第5章 棚卸資産 解答 |
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1.棚卸資産の意義
2.棚卸資産の取得価額の決定 3.売上数量又は消費数量の計算 4.売上単価又は消費単価の計算 5.棚卸減耗の処理 6.期末有高の計算 7.小売棚卸法及最終仕入原価法 8.棚卸資産の評価損の処理 |
05-01棚卸資産の意義 |
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問題05-01-01 |
解答05-0-01 (A)通常の営業過程において販売するために保有する財貨または用役 商品・製品 (B)販売を目的として現に製造中の財貨または用役 仕掛品・半製品 (C)販売目的の財貨または用役を生産するために短期間に消費されるべき財貨 原材料・貯蔵品 (D)販売活動および一般管理活動において短期間に消費されるべき財貨 工場以外の事務用消耗品・包装用品 |
問題05-01-02 |
解答05-01-02 (A) 取得価額の決定 (B) 売上原価または消費原価の計算 (C) 期末有高の計算 (D) 売上高の決定 |
問題05-01-03 |
解答05-01-03 棚卸資産は、費用性資産、すなわち保有される原価の集団であるという点で固定資産ときわめて類似しているが、両者は次の点において異なる。 (A) 棚卸資産は一般に販売を目的として、短期的に保有されるものであるのに対して、固定資産は使用または利用を目的として、長期的に保有されるものである。 (B) 棚卸資産は販売および消費に伴って数量的に減少するが、固定資産はその資産全体を営業目的によって使用することによって、徐々に消費されていくので、普通、明確な数量的な消費は認められないこと。 |
05-02 棚卸資産の取得価額の決定 |
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問題05-02-01 |
解答05-02-01 (A) 外部副費と内部副費があり、通常は、取得原価に算入するが、重要性の乏しいものについては算入しないことも認められる。 (B) これを財務収益と考えて営業外収益とすることとしている。従って、買入価額から控除してはならないことになる。 (C) 一般に取得原価に含めないのが普通である。しかし、長期の請負工事等については総原価計算を行って、これを取得原価の中に算入することも認められる。 (D) 会計理論上は原価性がないとするのが通説であり、従って通常の場合、取得原価に算入しない。 |
問題05-02-02 |
解答05-02-02 (A) 買入代価から仕入値引および割戻し高を控除した価額に、副費を加算した価額が取得原価になる。 (B) 適正な原価計算基準にしたがって算定された価額をその取得原価とする。 (C) 交換時の適正な時価などの公正な評価額を取得原価とする。 (D) 贈与時の適正な時価などの公正な評価額を取得原価とする。 |
05-03 売上数量または消費数量の計算 |
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問題05-03-01 |
解答05-03-01 (A)継続記録法 (B)実地棚卸法がその基本的方法である。 (A)これは、棚卸資産の種類ごとに商品有高帳・製品有高帳・材料有高帳などを設けて、資産の受入れおよび払出しのたびごとに、そのことを帳簿に記録する方法である。これによれば、実際に棚卸をしなくても、帳簿記録によって棚卸資産の数量を知ることができると こにその大きな特徴がある。 (B)これは、まず期末に現品について実地棚卸を行って実際数量から差引き、その結果算出された数量を当期の売上数量または消費数量とみなす方法で、棚卸計算法ともよばれる。それは、実際有高を実地棚卸によって把握することによって、一定の期間における払出数量を間接的に一括して把握する方法である点に大きな特徴がある。 |
問題05-03-02 |
解答05-03-02 (A) 逆計算法とは、製品完成数量と原材料消費量との比率が常にまたはほぼ一定であるような場合には、その比率と製品完成数量から、原材料の消費数量および期末数量を推定する方法である。 (B) 総益テストとは、売上高と売上原価との比率が常にまたはほぼ一定であるような場合、その比率と売上高から商品などの売上原価および期末有高を推定する方法である。 (C) (A) および(B) は、その比率により消費数量(売上原価)および期末数量(期末有高)を推定するという点で同じであるが、(A) は製品製造業に利用される点と、(B) は商品販売業へ適用(利用)される点において異なる。 |
問題05-03-03 |
解答05-03-03 総益テストによる有高¥ 150,000と実地棚卸による有高¥ 130,000との差額¥20,000は、棚卸不足を表わし、棚卸減耗が計算(算出)されることになる。 |
05-04 売上単価または消費単価の計算 |
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問題05-04-01 |
解答05-04-01 (A)総平均法 これは、払出しの時は数量だけを記録し、一定期間末に繰越高と仕入高(または完成高)の合計金額を、繰越数量と仕入数量(または完成数量)の合計数量で除して平均単価を計算し、これをその期間中の払出単価とする方法である。 特徴:一定期間の払出単価は均一であるが、その単価が一定期間経過したのちでなければ判明しない欠点がある。一定期間ごとに加重平均法を適用する。 (B)移動平均法 これは、資産を取得する都度、その数量および金額を直前の残高数量および残高金額に加えて、新しい加重平均単価を算出し、その単価を次に新しいものが取得されるまでの払出単価とする方法である。 特徴:同種の棚卸資産を取得するごとにそれによって単価を計算しなおす方法。払出単価はすぐに計算でき異なる単価で取得すれば、それ以後の払出単価は取得前の単価と異なり、製造原価または売上原価の計算は迅速に行なわれるが、計算に手数がかかるという欠点がある。 (C)先入先出法 これは、先に取得したものから先に払出されると仮定し、取得日付の早いものから順次払出したものとして払出単価を計算する方法で、買入順法ともよばれる。 特徴:これによれば、棚卸資産価額は時価に近い価額で評価されるが物価上昇期には、購入の時と販売の時との間の貨幣価値の下落が利益として売上総利益の中に算入されることになる。 (D)後入先出法 これは、後から取得したものが先に払出されると仮定し、取得日付の近いものから順次払出したものとして払出単価を計算する方法で、買入逆法ともよばれる。 特徴:物価上昇期には、先入先出法に比べて貨幣価値の下落による利益を売上総利益から排除するのに役立つが、棚卸資産価額は、その資産の期末時価と著しくかけはなれたものになる。 |
問題05-04-02 |
解答05-04-02 個別法は、棚卸資産を取得したとき棚卸資産ごとにその取得価額を分けるようにしておき、その価額をもって払出単価とする方法である。 個別性が強く比較的高価で、かつ個々の単価の差が著しい、例えば貴金属製品・宝石等の場合には合理性があるが、通常1つの取引において大量に取得され、かつ、規格に応じて価額の定められている棚卸資産に個別法を適用するのは、利益操作が行なわれるおそれがあるので適さない。例えば、本雑誌(日用品・食料品)などがある。 |
問題05-04-03 |
解答05-04-03 (A) 仕入単価がしばしば変動するときに原価法によると払出単価も変動することになり、製造活動の能率がそのまま製造原価に反映されず、原価管理に役立たなくなる。 (B) 取得原価の判別に時間がかかるときはもとより、取得原価が明らかであっても、実際原価計算を厳格に適用すると計算が遅れて企業経営上不便なことが多い。 (C) そこで(A) および(B) のような場合、過去における平均価格などを払出単価として適用することがある。 |
問題05-04-04 |
解答05-04-04 (A) 予定価額、正常価額などが不適当なために生じた比較的多額の原価差額は当期の売上原価と期末における棚卸資産とに按分して配賦する。 (B) 合理的に僅少なものは売上原価に賦課する。 (C) 標準原価計算制度における異常な状態に基づく原価差額は、非原価項目、すなわち、営業外損益または、特別損益の項目として処理される。 |
問題05-04-05 |
解答05-04-05 (A) 時価法とは、資産を販売した時または消費した時の再調達原価をもって、その払出価額とする方法である。 (B) 物価騰貴の傾向が著しい時に払出単価を取得原価で計算すると、購入の時と販売の時の間の物価上昇による名目利益が期間利益に算入されて、経営資本の一部が外部に流出することになる場合 (C) 実質資本を維持するために、販売または消費した資産と同じものを同じ数量だけ再取得することを可能にする目的で用いられる。 |
問題05-04-06 |
解答05-04-06 (A) 振替価格とは、本社から工場へ原材料を引渡したり、工場から本社へ製品を引渡す場合、または本支店間で商品を移送する場合などに用いる価額をいう。 (B) 同一企業内部で用いられる価額であるところに特色がある。 |
05-05 棚卸減耗の処理 |
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問題05-05-01 |
解答05-05-01 (A) 継続記録法においても、適時、実地棚卸によって実際の有高数量を確かめなければならない。 (B) 記録上の数量、帳簿数量はあるべき数量であって実際それだけの物が存在するという保証はない。記録行為がもっている財産の管理保金という職能を果すためには、それを実際数量と照合しなければならない。また記録による数量を基礎とする会計計算は、必ずしも適正な財産および損益の状態を示すことになるとは限らないという理由による。 |
問題05-05-02 |
解答05-05-02 帳簿棚卸数量よりも実地棚卸数量が少ない場合には、その不足数量は棚卸減耗数量とよばれ、この数量に取得原価による単価を乗じて得られた額を棚卸減耗費という。 |
問題05-05-03 |
解答05-05-03 棚卸減耗は、原価性のあるものと原価性のないものに分けられ、原価性を有するもののうち、原材料に関するものは間接経費として製造原価に算入され、商品・製品に関するものは発生原因等のちがいによって、売上原価の内訳科目または販売費として表示される。原価性のないものは、特別損失に計上され金額が僅少な場合には営業外費用に計上されることになる。 |
05-06 期末有高の計算 |
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問題05-06-01 |
解答05-06-01 現品の実地棚卸は決算日当日の現在高を示すものでなければならない。また一期間の払出価額を実地棚卸法で算定する場合には、必ず定期実地棚卸の方法によらなければならないが、帳簿棚卸の補充として循環実地棚卸の方法を用いている継続記録法による場合には、帳簿棚卸による数量をもって期末有高としてもよい。 |
問題05-06-02 |
解答05-06-02 現品が手許になくて倉荷証券で代表されるものや、未着品勘定で処理されている貸物代表証券または預け品など、売上原価または期末棚卸資産の計算に当って現品と同様に扱わなければならないものは、証憑書類によって棚卸をする。 |
問題05-06-03 |
解答05-06-03 移動平均法は、継続記録法を用いている場合のみに適用可能である。 |
問題05-06-04 |
解答05-06-04 (A) 先入先出法の場合には、その都度実施した場合も一定期間まとめて実施した場合も、期末商品有高の額は同じである。 (B) 後入先出法の場合には、その都度実施した場合と一定期間まとめて実施した場合においては、各期末商品有高の額は異なる。 |
05-07 小売棚卸法および最終仕入原価法 |
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問題05-07-01 |
解答05-07-01 (A) 期末の棚卸資産を売価(正札)で棚卸をし、これを原価に還元するためにそれに原価率すなわち、売価分の原価(原価÷売価)を乗じて、期末有高を推定する方法を、売価還元法とよび、原価基準に属する評価方法を売価還元平均原価法といい、低価基準に属する評価法を売価還元低価法という。 (B)原価率の算定 平均原価法=原価率= 期首繰越商品原価 + 当期受入原価総額 期首繰越商品売価+当期受入原価総額+原始値入額+値上額-値上取済額-値下額+値下取済額 低価法=原価率= 上記の原価率の算式における分母から値下額および値下げ取済額を除外して計算された率 |
問題05-07-02 |
解答05-07-02 (A) 最終仕入原価法とは、決算日に最も近い最終の仕入価額(または製造価額)をもって期末棚卸資産を評価する方法である。 (B) ある条件のもとでは原価基準による評価ではなく、むしろ時価基準的な色彩が強くなる場合がある。 (C) 期末有り高が最終仕入数量と同じかまたはそれより少ない場合には、先入先出法によって評価した場合と同じ結果となり、原価基準による評価方法とみることができる。 (D) 期末有高が最終仕入数量よりも多い場合には、多い数量に相当する部分は時価に近い価額で評価されることになる。 |
05-08 棚卸資産の評価損の処理 |
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問題05-08-01 |
解答05-08-01 (A)原因 (1) 棚卸資産の状態は正常であるが、市場相場の下落によるもの (2) 棚卸資産そのものの欠陥、すなわち品質低下または陳腐化等によるもの (B)低価基準の適用 (2) による場合は、必ず帳簿価額を時価まで切下げなければならないが、(1) による場合にのみ低価基準を適用することができる。 |
問題05-08-02 |
解答05-08-02 (A) (1) 低価基準を適用する場合 (2) 時価が取得原価よりも著しく下落して原価まで回復する見込みがないと認められる場合、または原価まで回復するか否かが疑わしい場合、すなわち商法第285条の2、第1項但書の場合 (3) 品質低下、陳腐化等の原因による場合 (B) (A) の(1) による場合は、原則として売上原価の内訳科目または営業外費用として表示しなければならないこととしている。 (A) の(2) による場合は、原則として営業外費用または特別損失として表示しなければならない。 (A) の(3) による場合は、原価性を有する場合は、製造原価の間接経費または売上原価の内訳科目または販売費として処理される。原価性のないものは、特別損失に計上され、金額が僅少な場合には、営業外費用に計上される。 |
問題05-08-03 |
解答05-08-03 (A) 繰越商品勘定の貸方に記入して直接減額する。 (B) 繰越商品勘定は取得原価のままにしておき、別に商品低価引当金勘定を設定して、その貸方に記入する。 |