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大天使と天使
大天使と天使
アムシャ・スプンタ
「
不滅の聖性
」と訳されるアムシャ・スプンタは、ゾロアスター教の
大天使
です。
このアムシャ・スプンタを六とみるか七とみるかは、スプンタ・マンユをアフラ・マズダーと同一視した場合、
他の大天使で六大天使と考えるのです。
それら、七大天使は、
(1)
スプンタ・マンユ
(聖なる霊)
(2)
ウォフ・マナフ
(善思)
(3)
アシャ
(天則もしくは正義)
(4)
アールマティ
(敬虔)
(5)
クシャスラ
(王国)
(6)
ハルワタート
(完全)
(7)
アムルタート
(不滅)
です。
彼らは不滅にして永遠なる男神と女神です。
普通アールマティ、ハルワタート、アムルタートを女性、アシャ、ウォフ・マナフ、クシャスラは男性であるとします。
また、アムシャ・スプンタはアフラ・マズダーにより創造され、
身・口・意の三(善)業を同じくし、互いの魂を見守ると言われています。
彼らの各々が智慧王アフラ・マズダーの機能を分担して表示されたものとの説もあります。
それは密教の三密に関係し、ゾロアスター教の真言(マンスラ)を重視することにも通じます。
スプンタ・マンユ
(聖なる霊)
最高神アフラ・マズターの創造行為に重要な関係を持ち、その創造作用を代表しています。
スプンタとは本来、生命的な活力を意味したと考えられ、
マンユはその語源であるマンは、「心にうかべる」の意味であるが、
単に抽象的思惟活動を意味するのではなく、具体的力動的なる存在であると考えられます。
すなわち、スプンタ・マンユとは、神的エネルギーを概念化したものと考えるのです。
また一説には、アフラ・マズダーとその息子といわれるアータル(火)とを含め三位一体であると考えられる場合もあります。
ゾロアスターはスプンタ・マンユを独立の神格とした。
スプンタ・マンユはアンラ・マンユと共に宇宙開闢における始元の二霊で、
この両者は双生児であるが、身、語、意のいずれも相反しています。
そして、この両者が善と悪とを自由意志に基づき選取したことが、世界の二元性の根拠であるとしたのです。
それゆえ、この世界生と死が存在し、人々はその自由意志に基づいて善あるいは悪を選択するのですが、
終末には善の勝利と悪の敗北の運命が定められているとします。
なお、両マンユは元来両義性をを有し、ワユ(風)との関係が密接です。
その善なる側面をスプンタ・マンユが代表すると考えられています。
ウォフ・マナフ
(善思)
「善思」と訳されるウォフ・マナフは大別にして二つの顕著な機能を有します。
一つは神の教えを人間に降伝することです。
他方はその審判における役割です。
聖典アヴェスタにおいて最高神アフラ・マズダーの次に地位が高いです。
ゾロアスター教の伝説によると人類の最初の夫婦の子であるスヤーマグに神の言葉を伝えたのはウォフ・マナフとされるし、
ゾロアスターが30歳の年、最初に啓示を受けたのも、ウォフ・マナフからでした。
審判においてウォフ・マナフが重要な役割を担うのは、
彼が応報の基準となる為された行為の善悪を正確に記録しているからだと言われています。
ウォフ・マナフは日に三度、人の為した事を記録するといいます。
また、動物界を統治すると言われています。
アシャ
(天則もしくは正義)
「正義(または天則)」と訳されるアシャは、ゾロアスター自身の思想の中核に位置する概念です。
アヴェスタの重要な部分ガーサーには、この語が162回も出てくるのです。
ですが、アシャなる語のゾロアスター自身の教説においては、非常に抽象的な性格が濃厚で、理解を極度に難しくしています。
この総合原理の具体的な内容は、規則正しい天体の運行、季節の推移といった自然現象に深く関わっています。
ゾロアスターは、かかる法則の概念を深化させるとともに、重要な変更も加えました。
それは、歴史の摂理としてのアシャです。
それ以前は、自然の秩序は円滑的であり、永遠に反復するというものであったが、
ゾロアスターは時間は初めと終わりがあることを主張し、歴史の摂理としてのアシャを確立したのです。
その摂理の実質的内容は、善悪による応報で、神による審判の思想になるのです。
「正義」とは、善なる者を厚く賞し、悪なる者を厳しく罰することなのです。
そしてこのように応報の理念を悟り、善を選び、悪と戦う者が「善なる者」(アシャワン)と称されるのです。
アシャが最も喜ぶ人間の徳目は真実(誠実)なる事であり、彼は最も虚偽を嫌い、ドゥルジを自らの敵対者とします。
ドゥルジが不浄の概念との関係を密接にするのと平行して、アシャは清浄を代表するものとされ、
身体を清潔に保つ事が教徒の重要な義務の一つとされます。
ゾロアスター教では、聖火をアシャの具象形態と見、天上と地上の火を支配するのはアシャであるとします。
正義が最終的に、実現される歴史の総審判にも、火が決定的な役割を演じます。
ゾロアスターは火を大切に扱う様、人々に教示することを注文しています。
そして、火を消すことは大罪に値し、竜退治で有名なゾロアスター教の英雄クルサースパでさえ、
この行為により天国へは入れなかったのです。
アールマティ
(敬虔)
アールマティは、ゾロアスター教の代表的女神です。
アールマティはその起源は地母神的性格が濃厚でした。
しかし、この地母神的性格はヤザタに属するアナーヒターに移り、
アールマティは「貞節」といった、主に女性特有の論理的性格を担うようになりました。
ゾロアスターは、このアールマティを、アフラ・マズダーの教えの
敬虔
、または
献身
を示すものとして用いてます。
ただ、地母神的性格を全く失ったわけではなく、後世では大地(地表界)を支配するものとされています。
アールマティは、信者が土地を耕作して穀物を豊かにすることを喜ぶが、
死体を埋葬することは彼女に対して大罪であるとされるのです。
また、裸足で大地を歩きまわることも、彼女への罪とされています。
アールマティは、アフラ・マズダーの娘であり、アシ(貞節)の母とされ、ラーター(寛大)とも密接な関係があります。
クシャスラ
(王国)
アフラ・マズダーの統治力を意味したと考えられるクシャスラは、
後世の神学では、七世界の一つである鉱物界を支配する者とされています。
それはアフラ・マズダーの王国が完成されるのが、
善と悪を峻別する審判における熔鉱の浄化作用によるものであったからです。
鉱物界に関係づけられたクシャスラは、地下に埋蔵された富の秘密を熟知する者とされます。
また、クシャスラはアフラ・マズダーの最初の創造物とする説は、
天空を鉱物でてきたものとする古代イランの神話的世界観を継承したものです。
ハルワタート
(完全)
とアムルタート
(不滅)
ハルワタートとアムルタートの二神は、相互に密接なる関係を持っています。
ガーサーにおいても並記される場合が多く、双者として説かれています。
本来はゾロアスター教においてこの二神は、アフラ・マズダーの王国に直結する理念でした。
それが教徒の楽園願望によって天国の特徴を示すものと理解されるとき、彼らの現実の生活を反映する結果となるのです。
この両者は、農耕放牧民の望んで止まない、天国の豊かな水と植物を想起させるものとなっていきます。
かくして、ハルワタートは水、アムルタートは植物の守護神とされました。
渇きと飢えを征服するのです。
アムルタートは人々に食物を恵みます。
ハルワタートは季節や年月を司る者とされています。
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