inatoraの投資日記

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2004年10月19日
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今回は、「数理ファイナンスは何を教えているか?」についてです。これは「なぜ数理ファイナンス学者は金持ちでないのか?」という疑問に答えるための重要な手掛かりにもなります。今回のシリーズでは、数理ファイナンスの「具体的な教育カリキュラム」については言及せず、「数理ファイナンスが拠り所としている基礎となる世界観」について説明します。

その前に、まずは数理ファイナンスの歴史を簡単に振り返ります。(よく分からない人はここは飛ばしてくれても構いません。実際の世界の証券投資とは全く関係ありませんから。)

数理ファイナンスは、1952年にハリー・マーコビッツという学者が「ポートフォリオの選択」に関する論文を発表したのがきっかけで広まったものです。この論文では収益率の期待値を「リターン」、収益率の分散(期待値からのばらつき)を「リスク」と定義して、「リスクを最小化しながらリターンを追求するための最適ポートフォリオはどうなるか?」ということをテーマにしたものです。その後、ウイリアム・シャープによる「CAPM(キャップ・エムと読みます)とβ値(市場ポートフォリオと個別証券の感応度)の概念」やフィッシャー・ブラック、マイロン・ショールズ、ロバート・マートンらによる「デリバティブ(先物やオプションのこと)に関する価格評価理論」などの研究がなされました。

数理ファイナンス学者のうち何人かはノーベル経済学賞を受賞しています。日本においても、金融ビッグバンの頃にNHKスペシャルで「マネー革命」という番組があり、その番組では「アメリカで発展した数理ファイナンスはすごい」と言わんばかりに持ち上げていました。さらに、日本の数理ファイナンス学者の権威も「数理ファイナンスを発展させることが日本の金融システムを強くするために必要不可欠である」などと言っています。

果たして、実際にはどうなのでしょうか?

実は、数理ファイナンスの概念は見かけの斬新さとは裏腹に、現実を説明するにはあまりにも脆すぎる理論体系に依存しています。経済学をかじったことのある方だと分かるかと思うのですが、数理ファイナンスはいわゆる「新古典派経済学」をベースに理論構築されているのです。これは、「期待効用最大化」というスキームのことで、合理的な投資家による均衡に関する議論です。ファイナンスの世界で言うと「効率的市場仮説」をベースにした理論体系ということになります。この理論体系の脆さについては、別の機会でまた説明します。

ところで、効率的市場仮説とは、1965年にユージン・ファマという学者が考えた仮説であり、「全ての情報は株価に織り込まれているから、市場参加者が長期にわたって平均以下のリスクで平均以上のリターンを稼ぎ出すことは不可能である」という強烈な(そして、お間抜けな)主張です。効率的市場仮説では「価値」と「価格」は一致しており、私が主張するバリュー投資は否定されます。(もちろん、テクニカル分析も否定されます。)

効率的市場仮説の詳細はまたの機会に話しますが、この仮説をベースにしている理論構築である以上、ファイナンス学者が考える理論を使って金持ちになるのは不可能だというのは定義から明らかです。

そして、学者達は自らが金持ちでない理由を「市場が効率的だから偶然以上の確率で金持ちにはなれない」と主張することになります。これが有名なウオーレン・バフェットの「貴方の仮説と理論が正しいのは分かった。でも、なぜ貴方より私の方が金持ちなんだ?」という問いに対する学者側の答えになります。もちろん、ウオーレン・バフェットは学者が間違っていることを皮肉っているのですが・・・。ただし、効率的市場仮説が間違っている証拠を反論の余地が無い形で示さなければ、効率的市場仮説派の学者を完全に撃破したことにはなりません。これは、学会でケリをつける問題だと思います。(ちなみに、アメリカの学会では、殆どケリがつきつつあります。)



「切れた電球を取り替えるのに、効率的市場派の学者は何人必要か?答え:0人。なぜならば、市場が効率的だったら誰かがとっくにそれを取り替えているはずだから。」
(ジョン・アレン・パウロス「天才数学者 株にハマる」より引用)

これは、以下のように言い直すことができます。

「効率的市場仮説が正しいかどうかは別として、効率的市場仮説を唱える学者は社会的存在価値はあるのか?答え:否。なぜならば、効率的市場仮説が正しければ、学者が主張するようなことは市場にとっては既に常識でありわざわざ学者がそれを業績にするまでもない。もし、効率的市場仮説が間違っていれば、学者達はいつまでも間違ったことを研究しつづけていることになる。」

そんなわけで、ファイナンス学者は自らの論文作成のためだけに金儲けにならない研究にいつまでもしがみついていて、それゆえに貧乏学者のままでありつづけるのです。

次回は、「学者達のお間抜け事件簿」についてです。これを読むことで、数理ファイナンス学者達の無能さを良く知って、ビジネススクールに行くことによる金と時間と労力の無駄を省くようにしましょう。

今日の言葉:
「子供に正しいフィナンシャル・リラテシーを身につけさせるに当たって、親が考慮すべき重要なポイントの一つとして、子供には経済学部に行かせないことを挙げておきたい。特に数理ファイナンスの勉強だけは絶対にさせてはいけない。」





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最終更新日  2004年10月19日 15時42分06秒
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