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2005.08.25
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カテゴリ: 洋書

 バリ・ウッドのホラー小説。


粗筋

ニューヨークで、ある事件が起こる。三人組がギルバート宅に押し入り、強盗しようとしたのだ。しかし、リーダー格だったロバーツが突然死亡した為、強盗は失敗に終わる。強盗仲間もロバーツは突然死んだと証言した。事件は単なる強盗未遂事件として処理された。
 ニューヨーク市警のスタビンスキーは、この事件を不審に思う。彼はロバーツを前々から追っていて、ロバーツの突然死に納得できなかったのだ。
 検屍官に問い合わせたところ、ロバーツの死因は、首の骨が折られ、神経が切断されたことだった。ただ、この死因は通常だと有り得なかった。外傷抜きではできないと。検屍官は不審に思いながらも「何か」を感じて、単なる事故死として処理したのである。
 証言では、ロバーツは突然死んだとなっていたが、検屍官はロバーツは数分間にわたって激痛に苦しみながら死んだだろうと言っていて、食い違いがあった。
 スタビンスキーは、現場に居合わせた強盗二人から話を聞く。一人は証言したこと以外何も知らないと言い、もう一人は何とギルバート宅の執事として雇われていて、何も語らない。誰かに口止めされているのだ。
 スタビンスキーは現場に居合わせた最後の人間――ジェニファー・ギルバート――と会う。彼は、彼女が怪しいと直ちに悟った。ジェニファーの友人を訪ね、話を聞く。ジェニファーの周辺には過去にも不審な死があったことを知る。
 スタビンスキーは、ジェニファーが7歳の時に起こった事件と、ジェニファーが大学生の頃に起こった事件を調査する。いずれも被害者が「突然死」していて、いずれもジェニファーの母親によってもみ消されていた。
 大学生の頃に起こった事件をたどっている内に、スタビンスキーは超能力の研究をしていたチンという学者に行き当たる。チンはジェニファーが不思議な力を持っていると告げる。彼女は念じるだけで人を殺せると。チンは、スタビンスキーに警告する。ジェニファーと関わるなと。これは検屍官も言っていたことだった。
 下手すると自分の命も危ないと感じた検屍官は、ジェニファーと会い、検死報告書を彼女に渡し、事件をもみ消そうとするが、スタビンスキーはそれを許さなかった。スタビンスキーは、自分が死んだら事件報告書が警察上層部へ渡るよう手続きして、ジェニファーと対決する。
 ジェニファーは、自分が超能力を使って意図的にロバーツを殺したことを認める。
 スタビンスキーは、ジェニファーの超能力を使って、自分が追っている兇悪犯罪者を殺してくれるよう、ジェニファーに頼む。ジェニファーはそれに合意する。


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解説

……最初読んだ時はかなり面白いと思っていたのに、再読したら「?」と評価が変わった小説の一例。
 最大の問題が、スタビンスキーだろう。なぜ彼がこの件を執拗に追ったのかが理解できない。嫌味なキャラにしか感じなかった。他の者が関わるなと警告するのに無視するどころか、他の者が事件を穏便に済ませようというところを阻止して問題を拡大している。
 こいつがいなかったらジェニファーはこのまま静かに、地味に暮らせたのに、と思ってしまう。彼女は超能力で3人も殺したのは確かだが、意識してやったのはロバーツだけで、他は自分の命が危ないと感じ、無意識のままやっただけだったのだから。これだけの力を持ちながらたった4回しか使っていないのがむしろ不思議(1回は痛め付けるだけで殺していない)。
 しかし、スタビンスキーのお陰で、彼女は今後十数人も殺す羽目になるのだ。小説は、「どれを最初に殺してもらいたいの?」で終わっているが、今後彼女がどうなってしまうかを、スタビンスキーは予測しているのだろうか。ジェニファーに殺された大学生も、彼女の超能力を利用しようと考えて彼女に接近し、結局その超能力で殺されてしまったのだ。
 ジェニファーとスタビンスキーは「協定」を結ぶことになるが、それが長続きするとは到底思えない。ジェニファーも頭が悪い訳ではないので、スタビンスキーの自己保身の手続きをかいくぐって彼を始末する方法を考え出す筈。何も彼を殺さなくても、麻痺状態にするなどしてスタビンスキーの口を封じてしまえばいいのだから。
 キャラの設定も「?」と思ってしまう。ジェニファーは比較的裕福な家庭に生まれ、より裕福な家庭に嫁ぐ。だから事件をもみ消すことができたのだが、金、金ばかりで感情移入できない。
 面白いと思った小説も、読み返すと粗が目立つ。
 やはり面白い小説を面白いままに留めたいなら、読み返すのは避けるべき、てことか。
 読む度に評価が変わってしまう小説や自分もどうかと思うが。



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Last updated  2005.08.25 14:50:24
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