明日は明日の風が吹く。

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第二話「刀の正体」 



(あんな事になるんなら最初から図書館に来ればよかったな)

図書館に入ると、すぐに資料のある部屋へ行った。

「・・・アレ? 真由子、何してるんだ?」

「あっ、奏ちゃん・・・・・宿題やりに来たの?」

「まぁそんな所だ」

「じゃあ一緒にやろうよ。いいでしょ?」

「・・・いいけど」

部屋に居たのは片瀬真由子(かたせ まゆこ)だった。

恥ずかしい事に奏家の彼女・・・・である。

奏家は真由子と一緒に宿題をする事になった。

「アレ? 奏ちゃん・・歴史は家でやるんじゃなかったの?」

「色々あってな・・・・聞くか?」

「どうしたの?」

言いたくは無かったが、なんとなく真由子には言わないといけない・・・・そんな感じがした。

「コレ見ろ」

「・・・コレ・・・・刀、だよね?」

「銃刀法違反とかそんな事はどうでもいいんだよ」

「どうでもいいって・・・・」

奏康は真由子に刀の柄に彫られている字を見せた。

「えっと・・・妖ノ刀・・・この次、何て読むの?」

「ムササビのつるぎって読むらしいんだけどな・・・・イマイチ謎だ」

「ふーん。で、何でこんなの持ってるの?」

「結構前に言った事覚えてるか? 湊奏家の話」

真由子は首を頷く。

真由子には昔、港家の話をした事がある。その話の中に港奏家の事も入っていた。

「まぁ簡単に言うと港奏家が持ってた呪いの刀がコレって事だ」

「短縮しすぎでよく分からないけどさ・・・・私は関係ないよ!?」

「それでも彼女かお前は」

確かにこの刀には近づきたくは無い。

けど港家の人間であるからこそ、この問題を解決しなければならない。それが・・・・宿命だ。

「資料取ってくる?」

「ん、頼んだ」

しばらくすると真由子が資料を持って帰ってきた。

「刀についての本と、歴史についての本持って来たよ」

「おぅ、ありがとな」

奏康はそう言うと資料を読み始めた。

真由子は見てみぬふりをし、数学の宿題を黙々とやっている。

(湊奏家・・・・あった、349ページか)

奏康は目次を開いた後、349ページを開いた。

(湊奏家・・・1565年から1592年。と、いう事は・・・・27歳で死んだって事か)

次のページには説明が記されていた。

湊奏康の愛用していた刀は妖刀無篠琵と呼ばれ、戦国大名から恐れられていた程、刀の腕前が人並みでは無かった。
さらにとある戦国大名が残した書物によると、「湊の刀が紫色に光り、全ての兵士を殺害した」と書かれている。
実はこの無篠琵は別名「死の刀」「呪いの刀」と呼ばれており、魂を乗っ取ると噂されていた。
「湊は刀に魂を取られた」と言う噂まであるように、「死の刀」の話は本当だったと予測される。










長い文を読み飛ばした奏康は最後の言葉に目を疑った。

直、妖刀無篠琵の居場所は今だ分かっていない。

(!! じゃあコレは本物だって言うのか・・・?)

奏康は桐の箱に目を向けた。

「・・・・分かったの?」

真由子が心配そうな顔で話しかけて来た。

「ったく・・・・先祖も面倒くさい事してくれるな」

「じゃあ、この刀は本物なの?」

「正真正銘本物って言った所、か」

二人とも黙り込む。

いやな予感はしていたが、まさか本当だとは思ってもいなかったのだ。

「どうするの?」

「俺にも分からないけど・・・これから大変な事になりそうな気がする」

奏康は静かに席についた。

(気のせいか・・・・何か・・・・嫌な予感がする)

妙に嫌な感じがする。

そして夏にもかかわらず、寒気がした。

まるでこの刀に誰かがいるような・・・・そんな気がした。

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