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1-2のつづき
森野が不条理な死をとげてからというもの、ボクは学校に行かなくなった。家から一歩も出なくなった。森野のいない学校なんて楽しくもなんともない。気持ちの整理がつくまでの休暇として、母さんもそれを許してくれた。
その間、ボクは喪に服するつもりで指輪に頼らない生活をすることにしていた。もっとも、あの日から親指にくっついて離れないこいつとは行動を共にしなくてはならなかったけど。
家にこもりはじめると、ふいにやり場のない怒りや悲しみがこみ上げてくることがあった。悶々とした気持ちを振り払おうと、何度か自室の机や椅子にあたってみたり、ベッドを思いっきり殴りつけたりもした。
でもストレスは収まるどころか、さらに激しさを増していった。そんなある日、とうとうボクはとどまることをしらない怒りの断絶を、あろうことか指輪にたくしてしまったのだ。
母さんと連れ立って買い物に出かけたボクは、母さんが買い込みを終えるまでの間、スーパーに隣接する公園のベンチに腰かけていた。決してわけなくつきそったわけじゃなく、荷物持ちという任務があった。この大任を買って出たのはたしかな事実だけど、実のところ、とにかく外に出たかった。すっかり塞ぎこんでしまった自分の心をなだめるためにもそうするのが一番よく思えた。
公園の歩道に沿ってどこまでも林立する木々の若い枝葉が、時折風を受けてざわざわと音を立てる。頬を伝うそよ風、ふりそそぐ木漏れ日。久しく外界とは無縁の生活を続けていたからか、ボクにはそんなありふれた自然がどうしようもなく心地よく思えた。“天にも昇る心地”というのはこういうことか。そう思ってベンチから遥かな天を見上げると、そこには当然のように蒼い空と白い雲があった。
気持ち良すぎる空を見上げつつ、ぼんやりとまどろみかけていると、急に空一面が闇に閉ざされた。ハッと目を凝らすと目の前に人が立っていた。不良を絵に描いたような五人の高校生風の男女がパンクファッションに身を包み、ハイエナのような睨みで取り囲んでいた。これから何が起こるのか、大方の予想はできた。しかも、まずいことにちょうど昼時で、公園にはほとんどだれもいない。いるのは木陰で囲碁を楽しんでいるお年寄りばかりで、とても救助を依頼できるような者たちではなかった。こうなったら自分で何とかするしかない。
「なんでしょうか?」
いつになく丁寧な口調で不良たちの視線に応じた。
顔に無数の傷をこしらえたリーダー格の男が、立派なモヒカン頭を大切そうにかき上げながら口を開いた。
「単刀直入に言う。・・・有り金全部よこしな! 痛い目見る前にな」
まわりにいた仲間がドッと沸きかえった。一体何が面白いのか、皆一様にゲラゲラと品なく笑う。
「今、お金、持ってないです」
本当だった。
「嘘つけ。テメーみていに綺麗なかっこしたガキはな、いくらか持ってんのが相場なんだよ」
ボクははっとして自分の着ている服を見下ろすと、不良たちがボクに目をつけた理由がわかった。この数日こそ度重なる不幸から指輪の力を自粛していたけど、手にした当初は指輪の力をフルに使い、贅の限りを尽くしていた。もちろん身にまとう服装だって並じゃなく、ほとんどが一流のブランド品。この日もそれらの一部を着込んでいた。
「本当です。本当に持ってないんです。見逃してください。」
ボクは無理やりに困り果てた顔を作って懇願した。これで見逃してくれることを期待して、やつらの反応を待つ。するとモヒカンの男が、ボクの首もとめがけて手を伸ばしてきた。いくらなんでも、と一瞬ぞっとしたがそうではなく、奴の狙いはボクの首に掛けられたものだった。
「や、やめろ!これはボクのだ!」
「なかなかイイもんじゃん、これで勘弁してやってもいいぜ!」
男が欲したのは獅子をかたどった金色のペンダント。それは生前の森野がボクの誕生日にプレゼントしてくれた思い出の品だった。獅子のように強くありなさい! と冗談をそえて手渡してくれたのを覚えている。そんな大切なものだから、死んでも渡すわけにはいかない。ボクは必死でペンダントのチェーン部分を握り締めた。
「何だよ、こいつ・・・。こんな物、また大好きなお母ちゃまにでも買ってもらえばいいだろ!」
「こんな物」だったら、要らないはずだろ!とボクは思った。恐喝して戦利品なしというのはでは不良としてのプライドが許さないのだろうか。
「嫌だ、渡さない!」
ボクがペンダントを手放さない決意をかたくなに示してもなお、奴等ははしつこく要求した。
「仕方ねぇな・・・やれ!」
男がそう言って仲間に視線で合図を送ると、連中はボクの四肢をたちまちに捕らえた。
チェーンを握っていた手は強大な力でひっぺがされ、とうとうボクはペンダントを奪い取られてしまった。
仕上げとしてリーダー格の男がボクの左頬に強烈な右フックをあびせた。ボクは地面に激しく倒れ込んだ。
(何でボクだけが、どうしてボクだけがこんなにも苦しめられるんだ・・・おかしい・・・。神様、不公平が過ぎるって)と、このときばかりは信じたことのなかった神に当てつけた。
「じゃーな」
不良の五人が背を向けて去ろうとしたのを、ボクは消え入りそうな意識で確認する。十数秒後、ヨロヨロと体を起こしたボクは、三十メートルほど先にいる不良たちの背中へと右手をかざし、悪魔の祈りを捧げていた。
《 死ね 》
はっきりイメージを起こさなかったが、心に強くそう念じると、まもなく五人に天罰が下った。文字どおり天罰。青天の霹靂が五人を襲ったのだ。
稲妻に打たれた不良たちは、断末魔をあげるまもなく炭と化した。それを追うようにけたたましい轟音があたりにとどろいた。
ボクは朦朧としながらも、急いで焼け焦げた人肉の団に近づき、その中からペンダントを回収した。ペンダントは多少すすけていたが無事だった。
これまでにも指輪を使って人に迷惑をかけてきたことは幾度もあったけど、人を殺めたことはなかった。いざやってみると、意外と罪悪感というものは感じられず、むしろ快感の方が大きかった。おそらくボクは正気を失ってしまったのだ。その証拠にその場のストレスをつづけて放電してしまった。しかも先の場合と違い、何を守るわけでもないのに、目に付いたそばの遊具や電柱、あれほど心地よく感じていた緑の並木にまでも落雷させた。
その間、囲碁どころではなくなった老人たちはパニックに陥り、蜘蛛の子を散らすの表現そのままに公園から逃げ帰っていた。ほとんどの木々に落雷し終えたところで、ようやく噴水のようにみなぎる破壊衝動も収束していった。目の前の木々の黒こげを確かめたボクは、自らの下した大事に気づき、慌ててその場をすごすごと離れた。
そろそろ買い物を終えるはずの母さんをスーパーまで迎えに行く。予定では買い物を終えた母さんがさっきまでボクが座っていた公園のベンチまで来ることになっていた。しかしあんな大事故のおきた現場で冷静に待てるわけがなかった。黒焦げになった木立のわきに平静と居座る少年なんておかしすぎる。
スーパーへ向かう途中、ボクはいま一度指輪の力を借りた。母さんに心配かけないよう、さっきの不良から受けた傷を完治させたのだ。歩きながら、ボクは先ほどの過ちを悔いていたものの、あくまでそれはおざなりで、なにより自身の正当性を見出すことに余念がなかった。それほどまでにボクは正気を脱いだ自分が怖かったのだと思う。
公園沿いの道路の突き当たりを右に曲がると、スーパーの巨大看板が目に飛び込んできた。
スーパーの出入り口付近は人であふれており、ざわついている。その人ごみの中に母さんはいた。ボクと母さんはスーパー前の横断歩道の両側にそれぞれさしかかった。スーパー側が母さん。逆側がボク。信号が青になるまで今しばらく時間がありそうだった。
母さんはこちらにまったく気づいていない。まぁこれだけの人ごみの中なら仕方のないこと。ボクは信号が変わるのをじっと待つことにした。目の前を幾台もの車やトラックが、騒音と排気を吐き出しながらほとんど隙間なく駆け抜けていく。目の前を車の影が走り、母さんの姿が遮られた後、また一瞬のぞける。うかがうたびに母さんの立ち位置やポーズが微妙に違い、まるでパラパラアニメを見ているようだった。手帳をのぞく母さん、うつむいている母さん、天を仰ぐ母さん。そして自動車が途切れた。
(あれ、母さんがいない。どこにいったんだ?)
そう不思議に思っていた矢先に、女性の甲高声が耳をつんざいた。
「キャァァァー」
まもなく、数秒前まで母さんの佇んでいたあたりに人の輪ができた。嫌な予感がした。ボクは信号が青にかわるのを待たずして横断歩道を渡りきった。
人ごみを掻き分け人の輪に突進して、無理やりに顔を円心へと突き出した。
そこにいたのは・・・母さんじゃなかった。ボクの知っている母さんじゃなかった。蒸気をあげる得体の知れない液体にまみれ、目や鼻や口、顔中の全てのパーツが焼けただれ、いまにも溶けてなくなりそうな母さんの顔がそこにはあった。声をかけるまもなく、ボクは一瞬にして卒倒した。
「う・・・うぅ」
頭痛を伴いながら目覚めると、ボクはとある病院の一室にいた。自分がどうしてこんな場所にいるのかわからなかった。記憶の糸を辿ってようやく現状を理解できたとたんに吐瀉物がこみ上げてきた。まるでのっぺらぼうな母さんの、世にもおぞましい顔が必要以上に鮮明に浮かぶ。たえまなく嘔吐は繰り返され、一向におさまる様子はない。命の危機を感じたボクは必死でナースコールを発するボタンを連打した。そしてまたしても気絶した。
「あ、動いちゃいかん、じっとしておれ」
次に目覚めたときにはすぐそばに老医師と若い看護婦がおり、二人とも実に心配そうな顔をつくってボクを看取っていた。今度は意識して何も思い出さいようつとめたけれど、やはり多少の嘔吐はともなった。それでも前回よりは遥かにマシだった。
「母さんは・・・ボクの母はいまどこにいるんですか?」
「・・・手を尽くしたのじゃが・・・一昨日に亡くなったよ」
長くのびた白ヒゲをなでながら、老医師は切なげに言った。
「そんな・・・」
ボクは途方にくれた。てっきり大怪我しただけで、命には別状ないものと思っていたばかりに、そのショックは津波のように凄まじかった。
母を失った悲しみはもちろんのこと、この先ボクと弟はどうやって生活していけばいいのかという現実に押し寄せる苦悩を思うと、いっそ死にたくもなった。
ボクが卒倒時に骨折した頭蓋を完治させるため、二週間の入院を余儀なくされている間、実に多くの人が病室を訪れた。そのほとんどが警察関係の方ばかりだったけど、親しくしていたご近所さんなども見舞いにきてくれたりして、すこしは気がまぎれた。
入院二日目の昼過ぎに弟もやって来て、しばらく親戚の伯父さんの家で世話になる旨を知らせてくれた。この調子でいくと、ボクも退院後は伯父さん宅にお邪魔することになるのだろうけど、どのみち母さんがいない生活になることを考えると、依然としてお先真っ暗に思えた。
医師や病室に事情聴取に訪れた刑事と、事件のすぐ後に流れたTVニュースによれば、あのとき母さんはある男によって顔面を硝酸で焼かれた挙句、頭をアスファルトの地面に強く打ち付けられたのだという。
男は周りにいた買い物客にすぐさま取押えられ逮捕に至ったらしい。犯行動機は、「少し前にフラれた彼女に顔が似ていたから」だそうだ。考えられなかった。
これはもはや動機とは言えず、通り魔とみてまず間違いないだろうけど、そんな奴がなぜ硝酸をもちあるいているのか・・・仮に元彼女に硝酸で怪我を負わせる計画で持ち出したものなら、なぜ元彼女ではなく母さんを襲ったんだ? それになぜ硝酸を用いる必要があったんだ? なぜボクの身辺ばかりで殺人がわきおこるんだ? この理不尽を理解する頭をボクはもっていそうになかったけど、それでも入院中は毎日のようにそのことを考えていた。それがボクの目下の使命なのだと感じていたからた。来る日も来る日も悪夢にさいなまれる覚悟の下、母さんや森野の死について考えた。我慢の限界をこえて考えた。お蔭で、ようやく世にも恐ろしい一つの考えが、いやでも頭に浮上しはじめた。
ボクは一時、連続するクラスメイトたちの死を、自らの潜在意識が指輪によって具現化されたものだと仮定していた。ところがその後、ボクが愛してやまなかったガールフレンドの森野が死に、今度は母さんが死んだ。クラスメイトの場合と違い、この頻発した二つの不幸は、絶対にボクが祈願した死ではないと断言できる。ボクは森野の死に関しては、非業の最期でこそあったが、それはどこにでもある事件であり死だと考えていた。だけどここにきて、不幸の引き金ともよべるある事実がぼんやりと形をなしてきた。
指輪使用後の件。これは森野と母さんの不幸についていったりきたりで考えているうちに浮上してきた共通項の一つだ。この発見にともない、それ以前の事件を遡って考えてみたところ、その不幸の多くが、指輪の使用に応じる形で起こったように思えなくもない。山崎先生の場合も、その後相継いだクラスメイトの死だってそうだ。
ただ指輪を装着しているだけで次々と願いがかなえられるものだから、いつしか親指のそれは、「神様がくれた幸福の指輪」なのだと認識していたところがあるけど、最近の身のまわりを考えると、とてもそうは思えない。けれども現にボクはブランド品で身を固め、財布の中には諭吉をひしめき合わせているわけだし、指輪が決定的な不幸をもたらしたとは言いがたいでのはないかとも思う。ともかく指輪への認識を正すためにも、早急にその効力を検証してみる必要があった。
次の日の昼下がり、ボクは病院をこっそり抜け出して裏山の雑木林に足を踏み入れていた。言うまでもなくこの実験は下手をすれば人の命を奪うことになりかねないので、なるだけひと気のない場所を選んで行いたい。
山に入って歩くこと十分、ボクは草木の生い茂る樹海にたどり着いた。そこには、まるでひと気がなく静かな代わりに、重く陰鬱な空気が満ちていた。真夏のしたたかな日差しさえ遮るほどのぶ厚い葉の層が、あたりの空間に薄闇をつくっていた。おまけに極端にとげとげしい岩々がそこかしこに転がっていて、さながら某自殺の名所ともいえる景色をかもしている。ボクと周りの幸・不幸をかけたこの忌まわしい実験にぴったりな感じの場所に思える。
覚悟はしていたはずだけど、予想される結果を思うと、つい嫌な汗が流れた。それでももう後にはひけない。いよいよ実験開始だ。
手始めに、足元にある小さく今にも枯れそうな紫色の花を摘み、一番綺麗に咲いている時の状態にしてやる。さー、ここからだ。
ボクは息を呑んで、何かの起こる気配はないかと、いつになく五感を研ぎ澄ませて待機した。それから30秒ほどしたところで、ボクの背後で何かが地面に衝突する音がした。ドッ、ドッ、ドッと次々にその音が地に響く。振り返ると真っ黒いセミの大群が雨のように落下してきていた。呆気にとられて目を見張っていると、今度はボクの頭上からもセミの大群が降ってきた。 ビシバシと黒光りするセミがボクの頭や肩を打つ。そのうち止むかと思ってボクは頭を抱えてしゃがみ待ったが、一分が過ぎてもセミの雨は止む気配をみせない。落ちたセミをみるとどうやら死んでいるらしい。中には最後の命をふりしぼり、必死に足と羽をばたつかせるセミもいて、頭を抱えて身を守りながらボクは、ずっとそいつの死にゆく姿を上目で眺めていた。それから三分ほど経過したところでようやくセミが振らなくなったとき、辺り一面にはセミの海ができあがっていた。ボクは決して虫嫌いではないしセミだって平気で触れるけど、さすがにこれには戦慄した。
怖くて怖くて、いつのまにかセミの絨毯を踏みしだきながら、もと来た道を疾走していた。後ろを振り返り、セミ色の海がみえなくなってさえ、なお恐怖に後押しされて無我夢中で走り続けた。山のふもとの病院近くまで走ってきて、ようやく足をとめる。ボクはさっきのことがとても現実のこととは思えず混乱してしまい、夢であってくれとの一心で、あろうことか再びセミの雨を降らせるよう祈ってしまった。
だけど今度は頭上に木々は一つもなく、雲ひとつない空がのぞいていた。これではセミはふれまいと思ったとおり、セミは現れなかった。かわりに三十秒ほどのちに、パキパキと小枝を折り曲げるような音が辺りからもれた。 次の瞬間、ボクの目の前に赤いカーテンが立ち上ってきた。火柱だった。
「山火事ィィィ!」
意味のない絶叫がこだまする。ここにはボクのみ。助けなどない。もはや一人の人間が沈火できるような勢いでないことは一目でわかった。逃げるしかない。
一本目の火柱に少し遅れて、二本目、三本目の火柱があがった。それもちょうどボクを取り囲むようにして。熱に煽られながらも火柱の間を縫って逃げようとしたが、そんなボクを嘲笑うかのように、四本目・五本目の火柱があらわれ、目の前に立ちふさがった。ボクは立ちのぼる火の中に確かな意思を見た気がした。火の柱はたちまちにボクを取り囲み、完全に八方塞がりに追いこんだ。
いつものボクなら、指輪の力で火勢を退かせただろう。でもこのときに限って指輪の力をつかうことはなかった。
立ち上る火炎の輪っかの中で、ボクは一人笑っていた。目からは溢れるものがあった。セミの雨に続き、意思を携えた炎・・・指輪の使用直後にこうもありえないことを立て続けに見せられた以上、それが「不幸をもたらすもの」であることは確信したし、もはや疑う余地がなくなった。それと同時に一連の事件の正体を感得することとなった。
結論から言うと、相継いだ不幸を生み出し、皆を死へと追いやったのはボクだったということだ。しかもほとんど直接的に、ボクの意思がそうさせたも同然なんだ。そもそも自身の周辺でのみ発生するという事件の特異性に目を向けるべきだった。そうすれば、原因が指輪であり、ボクの強欲だと気がついたはずだ。指輪を手にしても、幸せを独り占めしようなんて気を起こさなければみんなは助かった。
ボクは指輪の設計者じゃないから、よくは分からないけど、つまりは自分が指輪を通じて周りのみんなの幸せを、目に見えないエネルギーとして奪い取ってしまっていたのだと思う。それ以外に事件が周辺に限定していた事実を説明できないんだ。
そう気づいたボクがとるべき行動はただ一つ。指輪とともに焼かれて死に絶えること。そうしないかぎり、今後も運命共同体と化したボクと指輪は、世の人を不幸に陥れつづけるだろう。
欲望のままに指輪を乱用・悪用してきたボクにも良心というものがある。 指輪の本質を悟ったいま、この場から指輪とともに生き延びようものなら、ボクは人間としての最後を迎えられる気がしなかった。これまでにしてきたことを考えると、お世辞にも上等な最後とはいえないけど、こうなったことでボクは心の底からホッとしている。これでようやく、友達や家族が死にゆく世界とおさらばできて・・・何もかもわすれることができて・・・。
二mは立ちのぼった炎が、ボクを飲み込むまでにはまだ時間があった。
ボクは四肢をめいっぱい投げ出して地面に仰向けになり、炎の額縁におさまる日暮れ前の紫の空を、しばしのあいだ見つめていた。毎日眺めていたはずの夕空がやけに綺麗にみえた。
腹を括っていたはずなのにボクのまぶたの奥からは未練がとめどなくあふれた。それは涙となる前に、熱に奪われ空気に溶けていった。
炎がさらに激しさをまして迫ってくる。熱に焼かれてあっというまに目が見えなくなった。
「先生、森野、母さん、みんな・・・本当にごめんよ。ボクはもっと早く気づくべきだっ
たんだよ、指輪に巣くう悪魔の存在に。今ならわかるけど・・・きっとボクは心のどこか
で、指輪を否定するのを拒んでいたんだ。指輪が不幸をもたらすものだと認めたとき、ボクは、犯した過ちのすべて認めたことになるから、みんなを殺したことになるから、たぶん・・・それが怖くて、ずっとずっと逃げていたんだ。・・・ボクはとんでもない悪党だったのかもしれない。地獄の業火に焼かれて当然の・・・。みんな・・・本当にごめんよ」
意識が朦朧とする中で、ボクはいつまでも未練がましく口を動かした。
《・・・・・・》
しばしの時を経て、空が一面に朱をたたえはじめたころ、そこにはボクの姿など跡形もなかったはずだ。
※※REPEAT※※
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