んでもって、アホウは語る




柘榴があざ笑う木を見上げて・・・・

mie1

 家のジャングルのような庭で、そのうちの一本である木にたわわになっている柘榴の実を見上げている。
紅い口を開け、見下ろしながら、アタシをあざ笑うかのように実っている。
見ているだけで、口にしたことはめったにないのだ――――。

 いつものように愛車、「赤い自転車」で街にでる。
いつも坂を下り、左の線路沿いを行き、東に進路をとるのだが今日は何故か踏み切りを渡り坂道を下る道をなんとなく行ってみた。
 どんよりした雲の朝、向こうから鼠色をした制服の女性とすれ違う。
彼女もまた自転車だった。どこの会社かな??
見慣れぬ顔に視線をチラリと向けただけなのにそれなのに、あれま・・・恋に陥ったような胸騒ぎがした・・・・・。
すらりとした背骨(笑)、切れ長ながら憂いのあるやさしい眼。しなやかな手首。きゃしゃな首。髪の毛は穂先を軽く巻いている。
アタシのタイプ・・・・・?
いいえ、彼女「も!」またタイプ・・・・。

 さっき帰った美○にそのことを話す。
アホではない、忠実な恋なのだ(笑)。
「はいはい、お久しぶりの仕事で、いい出会いがまた!!ありましたね。そんなこといいからはやくクマ君、お風呂に入れてね~」
「でもな・・・あの娘、きっと気があるというか、アタシのことまんざらでもなかったはずだよ・・・・・・。どこかで、会った人???みたいにアタシのこと、一生懸命!見つめてたんだよ・・う~ん、つらいけどまたまた脈はあるかもしんないなぁ~~」
「パパ・・・・わかんないの??・・・パパがいつもジロジロ見るからでしょ??それだけだよ」
 何度も繰り返すが、美○は、どんなファッション雑誌やトレンディドラマを観ずとも眺めずとも、すべてを凌駕してしまい、泡のもくずとしてしまうような美貌とやさしい性根の持ち主だ。しかし、決定的に奥手だ。
 アタシと連れ添っているのは、たんにアタシが兵糧攻めにしたからにほかならぬ(笑)

 ○○空港の夜の展望デッキ――――。
滑走路の灯は消えても、ちゃんと根回しして二人だけの展望デッキが実存していた。
ありったけの「想い」と「存在証明」をアタシはピエロのごとく演じた。
すべてはうまくいくはずだ・・・・・。
アタシは自信家だ(笑)
しかし、彼女の意思は石のように硬い。
理由を問えば、「生まれた町から離れる自信がない」というのだ。
また、重ねるように美辞礼賛を並べ立てる。
寒空のした、ようやく1回首を縦に振り、冷たい手で握手してきた。
アタシは星空に舞い上がり、すべてのこれまでの恋を完結させ、成就した。
オチなどは、ない(笑)。
後に美○に問えば、「あまりに寒かったから」
耐えられなかったそうである(大爆)

アタシはローマの仇はナポリでとる(笑)
いや、そうではない。偶然の産物でしかない規約を破るほど地に落ちた男でないかぎりにおいて、アタシはいつもいつも気になる・・・・。
銀行の窓口で、Pの会合で、接待で、その酒場で、見知らぬ街角で、子供を遊ばす公園で、ふらりと寄った本屋で・・・・・・旅先で。
アタシはいつも真剣に恋に陥る。
大抵はアタシは通行人でしかないが・・・。
アタシたちは、やがては星屑に「戻る」。
せめて由緒正しきニンゲンでありたい(笑)。
人生・・・・恋と美味いモノっしょ?!

いったい、今夜の日記は誰に捧げたらよいものか、書きながら真剣に悩んでいる(笑)
明日もきっと、妖しく悩ましげに柘榴はあざ笑っているだろう。
若かりし頃はよじ登ってでも「食べて」いた。
チェッ・・・・・・・・(笑)。
そのうち、落ちてこないかしら・・・・・。




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