第7章 減価償却 解答 |
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1.減価償却の意義・目的及効果
2.減価の種類とその発生原因 3.減価償却費の計算要素 4.減価償却費の計算方法 5.減価償却の記帳と表示 6.固定資産の除却及売却 7.個別償却と総合償却 8.償却不要資産 |
07-01 減価償却の意義・目的および効果 |
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問題07-01-01 |
解答07-01-01 減価償却とは、有形固定資産の原価を、使用できる各期間に一定の計画に基づいて規則的に費用として配分するとともに、同じ額だけ資産の繰越価額を減じていく会計上の手続きをいう。 |
問題07-01-02 |
解答07-01-02 減価償却の目的は、償却資産に関する費用をそれを使用する期間に適正に配分することによって、正確な損益計算を行うことである。 |
問題07-01-03 |
解答07-01-03 減価償却の主な効果は次の2つである。 (A) 固定資産に投下された資金が貨幣性資産によって回収されること。 (B) 減価償却費は、給料のようにその計上に当っては、支払いを伴わない、いわゆる振替費用であるので、通常の場合、減価償却費計上額だけ資金が 企業内部に留保されることになること。 |
問題07-01-04 |
解答07-01-04 正規の減価償却とは、適正な損益を計算するために恣意的な方法ではなくて、一般に認められた所定の方法によって計画的・規則的に行なうこと。 |
問題07-01-05 |
解答07-01-05 減価償却が適正に(正規の)行われるか否かは、原価計算制度を採っている製造業などの会計にとくに著しい影響をおよぼす。 製造業などの企業が期間損益(計算)を正しく計算するためには、原価計算によって、期末棚卸資産原価と当期の売上原価とを確定しなければならない。このためには、発生費用をまず製品原価と期間原価(期間費用ともいう)に区別し、前者の製品原価をさらに当期の売上原価と期末棚卸(高)資産原価に再配分しなければならない。もし製造業などにおいて、減価償却費が正しく計算されないとすれば、当期の収益に対応する期間原価および売上原価はもとより、次期以後の収益に対応されるべき繰越棚卸資産原価も適正なものとはならない。 |
問題07-01-06 |
解答07-01-06 純損失が生ずるときには、純損失分だけ投下資金が回収されていないことになるので、実務界ではその分だけ償却を行わず(正規の減価償却)、その代り収益が費用を償って余りある年度には、過去の償却不足分を含めて(臨時償却)償却するということが行われることがある。 これは、減価償却の効果を強調するあまり、減価償却の目的と効果とを混同したものであって、正しい会計処理ではないということをいう。 |
07-02 減価の種類とその発生原因 |
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問題07-02-01 |
解答07-02-01 (A) について 物質的減価とは、時の経過・使用・天災・事故などの原因によって、固定資産が物質的に損耗することによる減価をいう。 機能的減価とは、陳腐化・不適応化によって固定資 産が機能的にその利用価値を減ずることをいう。従って、物質それ自身の減価と、物質的には減価せず、機能が減価するという点で両者は大きく異なる。 (B) について 物質的減価や機能的減価のうちで、天災・事故などのように予測することのできない原因による減価は、偶発減価とよばれ、それ以外の減価は通常減価とよばれる。 通常減価は予測できる減価であるから、減価予測額は、一定の方法によって計算してこれを毎期減価償却費として計上しなければならない。これに対して、偶発減価は予測できない原因によって発生するものであるから、発生した期の臨時損失とすべきであって、減価償却費としてはならない。 |
07-03 減価償却費の計算要素 |
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問題07-03-01 |
解答07-03-01 A.償却基礎価額 償却基礎価額としては、固定資産の取得原価を用いる。 B.残存価額 残存価額とは、固定資産が使用できなくなった時の処分価格、すなわち売却価格または利用価格をいい、それは見積もりによって決定される。 C.償却基準 償却基準としては、耐用年数と利用度との2つがある。可能な限り利用度を用いるほうが合理的であるが、利用度の推定には困難を伴うことが多く、また建物など、直接、生産に関係ないものについては耐用年数を利用度とみなすことができるので、一般に耐用年数による方法が広く用いられている。 |
07-04 減価償却費の計算方法 |
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問題07-04-01 |
解答07-04-01 (A) 定額法 ①式 毎期の償却額=取得原価×0.9×(1÷耐用年数) ②特徴 計算が簡単であるばかりでなく、毎期、同額の減価償却費を計上することになるので、安定した会計処理を行うことができる。 (B) 定率法 ①式 毎期の償却額=(取得原価-減価償却累計額)×定率 ②特徴 1.償却資産の能率の高い初期に多額の減価償却が行われ、能率が低価して比較的多額の修繕維持費を要するようになる後の期には減価償却額が少額ですむことになるので、個々の固定資産に関する費用の毎期の負担を平準化するのに役立つ。 2.天災事故などの発生によって減価の生じやすい固定資産や機能的減価の生じやすい固定資産については、早い期間に多額の減価償却をしておくことができる。従って保守主義の観点から定額法よりも優れている。 3.未償却残高がわかれば、取得価額が不明であっても適用できる。 (C) 級数法 ①式 毎期の償却額=(取得原価×0.9)×{(耐用年数-(m-1))÷D} m=第m年度目 耐用年数の算術級数総和D=耐用年数×(耐用年数+1)÷2 ②特徴 定率法の簡便法として考案されたものである。 (D) 償却基金法 ①式 毎期の償却額=((取得原価×0.9)×利率)÷((1+利率)利率 -1) ②特徴 減価償却の計算に当って償却基金に対する受取利息部分を考慮している点で他の方法と異なる。 (E) 生産高比例法 ①式 毎期の償却額=(取得原価×0.9)×(実際生産高÷予定総生産高) ②特徴 総利用高を正確に予測することができないものには適用することができないから、適用対象資産の範囲は著しく限定される。 (F) 時間比例法 ①式 毎期の償却額=(取得原価×0.9)×(実際運転時間÷予定総運転時間) ②特徴 生産高比例法に同じ。 (注)0.9は、残存価額をあらわします。耐用年数の省令に関する法律により、取得原価の10%となっているので、(1-10%)で、0.9としてあります。 |
07-05 減価償却の記帳と表示 |
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問題07-05-01 |
解答07-05-01 (1) 建 物 2,000,000 減価償却累計額 △ 1,000,000 1,000,000 機 械 80,000 減価償却累計額 △ 50,000 30,000 (2) 建 物 2,000,000 機 械 80,000 減価償却累計額 △ 1,050,000 1,030,000 (3) 建 物 1,000,000 (注1) 機 械 30,000 (注2) (注1)このほかに減価償却費¥ 1,000,000 (注2)このほかに減価償却費 ¥50,000 (4) 建 物 1,000,000 機 械 30,000 (注)建物および機械について、このほかに減価償却額¥1,050,000がある。 |
07-06 固定資産の除却および売却 |
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問題07-06-01 |
解答07-06-01 (A) 未償却残高のある固定資産を除却する場合に、除却損が発生する。固定資産を売却した場合で未償却残高の売却価額とに差額がある場合、売却損益が発生する。 (B) 減価償却の不足によるものと考えられるものが除却損である。過去の減価償却の過不足または市場価額の変動などによって生じたものが売却損益である。 (C) 未償却残高を除却損とし、売却または転用が可能な物が生ずる場合には、その額だけ(売却価格、利用価格を見積った額)、除却損から減少させる。特別損失として処理する。 同様に売却損益についても処理をなし、特別損失または特別利益とする。 |
問題07-06-02 |
解答07-06-02 予定された耐用年数よりもなお長く使用できる場合には、会計理論的には、過去の過大償却分を戻入れて、除却されるまで減価償却を継続すべきである。実務的には、帳簿価額を残存価額のままにしておく方法がとられるが、これは秘密積立金を生じさせることになる。 耐用年数の到来以前に、当初の予定耐用年数よりも実際の耐用年数が長いことが判明した場合には、上記の処理方法(理論的)のように、まずそのことが判明した期に未償却残高を修正し、しかるのち改正した耐用年数に基づいて毎期、減価償却を行うのが合理的である。 予定されたものより短い場合には、償却不足分を臨時償却し、それから改正した耐用年数に基づく減価償却費を計上するのが合理的である。又は、耐用年数が相違することが判明した時の未償却残高を新たな償却基礎価額とみなして、その期以後の耐用年数および残存価額を見積って減価償却を継続する方法も、実務上、多く採られている。 |
07-08 償却不要資産 |
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問題07-08-01 |
解答07-08-01 原則として取得原価で評価する。 土地は、特別な場合を除いて減価しない。永久に減価しない資産には減価償却を行う必要がない。それどころか、土地の価格は一般に騰貴する傾向があるから、原則として償却を行わない。その増加分の評価益を計上しない。それが利益が実現した時に、収益に計上する(売却した時)。 |
問題07-08-02 |
解答07-08-02 (A)永久資産とは、永久に減価しない資産をいう。 (B)土地勘定に対する付加的な評価勘定である。 |
問題07-08-03 |
解答07-08-03 (A) 取替資産とは、同一目的のために使用される同一単位および同一種類の資産で、その一部分を取替えることによって、固定資産全体として使用価値を維持できるものをいう。 (B) 取替法とは、最初の取得原価を固定資産の価額として処理し、それ以後はその減価を無視して償却を行わず、取得原価をそのまま帳簿価額としておき、実際に破損その他の理由で取替えを行った時に、新資産を取得するために支出した額をその期の費用として処理する方法である。 |
問題07-08-04 |
解答07-08-04 取替資産取得後、最初に取得された資産の耐用年数が経過してそれらが正常の取替期に達するまでの各年度には、通常の減価償却を行い、資産の帳簿価額の合計額が取得価額合計額の50%に達した後は減価償却に替えて取替法を採用する方法をいう。 |