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2009.01.31
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新型インフルエンザの国内死亡者数予測は64万人

1月29日、ジェイティービー主催の「海外旅行感染症セミナー」が東京都港区で開かれ、海外におけるさまざまな感染症とともに、気になる新型インフルエンザについても最新の動向が報告された。鳥インフルエンザ(H5N1型)は沈静化し始めているとの興味深いレポートもあり、参加者は熱心に耳を傾けた。

新型インフルエンザの現状
120名定員の会場は満席となり、感染症、とくにインフルエンザに対する関心の高さがうかがわれた。セミナーではまず、渡航医学センター・西新橋クリニックの大越裕文院長が、海外渡航者の健康トラブルや予防接種について解説。感染症全般についての予防策を紹介した。

続いて、独立行政法人労働者健康福祉機構・海外勤務健康管理センターの濱田篤郎所長代理が講演を行った。濱田氏は感染症などを専門とする医師で、2004年、現職に就いている。

濱田氏は最初、日本政府による新型インフルエンザの人的被害予測を報告。政府予測では、国内の死亡者は64万人とされている。通常のインフルエンザでの年間死亡者数は6,500人ほどなので、64万人という数字は脅威だ。また、この死亡者数は感染率が25%として試算されたもの。数値は今後、見直される予定で、おそらく50%ほどになるのではないかという。そうなると死亡者数は120万人と倍増することが予測される。

日本政府の対策は?
現状から見る限り、新型インフルエンザはインドネシアで発生する可能性が高いという。「パンデミック(pandemic、感染が流行した状態)」となった場合、日本政府はどのような対応をするのだろうか? 海外で患者が発生した場合、まず検疫の強化が図られる。水際で国内への感染を食い止めようということだが、現実的に考えて、ウイルス侵入の時期を2~4週間遅らせるのが精一杯だと予想される。

国内で患者が発生した場合は、患者の隔離など早期に封じ込めが行われる。それでも最短で3週間後には、パンデミックとなってしまうそうだ。医療対応、外出の制限など拡大防止策が実施されることになる。また、新型インフルエンザにはワクチンが有効とされるが、ワクチンはパンデミックにならなければ作ることができず、ワクチンの流通までには6カ月近い時間が必要とされる。つまり、パンデミックとなった場合は、半年間、待つしかないわけだ。



薬、ワクチンの問題とは?
新型インフルエンザが話題になる際、必ず取り上げられるのが、タミフルなどの薬やワクチンである。タミフルは新型にも効果があるのか疑問視されることも少なくない。鳥インフルエンザには今のところ有効で、政府は「効果があることを前提に」備蓄しており、タミフルが効かない場合も考慮して、吸入薬のリレンザも蓄えているという。ただし、タミフルの備蓄量(人口の22%)が少ないため、今後、増やす予定となっている。

従来のインフルエンザに関しては、新薬の開発も進んでいる。1回の吸入でタミフル5日分の効果が得られる(データ上の結果)吸入薬が開発途中であり、来年か再来年には利用可能になるのではないかと言われている。ワクチンの研究も進展しており、5、6年効果が持続するものが開発中だという。これは新型も防ぐ可能性が期待されている。ただし、完成時期はまだ明らかにはなっていない。

鳥インフルエンザの意外な? 真実
新型インフルエンザになる可能性が最も高いとされる鳥インフルエンザは、現在、鳥からヒトへH5N1ウイルスが感染した「警戒期」。2006年5月には、インドネシアで7名の患者が集団発生しており、限定的にヒトとヒトの間で感染があった疑いももたれている。鳥インフルエンザウイルスによる現在の致死率は60%と高いが、ウイルスは致死率が低下しないと拡大しない。つまり、症状が軽くて、動くことができる患者がいないと感染は広まらず、このまま致死率が60%ということはないという。ウイルスは「ヒトに慣れる」と致死率は下がるとしており、鳥インフルエンザウイルスの予測される最大致死率は2%と見られている。

濱田氏によると、2006年のインドネシアにおける鳥インフルエンザの集団感染発生時は患者数が100人を超えたものの、さまざまな対応により、2008年は40人程度まで減っているという。この傾向より、鳥インフルエンザウイルスがヒトには適合しにくいとの見方や鳥インフルエンザの流行は沈静化しつつあるという見方もある。

一番怖いのは、過度の不安と安堵感
だが現在、連日の報道などから、新型インフルエンザに対して過度の不安を抱く人は少なくないだろう。最後の「新型」インフルエンザであったホンコン風邪が流行してから40年。鳥インフルエンザほど強力ではないかもしれないが、新型インフルエンザはいつ発生しても不思議ではない。

一時の流行のように新型インフルエンザへの危機感が薄れることを、濱田氏は警戒する。SARSの時のことを考えてみてほしい。あれだけ騒がれたのにもかかわらず、当時のことはすでに忘れ去られていると言っても過言ではない。

セミナーは「海外感染症セミナー」と題されていたこともあり、参加者には商社や旅行会社などの関係者が多く、海外赴任先で新型インフルエンザが発生した際、残留、退避の判断基準も述べられていた。濱田氏は同セミナーの最後を「新型インフルエンザ対策は、『台風対策と同じ』」と締めくくる。インフルエンザの猛威が騒がれているが、全般的に感染症対策を日常的に意識し、行動することが、今後も必要不可欠なのである。
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最終更新日  2009.01.31 06:33:48


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