いなかの猫の天邪鬼部屋

第20話

OnAir~シーズン3・第20話~


#日曜日、郊外

(セアとサンウ、手をつないで背の高い並木道を歩く。)

セア : (見て笑う) 映画なんかを見ながら、恋愛したら必ず一度してみたいと.. 思ったわ。こんな日が来るなんて思わなかったけど...

サンウ : (見る)...どうして?

セア : (苦笑) 私、人と上手く付き合えないの。疑心が多くて...

サンウ : (やや苦く笑う) ...知ってるよ。

セア : (見る) 何?人と付き合えないという事?それとも疑心が多いという事?

サンウ : (微笑む) 二つとも。

セア : (怪しげな) どうして?私は...全てが相手に見えてしまう性格なのかしら?

サンウ : (見て笑う) 見えてしまうのじゃなく、あなたが自分で言ったでしょう?覚えていない?

セア : ....いつ?(考える) ....あ!....(くすぐったい微笑み) ...

サンウ : ..思い出した?

セア : (はにかむ) ...はい..

サンウ : (黙って笑う)...

セア : ....ところで、気になる事があるの。

サンウ : 何?

セア : あの時は本当に偶然だったの?あのワインバーでは...

サンウ : ああ。

セア : それじゃ、あの年末の集まりの席も?

サンウ : ああ。

セア : ...... それじゃ.....スーパーマーケットでも?

サンウ : ああ。

セア : (ちょっとがっかりしたような) .....

サンウ : (見る) 求めている返事は.. これじゃないか?....追い回したと言って欲しかった?

セア : (笑う) いいえ...分からないわ。...偶然を望むのか故意を望むのか...

サンウ : ..............俺があなたに初めて会ったのはいつなのか、分かるか?

セア : (分かりたい) いつ?

サンウ : 放送局のエレベーターの前で...

セア : そう....それはいつ?

サンウ : ドラマ局の前でだったから.... 多分去年の8月か9月頃.. だった...

セア : あの時.. 私を知っていた?

サンウ : いや。

セア : それなのに、どうして憶えているの?....(目を転がす) もしかして、私がちょっと...

サンウ : (見る) ちょっと...何..?

セア : (口をつぐんで笑う) ....

サンウ : (暖かい目) そう....綺麗だったから。でも、綺麗な人はいつも見ているわけだから...別の理由のせいだよ。

セア : (ひそかに残念がる) そう...それじゃ他の理由があったという事ね?

サンウ : ......ああ。

セア : (見る) ...何?

サンウ : ......

セア : ?

サンウ : (見る) ...................... (頭を回して遥かな目)....

セア : (歩みを止める。知りたいという目で見る) ......?

サンウ : (歩みを止める。相変らず遥かな目) .............(セアを見る) ...あなたの目。

セア : ??.................!!!!

"ユン作家と似た目を持った女を...知っています....馬鹿みたいに死んでしまってどれも出来なくなってしまいました..."

セア : ......................(詰ったような目でサンウを見る)

サンウ : (見て、視線をはずす) .........

セア : (妬み、惜しさ、憐愍、痛み,...複雑な) ..........

サンウ : (暗くなる顔) ......

セア : (妬みと憐愍が入り混じり、涙を浮かべる) .......そうだったの。

サンウ : (見る) .....

セア : (涙が見えないように頭を回し、唇を噛む)....

サンウ : (気になる) .....

セア : (見えないように涙を飲む).......

サンウ : (セアの姿に心が痛い) ......もう....過ぎた話だから.....

セア : (頭を回したまま涙を落とす) ......そう...?

サンウ : (セアの前に立つ。セアを下から見上げる。薄い微笑み) 過ぎた話だよ.....(遥かな目).....あなたを憶えていたのはその目のせいだが....あなたを....

セア : (控え目に見る) .......

サンウ : あなたを.....求めるようになったのは ....あなたのせいだから.....

セア : (ジーンとする。涙を溜める) .......

サンウ : 今俺の前にいるのはユン・セアだから.....

セア : (涙が落ちる) ........(ためらう) ...愛して...います....

サンウ : (搖れる目)..........(額に口付ける).............(穏かな目) ....俺も ...同じ....

セア : (ためらうサンウの姿に痛み、辛さ....'じれったいんだから'...) .....(頭を上げて近付く)

(サンウ、セアを見下ろす。用心深く引き寄せて抱き、唇を重ねる。しっかり腕に力を込め、壊れそうなほどに抱き締める....)


#夜、セアのアパート玄関前

(ドアを開けてサンウを見るセア。)

サンウ : (微笑んで) おやすみ。

セア : (名残惜しい。ためらう) ....はい.....それじゃ。

サンウ : (セアの目を見て視線を落とす) ............(セアの頬を触る。見ながら手を下ろして行く。そっと微笑んで帰って行く)

(セア、サンウが消えるまで見る....)


#サンウの部屋

(窓辺に座ったサンウ。指先を触る。やや苦い微笑み。ため息をつく......)


#6月末、サンウの事務室

(インタホンが押される。)

サンウ : チェ室長、どうぞ入って。

(しばらくしてチェ室長が入って来る。)

サンウ : (ファイルを渡す) この子達は新しく入りたいと願書を書いた子達だから、チェ室長がちょっと見てくれ。

チェ室長 : え?社長は?

サンウ : 俺も見るよ。でも....俺が見る部分とチェ室長が見る部分とは違うから。

チェ室長 : 私は何を....?

サンウ : 身体検査。男性ではどうしても見られない部分もあるし、女であるチェ室長が見て判断する。手入れするところがあったらチェックして。いずれにしろトレーニングはするのだから、管理しようとしたら一度は見ないとならないんだし。

チェ室長 : はい。 (ファイルを見る) まだ10代ですよね?

サンウ : ああ。10代だがもうすぐ20代だ。再来年には20歳だから。

チェ室長 : 分かりました。面接はいつですか?

サンウ : 明日午後5時に取った。まずはここに来いと言ってあるから、君も来なさい。

チェ室長 : はい。(目礼して出る)

(サンウ、閉まるドアを見る。組んだ手に顎を乗せてしばらく休む。考える。電話を手に取る。)

サンウ : (電話を見下ろしボタンを押す)......

セア : もしもし?

サンウ : ....俺だよ。

セア : (嬉しい).....はい。

サンウ : .....何してた?

セア : 何も...ただ本を読んでいただけ。

サンウ : .....(時計を見て) どこにいるんだ?

セア : 放送局。

サンウ : .....仕事?

セア : いいえ。ただ出て来ただけ。

サンウ : ずっとそこにいるつもり?

セア : 分からないわ.....


#放送局休憩室

(セア、隅に座っている。時々頭を上げて入口を見る...)


# ドラマ局PD室

(サンウ、ギョンミンの机のそばにいる。)

ギョンミン : シナリオは出たけど(シナリオを渡す) .... ちょっとせわしないんです。助演が一つ空いているんですが、御覧になりますか?

サンウ : (シナリオを見る) ぜひ。オーディションはしないとならないでしょう?

ギョンミン : はい。(笑う)

サンウ : (苦笑) いつしましょうか?


#1階ロビーエレベーター前

(エレベーターが開き、ギョンミンとサンウが降りる。)

ギョンミン : これからどこへ行かれるんですか?

サンウ : ....(見る。にやりと笑う)...

ギョンミン : (怪しげな).....

サンウ : ....俺はここで別の用を足しに行きますよ。

ギョンミン : (見る) ...そうですか。では来週お会いしましょう。

サンウ : はい。お疲れ様です。(ちょっと見て、休憩室の方に行く)

ギョンミン : (サンウの後姿を見ながら目をまばたかせる) .....


#休憩室

(セア、入口を見てサンウを発見。セアと目が合ったサンウ、何事もなかったように出る。セア、出て行くサンウを見てバッグを持って立ち上がる....


#ロビー

(サンウ、そっと振り返って出口に出る。セア、周りをそっと見回してゆっくり出口に行く。別の廊下から歩いて来たギョンミン、サンウの姿を発見。続いて後ろにセアを発見。ギョンミン、二人を見て首を傾げる。ガラス窓の向こうに二人を見る。ギョンミン、微笑む...)


#放送局近く、漢江水辺

(サンウの車中。並んで座った二人。)

サンウ : (苦笑) ....

セア : (見る) ...どうしたの?

サンウ : ......うるさい所だから....(見る) 不満そうだな....

セア : .....(苦笑) ....私もうるさいのはイヤ。無口な方だから。

サンウ : .....もし ....

セア : (見る) ..え?

サンウ : ..もし...俺が誰かに言ったら....

セア : ......誰?

サンウ : .....話を広める人ではないけれど....

セア : .....イ・ギョンミン監督ですか?

サンウ : (見る).....(苦笑) どうして分かった?

セア : (見る).......あなた、友達がいないでしょう?イ監督のほかに...

サンウ : (瞬き) ....どうして分かる?

セア : .....怒らないと約束して。

サンウ : ....何を?

セア : (ためらう) 私.... あなたの事をちょっと調べたの。

サンウ : (意外だ) 何?

セア : (そっと様子をうかがう) .... ただちょっと知りたくて、ソ先生に聞いたの。

サンウ : (無表情な) ソ作家はどう言ってた?

セア : ......(苦笑)....あなたは....悪い人だと言ったわ。

サンウ : ....?(そっと笑う) それから?

セア : ............ でも同時にまた.... 暖かい人だと.....

サンウ : (瞬き) ............ ソ作家は間違っているな。

セア : (見る).....

サンウ : 悪い人というのは当たっているけど、暖かい人ではないよ。

セア : (笑う) .......分かるわ。

サンウ : (見る)......(苦笑) 分かる?分かっていてどうしてあなたは...

セア : (見る).....愛しているのかって?

サンウ : (照れくさい。視線を避ける)...ああ...

セア : (寂しさを隠して)....私も分からないわ.....(遠くを見て) こんなあなたをどうして好きになったのか...なぜ...愛しているのか..

サンウ : (視線が下がる)...........申し訳ない.....(見る)

セア : ......(やや苦い微笑み。見る) 私も ..私に申し訳ないわ。こんなあなたを愛するようになってしまって...

サンウ : (見て苦笑) .......(セアの顔を見て引き寄せて抱く).....(頭に口付ける)...... あなたが好き......

セア : (ジーンとする。微笑む) .....あなたが好きです。

サンウ : (セアを見下ろして指で顎を持ち上げでゆっくり口付ける。離してまた口付ける。口元に広がる微笑み)あなたが好き.....





(原作出処: sonkhj1116さんのブログ


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