの惑星民とカーチェイスを繰り広げている。しかも宇宙まで飛行できるシャトル機を惑星民の前で披露している。これはプライム・ダイレクティブを違反した行動にならないか?
 スタートレックでお馴染みの技術となっているのが、転送装置(トランズポーター)である。人や物を原子レベルにまで分解し、別の場所で再構築する、という技術だ。艦船から別の艦船へ移動したり、艦船から惑星の地表に移動したりするのに使われる。ただ、この転送装置は、艦船の防護シールド(エネルギーシールド)が張られていると使用できない、という設定になっている。が、本作品では、エンタープライズ号と敵艦のシミター号との間で敵味方の双方が何でもないようにじゃんじゃん転送している。これだったらフェーザー砲を撃ちまくって敵艦を撃沈するより、爆弾を転送してしまった方が簡単では、と思ってしまう。
 最後の展開も首を捻りたくなる。
 最終破壊兵器を搭載した敵艦を阻止するには、誰かがそこへ転送しなければならないことが判明した。アンドロイドのデータがその役を買って出ようとするが、ピカード艦長は自ら行くことを決断。転送装置により敵艦へ渡った。その直後に転送装置は使用不可能となってしまう。艦長一人では危ない、と感じたデータは、宇宙空間に出て、敵艦に直接乗り移る。
 ピカード艦長は敵艦の指揮官を倒すことに成功したが、最終破壊兵器には時限装置がセットされていて、阻止するには艦ごと破壊せねばならなかった。その時点で、データが姿を現す。彼は超小型転送装置を持っていた。データはその装置をピカードに押し付け、自分は艦に残った。間一髪で自分の艦に戻ったピカードは、敵艦がデータ諸共に爆発していく様子を黙って見守るしかなかった……。
 ピカード艦長が、データの申し出通り、データを敵艦に送っていたらどうなっていただろうか。データはアンドロイドで、腕力も動作も人間より格段上。敵艦の指揮官を問題なく倒し、最終破壊兵器の時限装置を停止するか、何らかの小細工をして破壊されるようにセットし、超小型転送装置(たった一つしかなく、一人しか使えなかった)で自分の艦に戻れたかも知れない。
 データは、「儂が艦長だ! 儂が敵艦に乗り込んで実力で阻止してやるんだ!」というピカードのわがままのお陰で死んだ(アンドロイドだから厳密的には死んだのではないが)ことになってしまう。
 このことをどうとも思わないのか! と突っ込みたくなる。
 上記でも触れたように、転送装置で自由に行き交い出来たのだから、人を送らずに単に爆弾を送り込んで最終破壊兵器が使用される前に敵艦を撃沈する方法も取れたではないか、と更に突っ込みたくなる。
 宇宙の一角を支配し、宇宙連邦と長年にわたって対峙してきたロミュラン帝国で、冒頭で見られるほど単純に政変(クーデター)が起こるのも不思議。これでは行政が常に不安定で、国外の勢力と対峙する暇なんてないだろうが、と思ってしまう。
 本作は、スタートレック・シリーズで最も成功したスタートレック2へのオマージュだということになっているが、見方によっては単なる焼き直し。
 重要キャラが死ぬという展開は特にそうである。
 ただ、二作目の悪役カーンはテレビシリーズから持ってきたこともあり馴染みがあったが、本作品の悪役シンゾンはピカードのクローンというだけで、馴染みがなく、いきなり「最大の敵」と言われても「どうもなあ……」と思ってしまう。
 10作もあり、その間に特撮技術も大幅に向上しているのに、20年も前に公開された第2作を越えられないのは寂しい限りである。
 もう少し上手く出来たのでは、と思う一方、これ以上のものが現段階で出来ただろうか、とも思う。スタトレファンとしてはもやもやが残る一作となってしまった。
 今後もスタトレの映画は製作され続けるだろうが、後継シリーズの「Deep Space Nine」や「Voyager」や「Enterprise」は全く観ていない(観られなかった)ので、今後自分が観るかは微妙。
 関係ないことかも知れないが、悪役シンゾンはかなりのオバコン。エンタープライズ号のカウンセラー・トロイにゾッコンになるくらいだから(「美しい!」を連発してた)。トロイを演じていたマリーナ・サーティス、て今年何歳だ? それなりに綺麗だが、ゾッコンになるほどでは……。


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Last updated  2005.08.12 14:54:19
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