いなかの猫の天邪鬼部屋

第32話

OnAir~シーズン2・第32話~


#ドリームハウス前

(ソクヒョン、車の中。時々首を回して通る人を観察する。ドリームハウス入口を眺める。)

(しばらく後)

(ヒョンス、ドリームハウスから出て車に乗って行く。ソクヒョン、付いて行く、)


#放送局駐車場

(放送局から出たヒョンス、運転席のドアを開ける。ボンネットの上に影。首を上げるとソクヒョンが思い詰め

たような目でヒョンスを見ている。)


#局長室

(デスクの前にギョンミンが立っている。)

ギョンミン : (口をつぐんで机を見る)...

局長 : (ため息) 放送一週間前に...無理じゃないか?

ギョンミン : 差し支えないようにします。

局長 : (ため息。考えて)....分かった。ただし。...三日間だ。

ギョンミン : (安心する) はい。

局長 : .... (ギョンミンを見てからやや苦く笑う。) お前はもう少し軽ければ.... いいんだが。

ギョンミン : え?

局長 : それだと多分もっと良い作品が出来るんだろうが...。少しだけ楽に考えて...自分を鎖につながずに...

ギョンミン : もっと高い視聴率が出るとおっしゃりたいのでは?

局長 : (息苦しい) お前は...融通性がない.... いや...やめよう。

ギョンミン : (にっこりと笑う) 皆が融通性を持ったら中心は誰が守りますか?

局長 : (ギョンミンを見る) おい..それはまた別に守る人がいるんだから...

ギョンミン : 俺は...俺がその人だと思います。

局長 : (ギョンミンを見ながらため息) 分かったからもうやめよう。....お前と何の話をしていたんだっけ?...

とにかく1月放送に差し支えないようにしてくれ。

ギョンミン : はい。では行って来ます。(目礼して出る)

局長 : (ギョンミンの後姿を見て独り言).....惜しい奴だ....


#放送局裏庭、日差しの中

(ソクヒョンとヒョンス、ベンチに座っている。)

ヒョンス : (乾いた表情。地面を注視)....

ソクヒョン : (ためらう。ヒョンスを見る) ...元気だったか?

ヒョンス : ...うん...

ソクヒョン : (じいんと熱くなる) 俺たち ....どうなるんだ...?

ヒョンス : 何が...?

ソクヒョン : 俺は.... 整理したんだが....

ヒョンス : (上気して目を細める) .... それで..?

ソクヒョン : (頭を下げる) 君がが受け入れてくれないなら.... 仕方ないが.... (見て) ヒョンス..

ヒョンス : (赤くなった目、奥歯かむ)....

ソクヒョン : ヒョンス.....こうはならないと思って...こんな事にはならないのだと思って..

ヒョンス : 何にならないの?こうとかこんな事とかって何?あなたが脇見をした事?私が分からなければ良かっ

たの?私は ...何なの?

ソクヒョン : いや、それは .....(息を整えて) .... 君も大変だったのに、俺は自分の事ばかり考えて....自分

が寂しい事ばかり....。今、こんなふうに終わらせたら...君も俺も...全てが終わる気がして...

ヒョンス : (涙を溜める)....

ソクヒョン : (じいんと熱くなる) すまない... 君を苦しめて...

ヒョンス : (涙を飲んでにっこりと笑う) 何が変わるの?私たちはもう終わったの...。もう一度やり直しても、

またその生活が繰り返されるだけじゃないの。私は仕事を続けるつもりだから。そしてあなたはまた耐えられな

くてなって...

ソクヒョン : (ため息)そうだね...。状況は変わらないだろうね。だけど、君と終って状況が変われば ....そう

すれば何がどれだけ変わるのか...

ヒョンス : ....

ソクヒョン : 一ヶ月間考えてみたんだ。結論は...俺が変わらなければ状況が変わっても結局俺の生活は変わら

ないだろう..という...

ヒョンス : (奥歯かむ)....

ソクヒョン: (目を閉じて) ごめん...ごめん...ごめん、本当に...

ヒョンス : (涙が落ちる。むせび泣く)

ソクヒョン : (心が痛い) ごめん。(涙を溜める) ヒョンス..本当にごめん....

(ヒョンス、声を出してむせび泣く。ソクヒョン、ヒョンスの前に座って頭を下げる。)

ソクヒョン : (震える声) ごめん...許してくれ...


ヒョンス : (そんなソクヒョンを見て拳で殴る。むせび泣く)..こいつ..こいつ...悪い奴.... どうしてやろうか

...どうして...

(ソクヒョン、涙を流してヒョンスを抱く。)


#PD室

(ギョンミン、机に座っている。電話のベル鳴る。電話に出るギョンミン。)

ギョンミン : はい、イ・ギョンミンです。

セア : ユン・セアです。..監督。

ギョンミン : はい、どうされたんですか?ああ..シナリオは全部完成しましたか?

セア : はい...メールでたった今お送りしました。...それで..

ギョンミン : はい、何でしょう?

セア : タイトルを変えてはと思うのですが...

ギョンミン : タイトルを?どうしますか?

セア : メールの後ろに添付しておいたので、読んで見てください。見て意見をおっしゃってくだされば...

ギョンミン : はい..確認して電話します。

セア : はい...それでは。お疲れ様です。

ギョンミン : はい、お疲れ様でした。

(ギョンミン、受話器を下ろしてメール確認。シナリオを確認する。)

(最後の台詞に下線が引かれている。)

" もしも ..もしも...こんなにもしもを叫んでも、あなたはどこにもいないのですね。でも私が、数万回のもし

もを空に送ればあなたが私の前に現れるなら...それなら私は...今日も空に叫びます。...これは私の祈りだから

.."

(PS: 記憶というタイトルより...IF...がどうかと思うのです...この話も現実にはありえない愛を描いたものだ

から...)

(ギョンミン、十分に考え、電話を掛ける。)

ギョンミン : イ・ギョンミンです。.....悪くないですね。....そうしましょう。


#12月29日早朝、ヨンウンのアパート

(ベルが鳴る。ヨンウン、目をこすって起き上がる。)

ヨンウン : 誰?こんなに早く...(インタホンを取る) どなたですか?

ヘギョン : (インタホン画面) 私。ドアを開けて。早く。

ヨンウン : ヘギョンオンニ?何なのよ、こんなに早く。

ヘギョン : うるさい!早くドアを開けなさい。

ヨンウン : (呆れる) 何なの...。(玄関に行ってドアを開ける) どういう事?

ヘギョン : (入って来て) 時間がないわ。さっさと服を着て。

ヨンウン : 何?どこに行くの?

ヘギョン : (ヨンウンの部屋に行って箪笥を開けて) これを着る?これは?(箪笥に掛かった服を示す)

ヨンウン : (呆れる) 何するのよ。一体これはどういう事なの?

ヘギョン : (ブラウスとズボンを取り出して) 外はちょっと寒かったわ。厚着しましょう。

ヨンウン : (腕組みして) オンニ...これって拉致と同じことよ。私には何も聞かずにどこに行けって?

ヘギョン : (ヨンウンを見て) とにかく付いて来なさい。絶対後悔しないから。

ヨンウン : (嘲笑) 私がそんなに甘く見える?体力は落ちていても、まだ強制されてどこかに引かれて行くほど

弱くはないんだから。お世辞に乗せられる私でもないし。

ヘギョン : (ヨンウンを見て短い息) 行きましょう。行かないと後悔するわよ。

ヨンウン : どうして?

ヘギョン : 行けば分かるわ。いい所よ。

ヨンウン : だからそのいい所はどこなの???

ヘギョン : 頼むから今日は何も聞かずに行ってちょうだい。あなたと私は15年来の関係でしょ?私を信じられな

い?

ヨンウン : (ヘギョンを見て、ため息) .....オンニ ...信じるわ...でも...

ヘギョン : お願い。頼むから、ただ私がしようと言うとおりにして。ね?

ヨンウン : いいわ。とにかく行くわ。行って気に入らなかったら私はすぐに帰るわよ。分かった?

ヘギョン : そうよ。とにかく行きましょう。いい?

ヨンウン : 分かったわよ。

(ヨンウン、黙って服を着替える。ヘギョン、時計を見て苛々する。)


#江南のある美容室

(ヨンウン、ヘギョンに引かれて入って来る。)

ヨンウン : 何なの?何で美容室?いらないわよ。

ヘギョン : (無視する) こんにちわ~。

(女が出る。)

女 : はい、いらっしゃいませ、お客様。

ヘギョン : 今日9時に予約したソ・ヨンウンです。

女 : はい。お客様、こちらにどうぞ。

(ヨンウン、面くらう。ヘギョンに引かれて行く。)

(二時間後)

(ドレスルームの椅子に座っているヨンウン、用心深く目を動かして様子をうかがう。)

(ヘギョンと女がドレスを持って入って来る。)

女 : 新婦様、これを一度試着してみてください。あらかじめ選んでおいたものが合うかどうか...

ヨンウン : (新婦?....まさか)...

(ヨンウン、着せられるままになり、鏡に映った姿を見る。白いドレスの中の自分が夢のようで...)

ヨンウン : (黙って鏡だけ見る)....

ヘギョン : (口を開けて) ウワー。ホントにあんたなの?こんなに綺麗だなんて、若い花嫁たちも敵わないわ...

(ヨンウン、呆然として、ドレスを順番どおり試着してみる。)

(しばらくして、新婦ドレスルームの鏡の前に座っているヨンウン。鏡の中の自分を呆然と見ている。白い顔、

赤い頬。輝く目、しっとりした瞳....仕切りの間に見える影....)

(ヨンウン、鏡の中の影に視線をやる。鏡の中でギョンミンが正装してヨンウンを見て微笑んでいる。ヨンウン

、ゆっくり首を上げる。ブーケを持ったギョンミン、カーテンを閉めながら近付く。)

ギョンミン : (搖れる目。感激を抑えられない。深呼吸。片膝を立てて座る。ヨンウンの目を見て) 俺と...結婚

してくれるか?

ヨンウン : (感動する。涙が溜る。震える声) 私と...結婚してくれるの?

ギョンミン : (胸がいっぱいになる。顔いっぱいに微笑滲む) うん、結婚してあげる。

ヨンウン : (笑う) 結婚してあげる。

(二人、向かい合って声を出さずに笑う。ヨンウン、涙をこぼす。)






(原作出処: sonkhj1116さんのブログ


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