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農的暮らしのすすめ

    農的暮らしのすすめ


 日本の昔話を聞いていてふと疑問がわきました。それは、貧しい暮らしをしていた村人が、あるきっかけで大金持ちになり、幸せに暮らした、という物語に対してです。それは、厳しい生活を強いられた昔の人の夢物語だとは思うのですが。それで、首尾よく大金持ちになったとして、幸福になれるのでしょうか。

 ロックフェラーという世界で最も金持ちであった人に、「あなたは、欲しいものは何でも手に入れることができて、さぞ幸福でしょうね」と尋ねたところ、「自分には悩みがたくさんあって、少しも心が休まることはない」と言ったそうです。

 個人もそうですが、大金が舞い込んできた町や村も同じことが言えるのではないでしょうか。
 過疎の海辺の村に原子力発電所を誘致するという話があちこちにありますが、そのことについて考えてみます。その際、放射能などの人体への影響と施設の安全性についての問題は、一応置きます。

 貧しい村が、施設ができることで国やその施設からの税金収入により、相当大きなお金がその村に舞い込んできます。ですから、誘致を推進する側は『そのことが、地域の経済の活性化につながる』と言うのでしょう。原発ができることによって、確かにその自治体に大きなお金が入ってくるでしょう。それによって、道路やその他の施設ができて良くなるでしょう。しばらくの間、建設工事や公共工事が続きます。そのため、それに携わる地元の人々、また関連する地元の業者が潤うことになります。 

 村民の中には、これまで携わっていた仕事を離れて、収入や労働時間などの条件いい仕事に就くことになる、といったケースが出てくるでしょう。
しかし、そのうちに仕事がなくなる時が来ます。雇うところがなくなります。ローンを抱えながら、物質的に豊かになった人々の生活水準を落とすわけにはいきません。となると、また何らかの仕事を他所から持ってこなければなりません。そういうふうに、ずっと継続的に仕事を持ってこなければなりません。

 このことは、今の国についても言えそうです。江戸時代は人口の9割が農民だったそうです。現在は産業構造が変わり、都市に人口が集中しています。もう後戻りができないようになっています。
この不況の中で、あらゆる政治家が景気回復を叫んでいますが、ほとんどの必需品は家庭に揃っているし、モノがなくて困ることがない中、新たに需要を生み出す必要が感じられないのです。それでも何かを探さなければならない、それが何かわからない、景気回復の要素が見えないということでしょう。それを政治や経済政策で解決できるとは思えません。

 国会議員の選挙で、ある有力議員の方が落選したことがあります。その時、「宮崎県人は馬鹿じゃ、自民党の○○さんを落としてしまって」という声が聞かれたことがあります。その人が当選すると、思い通り国の予算獲得ができるというのです。しかし、前述のように、大きな予算を獲得したがため、将来そのことによりかえって困ったことが起こるような気がします。

 話は変わりますが、トルストイの『イワンの馬鹿』では、イワンの国に住む人たちは、悪魔がくれた金貨には目もくれず、黙々と農作業を続けています。本当の豊かさとか幸福を追求したトルストイの基本的な考え方だと思います。ぼくも昔ばなしで村人が幸福に暮らせるとすれば、お金に頼ることなく、天から迎えに来るまで、田畑を耕し続けること以外には考えられません。

 宝くじで一等を当てて大金持ちになった人を追跡調査したところ、ほとんどが生活が乱れて一家が離散するという結果になっているといいます。ところが、1つだけうまくいっている例があるそうです。その人は農夫で、そのお金には頓着せずに、これまでの農作業をたんたんと続けていたそうです。

 何がなくても食べ物だけは確保することがこれからは大切な気がします。国においても自国で食糧を自給できることこそ第一に考えなければなりません。お金は食べられませんから。少しの土地があれば、食べ物はたくさんできます。食べ物さえあれば、何が起こっても心配いりません。

 そういうことを考えたら、景気を良くするため、資金を導入することよりも、国民に少しづつ農的な生活を勧め、それが容易にできるよう法律の整備をすることのほうが、今は必要だと思います。




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