アイヌの世界観

アイヌの世界観

 アイヌは世界の形をボールのように丸いとしています。
世界はこの上なく丸い大洋で、その真ん中に多数の島があり、
それぞれはそれ自体の特殊な階位の神々によって支配されています。
モシリ (大地)という言葉がありますが、これは「浮いている大地」という意味です。
レプンモシリ とは、海の中の土地、つまり島です。(レプとは沖。ウンとは在る。)
サモロ・モシリ とは、われわれの隣の島、つまり日本の本州のことです。(サムとはそば。オロ、オルとは内、そこにある。)
 全体として世界が丸いのは何故かとアイヌに問えば、
「太陽は東から昇り、西に沈み、翌朝再び東から昇るから」と言います。
世界は大きな魚の背中に乗っていると想像しています。
モシリ・イッケウェ・チェプ すなわち「世界の背骨の魚」です。(イッケウェとは背筋、腰。チェブとは魚。)



潮の干満の神話

 天帝が世界を作る前、沼地の他は何も見えなませんでした。
しかし、その沼地には非常に大きなマスが住んでいました。
その体は沼地の一方の端から他方の端まで達していたからです。
さて、造物主が大地を作った時、彼はその動物が大地の土台になるようにしました。
世界の下には、生きたマスが横たわっていて、その口を通して海水を取り入れたり、出したりしました。
マスが水を吸い込むと引き潮が起こり、マスが水を吐き出すと潮が満ちました。



高波と地震の神話

 世界をその背中に乗せていたマスが高波の原因です。
時々マスが莫大な量の水を取り入れ、そこから異常な努力をして一吹きの力強い息で口から水を吐き出します。
これが高波を起こすのです。
 マスが自分の体を揺り動かす時地震が起きます。
静かに動く時は揺れは小さいです。
しかし、立腹し猛り狂って動く時は揺れが大きいのです。
非常に危険な魚ゆえ、創造主は二人の神を送り、マスの両側にそれぞれ立たせ魚を静かにさせました。
この神々はいつも片手を魚の上において押さえ、どんな激しい運動も起こさないようにしました。
神々が食べる時も、飲む時も片手を間違いなく魚の上に置かねばならないのです。
決して手を外してはならないのです。



太陽と月の伝説

 太陽と月は夫婦です。
それは神聖なもので、天と地を支配するのが役目です。
男は日中だけ、女は夜だけ、その仕事をするように定められています。
時々二人は天を一緒に旅行したりします。
神聖な太陽は最も明るく、一番いい服を着ています。
太陽が明るく輝くのはそのためです。
その服には白い刺繍がしてあり、妻よりも大きな体つきをしています。
月は粟でできた丸い団子のようです。
黒と白の衣装を重ねて着ています。
注意して月を見ると分かります。
時々月を見ることができない事がありますが、それは彼女が夫を訪ねに行ったからです。
この伝説とは逆に、太陽の中にいるのが女神で、月の中にいるのが男神であるというのもあります。



月のなかの人

 若者が水をくみに行くように命じられたが、彼は怠けていて炉端で刀のある道具で物を切り刻みながら、坐っていた。
彼は外に出る時、戸口のイナウ(木幣、人間の言葉を神のもとへ届ける使者の役目をする)を叩いて言った。
「ああっ、お前は戸口のイナウだから水を汲む必要がない」
それから、柄杓とバケツを持って川へ下りて行った。
彼が川に来て、小さな魚が流れを上っていくのを見て、
「おお、すごく骨の多い生き物よ。お前は魚だから、水を汲む必要がない」と言った。
さらに下っていくと秋鮭が見えました。
彼は「初めまして、鮭君」と言った。
すぐに彼は鮭に捕まえられ、全ての人々の教訓として、月の中に置かれました。
水を汲むのを嫌った彼に、立腹した神々はこのような仕打ちをしたのです。


月のなかの人*解説

水は大切なものであり、生活に欠かせない。
ましてやアイヌでは年上を大切に扱い、尊敬するという規範があります。
父母に逆らい、火の暖かい炉端に居座るのも不道徳ということなのです。
また、出入口のイナウに文句を言う下りがありますが、アイヌにとって戸口の神様は大切です。
特に昔の エカシ (祖父)にとっては、 モシ オイナフチ (火の神)に出かける前に必ず三拝五拝しながら、
「今から働きに行きます。働きに行ったからには何事もなく無事に働かせてください」とお願いします。
そして出入口のイナウにも
アバチャウンカムイ (出入口の神様)よ、私は今から働きに出ます。
 何のこともなく私が無事に帰ってこられるように、私を見守ってください」
と心から願い、一日そのことをしっかり忘れずに働くのです。
出入口の神の別称に、 アパラ ケク ル、 アパラ ケマッ (戸を広げる男神、戸を広げる女神)があります。


アイヌ 祈りの儀式 神への祈り

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