猪木魂

猪木魂

No6.田村 潔司


私がデビューからずーっと見続けているプロレスラー。
”赤いパンツの頑固者”と呼ばれ、己の信念を貫き通す男。
その男が、吉田戦以来の超重要なテーマを背負った戦いに臨む。
これを応援せずにいられるか!

 今回の滝本戦は「柔道界の超エリート」対「理不尽な世界を耐え抜いた雑草男」の戦い。
田村は第一回の新生UWF入門テストの唯一の生き残り。
と言うことで田村には同期がいない。
富家と垣原が入るまではずーっと一人で雑用をこなせねばならなかった。
当時のUの道場は各先輩レスラーの派閥により、練習時間、食事時間はバラバラ。
それらにすべて一人で対応せねばならない。
昼練習の先輩がいれば、その前に道場に来て用意、その後のちゃんこ番もある。
はたまた夕方に来るもの、夜中に来るもの。
その間には自分の練習もしなければならない。
ちょっとでも粗相があれば、理不尽な制裁でも受けなければならない。

 新人時代の理不尽なエピソードをひとつ。
宮戸氏と言う猪木シンパのままプロレスラーになった男がいた。
彼がまたおかしな人間で、いろんな宗教やオカルト話を信じてしまう。
当時の唯一の新人田村にいろんな事もさせた。
当時の合宿所と言ってもボロアパートの風呂に、どこから仕入れたか分からない、薬草だとかわけ分からん粉末を入れる。
風呂の水は換えてはいけないそうで、年中そのお湯に入らなければならない。
色は真っ黒。
肩まで浸かるよう監視される。
ものすごく臭い風呂。
理由はそれに入ることによって”邪気を取る。”だそうだ。

 前田さんが道場を仕切っていた時代、若手は体重を増やす手っ取り早い手段として、練習前にビールをどんぶりで飲ませてから練習させたりもしていた。
酒に弱い男だとフラフラになりながら、地獄の訓練について行かねばならない。
今考えるとこんな非科学的な手段で強くなるわけがないのだが、唯一精神は鍛え上げられるだろう。
だからこそ、昭和新日本の流れをくむレスラーはすごい自我が形成された。
今はそんなことしないから。
そんな新人時代を潜り抜けた田村は、自らも嫌われ者の先輩になってしまうのだが。

 私の学生時代Uの全盛期。
新人時代の田村が2時間で3000回スクワットやったと聞けば、私も大学のトレーニングルームで挑戦。
しかし情けないが500回でリタイア。
3000回のすごさを実感。
当時のUは今のPRIDEのごとく飛ぶ鳥を落とす勢いだった。
私も首都圏の開催時はすべて観戦。
愛知県体育館まで密航したこともあった。
そんな懐かしい青春時代を田村と共に駆け抜けた気さえしてくる。

 田村はデビュー前よりその素質を大変買われていた。
デビュー戦、負傷欠場した船木に代わり出場。
対戦相手は当時のエース、前田日明だった。
そこで容赦ないヒザでいきなりの眼窩底骨折。
デビューしてすぐに長期欠場へと追い込まれた。
新生Uは約2年で崩壊。

 その後Uインターへ。
ここで田村は時期エースとしてオーバーさせてもらう。
その実力の裏付けを証明してみせた試合。
95年(?)6.18両国大会でゲーリー・オブライトが突如シュートを仕掛けるも完封。
この試合生観戦していたが、貴重な瞬間を目撃できた。
(もう一度映像で見てみたい。)
95年10月からのUインター対新日本の団体対抗戦にたった一人(正確には宮戸も入るが。)背を向けた。
試合を干され、向かったリングはK。
そこで負けたら引退覚悟の、対パトリック・スミスのシュートマッチ。
そんな大一番での激勝!
その後、高田氏への「僕と真剣勝負してください!」の業界ではタブー発言。
会社を追われることとなる。

 次に選んだリングは、今は無き「リングス」。
ここでも山本とのシュート戦に勝利し、エースの座を勝ち取る。
無差別級のリングで身体はボロボロ。
それでもエースとしてリングを引っ張らねばならない。
無理な出場を重ねる。
99年KOKトーナメントではレンゾ・グレイシーを破る大金星。
その試合で見せたプロレス技、腹固めに胸を躍らせた。
01年リングスを電撃退団。
PRIDE21でのヴァンダレイ戦に繋がっていくのである。
ヴァンダレイ戦では何も出来ず完敗。
その次は衝撃の高田戦。
Uインター世代の我々をものすごく熱くさせた。
さらには2年前の吉田戦。
こんな試合を選ぶ田村が大好きだ。

 こんな変遷を歩んできた田村が来週臨む試合。
それが瀧本戦。(裏メインはこれだ!)
去年の大晦日実現の一歩手前まで行った桜庭戦は気がのらない。
なぜなら、両者とも好きなプロレスラー。
昔から両者を知る私にはテーマがはっきりしているのだが、どちらも負けてほしくない。
だがプロレスの対立概念、柔道の瀧本となるとハートが入りまくる。
隠されたテーマは、間接的な吉田へのリベンジ。
プロレス対柔道。
金メダリスト対雑草男。
プロレスラーの誇りを私にのさせてくれる男、田村。
今から神社に田村勝利祈願に向かいます。
心からの勝利を願う! 

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