いなかの猫の天邪鬼部屋

第8話

OnAir~シーズン2・第8話~


#10日後、ワインバー

(ギョンミンとセア、スタンドに並んでいる。)

セア : 企画案はどうなりましたか?

ギョンミン : とりあえず通過しました。

セア : 久しぶりにドラマをするんですが、放送局の雰囲気も変わっていて...なかなか適応出来ないです。

ギョンミン : どうして休んでいたんですか?

セア : 学校を卒業してすぐに放送局に入ったんですが...若いから素材が貧弱なんですよ。短編を二つやったところで、これではダメだと思って留学したんです。その、ライセンスが必要だったと言うより経験を積みたくて...

ギョンミン : 今回の作品で何を言いたいのか、お聞きしてもいいですか?

セア : 事実上デビュー作だから...悩みが多いです。どれだけ深刻な話をしなければならないか.. 初めから重い主題は視聴者をうんざりさせないか...だからと言って面白さだけを追い掛けるのはイヤだし、それは私の長所でもないし...

ギョンミン : 昔の作品で扱ったのも、お互い違う世界の人の話を書いたものだったけど、今回のドラマもそれが重要なコンセプトなんじゃないですか?主題は何なんですか?

セア : 運命を信じますか?

ギョンミン : どういう事です?

セア : 運命的な愛...そういう事です。

ギョンミン : ...信じません..元々は。

セア : ...元々は?

ギョンミン : (ヨンウンとの出会い、水に溺れたヨンウンを助けた事などを思い浮かべる。) ...あるかもしれないという気がします、最近は。

セア : ...?進行形ですね..

ギョンミン : ...(ヨンウンを思いながら微笑む)

セア : ...誰ですか?

ギョンミン : あなたの知っている人ですよ。

セア : 私が?... 私、知り合いはあまり多くないですけど...?

ギョンミン : ソ・ヨンウン作家です。

セア : (意外そうに)あ...ソ・ヨンウンだったら...

ギョンミン : (セアを横目で見て) この前、ちょっと会ったでしょう?

セア : (片方の口角を上げて)) はい...意外ですね。

ギョンミン : ...

セア : とにかく私が言いたいのは、運命という事です。私はまだ本当に愛を経験した事がなくて、そのせいか幻想を持っているんです。きっと運命的な愛があるはずだ。一目で分かるような、そんな愛があるはずだ..と。呪文だとも言えるし、(にっこりと笑って)ただ自分を慰める言葉だとも言えるし...

ギョンミン : 愛を経験した事がない...?信じられないですね。

セア : そうでしょう?(笑い) ...これが愛なのかと思っても、過ぎてしまえばこれではなかったみたいだと思ったり、この人は私の運命ではなかったのかと思ったり...。でもまた愛する瞬間が来ると、その人が運命だと思うんです。

ギョンミン : (ヨンウンを思う ) そんなものでしょうね。

セア : 経験がないと言うより、運命みたいな愛が出来ないという事なんです。監督は、一目で分かったんですか?

ギョンミン : (にっこりと笑って) いいえ。最初の出会いは最悪だったんです。お互い到底好感を持つ事は出来ない状況でした。

セア : そうなんですか?そんな事はドラマでしか起こらない事だと思っていたんですけど...実際にもあるんですね...

ギョンミン : でも考えてみると、我々はこうなる以外なかった...そう思う時があります。

セア : 知りたいです、そのストーリーを...

ギョンン : 他人の話はつまらないですよ。

セア : ...(笑い) とにかく綺麗な画面を期待していいようですね。現在進行形の...

ギョンミン : (笑い) ...

セア : (ギョンミンを見て)その愛が運命だと確信しますか?

ギョンミン :.... (セアを見て)どういう事ですか?

(セア、妙な表情でギョンミン見る)


#道路。ワインバーの外

ギョンミン : すみません。お送りしないとならないのに、ご覧のように俺も飲酒運転だから...

セア : いいえ、大丈夫です。タクシーに乗って帰りますから。

ギョンミン : 待っててください。タクシーを拾いますよ。(道路の方に行く)

セア : (ギョンミンに付いて行く) 今日は悪くなかったです。

ギョンミン : (タクシーを拾おうと往来を注視している) え?何がですか?

セア : 私たちの間がちょっと狭まったようで..

ギョンミン : (にっこりと笑って) そうですね。今まで無愛想でしたからね。...申し上げたとおり疑い深い性格ですから。仕事だからあんな態度を取っていたので。傷付きませんでしたか?ユン作家にだけああではないんですよ。

セア : (にっこりと笑って) ..その話の方が傷付きますね。

ギョンミン : え?

セア : 深い意味はありません。(空のタクシーが来るのを見る) あ、あれ...

ギョンミン : ( タクシーを止めて後部座席のドアを開く) では気を付けて。

セア : (乗る) はい、監督も。

(タクシー出発する)


#ギョンミン車中

(ギョンミン、ヨンウンにメールを送る。)

" 寝てる?寝てる?寝てる?...."

(しばらくして返事が来る。)

" 寝てない。寝られない..."

(ギョンミン笑いながら電話を掛ける。)

ヨンウン : はい。(笑い) どうしたの?

ギョンミン : 会いたいよ~。

ヨンウン : どこにいるの?

ギョンミン : 清淡洞。

ヨンウン : お酒を飲んだ?

ギョンミン : 少しだけだよ。

ヨンウン : その酒癖の悪さはどうにかならないのかしら?

ギョンミン : 俺にどんな酒癖があると言うの?

ヨンウン : (笑う) あなたはお酒に酔うとすごく可愛いわよ。..それで、誰と飲んだの?

ギョンミン : ユン作家とだよ。

ヨンウン : (驚く) え?誰ですって?

ギョンミン : ユン作家。お互いを知る必要があるから。

ヨンウン : (ため息) ...ユン作家は?

ギョンミン : 帰ったよ。...(ちょっと眠そうに) 俺も帰らなくちゃ..

ヨンウン : そこ、正確にどこ?

ギョンミン : ここはどこかな...(声がだんだん無くなる) ...だから...通学路の十字路で...東..いや南側..

ヨンウン : もしもし?監督?監督!


#ヨンウン車中

(小路を探すヨンウン、ギョンミンの車を発見。ヨンウン、車を停めてギョンミンの車に近付きドアを叩く。)

ヨンウン : 監督!監督!

ギョンミン : (ハンドルに伏せていたが頭を上げて)うん?(窓から外を見ようと労力する)

ヨンウン : ドアを開けて!

ギョンミン : (まだぼんやりとしている) ...作家のお姉さん...?

ヨンウン : (ドアを叩き続けている) ドアを開けなさいってば!

ギョンミン : (窓を下ろして) いつ来たの?

ヨンウン : (ロックをはずしてドアを開ける) どれだけ飲んだの?

ギョンミン : どれだけって程でもないけど...(笑う) 何も食べないで、高い酒を飲んで...

ヨンウン : まったくもう...だめじゃないの。さあ、降りて。(ギョンミンを引っ張り出す)

ギョンミン : 二次会?

ヨンウン : (あきれて) ...二次会って....家に帰りましょう。

ギョンミン : 誰の家?

ヨンウン : 誰の家でもいいでしょ。(自分の車にギョンミン乗せる)


#ヨンウン仕事部屋、室内

(ヨンウン、ギョンミンを脇を抱えて入って来て、ベッドに横たえる。)

ヨンウン : (時間確認する) すっかり遅くなっちゃったわ。

(オキシムにメールを打つ。)

" お母さん、監督がちょっとお酒に酔って..."

(考えて消し、ギョンミンの携帯電話でオキシムにメールを打つ。)

" ママ 、今日は会議で帰れないと思います。おやすみなさい。"

(送信ボタン押して、ため息。)


#ベッドに横になったギョンミン、ベッドに腰かけてギョンミンを眺めるヨンウン

ギョンミン : うーん...(布団を蹴飛ばす)

ヨンウン : (その姿が可愛い) これ以上は脱ぐ服がないんだから。布団まで蹴飛ばしてどうするつもりなのよ...

ギョンミン : うん...水...

ヨンウン : 水?喉が乾いたの?(ギョンミンに水を飲ませる) まったくもう...世話がやけるわね。

ギョンミン : (ようやく目を覚まして) どこ?

ヨンウン : どこって?仕事部屋でしょ。

ギョンミン : 俺、ここに来たんだっけ?

ヨンウン : いい~え。私が背負って来たの。

ギョンミン : ...背負う?君が?俺を?

ヨンウン : そうよ。背負って来たの。私が。あなたを。

ギョンミン : (笑って伸びをする) 何時?

ヨンウン : 2時よ。

ギョンミン : (起きて座る)俺、酔ってた?

ヨンウン : ええ...どうしてあんなに酔ってたの?

ギョンミン : それは...

ヨンウン : (不安)...

ギョンミン :....(ヨンウンを見て)運命を信じる?

ヨンウン : 急に何の話?何の運命?

ギョンミン : 運命的な出会い、運命的な愛 ..そういうものを信じるか?という事。

ヨンウン : ......

ギョンミン :(じっとヨンウンを見て) 俺は君の運命か?

ヨンウン : (ギョンミンの顔をうかがい見て) どういう意味?何が言いたいの?

ギョンミン : 君は俺の運命なのに...

ヨンウン : (ドキドキする気持ちを隠してにっこり笑い) 急にどうしてそんな事を。

ギョンミン : (ヨンウンの顔をしげしげ見る) 君にとっても俺は運命なのか、俺がいないと死んでしまいそうなのか、俺といて幸せなのか..

ヨンウン : (胸がチリッとする) ...私はあなたの命なのね..私がいなければ死んでしまう...

ギョンミン : (執拗にヨンウンの目を眺めて) 君は?

ヨンウン : (そっと睨んで) 去年、死ぬような時間を過ごした事があるわ。ソ・ヨンウンが死んで存在していなかった時間が。二度と笑う事も楽しむ事も出来ないと思っていた時間が...イ・ギョンミン監督のせいで..

ギョンミン : (ヨンウンを引き寄せて抱く) 君が俺の運命で...本当に良かった...

ヨンウン : (笑う) 監督をやめて作家になるつもり?今日はどうしたの?こんなセリフみたいな事ばかりを...

ギョンミン : (笑う) 俺..酔ってるんだな....

ヨンウン : (ギョンミンの顔をくるみ、口付けて離す) 頼みがあるの。

ギョンミン : (目を閉じてヨンウンの唇を探して) 何の頼み?

ヨンウン : (ギョンミンの戯れを避けて) 他の女とお酒を飲まないで。お酒に酔うとあなたはとても可愛いから..

ギョンミン : (ため息) 俺の女は心配症だな...

ヨンウン : 私が心配症なんじゃなくて... あなたは自分がどれだけ魅力があるか、分かってないんだもの。

ギョンミン : (にっこりと笑って)分かったらこうするのはどう?女達にたかって貢がせて生きる...

ヨンウン : (呆れて)確かに酔ってるわね...

(ギョンミン、笑ってヨンウンを引き寄せてキス)





(原作出処: sonkhj1116さんのブログ


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