いなかの猫の天邪鬼部屋

第15話

第15話 世界で最も美しく悲しいウェディングドレス

誰も招待されない祝福されない貧弱な結婚式


心を捨てた新郎と新婦、証人になってくれた二人。
遠くでそれを見守る新婦の昔の男。
微妙に入り乱れてしまった悲しくも美しいモナコの王祖の結婚式が始まっていた。


01.ピーターパンドウのシャベル時代

幼い頃、目を閉じてパッと手に掴んだ本がモナコ関連書籍だったという契機で、現実との妥協を拒否してモナコの幻想に酔ってしまったせいか、ドウは体だけ成長した幼い子供のように感じられる時がある。
あたかもネバーランドの幻想に捕えられて成長出来ないピーターパンの姿と似ている と言える。
ピーターパンの最後は、現実世界に戻って行くウェンディを再び探しに来たピーターパンに'ごめん、ピーターパン。私は大人になったからネバーランドに戻れない'という言葉で、もう成長してしまって幼い子供の幻想に閉じ込められなくなったウェンディの成長を描いているが、 ここでピーターパンがドウだとしたら、ネバーランドはネオモナコ、ウェンディはウンスという事 だ。
ドウはウンスを想像力が不足した子供(17話)だと言ったが、豊富な想像力のおかげで現実と非現実を区別出来ず ネオモナコの虜(ピーターパン)になったドウに比べ、ウンスは想像力は不足していても最小限世界と妥協して現実を直視出来る頭を持っていた ようだ。
いずれにせよ、シンとウンスの和やかな姿にいらいらして行く内心を治められず、腹いせにギョンアと結婚を決めたドウを見ていると、 目玉に津波 が押し寄せたようだ。
自分の考えでは、ギョンアと結婚すると発表すれば、後でウンスが'お兄さんの大切さが分かった~、結婚しないで~'と結婚式をやめさせに出るだろうと計算したように見えるが、ウンスの反対側である人が、 ウンスがそんな事をする人だと考えていたのだろうか?
錯覚にもほどがある有様で、聖堂の中でいつ来るかいつ来るかとウンスが来る事だけを待ち、ときめく姿で、精一杯緊張もし、期待感にあふれた姿を隠せないドウは、本当にウンスがすぐにでも愛の告白をすると思ったようにも見える。
だが、予想とは違い、 ギョンアとよく食べよく暮らしてというふうに和やかな徳談まで見せて祝福する天使ウンスに茫然としてしまったドウ は、この結婚式をする事になったのは全部お前のためだというふうに責任を転嫁させまでするが、当初からウンスをよく把握していたらと、利用してはならない間違った計算をしたのはドウだが、 自分の考えではそれがそんなふうに悔しく悲しかったようだ。
ウンスにも自分なりに深い事情があるのだが、'ドン・マンフィ'と'ヤン市長'事件を一例に、これ以上ドウの傍に残る事が出来なくなったウンスは、ドウの'そんな病歴'を知っても結婚を決めて傍にいてくれるギョンアの存在に、自分でなくても兄を理解する人が同じようにいるんだな、という 一種の慰安 を受けていたのだ。
それととともに、この事を契機にドウが自分から独立し、他人を角を立てずに眺める広い視野を持って良い家庭を作る等、現実と妥協したらという希望もあったのだ。

(※ピーターパンコンプレックスとは、大人である事を拒否する人、または自分の世界に閉じ籠り、現実世界との妥協を拒否する人を言う。)

02.涙みたいなものは見せるな、お前は強いじゃないか

あれこれ祝福されない結婚式であり、こちらでも(シン×ギョンア)彼らなりにとても重くて憂鬱な対話が真っ最中だったが、既に何回かの対話を試みようとし、ギョンアの拒否によってドウの実体について真摯に対話をする事が一度も出来ず、このまま自ら悪のどん底に足を踏み入れようとするギョンアを止めたくても止められないシンの内心の焦りは言葉にもならない。
明らかに利用されるギョンアを前にしても助け出せないもどかしさは、既に数え切れないほど多く経験し、既に元彼女を奪われた元彼氏の嫉妬として取られてしまったところに、何を言っても受け入れられると期待もしていないシンは、ドウと結婚した後、これからギョンアが遭う事になる真実と困難を 覚悟しなければならない事を'泣かずに強く耐えなければならない'という言葉で意味深長に 伝える。
シンの警告どおり、ギョンアがこれから対する事になる結婚生活を予告するように、 新婦を放り出してウンスを追い掛け加熱して走るドウ を見れば、常に貴族のように優雅で軽快に靴の音をコツコツ出して歩いていたドウが、こんなふうに 我を忘れて走るのだから、こいつのウンス病は、ひどく、見苦しいほどひどく見える。
暗く色褪せ憂鬱な結婚式はさておき、仕事を口実に新婚旅行も後に延ばしたままアルゴスハウスにギョンアをひょいと放り込んで行くのを見ると、これからギョンアとドウの仲に進展を期待するのは難しそうだ。
広い家に一人残されてしまったギョンアは漠々とするが、それでも結婚はしたから舅に挨拶程度はしておかなければならないと思う気持ちでチェ会長を訪ねて行く。
そしてそこで会ったシンの兄嫁'ミョンソンから、その間知らなかった全ての事件の顛末を伝え聞いたギョンアは途方もない衝撃に覆われてしまう。
まともに体を支えらないほどふらふらし、漢江で嗚咽したギョンアは、一種の利用されていたという憤怒と、ドウの好意に対する背信感、シンを信じられなかったという申し訳なさ、もう戻れない川を渡った後悔等、あらゆる混乱した感情がごちゃごちゃに混ざって爆発する。
シンの予言どおり、いくら抑えても抑え切れない涙鼻水を全て出し、全ての真実を知ってしまった以上、 ドウの面前で頬を一つ強く叩いて罵りの言葉を吐く事が予想答案 だったが、アルゴスハウスに到着し、何でもないように化粧を落とし、ドウににっこりと笑うギョンアの姿は、ぞくぞくするほどだった。
ギョンアには自分なりに違う考えがあるという事なのか、冷たい 微笑みの裏には非情 さえ感じる。
既に夫婦という名前で一つの船に乗る事になってしまったドウをどうするか、ギョンアも自分なりに悩んでいる段階であるようだが、彼女がどんな選択をする事になるのか、帰趨が注目される。

03.足引っ張り作戦にいらいらするドウ

農業法人の土地を巡って住民たちの間でドウの 坪あたり100万ウォン条件で売るか売らないかの意見を巡る分裂 が起こり、とんでもなく安い価格に泣きながら涙を呑んで土地を売る状態に置かれる。
農業法人を礎にして暮らしていた住民たちは、まともに保障も得られずに追い出される事になるのを恐れ、彼らを守って来たシンは、ドウに、農業法人の住民たちが他の土地に基礎を置けるよう、最小限坪あたり400万ウォンの保障金を要求する。
脅迫に屈するドウではない事をよく知っているシンは、ドリームチームを利用してドウがミョンド市(ネオモナコ)の投資誘致のために会う投資者たちと接触を試み続け、ドウの計画を一つ一つ妨害し始める。
ドリームチームが投資者たちと接触する間、不便な気持ちを隠せないドウの不安症状は、傍目からも推測出来るほど目につき始めるが、平素ジャズに合わせて優雅な指使いでリズムに乗っていた余裕満々なドウの姿とは全く違う。
農業法人の住民たちは思っていたほど土地を簡単に売らず、ヤン市長殺害容疑を掛けられいてる腹心ケイは新たな物証が出て来て再び逮捕され、投資誘致もドリームチームの妨害でまともに出来ず、会社内でもヤン市長の忌まわしい死にドウが関係しているという噂が広まるなど、 常に隙がなかったドウは、その間、経験出来なかった悪い要素が反復的に重なり、そのストレスを持て余すようになる。
手に負えない怒りに節制力を失ったドウは、その全ての理由を、ウンスが傍にいないせいだという理由とみなし、ウンスを取り戻さなければならないという一念で、ウンスがいるミューズを訪ねる。
ウンスが弱点であるドウは、敵であるシンのところにウンスがいるという事実一つでとても鋭敏な状態になった。弱点が敵と同寝しているのだから、行って早くウンスを取り戻して自分の傍で守ってこそ、自分もまた、こんな悪勢でも節制力を失わず、全ての状況を打破出来ると判断したのだ。
今、 ドウにとって切実なのは、節制力を失い崩れる彼を止められる完璧なピース、ウンスというブレーキ である。
ドウがミューズを訪ねた時、気の毒にも心身微弱でか弱いギョンテしかいなかったため、ウンスをひったくって頑として連れて出て行くドウを食い止められる人は誰もいなかった。
ぶざまになりながらも心を奮い立たせ全身を尽くしてドウを止めようと尽力するが、投げ飛ばされたか弱いギョンテは、シンに電話して 告げ口をし 、そのおかげで、偶然横切ったドウとウンスが乗った車を目撃したシンは、ただ事ではないという事に直ちに気付き、ドウの後を追う。


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