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2006.04.03
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カテゴリ: 洋画
エミリー・ローズ

 実話を基にしたとされる作品。


粗筋

19歳の女子大生エミリー・ローズが死亡。彼女の悪魔祓いを行ったムーア神父が、過失致死罪で起訴される。教会の依頼で弁護に当たることになったのが、有能な女性弁護士エリン・ブルナー。エリンは、難しい弁護を強いられる。なぜなら、検察側は医学的見地から堅実に証拠固めをしている一方で、依頼者の教会はムーア神父の無罪は勝ち取りたいものの同時に悪魔祓いを容認していたことが公になるのは避けたい、とわがままな要望を出していたのだ。
 検察側の医学的根拠に基づいた弁論を打ち負かすには、悪魔の存在を事実として陪審団に受け入れさせるしかない、とエリンは判断。依頼者の意に背いて、ムーア神父本人を証言台に立たせることを決意。
 証言台に立ったムーア神父は、自身が行った悪魔祓いについて語り出した……。


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感想

CMでは、何となくホラー・オカルト映画として宣伝されていたようだが、実際には法廷映画といえる。
 その点が映画 エクソシスト と違うところ。あちらは完全にホラー・オカルト映画だったから(原作の小説は必ずしもそうでない)。
 最大のポイントは、主人公であるエミリー・ローズが、ストーリーが始まった時点で既に死亡している、ということ。エミリーは回想で登場する。
 したがって、エミリー・ローズが登場するシーンがどこまで「真実」なのかは知りようがない。証言者の思い込みや、幻想だったかも知れないのである。
 法廷での最大の論点は、ムーア神父は医学的治療で助かったかも知れないエミリー・ローズを、医学的治療を否定することで死なせてしまったのか否かになった。当然、単に医学的証拠を集めればいいだけの検察側が圧倒的に有利。
 弁護側は苦戦の連続。最大の苦悩は、本人はクリスチャンでもないのに、「悪魔は存在する……かも知れない」ということを陪審団に説得しなければならないこと。そんなことから、世界各地で悪魔祓いを見てきた研究者を法廷に呼ぶなどの行動に出なければならない。無論、マスコミの注目を浴びるようになり、依頼者の教会が望まない方向に進む。
 最終的には、ムーア神父は過失致死罪で有罪の判決を受ける。しかし、陪審団は「判決を受けた時点で既に刑に服したとみなすべき」と提言。判事はそれを受け入れる。そんな訳で、ムーア神父は有罪判決を受けながら、その日に釈放される、という結果に。
 これぞアメリカ流裁判。日本では近々陪審員制が導入されるが、それでもこんな量刑は有り得ない。

 本作品の問題点は、法廷映画ならストレートに法廷映画にすればいいのに、女性弁護士が怪奇現象に悩まされるようなるなど、オカルト映画の要素を入れ、安っぽくなってしまっていること。オカルトっぽい部分をエミリーが登場する回想場面に留め、「現在」の場面はひたすら現実を追求していれば良かったのに、思う。
 そうすれば、「悪魔は実在するのか、そうでないのか?」と観る者を深く考えさせる作品になっていただろう。本作のやり方では、「少なくとも映画の中では悪魔は実在する」という前提が成立してしまい、観る者はそれについて考える余地がない。
 これが小説 エクソシスト と異なる点。小説 エクソシスト は、読み方によっては「悪魔が実在することを認めざるを得ない」ということになる一方、正反対の受け入れ方もできるようになっているのである(映画版 エクソシスト は「少なくとも映画の中では悪魔は実在する」ということになってしまっているが)。

 もう一つの問題点は、エミリー・ローズを演じたジェニファー・カーペンターという新人女優。特に美人ではなく、あまり共感できない。どんな女優だったらよかったのか、と聞かれると返事に窮するが。もう少し顔が整っている女優を選べなかったのかね。

 観て楽しい気分になる娯楽映画ではないが、観る者の人生を根底から覆すような社会派映画でもない。
 その一方で、前にも述べたが、ホラー映画にしてはホラー要素が物足りないし、法廷映画にしてはオカルトっぽ過ぎる。
 個人的には最後まで観れた映画だが、結局どういう層をターゲットにしていたのか分からない。

 余談だが、この映画のCMが、女子フィギュアスケートの荒川静香選手の代名詞ともなった業「イナ・バウアー」を連想させる場面があり、クレームがついたとか(荒川選手は2006年2月のトリノ五輪でアジア初の女子フィギュアスケート金メダリストとなった)


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Last updated  2006.04.03 08:32:42
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