お兄ちゃんに、一緒に寝ようって言っても、ぜったいに寝てくれない。なんでなんだろ?
「お兄ちゃん、今日は寒いから、一緒のおふとんで寝よvvvv」
「・・・・・・・今日は、やめような。ロザミィ」
「え―――――」
 ぜったい一緒に寝たほうがあったかいのに。お兄ちゃんはわたしが嫌いなのかな・・・・・・・・・?
 このあいだお兄ちゃんのおふとんにもぐりこんでシャワールームから出てくるの待ってたら、わたしを見つけたお兄ちゃんが、すっごく怒っちゃった。わたしはお兄ちゃんと寝たいだけなのに。


 ロザミィは、よく俺と一緒に寝たがる。妹として、当然の権利だと思っているのだろう。もちろんそんなことできるはずはない。
 ロザミィだって俺より(おそらく)年上なんだし、だいたいファが怖い。ロザミィと一緒になんて寝たら、いったいどうなることか。俺の命が危うくなってしまう。なんてったって、ファは最強だから。
「・・カミーユ、どうしたの?」
「・・・・・ああ、なんでもないんだ・・・・・」
 俺の考えていることがもしばれたら、完璧ダストシュートから宇宙行き決定だろう。
 ある意味コロニーレーザーより怖いんじゃないかと、最近思うようになった。





「お兄ちゃん、頭痛い・・・・・・」
 ロザミィが頭痛を訴えた。またいつもの頭痛かと思ったが、今日は何かいつもと違う。顔が真っ赤である。
 カミーユはロザミィの額に手を当てた。額は、かなり熱を持っていた。
「熱、だいぶあるみたいだ」
 ロザミィはかなり苦しそうである。
「ハサン先生のところへ行きましょ」
 ファが言った。しかしロザミィは、その場にうずくまり、動こうとしない。
「ヤダ・・・お医者さん嫌い・・・・・・」
 根っからの医者嫌いなのである。
「ロザミィ・・・・・・」
 カミーユが、ロザミィの腕をつかんで立ち上がらせた。ロザミィは眼に涙をためて、カミーユに言った。
「やだぁ・・・・・お願いだから、連れてかないで・・・・・・」
「だめよロザミィ。ハサン先生のところへ行かないと、治らないわよ」
「大丈夫・・・治るよ」
 ロザミィは自分にあてがわれた部屋のほうによろよろと歩き出した。カミーユもあわてて後を追い、ロザミィの腰を支え、一緒に部屋に歩き始めた。
「ちょっと、先生のところ、行かなくていいの?」
 ファがカミーユの後姿に怒鳴った。
「大丈夫だろ。ただの風邪みたいだ」
「もう、宇宙にはどんな病気があるか分からないのよ!」
 ファは叫んだが、もうカミーユは聞いていなかった。

「ロザミィ、大丈夫か?」
 ベッドにロザミィを寝かせ、カミーユは訊いた。ロザミィは答えなかった。かわりにすうすうと小さな寝息を立てていた。
「・・・もう寝たのか・・・・・・」
 強化人間として、ティターンズから派遣されてきた、ロザミィ・・・・・ロザミア・バダム。彼女は一度カミーユのことを忘れ、ティターンズの戦士として、バウンド・ドッグを駆りカミーユを殺そうとしたこともある。その時はカミーユの必死の説得でロザミアは正気を取り戻し、再びロザミィとしてアーガマに還ってきたのである。もちろん、またいつロザミィが暴走するか分からない。この熱もその予兆かもしれないのだ。こんどロザミィが敵対したら、カミーユは一思いに殺すつもりだった。自分に引き金が引けるかは、わからなかったが・・・・・・・・・
 カミーユは、ロザミィの寝顔を見た。顔がほてって苦しそうだ。
 医務室へ行って、氷のうをもらってきた。
 その途中、クワトロ大尉に出会った。クワトロは、カミーユの持っている氷のうを見て、こう言った。
「ロザミィにか?」
 なぜわかったのだろう。カミーユが
「はい、そうです」
と言うと、クワトロは難しい顔をして黙ってしまった。カミーユが行こうとすると、その後姿に向かってクワトロは、一言、言った。
「あまり関与するな。撃てなくなるぞ」
 何が言いたいのか、カミーユには分かった。しかし、そのような言い方は嫌いだった。
 カミーユは、黙ってロザミィの部屋へ急いだ。

 ――――ロザミィは、眼が覚めた。
 気分は、かなりよかった。自分の額に手を当てると、熱はすっかり引いていた。しかし、少し背筋がぞくりとした。寒かった。
「・・・・・?」
 なにかが、自分の左手に当たった。布団をはがすと、そこにはカミーユの頭があった。
 熱があるので、氷のうだけでは足りないような気がして、冷房をガンガンにきかせていたのである。それで寒くなって、布団に顔を突っ込んで、そのまま寝てしまったというわけなのだ。
「お兄ちゃん」
 ロザミィはカミーユの頭を揺さぶった。
 ううぅぅん・・・・・とカミーユはうめいて、眼を覚ました。目の前に、ロザミィのうれしそうな顔があった。
「お兄ちゃん、わたしと一緒に寝てくれたvvvv」
 ロザミィは、本当にうれしそうである。
 ――――純粋だな・・・・・・
 カミーユは、微笑んだ。そして、誓った。こんどまたロザミアに戻っても、撃たない。また、一緒に暮らす、と。
 ガァァァァァ・・・・・・・
 部屋のドアが開いて、世にも恐ろしい表情をしたファが入ってきた。カミーユに、悪寒が走った。
「カミーユ・・・・・・あなたまさか一晩中ここに居たんじゃないでしょうね・・・・・・・?」
「え・・・・と」
 カミーユが言うが早く、ファに襟元をつかまれ、部屋から引きずり出されてしまった。
 ロザミィは、そんなカミーユをぽかんと見つめていた。
 部屋から引きずり出されたカミーユは、そのままどこかへ引きずられていってしまった。そしてこの後は、世にも恐ろしいファの修正を受けることになるのである。


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