乙女座・天秤座・蠍座

乙女座◇Virgo
●春の星座
●21時に正中する時期 5月中旬
●全天第2位の巨大な星座

 農業の女神デーメーテールと大神ゼウスの間には、一人娘ペルセフォーネーがいました。
ある日彼女が仲良しの少女達と花を摘んでいると、少し離れた所に、一本の大変美しい花が咲いているのが見えました。
周りを見回すと、友人達は花を摘むのに一生懸命で誰もその美しい花に気付いていない様子です。
そっと近づいてみると大変良い香りがしていました。
 ペルセフォーネーがその花を摘もうとした瞬間です。
大地がぱっくりと口を開け、中から真っ黒な戦車が飛び出してきたかと思うと
戦車に乗った青白い顔の男があっと言う間に彼女をさらって、再び大地の中へと姿を消してしまいました。
 ペルセフォーネの悲鳴を聞いて友人達が顔を上げた時には大地は既に元に戻っており、
ペルセフォーネの姿だけが何処にも見当たりませんでした。
 娘が居なくなった事を知った農業の女神は世界中を探して回りました。
人に合う度に、道端の石や草にまで娘の行方を尋ねましたが誰も知りません。
ある時物知りのヘカテが、
「太陽の神なら地上の事は全て見ているんじゃないかい」
と教えてくれました。
事実、太陽の神ヘリオスは知っていました。
「ペルセフォーネは、冥界の王ハデスが自分の妻にする為にさらって行ったよ」
と、気の毒そうに教えてくれたのです。
デーメーテールの悲しみは怒りに変わりました。
ハデスにペルセフォーネをさらって行く事を許したのは、
ペルセフォーネの父親であり、ハデスの兄であるゼウスに違いないと考えたからです。
「私から娘を奪う事に加担したゼウスと一緒には居たくない!」
 デーメーテールは、神々の国を去ると地上に降り、神殿にこもって誰とも会わず口をきかなくなってしまいました。
農業の女神デーメーテールが悲しみに心を閉ざしてしまった為、世界中の草花は枯れ、木々は実をつけなくなってしまいました。
「デーメーテールの悲しみを少しでも和らげないと、あらゆるものが死んでしまう」
 恐れたゼウスは、弟にペルセフォーネを母親に返すよう説得しました。
ハデスは渋々承諾したものの、策略を巡らし、地上へ帰るペルセフォーネに柘榴の実を与えました。
冥界の食物を食べた者は冥界から出られないのが掟です。
そんな事とは知らないペルセフォーネは柘榴の実を四粒食べてしまいました。
「お母様!」
 帰ってきた娘を見て、農業の女神の心は解け新しい緑の芽が大地に顔を出し始めました。
しかし、次の瞬間女神の心は再び凍りついたのです。
ペルセフォーネが死者の国の食べ物を口にした事を知ったからです。
 ゼウスがハデスとデーメーテールの仲介に入りました。
ペルセフォーネは食べた柘榴の数、四ヶ月間を冥界で暮らす事になったのです。
嘆き悲しむデーメーテールを、ペルセフォーネが優しく慰めました。
「お母様、悲しまないで。ハデスは私にとても優しくしてくれます。それに会えないのは四ヶ月間だけ。
 四ヶ月すれば、またお母様と一緒に暮らせるのですから」
 娘とはなれて暮らす四ヶ月の間、農業の女神は悲しみに沈み植物は枯れて、地上には冬が訪れるようになりました。
しかし、その時期が過ぎペルセフォーネが地上に帰ってくると、デーメーテールは喜び、
草木が芽を出し地上は春を迎えるようになったのです。
 乙女座はこの農業の女神デーメーテールの姿だと言われています。



天秤座◇Libra
●夏の星座
●21時に正中する時期 6月下旬
●蠍座の頭の先「く」の字を裏返した形

 ローマ神話によるとこれは正義の女神アストレイアの持つ天秤なのだそうです。
彼女は死者の魂をこの天秤で測り、悪しき者は地獄に送られたといいます。
 さて人類には五つの時代がありました。
最初の黄金時代、人間は大地から生まれました。
神々と人間は大地の上で一緒に暮らし、神々が喧嘩をした時には人間が仲裁をし、幼い神を人間が教えたりもしていました。
世界の隅々までが平和に満ち、アストレイアの天秤はいつも正義に傾きっぱなしでした。
 やがて、黄金時代の人々が死に絶えると、神は人間を作りました。
これが、銀の時代です。
この時代の人々は争いが好きで、強いものが弱いものを虐げるようになりました。
神々は人間に愛想を尽かして、続々にオリンポスへと去っていきました。
ただ、彼らは殺人だけは行わなかったので、
アストレイアだけは人間を見捨てず地上にとどまって、人々を正義に導こうと努力しました。
やがて、彼らはゼウスに滅ぼされ銀の時代は終わりを告げました。
 次の人々は「とねりこ」の気から生れ落ちました。
銅の時代です。
人々は戦争を始め、親子兄弟さえも殺しあうようになりました。
そして彼らは自ら死に絶えてしまいました。
 続く英雄時代、相変わらず悪がはびこっていたものの、
神々を父とし人間を母とした正義の英雄達が現れましたから、アストレイアも少し気を取り直しました。
 しかし、鉄の時代になると人々は堕落し、残忍で嘘吐きで好戦的で、
流石のアストレイアもとうとう、人間を見放しついに天高く去って星座になってしまったと言います。



蠍座◇Scorpius
●夏の代表的星座
●21時に正中する時期 7月中旬
●星々が大きなS字形に並んだ特徴ある星座

 オリオンは、海の神ポセイドンの息子です。
中々人気が有った伝説上の人物らしく、何種類かの物語が伝わっています。
 オリオンは巨人のように背が高く、美男子でとても腕の良い狩人でした。
ある時仲間達と散々お酒を飲んで酔っ払い、皆にほめそやされて上機嫌になったオリオンはつい、
「天下にこの俺ほど腕の良い猟師は居ないさ。いくら逃げ足の速い鹿だって俺様にかかっちゃあ亀みたいなもんだ。
 熊やライオンは怖くないかって?とんでもない。俺様にかかっちゃあ赤ん坊みたいなもんさ!」
と、自慢していました。
 それを聞いた神々は、思い上がりの激しいオリオンに怒りました。
特に大地の女神は、
「毎日獲物が取れるのは、私が与えてやっていたからだ。それなのに何という思い上がりだ!」
と、かんかんになって怒り一匹の蠍を呼んで、
「オリオンを刺し殺しておしまい!」
と命令しました。
 蠍は密かにオリオンに忍び寄ると、その猛毒の針を突き刺したのです。
流石のオリオンも蠍の毒には敵いません。
ばったり倒れると息を引き取ってしまいました。
 この手柄で蠍は星座にして空に上げられました。
オリオンも星座になりましたが、今でも蠍座が東の空に上ってくるとオリオン座は西の地平線へ隠れてしまいます。
蠍座が空から姿を消さないとオリオン座が上ってこないのはこの様な話が原因と言われています。


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