いなかの猫の天邪鬼部屋

第18話

OnAir~シーズン2・第18話~


#安眠島、夕方

(食事中のスタッフたち。ギョンミン、セア、ボンシク、円になって座って食事中。)

ボンシク : 最近はこういう食事があっていいな。以前は下の者が飯を炊いていたものだ。

ギョンミン : (笑う) 俺も助監督の時、随分やりましたよ。食事の心配だけでもしなくて良ければ、と思った時もありました。

セア : 監督がですか?いつの事ですか?

ギョンミン : 入社してからずっとそうだったんです。放送局の仕事はカッコ良い仕事だと思っていたんですが、違うんですよ。

ボンシク : そうさ。ドラマの仕事は監督にしろ俳優にしろカッコいいのは外見だけ...。これは土方だよ、土方。...いや土方以上だな。建設現場は暗くなれば仕事が終わるだろ?この仕事は昼も夜もなくて...

ギョンミン : ところで、監督はどうしてこの仕事を?

ボンシク : 俺は、今は荒仕事より儲けが出るからやっているけど、やめようと思った事は一度や二度じゃないさ。だがちゃんとした技術はこれ一つだから、他にどこにも行けず...

ギョンミン : チキン屋は?

ボンシク : お前な...どんな技術が要るんだ?味を付けて揚げてさえいればいい事に..。つまらなくてな。

ギョンミン : (暖かく笑う) 結局、撮影場が一番楽なんでしょう?

ボンシク : そうだな。...もう何年になるのか...(遥かな目つき)

(セア、ギョンミンとボンシクの姿を見ていたが)

セア : 監督は本当に変です...

ギョンミン : え?何がですか?

セア : ホントに...理解しにくい方です。仕事で付き合う人には冷たいのに、 照明監督とはとても気楽そうです。

ボンシク : イ監督はそんな人じゃないよ。ユン作家が気難しくふるまってるんじゃないか?

セア : (ボンシクを見て不満そうに) 私、気難しい人ではないです。

ボンシク : それなら...他の理由だな。そう言えばイ監督はちょっと.. 人見知りではあるな。そうだろう?

ギョンミン : (尻こそばゆく笑う) 俺が人見知りですか? 親しくなるのに時間がちょっと掛かるだけですよ。

ボンシク : それが人見知りなんだよ、お前。

セア : それでは私とはどれだけ掛かれば親しくなると思われますか?

ギョンミン : (笑う) 俺が随分窮屈な思いをさせているようですね。申し訳ありません。

セア : いいえ。 (やや苦そうに)でも前はこんな事は考えなかったんですけど...電話する声を聞いて驚きました。ついさっきです。

ギョンミン : (!!!)...それは...

セア : (笑う) 勿論、ガールフレンドにするようにしてくれと言うわけではないんです。

ギョンミン : (冷ややかに) そうしてくれと言われても出来ませんよ。

セア : (表情が固くなる) ...そうですか...

(ボンシク、二人の間にぎこちない雰囲気を感じる。)

ボンシク : (ギョンミンの肩を叩いて) おい!夜の撮影は何シーンだ?

ギョンミン : 1シーンです。照明を確認して下さい。すぐ始めます。

ボンシク : 分かった。(セアを横目で見て立ち上がる。)

(ぎこちない沈黙が流れて)

セア : .... ソ・ヨンウン先生...いらっしゃるんですか?

ギョンミン : (!!...まずい!!)...聞こえましたか?

セア : 聞くつもりではなかったんですけど。

ギョンミン : 来られないでしょう。自分が来るべき場所でない事も知っているだろうし。

セア、 : 分かりませんよ、それは。

ギョンミン :..( 一体この女の下心は何だ?) ...(急に立ち上がり、大きい声で ) オソク!撮影準備をするぞ!

(セア、分からないという顔でギョンミンを見る。)


#翌日午前、ヨンウンの仕事部屋

(電話が鳴る。)

ヨンウン : はい。

ヘギョン : 私。順調に行ってる?

ヨンウン : まあまあだけど...どうして?

ヘギョン : 今外にいるのよ。お昼を食べにね。

ヨンウン : お昼 ?どこで食べるの?

ヘギョン : 風も気持ちいいし、外に出てみない?

ヨンウン : そうね、それじゃ...。私が車を持って行く?

ヘギョン : いいわよ。私が迎えに行くから。また電話するから、そしたら外に出て。

ヨンウン : 分かったわ。


#仕事部屋外

(ヨンウン、出る。)

ヘギョン : ヨンウナ~。

ヨンウン : (振り向く。笑っていた表情が変わる) ??

ヘギョン : キム代表がお昼を御馳走してくれるって。

ヨンウン : (困って) そう...?

ソンミン : (車から降りる) 会議でドリームハウスに立ち寄ったんですが、いい天気だったもので。

ヨンウン : はい...(ヘギョンを見て'これは何よ'と言うように口を尖らせる)

ヘギョン : (ヨンウンの反応が思いがけなく、口を尖らせるだけ)

ソンミン : (二人を見て) もしかして、私とでは気まずいですか?

ヨンウン : あ..いいえ。(困っている気配を努めて隠す)

ソンミン : 乗って下さい。お忙しいでしょうから、すぐに行って帰って来ましょう。

ヘギョン : (ヨンウンをポンと叩いて) 乗ろう。ほら。

ヨンウン : 分かったわよ...(気まずい気持ちのままソンミンの車に乗る)


#安眠島海辺撮影場

(ギョンミン、撮影に忙しい姿。セア、好奇心に満ちた目で撮影現場見守る。オソク、時々セアを気にする。)


#食堂の中の部屋

ソンミン : もうちょっとちゃんとした物を御馳走したかったんですが、こんな物しかないようで...

ヨンウン : こんな物?十分ですのに...

ヘギョン : キム代表はソ作家のファンでいらっしゃいますものね。ずっと前から御馳走したいとおっしゃっていたのに、あんたは忙しいと言って...

ヨンウン : 前にも御馳走になってるんだけど...

ソンミン : あの時は仕事のためでしたから。その前にも一度、私は待ち惚けを食わされましたが...

ヨンウン : (記憶力もいいのね..) まだ憶えていらっしゃいましたか?(笑う) 今の今まで仇打ちが出来なかったんですね。

ソンミン : (笑う) 今日のこれで仇打ちが出来たという事ですよ。

ヘギョン : (二人を見て) 何があったんですか?何の仇打ち?

ヨンウン : そんな事があったのよ。

ソンミン : ソ作家が偶然私に借金していたんですよ。

ヘギョン : (笑う) あんたが借金をして歩いてるの?稼いでるくせに。

ヨンウン : (ムッとして) それ、冗談よね?

ヘギョン : (ヨンウンを横目で見て、小さく) 当たり前でしょ。

ソンミン :(こっそり笑う)

(食事ほとんど終わって)

ソンミン : あの...ソ先生。

ヨンウン : (ソンミンを見る。) え?

ソングミン : もしかして...セリー・ジョンというのは...

ヨンウン : !!!.......(頭を上げる) どうし...て ...御存知...ですか?

ソンミン : 勘違いではないようですね。セリー・ジョンという名前の事は。

ヨンウン : (黙ってソンミン見る)...

ヘギョン : セリー?それはあんたの英文名?

ソンミン : 8年前、ロンドンにいました。出版社でしばらくバイトをしたんです。

ヨンウン : ??.....出版社って?

ソンミン : 名前も覚えていません。あの時、自分の書いた小説を持って入って来て、仕事をさせてくれと言っていたのは...

ヨンウン : それじゃ、あの時一度見ただけなのに憶えていらっしゃったんですか?

ソンミン : あの時、セリー・ジョンは少女みたいな顔で子供を抱いていたんです。子供が子供を産んだみたいだったんです。仕事を与えられると両眼がきらめいて、決して忘れられない姿だったんです。

ヨンウン : でも私はその仕事が出来なかった...

ソンミン : 一週間経っても連絡がなく、書いておいた住所を訪ねました。その日が多分ロンドンを発った日だったんでしょう。

ヨンウン : (胸が苦しい)...

ソンミン : 家の前に到着した時、大きな鞄を持って車に乗る姿を見ました。顔は随分やつれていましたが、確かにセリー・ジョンだったんです。確認してみると、ロンドンを発っていました。その後、私もすぐ帰国する事になりました。ソ・ヨンウン作家がセリー・ジョンだったとは、想像も出来ませんでした。

ヨンウン : (暗く) よく分かりましたね...

ソンミン : まだあの時の姿が心に残っているから。偶然放送局で見てから、絶対に確認したいと思っていたんです。

ヘギョン : (荒唐な、何か心細い) ...これは..本当にすごい偶然ですね。

ソンミン : 偶然と言えば偶然です...

ヨンウン : (淡々と) あの時の事はあまり思い出したくないんです。特別な事でもなかったでしょうに、私を憶えていて下さった事には感謝します。

ソンミン : (ヨンウンを見て微笑む) 私には特別な・事・だったんです...

ヨンウン : (表情固まる)!!!....






(原作出処: sonkhj1116さんのブログ

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