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ゾロアスター教
ゾロアスター教
ゾロアスター教とは、一般にこの宗教の開祖である
古代イランの聖人
ザラスシュトラ
(ギリシャ名
ゾロアスター
)によって広められた宗教とされています。
鳥葬や近親婚といった特異や風習でも有名ですし、拝火教とも言われ、火を神聖視します。
ゾロアスターとよく知られていますが、正しくはザラスシュトラ
Zarathushtra
です。
Zarathushtra
の
Zarath
とは「黄色の」、
ushtrs
とは「輝く」の意味です。
つまり「
黄金の光
」または「
黄金の星
」ということです。
ゾロアスター教の起源として、アーリア人がいます。
中央アジアから紀元前千年を下限としてアーリア人が、パンジャーブ地方に侵入したのが、アーリア人系インド人、
そしてイラン高原へ移住したのがイラン人と現在理解されています。
そのインド人の言語サンスクリット語(ヴェーダ語)と、古代イラン人の言語アヴェスタ語、
古代ペルシャ語、古代イラン語が音韻、形態が似ていて、さらに神々の名称、神話の構造がとてもよく似ています。
西洋においては、みのゾロアスター教の
善悪二元論
が、
ユダヤ教、キリスト教の神学と表裏関係の悪魔学の伝統として深く影響しています。
また、ゾロアスター教の祭官である
マギ Magi
は、
マジック Magic
(魔術)の語源であり、
キリストの誕生の際に訪れた東方の三博士は、マギといわれています。
ゾロアスター教の聖典は「
アヴェスタ
」と言われ、隠秘学の原点とも伝えられています。
21巻あるといわれていますが、現存するのはその四分の一に相当するだけです。
鳥葬
は、比較的後代になってからのもので、「
沈黙の塔(ダクマ)
で行われます。
死体は人家や草木、さらに水や火より遠ざけられた山の頂上に、大地と直接接触することを避けて、
石で作られた床の上に置かなくてはならないとされています。
その目的のために建造されたものがダクマ(沈黙の塔)なのです。
そして塔に入る時は、頭から入ります。
これは生まれたときに裸で生まれ、頭から出てくる故の生と死の表裏です。
猛禽は、死体を食うように神が創られたものと考え、この鳥に自己の死体を与えるのは、最後の布施と考えられています。
ゾロアスター教の
善悪二元論
は、
デカルト的な物心二元論、ギリシャ哲学の伝統的思考法、インドのサーンキャ哲学とも異なります。
この二元論は、善と悪の対立抗争をもってその特徴としています。
存在の全てが善と悪のカテゴリーに総括され、世界は善と悪の対立抗争の戦場と考えられています。
その二元論の特徴としてあげられる対立があります。
まず、アフラとダエーワの対立があります。
この
アフラ Ahura
と
ダエーワ Daéva
は、各々インドの
アスラ Asura
(阿修羅)と
デーヴァ Deva
(天)に相当します。
本来は、共に神的存在の呼称でした。
後世のインドでは、
デーヴァ Deva
(天)は神々の総称となり、
アスラ Asura
(阿修羅)が悪魔的存在になったのに反して、
イランでは
アフラ Ahura
が神的存在を意味し、
ダエーワ Daéva
は悪魔の総称となっています。
次にゾロアスターは、
アシャ Asha
と
ドゥルジ Druj
の対立があるとしたのです。
アシャ Asha
は、ヴェーダ語の
リタ rta
で、「天則」とも訳すように宇宙の理法を意味します。
この
アシャ Asha
をもっぱら論理的概念(正義)を示しているとし、教義の中核にしたのです。
これに対し
ドゥルジ Druj
は、語源的に「(生を)害する」の意味ですが、特に「虚偽」の意味で用いられています。
ゾロアスター教の特徴の更なるものは、
終末論
にあります。
世界を神々と悪魔たちの闘争の場として理解すると共に、
ゾロアスターは「最終的な善の勝利」を確信するというのが、
終末論
なのです。
この
終末論
は、アシャの応報概念を基礎としている審判思想です。
この審判は、
個別裁判
と
総審判
の二つあります。
個別裁判
は、チンワトの橋が重要な役割を担っています。
人は死後、その霊魂により、この橋に赴き天国か地獄の岐路に立たされます。
つまり、義なる者はその橋は広く容易に渡りやすく天国へ向いますが、
不義なる者は橋が狭くなり渡るものを地獄へ落すとされています。
義者とは、生前に善を選択し悪と戦ってきた者であり、
具体的にはゾロアスター教で人間の論理道徳の基本とされる三善の行為、
善思(フマタ)
、
善語(フークタ)
、
善行(フワルシュタ)
を実行した者のことです。
ゾロアスター教は、人間の
自由意志
による選択を非常に重視するのです。
天国へ義者が赴くも、地獄に不義者が堕ちるのも、その原因は全く自己の自由意志に基づく選択による結果であり、
人は自らの選択による応報をどこまでも受けねばならないのです。
総審判
とは、この世の終末に行われるものであり、救世主に比されるサオシュヤントが降臨し、
地球は灼熱の熔鉱に包まれ全てが浄化され、世の建て直しが行われるとされます。
彗星が天より降り、死者も甦るとされるその情景はもキリスト教の黙示録と驚くほど似ています。
この
総審判
の行われる世界の終末の時期は予め決定されています。
この世界は三千年ずつ四期によって歴史が構成されているという説があります。
これを
世界の四期説
といいます。
最初の三千年間は霊的創造メーノーグの期間で、この時期は全ての創造物が超感覚的状態にあります。
次の三千年間は物質的創造ゲーティーグの時代です。
この時期に、超感覚的な状態にあった被造物は、可視的状態へ移行します。
また、この時期の初めにアンラ・マンユ(アフレマン)は善の世界に侵入しようと試み、失敗し、
地上は天国となんら変わりのない理想の状態のままにあります。
第三の三千年間はアンラ・マンユ(アフレマン)の侵入とともに始まります。
ここに、この世界の善神と悪魔の両軍の戦場となります。
最後の三千年間は、ゾロアスターの出現から「最後の審判」までの時期です。
この時期は、善・悪混合の分解をもって特徴づけられ、義なる者は天国へ、不義なる者は地獄へ堕ちるのです。
そして「最後の審判」である総審判において、死者は復活し、世界は熔鉱にて浄化され、世界の更新がなされるのです。
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