いなかの猫の天邪鬼部屋

第16話

OnAir~シーズン2・第16話~


#一週間後午前中、ヨンウンの仕事部屋

ヨンウン : (電話に出る) はい.....?.....?...キジュンさん?....ホントにキジュンさん?

キジュン : (電話の向こうの声) 元気だった?

ヨンウン : (驚く。嬉しい) うん.....何なのもう...。予告もなしに...驚かせるんだから。

キジュン : (笑う) どう予告すればいいんだ?

ヨンウン : (にっこりと笑って) すごーく嬉しいわ。

キジュン : そうか...嬉しいか...

ヨンウン : 元気?スンアさんは?仕事は?

キジュン : 元気だよ。スンアも。仕事もしてる。

ヨンウン : (笑う) ごめんね。とても嬉しくて言葉がごちゃ混ぜだわ。全然連絡ないんだから。酷いじゃないの。

キジュン : そう言う君は?お互い奥地にいるわけでもなし、俺が先に連絡したんだから、どこに咎められるところがあると言うんだ?俺たちの事が気になるというのは嘘だろう?

ヨンウン : んー。居所が毎度変わる人にどうやって連絡すると言うの?それに...(ため息) 思い切って行った人に、後ろを振り向かせるような事は出来ないわ...

キジュン : (微笑む) ....みんな元気か?イ・ギョンミン監督は?

ヨンウン : (微笑みを返す) 元気よ。それで、今日はどういう事で?

キジュン : ああ...今度スンアの映画が封切りされるじゃないか。VIP試写会の招待状を送ろうと思って。

ヨンウン : 試写会?それじゃキジュンさんも来るの?

キジュン : いや、スンアのスケジュールがあるから行けないと思う。そっちの配給社に頼んでおいたから招待状は行くと思うよ。

ヨンウン : (ありがたい) 本当なら... お金を出して見るものなのに..

キジュン : じゃあお金を出してもう一度見てくれ。

ヨンウン : (にっこりと笑う) 分かったわ。

キジュン : 見た後でスンアがどうだったかモニターしてくれ。ソ・ヨンウンほどナイフを突き立てるがごとく批評出来る目を持った人はいないからな。

ヨンウン : (笑う) 分かったわ。ナイフを突き立ててやる。(笑う)

キジュン : イ監督と一緒に行ってくれ。二枚送るようにするから。

ヨンウン : うん。監督も喜ぶと思うわ。ところで...一度くらい帰って来れないの?

キジュン : 分からない。どうにかすれば封切りの日に合わせて帰る事も出来るけど..

ヨンウン : (嬉しい) そう?来るなら予め連絡して。人を驚かさないでね。

キジュン : ああ。行く事になったら連絡する。....切るよ。まだこんなふうに長く国際電話出来るほど余裕がないんだ。

ヨンウン : (にっこりと笑って) 分かったわ。それじゃ。

キジュン : ああ。それじゃ。

(ヨンウン、受話器を下ろす。顔いっぱいに微笑が滲む。)


#ギョンミン車中

(オソク運転する。ギョンミン助手席。ギョンミンの電話が鳴る。)

ギョンミン : もしもし?

ヨンウン : (優しく) 私。今どの辺?

ギョンミン : ここは..水原は通ったし...。オソク、ここはどこだ?

オソク : 唐津を過ぎました。

ギョンミン : 唐津を過ぎたところだけど。

ヨンウン : いつ来れそう?

ギョンミン : そうだな...今日中に全部見直すとすると...かなり遅くなると思うけど...。どうしたんだ?

ヨンウン : うん...さっきキジュンさんから電話が来たの。

ギョンミン : チャン代表が?元気そうだった?

ヨンウン : うん。それで、帰って来るかもしれないって。

ギョンミン : そうなのか?それは...

ヨンウン : いえ、その...スンアの映画が封切りするじゃない。

ギョンミン : ああ... 映画の広報をしに?

ヨンウン : いえ、それは確実に決まってないみたい。

ギョンミン : (荒唐な) おい...結局どういう話なんだよ。

ヨンウン : (笑う) ええと、 私、今日は話がごちゃ混ぜでしょ?... そういう事じゃなくて、試写会の招待状を送ってくれるのよ。

ギョンミン : 試写会?いつ?

ヨンウン : 確認したわ。今週金曜だけど、時間はある?

ギョンミン : 金曜日?..オソク、金曜日はどうなってる?

オソク : 今週金曜日ですか?その日は初撮影ですが。

ギョンミン : あ...そうか...。(ヨンウンに)その日は初撮影があるんだけど...

ヨンウン : (失望して) 無理そう?

ギョンミン : 分からない。その時になってみないと...、時間は?

ヨンウン : 切符を確認してみないとはっきり分からないけど、7時頃だったかしら?

ギョンミン : 7時?...早いな..

ヨンウン : (残念そうに)難しいわね。無理よね、それだと...分かったわ。(声を変えて) 気にしないで、気を付けて帰って来てね。

ギョンミン : ああ。食事をちゃんと作って食べるのを忘れるなよ。

ヨンウン : (笑う) わ・か・り・ま・し・た~。

(ギョンミン、笑って電話を切る。)


#金曜日、初撮影の日の撮影場所

(慌ただしく駆け回るオソク、スタッフ。ギョンミンと照明監督- ボンシク、椅子に座っている。)

ボンシク : 今日は何シーン撮るんだ?

ギョンミン : (ボンシクを見て) 初日だから3シーンだけ撮るつもりです。

ボンシク : それはジンクスか何かなのか?なぜ初撮影は毎回3シーンなんだ?

ギョンミン : (笑う)故意にそうしているわけではないのに、そう言えばそうですね。

ボンシク : 今回は地方撮影が多いだろう?

ギョンミン : 主背景が海辺だから、どうしてもそうなるんです。でも初日から地方撮影だとくたびれるんじゃないかと思って。(ボンシクを見て))来週には安眠島でずっとキャンプをしないとならないんですよ。

ボンシク : お前にとって、これは何番目の作品だ?

ギョンミン : 3番目です。

ボンシク : 2番目の作品の平均視聴率はどれだけ出たんだ?

ギョンミン : 平均 14% 位だったと思いますが?

ボンシク : (情けないと言うように) お前は視聴率欲みたいなものはないのか?

ョンミン : どうして?14%も悪くないと思いますが...

ボンシク : こいつ...欲がないのか野望がないのか...

ギョンミン : (にっこりと笑って) 欲にしろ野望にしろ、もし俺がそういう事にこだわる人間だったら、監督は俺と長く仕事をする事が出来ますか?

ボンシク : そりゃ出来るさ。男は野望がないと。それでこそデカい事が出来るんだ。

ギョンミン : (頭の後ろで両手指を組んで) 監督は俺の野望が何なのか、分からないでしょう?

ボンシク : 分からないって....。あることはあるのか?野望が。

ギョンミン : (遠いところに視線を置きながら微笑む) 野望なのか、夢なのかは分からないけど...ありますよ....

ボンシク : (ギョンミンを見て) 何だと言うんだ...?

オソク : (近付いて) 監督、準備出来ましたが。

ギョンミン : (オソクを見て) そうか?(姿勢直す) OK、行きましょう~。


#試写会場ロビー

(ヨンウン、苛々して時計を見る。横にサンウがいる。)

チェリー : (近付く) これですよ、パンフレット。(突き出す)

ヨンウン : (受ける。力無く) やっぱり遅れるみたい...

チェリー : イ監督はいらっしゃらないんですか?電話してみました?

ヨンウン : したけど出ないのよ。

サンウ : 時間だから、入って中で待ちましょう。監督にはメッセージを入れて。

ヨンウン : メッセージも入れたわ...

(ヨンウン、サンウ、チェリー上映館の中に入って行く。ヨンウン、惜しさに振り返る。)


#上映館の中

(サンウ、チェリー、ヨンウン並んで座っている。ヨンウン、落ち着かず辺りをきょろきょろ見回す。)

(" ソ・ヨンウン作家?" ヨンウン、声がする方に首を向けると、ソンミンが一座席向こうに座っている。)

ソンミン : (微笑む) やっぱりソ作家だ。もしかしたらと思ったので。

ヨンウン : (意外そうに) あ...どうしてここに...

ソンミン : チャン・キジュンさんの招待ですか?私もです。多分それで席が同じ列なんですよ。

ヨンウン : (気まずそうに) はあ...そうですね...

チェリー : (サンウを見て) 誰?

サンウ : (座席の後を見て) あ、キム代表。いらしてたんですか?

ソンミン : (サンウを見て) チン代表もいらしてたんですね。

(上映を知らせるベル。電気が消える。)

ソンミン : (ヨンウンの方に体を傾けて二人の間の空席を指して) ここは空席なんでしょうか?

ヨンウン : (戸惑う)..そこは..

(" そこは俺の席だと思いますが" - 話声に驚いて見ると、通路にギョンミンが立っている。)

ヨンウン : (驚く。小さい声で) 来たの?

ソンミン : (ギョンミン登場に驚く) あ...イ監督も来られるとは...

ギョンミン : 遅くなりました。(自分の席に向って行く)

(ソンミンの長い足のため、前を通りにくい。)

ギョンミン : (こくりと頭を下げて) 申し訳ありません。(顔は全然申し訳なさそうではない。席に座る。)

ヨンウン : (ギョンミンにささやく) 来れないんだと思ったわ。

ギョンミン : (ささやく) 来れなかったら?浮気をするのか?

ヨンウン : (唖然としてささやく) どういう意味?

ギョンミン : (顔をしかめて小さい声で) そう思うと安心して仕事が出来なくて、すっかり遅くなったよ。

ヨンウン : (睨んで、肘でギョンミンの腕を突いて) 待たせておいて、人のせいにするわけ?

ギョンミン : (負けずに肘でヨンウンの腕を突いて) 現場から急いで駆け付るハメになった。御反論は?

ヨンウン : (腹が立ち、声が大きくなる) 何ですって?!

(周りにうるさいと注意される。ヨンウンは恥ずかしい。ギョンミン、声を出さずに笑う。隣の席のソンミンは苦笑。)







(原作出処: sonkhj1116さんのブログ


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