いなかの猫の天邪鬼部屋

第23話

OnAir~シーズン2・第23話~


#市内某スタジオ、スンアCF撮影場所日曜日夕方

(照明の下、笑っているスンア。あれこれポーズを変えて撮影中。キジュン、スタジオの一方でスンアを見守っている。)

" キジュンさん!"

キジュン : (振り向いてヨンウンを見付けて) お、いらっしゃい!

ヨンウン : (キジュンを見て嬉しそう) カッコ良くなったわよ~。

キジュン : それは元々だよ。今更何を。(笑う。ヨンウンの後ろのギョンミンを発見) イ監督!(手を出す)

ギョンミン : (明るく) チャン代表。忙しいですね、相変らず。

キジュン : (にっこりと笑う) オ・スンア一人を連れて働く企画社だから、職員が他にいないんですよ。

ヨンウン : いつ終わるの?

キジュン : さあ...よく分からない。...そういうものだろ?

ヨンウン : 食事は?

キジュン : まだだよ。遅くなれば別途出る事もあるけど、どうなるか分からないよ、まだ。

(スタジオの一方で " お疲れ様でした、オ・スンアさん、お疲れ様でした" という声が聞こえる。)

キジュン : 終わったようだな。

(スンア、スタッフに目礼して近付いて来る。)

ヨンウン : スンアさん。

スンア : (ヨンウンとギョンミンを見付けて笑う)まあ。こんな所にまでいらっしゃって...。お元気でしたか?お二人とも。

ヨンウン : (温かく手を出す) ええ。あなたもお元気そう。ますます綺麗になったわね。

(ギョンミンとキジュン、黙って笑う。)


#ヨンウンの仕事部屋

(四人、楽に座って話す姿。楽しい雰囲気。)

キジュン : ところで結婚はしないのか?

ヨンウン : (ギョンミンを横目で見て笑う) うん...

ギョンミン : 俺がちょっと待ってくれと言っているんですよ。

キジュン : どうして?...

(ギョンミン、キジュンを見て黙って笑う。)


#仕事部屋の個室

(ヨンウンとスンア、床に座ってベッドに寄り掛かっている。)

ヨンウン : どう?そっちの生活は。

スンア : 頑張る価値はあります。ある意味ここより楽なこともあるし...

ヨンウン : あまり顔が知られていないという事?

スンア : (にっこりと笑う) はい。

ヨンウン : そう...。顔が売れる事、スターになる事。私には出来ない事だから、羨ましいけど...

スンア : どうしてです?ソ作家もそれなりに有名じゃないですか。台湾にもファンが多いですし。

ヨンウン : (笑う) 作家の一人としては、どうかしら? 私は、ほら、ビジュアルにもなるから。

スンア : (笑う) 昔のままですね。

ヨンウン : 人は簡単には変わらないのよ。急に変われば、それは死の徴兆かしら?だから私は私のままで生きるのよ。

スンア : (楽しい)ソ作家と話すと本当に面白いわ。.... 私、以前は随分失礼な事をしたでしょう?

ヨンウン : オ・スンアにとっては、あの程度は失礼でも何でもないんじゃない?

スンア : どういう意味ですか?

ヨンウン : 失礼な事をされたのは私だけじゃない、という意味よ。覚えてる?ジヒョンの演劇を観に行って...

スンア : あ...あの時のことね。

ヨンウン : (にっこりと笑う) あの時は本当に腹が立ったけど...(スンアを見て) 気になるの。あの時、ただ私に楯つきたかっただけなのか、プライドのためだったのか。

スンア : ..両方ともです。分かるでしょう?好意的に見られていないと思うと心が不安定になるんですもの。

ヨンウン : (笑う) それは、私もそう。

スンア : ところで...本当に安定していらっしゃるようですね。

ヨンウン : え?どうして?

スンア : そう見えるんです。顔も心も...恋愛してそうなったのかしら?

ヨンウン : (クスクス笑う) ...それは私だけじゃないでしょ?あなたは?

スンア : 私は...(腰を伸ばして)待った時間がとても悔しくて...不安定です。

ヨンウン : キジュンさんに1年間会えなかった事?

スンア : それもあるけど...

ヨンウン : (スンアを見る)...?

スンア : 私は ..7年待ったんです。

ヨンウン : (思いがけない) 7年?どうして?

スンア : (笑う)....


#仕事部屋の居間

ギョンミン : プライドなのかもしれないけど...自分の女に不必要な荷物を背負わせたくないんです。

キジュン : 分かります、その気持ち。

ギョンミン : (キジュンを見る) チャン代表もそうですか?

キジュン : ...俺がスンアを置いて一人でアメリカへ行った理由を御存知ですか?企画社の社長でなく、オ・スンアの男になるためだったんです。男とは、自分の女を守る事が出来なければ自信がなくなるものだから。

ギョンミン : (笑う) 全ての男が全て俺たちみたいだと思いますか?時には...いいかげんな性格だったら良かったのにと思う事もありますよ。

キジュン : (ギョンミンを見て) 監督が?監督がそんなふうに考えるとは。

ギョンミン : (にっこりと笑う) 意外でしたか?休みたくて、座りたくて、寝たくて、遊びたくて....。 本能じゃありませんか?

キジュン : そうですね..本能ですね...

ギョンミン : ただ目を閉じていよう...そう思う時もありました。

キジュン : ....

ギョンミン : でも...そうすると...次には自分が消えるような気がしたんです。

キジュン : 次には?

ギョンミン : (にっこりと笑う) ....自分の女を守るのに必要なのは、プライドでしょうか?譲歩でしょうか?

キジュン : ....?

ギョンミン : プライドを守ろうとすると自分の女が不安に思い、自分の女のためにプライドを諦めようとすると自分の存在に対する疑問が起こって...。そうなると、自分の女の顔をちゃんと見られるかどうか分からない....。(キジュンを見てにっこりと笑う) 俺はこんなふうに複雑に生きているんです。

キジュン : 同じような話ですけど...スンアから去る時、俺も大変だったんですよ。

ギョンミン : それじゃ、チャン代表は俺より先に行っているんですね。難しい峠を越したから..羨ましいです。

キジュン : でもイ監督は結婚を延ばすというだけで、いつも一緒にいるじゃないですか。それにソ・ヨンウンの頭の中には、ずっとイ・ギョンミンしかいなかったんですよ。

ギョンミン : (笑う) 俺の頭の中もそうです。

キジュン : (呆れて口を開ける) うわぁ....

ギョンミン : (片手でそっと口を覆って笑う。顔いっぱいに幸せそうな笑み)


#月曜日、ソウル隣近撮影場

オソク : 今日の撮影はこれで終りです。明日定刻に集まってください。 お疲れさまでした。

ギョンミン : (ボンシクに) お疲れ様でした。また明日。

ボンシク : (ギョンミンを見て) どこかに行かないか?一杯やらないか?

ギョンミン : (ボンシクの顔を怪しげに見て) どうしたんですか?昼酒は良くないでしょう?

ボンシク : いや何...今日は妻の顔を見たくないんでね。

ギョンミン : (にっこりと笑う) なぜです?何かあったんですか?

ボンシク : (ため息)...仕事のせいでぐちをこぼすと分かり切っている時は...そこに妻はいない方がいいんだ。

ギョンミン : ...

ボンシク : 忙しいか?

ギョンミン : 申し訳ありません。ある人に会わないとならない用事があるんです。

ボンシク : そうか。それじゃ...俺は放送局に寄ってから帰るか...

ギョンミン : そうですか。今度は俺が奢りますよ。


#ソクヒョンの病院控室

(ギョンミン、ソファ-に座って考え込んでいる。)

看護婦 : お入り下さい。

ギョンミン : 患者.. 終りですか?

看護婦 : はい、今日の予約の患者は全部終わりましたけど。

ギョンミン : そうですか....

(ギョンミン、院長室に行く。)


#院長室

(ギョンミン、ソファ-に座る。ソクヒョン、専用ソファ-に座る。)

ギョンミン : .....(テーブルを見て) 昨日...ヒョンスに会って来た。

ソクヒョン : .....(下を見て) どうしてた?

ギョンミン : (ソクヒョンを見る)...本当に気になるのか?ただ言ってるだけなのか?

ソクヒョン : ..............

ギョンミン : こんなふうに終わらせるつもりなのか?

ソクヒョン : ...よく分からない...

ギョンミン : 整理出来ない関係なのか?

ソクヒョン : (ため息)...複雑なんだ...ただ..成り行きにまかせていたいんだ...

ギョンミン : (腹が立つ) そんな.... お前が今言った言葉がどれだけ無責任な言葉なのか.. 分かってるのか?

ソクヒョン : ...分かってる...でも...何が一番いいか分からないんだ。ヒョンスがもう一度俺を受け入れてくれるかどうかも分からないし、あちらも...(苦笑する) 事が起こるにまかせたまま...。大便を洩らしてその後始末が出来ないという心情だよ。

ギョンミン : (息苦しい)...もう作られた関係をなかったことにするのは不可能だ。手術をするには刃で傷を付けないとならないだろう?重要なのは...ヒョンスを選ぶかその女性を選ぶかという事...

ソクヒョン : 実は、ヒョンスが受け入れてくれたとしても...自信がないんだ。

ギョンミン : .....?

ソクヒョン : (息をついて) またあの生活に戻ったら、全く同じ状況を繰り返すんじゃないか?顔も見られない女をどう待って暮らすんだ....

ギョンミン : ...

ソクヒョン : 忙しい時は、一週間に一度帰って来る時もあるという程度。他の時はほとんど常に12時過ぎに帰って来る。いくら忙しくても顔を見るくらいはしたい。泣き言を言う方法がなくて、そんなに働いてどれだけ稼げるんだと言ったんだが...

ギョンミン : ....

ソクヒョン : こんな事になるなら一体なぜ結婚したのか....

ギョンミン : ....

ソクヒョン : .....

ギョンミン : ヒョンスとはいつから付き合ってたんだ?

ソクヒョン : ....本科 4年生の時からだ...多分..

ギョンミン : (ソクヒョンの顔を見る) お前.. 卑怯だな...

ソクヒョン : 何だ?

ギョンミン : お前は、恋愛期間にヒョンスがどの位待ってくれたのか、全て忘れたのか?インターン、レジデント、軍医...君を待ったヒョンスは何なんだ?

ソクヒョン : .....(頭を下げる)

ギョンミン : ただ他の女に目が行ったんだと言え。いたずらにヒョンスを言い訳にするな。その方がまだ見ていられる。

ソクヒョン : (顔が赤くなる) ....

ギョンミン : お前を待ってくれたヒョンスの気持ちを少しでも考えたら.... そんな言葉でヒョンスを傷付ける事は出来ないはずだ。結婚もしていない俺の話がどれだけお前に届くか分からないけど...。関係を維持させるのは感情じゃないだろう?理解と努力だろう?それが大人のする愛じゃないのか?

ソクヒョン : ....(目が赤くなる)


#夜、ヨンウンの家の近くの遊び場

(ぶらんこに座っているギョンミンとヨンウン。)

ヨンウン : (ため息).... それじゃユンPDは...結局別れるの?

ギョンミン : 分からない...。どれだけ傷付いた状態なのか分からないから...

ヨンウン : この前、チュニにこんな事を言ったの。 (にっこりと笑って) 理解も出来ない子供に。

ギョンミン : どんな事を?

ヨンウン : 愛する関係を守るのは信頼だ。信頼が壊れたら直す事は出来ない...

ギョンミン : .....そんな事を?....(笑う) 子供には確かに難しい言葉だな。

ヨンウン : 二人の間に信頼は残っているのかしら?

ギョンミン : .... 言い訳みたいだけど...男にはこんな事があるんだ。

ヨンウン : (頭を回してギョンミンを見る)..?

ギョンミン : (ヨンウンを見て笑う) 女には確実に理解出来ない部分なんだけど...

ヨンウン : 何なの?

ギョンミン : 愛してなくても上手くやる事が出来るんだ、男は。

ヨンウン : (眉間細くなる)...?!

ギョンミン : ...彼がしている事がそんな種類の外道だったら ....むしろ安心だという事だよ。

ヨンウン : (深刻になる)....

ギョンミン : (ため息) ヒョンスがそれを理解してくれれば回復が不可能な事もないんだけど...

ヨンウン : (ますます深刻になり、息をする音が大きくなる)...

ギョンミン : (ふとヨンウンを見る) ?.....どうしたんだ?

ヨンウン : (ギョンミンをじっと見て興奮する) それじゃ...監督もそんな事が出来るの?誰?誰と...(興奮して言葉を結ぶ事が出来ない)

ギョンミン : (驚いて) いや、それは ....

ヨンウン : 愛してなくても上手くやる事が出来る、ですって!!!!!!!!!!!

ギョンミン : (言葉が詰まり、目が大きくなる)..!!!!

ヨンウン : 今日から今すぐユン作家とは目も合わせないでね!!!!!

ギョンミン : (ぼんやりした、呆然とした表情)....

ヨンウン : (後ろ向きに座ってハアハアする) ...本当にイヤだわ!!

ギョンミン : (ため息) .......

ヨンウン : (腹を立てる)........(泣きそうな)

ギョンミン : ..(ヨンウンの後姿を見る)..................(笑う) 心配するな。俺は自分をよく分かってるから。

ヨンウン : (後ろを振り返って) 何の話?

ギョンミン : 俺も男だ。分かってるからいつも気を付けてるんだよ。

ヨンウン : (腹が立つ) ホントに....どうして男ってそうなの?

ギョンミン : (立ち上がってヨンウンの前に座る) ......(ヨンウンを見て暖かいほほ笑みを作る。) 幸い俺の天使はいつも俺のそばにいるからな。

ヨンウン : ふーん。天使ね。

ギョンミン : (ヨンウンの手を取って) 俺も頼みがある。

ヨンウン : (つんとして) 何?

ギョンミン : .... 他の男に優しくするな。俺はヤキモチ焼きだから。

ヨンウン : 何?どうして今、矢の矛先が私に向かって来るわけ?

ギョンミン : 君が信じられないんじゃなく...男は全てオオカミだろ?だから...気を付けろ。特に俺がいない時。

ヨンウン : (口を尖らせて) 私、性格が変で優しく出来ないの。知ってるでしょ?

ギョンミン : なんで?君はその変な性格も可愛いのに。

ヨンウン : (呆れる)...まったく..

ギョンミン : (笑ってヨンウンを見る)...

ヨンウン : (ギョンミンを見て笑いが滲む)...

(ギョンミン、近付いてヨンウンにキス....暗い遊び場、街燈の明りを背にした二人の影...)






(原作出処: sonkhj1116さんのブログ




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