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石坂千穂つれづれ日記
2002年6月議会一般質問
食品の安全性に不安が増している折、「長野県産農産物は安全のブランド」を重要な施策として推進するべきではないか。
林業について
公共事業の公正な発注について
ダム問題について
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1.食品の安全性に不安が増している折、「長野県産農産物は安全のブランド」を重要な施策として推進するべきではないか。
今、県民の中には、BSEの発生や産地を偽っての偽装表示、輸入農産物の残留農薬や違法添加物の問題など、食品の安全性や食品行政に対する不安や不信が募っています。
長野県産牛肉の生産履歴がわかる「安心シール」は、先日NHKテレビの全国放送でも報道されたように、消費者にも生産者にも喜ばれ、「安心シール」を貼った牛肉は、貼らないものより3割売上が伸びているというデータも出ています。
本来基幹産業であるべき農業は、今、採算性や後継者不足をはじめ、厳しい環境におかれていますが、安定した収入が確保できれば、生きがいのもてる重要な産業です。生産者の顔の見える、安全な長野県産農産物を大いにアピール、育成し、消費者の信頼を勝ち取るとともに、長野県農業の未来を明るい、希望のもてるものにしていくためにも、「長野県産農産物は安全のブランド」を、県の重要な施策として推進するべきではないかと考えますが、知事の見解をお伺いします。
→この質問に対する答弁は下記に
2.林業について
○ 他産業から林業への参入状況はどうなっているか。
「環境の世紀」といわれる21世紀を、文字通り豊かな環境の時代とするために、林業の果たす役割は、ますます重要です。県内の林業において、他産業からの新規就業者の参入状況はどうなっているか。また、新規参入者が将来にわたって林業に従事し続けることができるよう、県としての支援を強めるべきではないかと思いますが、林務部長の見解をお聞きします。
○ 間伐事業の今後のみとおし、予算確保の状況はどうなっているか。
良好な森林の育成のためには、間伐が適切に行なわれ、間伐材の搬出、有効利用を含めてのさまざまな手だてが必要です。民有林への手厚い助成も検討課題となります。先の藤沢議員の質問でも触れられておりましたが、長野県では、実に全国の間伐予算の半分にあたる額を確保して、間伐事業に対応しているという現状だそうですが、それでも、決して充分といえる状況ではないと思います。今後の見通し、予算確保の状況についてもお伺いします。
○ 「森林と水のプロジェクト」は、今後どのような役割を果たしていくと考えているか。
大仏ダムの中止決定を受けて、薄川上流域での検討から始まった「森林と水のプロジェクト」は、今まで県政の表舞台に出ることは少なかった、森林の有効貯流量の新たな検証をはじめ注目に値するプロジェクトではないでしょうか。
私は、大仏ダム中止決定後、松本地方事務所林務課のご案内で、薄川上流域に足を運んだときの、ある種の感動を今でも忘れることができません。目の前の雪に覆われた山林には、戦後の国策で植林されたカラ松林が、あの「そうめん立ち」といわれる状況で広大に広がっており、一刻も早い手入れを待ち望んでいるという状況でした。大仏ダム中止決定後のわずかの間の検討で、この地域の間伐面積は前年度の3倍に増やされること、森林の有効貯流量の検証も行ないながら、さらに積極的な対策を検討していくというご説明を受け、目の前で、「自然の命がよみがえる」実感をもつことができました。「間に合ってよかった。」というのが、私の素直な感想です。
その後、議会提案でできた「長野県治水・利水ダム等検討委員会条例」は、この薄川流域も対象としたため、検討委員会の検討待ちという状況に置かれてしまったわけですが、一日も早く、本格的な対策が取られることを期待しています。
「森林と水のプロジェクト」は、今後の長野県政の中で、どのような役割を果たしていくのか、お伺いします。
→この質問に対する答弁は下記に
○知事(田中康夫君)
農作物の安全性に関する御質問に関してでございます。
長野県産の農作物においては、生産現場の不断の努力により、安全をさらに高めるべく努力が重ねられてきております。しかしながら、全国的に見渡しますと、食品品質表示の偽装などの違反事案が相次いでおります。そして、生産、流通、加工段階への消費者の不安、不信が高まっておりますが、こうした不安が解消されるということはまだなされていないわけでございます。
これは、まさに分業化社会の中で、生産の現場とまた食卓というものが遠くなり、消費者――これはすべての市民が食べ手でございますが、こうしたすべての消費者がその生産の内容というものを容易に知ることができないことが原因でございます。
長野県の県内の生産者が生産いたしました安全な農作物を、その心遣いを保障する形で消費者に届けることが、長野県農産物は安全であるということにつながってまいります。
原産地管理呼称制度というものを就任当初から私が目指すと申し上げてきたのも、その一環でございます。
消費者が生産履歴の情報を追跡し、自分が購入した農作物について、だれが、どこで、また、どのような農薬を用いて、あるいは用いず生産したのかということを知ることができるトレーサビリティーのシステムを、国に先駆け、長野モデルとして導入することを検討してきているわけでございます。
農作物は、あわせて、まさに中国やニュージーランドを初めとする、規模や価格競争というものが激化する中で、まさに安心である、確かであると、確かさというものに対して消費者が納得をしてお代をお支払いいただけるような、こうした価格のブランド化を図らねばならないわけでございます。
こうした意味で、信州農産物マーケティング戦略推進プロジェクトを既に平成13年度から進めているわけでございます。
先ほど申し上げました原産地管理呼称制度長野モデルというものに関しても、この中で位置づけております。これは、品目別に、原料や栽培方法、製造方法、産地特有の味覚など、農作物のありのままの姿を明らかにするということでございまして、また、産地ごとの独自の認定基準を策定し、適合したものに対して、その原産地の呼称、呼び方でございますが、を認定するものでございます。こうした中で、農作物が真っ当な形でブランド化できようと考えております。
現在の検討状況でございますが、ワインと日本酒に関しては、認定基準を初めとする制度の仕組みについて、品目別委員会により消費者を含めた広い議論を行った上で、本年10月ごろをめどに制度化をいたしたく準備を進めております。また、食肉、乳製品についても、同様の制度の導入について関係者の皆様方との検討に既に着手をいたしております。
また、あわせて、野菜や果物については、意欲ある農事組合、また個人としての農業者の産品を、その確かさを目に見える形で消費者にお届けできるように、意欲のあられる方との共闘の部分からソフトオープンで進めてまいりたく私は考えております。
以上でございます。
○林務部長(堀田正樹君)
石坂議員の御質問にお答えいたします。
他産業からの林業への参入状況でございますが、林務部が毎年行っている森林組合、素材生産業者などを対象にした林業事業体などの調査によりますと、平成10年度から平成12年度までの最近3カ年において、林業事業体等に就職した人数は363人でございます。このうち、他産業から林業への就職者数は270人で、全体の74%に当たります。他産業の主な内容としては、会社員、建設業、自営業などでございます。今後とも、参入者の就労環境の整備に努めてまいりたいと考えています。
次に、間伐事業の今後の見通しと予算確保の状況についてでございますが、緊急に間伐を必要とする森林は平成10年度末の時点で10万9,000ヘクタールでありまして、これを平成18年度末までに解消することを目標とする間伐総合対策を進めているところでございます。
この間伐総合対策を実施するに当たっては、間伐の基本計画である第5期間伐総合対策における年度計画量をふやすなどして積極的な取り組みを行っており、平成13年度末までに約3万ヘクタールの間伐が実施できたところでございます。
平成14年度におきましては、里山における間伐の支援策など、施策を充実させるとともに、必要な予算額についても確保したところでございます。今後におきましても、間伐の目標の達成に必要な予算の確保に努めてまいりたいと考えております。
次に、森林と水のプロジェクトについてでございますが、このプロジェクトは、薄川上流の森林をモデルとして、森林が持つ保水能力と洪水防止機能を発揮させる森林整備の方向性を明らかにすることを目的に、平成12年12月、林務部を中心に設置したものでございます。プロジェクトでは、これまで、当該流域の森林の保水能力は有効貯水量で100から140ミリであると推定するとともに、洪水防止機能を発揮させる森林整備の指針や方策を策定したところでございます。今後とも、薄川上流においては、有効貯水量の検証を続けるとともに、保水能力を高めるための森林整備を積極的に進めてまいります。
また、プロジェクトの成果を、県下の洪水防止機能が重視される流域の森林整備にも生かしてまいりたいと考えております。
以上でございます。
○22番(石坂千穂君)
それぞれお答えをいただいたわけですが、お答えいただきましたように、林業の将来が大変期待されているという状況で、新規就業者の参入が7割を超えるという状況ですが、私、農水省の13年の調査の結果について拝見させていただいたんですけれども、その中で、新規参入の就業者の81.3%の方、つまり圧倒的多数の方が、今後とも主に林業に従事したい、こう答えていらっしゃいます。また、残りの方も、林業は続けたいが、結局、生活のめどがそれだけでは立たないので、主に他産業に従事したい8.6%、こういう状況ですので、今後とも、特段の県としての強化策をお願いしたいというふうに林務部長に申し上げておきたいと思います。
3.公共事業の公正な発注について
続きまして、公共事業の公正な発注の問題について知事並びに土木部長にお伺いをいたします。
不況の中での仕事の確保、受注機会の拡大は、県民の切実な願いです。また、公共事業の発注を巡っての政治家の「口利き」が社会問題にもなっており、貴重な税金を使って行う公共事業のより公正な発注に、県は今まで以上につとめなければなりません。その意味で、新設の公共事業入札等適正化委員会に期待するものですが、この委員会は、いつから始動するのでしょうか。
また、残念ながら、浅川ダム本体工事入札にあたって、内部告発があった談合疑惑の問題や、この間指摘されている長野建設事務所などの同額落札問題や、パソコン納入業者への優遇措置は無かったかなど、委員会発足以前に、すでに発注済の公共事業についても、対象とするべきだと思いますが、その点いかがでしょうか。知事にお伺いします。
さて、東信地方の建設業者が、県発注の工事を丸投げしているという内部告発が私たち日本共産党県議団にありました。この業者は、建設業法による「一般建設業」者であり、「一級」の国家資格技術者がおらず、請け負った工事を下請けに出す際、合計3,000万円以上の工事を出すことは認められてない業者です。
従業員8名、そのうち技術職員は二級土木施工管理技士が4名、その他が2名。すなわち、同時に請け負うことのできる2,500万円以上の公共事業は6件までとなります。その上、各現場に現場代理人を配置しなければならず、現場代理人は現場に常駐することが義務付けられています。そのため、この業者が、同時に請け負える工事は、下請けを使った場合でせいぜい5件程度が現実的な数字であり、下請けを使わなければ1~2件で手一杯のはずです。
しかし、現実には、この業者は、臼田建設事務所より、明らかに許容量を越える工事を同時期に受注している事実があります。
業者の資格審査や、発注基準の審査は適正に行なわれているのでしょうか。
また、この業者の力量からして、許容量を超えた工事の受注は、下請けへの丸投げ以外に考えられません。昨年4月に施工された「公共工事の入札および契約の適正化の促進に関する法律」いわゆる入札契約適正化法ですが、これにより、一括下請負が明確に禁止され、発注者は現場の施工体制が、提出された施工体制台帳と合致し、つまり、選任の技術者が配置され、元請の指導監督のもとに現場が稼動しているか、一括下請負が行なわれていないか調査し、もし、これを疑うに足る事実がある場合は建設業の許可者である知事に報告する義務が課せられました。つまり、黙認していただけで発注者も法律違反に問われることになります。
この業者に対する適正な審査が行なわれているでしょうか。また、適正でないと判明した場合、資格の取り消しなど検討するべきだと思いますが、土木部長の見解をお伺いします。
建設業者の資格の問題では、以前から、いわゆるA級、B級、C級というランク付けの問題について、基準を設けて点数化しているのにもかかわらず、同じ点数でもランクが違ってしまうこともあり、基準が不明確・不明朗だ、という不満、苦情があります。透明性の高い、公正なランク付けの基準を検討し、改善をはかるべきだと思いますが、土木部長いかがでしょうか。
以上お伺いいたしまして第2回目の質問を終わります。
○知事(田中康夫君)
公共事業に関しての御質問でございます。
長野県公共工事入札等適正化委員会に関しては、去る5月23日に、入札や契約制度の専門家5名を委員として、私から発表させていただきました。日程調整を行い、来る7月9日の火曜日に、本長野県庁本庁舎で第1回目の会合を開催する運びとなっております。
この委員会におきましては、入札制度全般に対する意見具申、また入札や契約手続についての再苦情の処理に加えて、職員の関与が疑われる場合や県民への影響が大きい大型工事のような場合、さらには、知事が依頼いたしました事案件に関しても談合情報に対する詳細な調査、審議を行うとしております。
お尋ねの発注済みの工事等に関しても、調査が必要と認められる案件は対象といたします。
以上でございます。
○土木部長(小市正英君)
順次お答えをいたします。
公共事業の公正な発注についてでございますが、まず最初に、資格審査、発注基準の審査について適正に行われているかなどについてのお尋ねでございますが、県発注の建設工事にかかわる入札参加資格の審査におきましては、建設業法に基づく建設業の許可を受けていること、建設業者の経営に関する客観的事項の審査である経営事項審査を受けていること、過去2年間に施工実績があることの3項目を資格申請に必要な要件としているところでありまして、申請内容を適正に審査の上、これらの要件に該当する申請者に対し資格を認定しているところであります。
また、建設工事の発注に当たりましては、工事の種類及び設計金額に応じた等級に属する入札参加資格者の中から、手持ち工事の状況、工事の難易度、技術水準などに適合する技術者の有無、地域性等、確実かつ円滑に履行できる業者を総合的に勘案の上、公正な指名の確保に努めているところであります。
なお、入札参加資格を認定した後、資格申請の内容に虚偽等が判明した場合は厳正に対応してまいりたいと考えております。
次に、業者のランクづけについてのお尋ねでございますが、業者の等級決定に当たりましては、現在、土木工事及び建築工事はAからEの5段階に、その他の工事につきましてはAからCの3段階に等級決定することとしておりまして、その基準はそれぞれの建設業者が受けた経営事項審査の総合評価としております。工事の種類ごとの等級の基準につきましては、建設業界における業者間の適正な競争を確保するという観点から、全体のバランスをとりつつ、特定の等級に業者が偏ることのないように配慮しまして、土木部長を委員長とする建設工事入札参加資格審査委員会において決定することとしております。
等級決定について改善すべきとのお尋ねでございますが、今後におきましては、各業者の受注意欲や施工能力等を反映できる基準につきまして研究してまいりたいと考えております。
以上でございます。
○22番(石坂千穂君)
土木部長に改めてお伺いをいたします。
先ほど、ご質問で紹介いたしました東信地方のある建設業者、お名前は申し上げませんけれども、先ほど申し上げたような事実があります。只今ご説明いただきましたけれども、資格者の設置は確かに資格者がいるかどうか、それから、そういう工事を受ける資格があるかどうか、その能力などは書類のチェックでいとも簡単に本来できるはずで、それを超えた工事を実際に受注をしている事実は私たちも直接発注履歴で確認してきましたけれども、あるわけです。そうしますと、明らかに見逃しということになるわけです。そういう事実をもしご存知であれば、そのこと自身が問題ですし、ご存知でないのであれば、あまりのチェックの甘さに逆に私は驚くばかりです。あらためて具体的事例を申し上げましたのでこの事例につきまして調査をしていただけるのかどうか、その点についておたずねします。
○土木部長(小市正英君)
お答えをいたします。
今お話のございました臼田建設事務所管内の件につきましては、1件につきましては、いわゆる丸投げといいますか、下請の関係につきまして違法がありましたので、その関係につきましては処分をしております。
また、一括下請は、発注者が建設業者に寄せた信頼を裏切る行為でございまして、また、ひいては工事の適正な施工を妨げるものであることから、建設業法の第22条で禁止されているところであります。
県におきましては、昨年5月に、工事現場における施工体制の把握要領を定めまして、現場ごとに点検に取り組むなど、一括下請の防止にも努めているところでございます。
以上でございます。
○22番(石坂千穂君)
ただいまのお答えの中で1件あったということですが、私たちの調査によれば、この業者は残念ながら常態化しております。つまり常時ということです。この業者の受注している工事の現場にも行って見ましたが、常駐していなければならない専任者もいませんでした。そういう点で見逃しがなぜ許されるのか、この点が本当に納得いきませんので、具体的事例を申し上げたのでありますので改めて調査をお願いしたいということについては、いかがでしょうか。改めてお伺いいたします。
○土木部長(小市正英君)
お答えいたします。
その業者につきましては、県工事以外に、市町村といいますか、工事も実施しているということでございまして、私ども県工事につきましては先ほど申し上げましたとおりの処置をしているところでございます。
今後、そういうことのないよう、県工事につきましては、きちんとした施工管理の、先ほど申し上げました把握要領に定めました点検等によりまして防止に努めていきたいと考えております。
○22番(石坂千穂君)
御要望を申し上げたいと思います。
税金を使って行う公共工事でありますので、受注機会は等しく意欲のある業者の皆さん、まじめに頑張っていらっしゃる皆さんに与えていただきたいということで、それでは違う角度からお聞きいたしますが、実は、この業者はいわゆる同和業者です。同和業者ということで特別の見逃しがあるということになれば、それは非常に大きな問題だと思います。同和業者ということで見逃しが許されているのかどうか、そういう認識がおありかどうか、お伺いしたいと思います。
○土木部長(小市正英君)
お答えいたします。
そういう認識は持っておりません。
○22番(石坂千穂君)
別に、犯人捜しとか処罰をせよとか、そういうことでこのことをお伺いしているわけではないわけで、ぜひ、等しく公正な発注機会、受注機会を業者の皆さんに与えていただきますように、特別扱いや見逃しのないように、今後一層の適正な対処を土木部長に特段お願いをしておきたいと思います。
4.ダム問題について
それでは河川行政について何点かお伺いいたします。ダムの問題です。
最近の全国で相次ぐダム中止決定が続いています。すでに全国で70を超えています。このような全国で相次ぐダム中止決定や淀川水系流域委員会が最近中間報告をまとめましたけれども、その中間報告などに示されている全国的な新しい河川行政の動向について、知事の見解を伺いいたしたいと思います。
続きまして、全国的に中止になっているこれらのダム建設について、この議会でおおいに問題になりました基本高水の問題です。
この基本高水はどのような扱いになっているのか。また、中止後の河川改修の整備目標とする流量の設定、つまりダムを造らないことにきめた後の河川改修の整備目標をする流量決定・設定はどうなっているのかについて土木部長に伺います。
3点目ですが、全国で中止になったダムの、中止後の代替案、今回も代替案が具体的でないということが非常に議論の焦点になっておりますが、実際に中止を決定した全国のダムの中で代替案の策定状況は中止決定からの時間的な問題でどのような状況になっているのか。それらの内容、策定時期の現状について把握している範囲で結構ですので伺います。
次に、住民の命と安全を守るためにダムが必要というご意見も必要というご意見があります。命と安全を守るという観点から私たちがどうしても容認できないのは、例えば浅川ダムの予定地のあの危険な地質・地盤です。この地すべり地へのダム建設に場合には、建設後も大きくの負荷、そしてメンテナンス、管理の費用やエネルギーを要します。地すべり地へのダム建設について建設後の必要な手だてはどのようなものが考えられるのか、浅川ダムの事例で結構ですので具体的に予想される事態についておたずねいたします。
次は、今回出されました検討委員会の「答申」を尊重して、今まで、全国的にもそうだと思いますが長野県でも水道事業者である市町村の責任とされていた利水問題、これに新しい光を当てまして「脱ダム宣言」の理念に基づき県としての財政支援も含む新しい「長野モデル」としての施策を具体化するべきだというのが私の考え方ですが、いかがでしょうかお伺いをいたします。
さらに問題になっております、ダム中止後の新しい利水策、つまり新規水源の開拓にあたりまして、例えば長野市では財政上の監査であります外部監査から費用対効果の問題で浅川ダムからの取水は検討を要する、つまり、止めたほうがいいのではないかとこういう指摘を受けております。そういう中で、どうしても浅川ダムから予定している5400トンを危機管理上、長野市さんが必要というのであれば、新たな水源を危機管理上確保しなければならないわけです。
また、砥川につきましては、繰り返しお話が出ておりますけれども、新和田トンネルの湧水、あるいは地下水の組み合わせ、様々な総合的な組み合わせ、また、広域での利用いろんな方法が考えられますけれども、それにはクリアーしなければならない様々な課題もあります。総合的な組み合わせで新たな水源を開拓していかなければならない岡谷市など、これらの市に対して親身になっての協議と支援が県として今まで以上に必要と思われますが、衛生部長の見解を伺いたいと思います
また、「脱ダム宣言」後の住民の意識の高まりはこの間の世論調査の結果にも、自らの問題として考える住民が増えているという点で非常に明らかですけれども、この住民の意識を今後の施策に積極的に生かしていくためには県としては、「答申」を受けての方針の具体化にあたっての説明責任を果たしていく必要があろうかと思います。例えば、浅川につきましては、千曲川との合流点、最下流の皆さんがごくろうされてきたのは、主に内水災害でのご苦労です。ダムを造ってもこの内水災害は解決できない、これが県から正式に表明されたのは残念ながら知事が変わりまして、初めての現地での調査の後、住民集会で当事の土木部長から住民に説明されたのが初めてでしたから、今では多くの人の知るところになってはおりますが、まだまだ徹底していません。この内水災害の原因や解決策そして浅川のもつ特性、そして、どのような方向で住民の参加を得て、治水・利水を行っていくのかという県の果たさなければ説明責任が一層重要なものになってきております。これをどのようにされていくのか知事にお伺いしたいと思います。
以上お伺いいたしまして、この関連の質問をとりあえず終わらせていただきます。
○知事(田中康夫君)
新しい河川行政の動向についての御質問でございます。
既に御承知のように、平成9年に河川法が改正をされたわけでございます。そして、現在の国土交通省近畿地方整備局が策定する河川整備計画に対し意見を聞く場として、淀川水系流域委員会が設けられております。この中の琵琶湖部会の中間取りまとめにおいては、「主な施策別の計画および整備の方向性」の中で、ダム貯水池計画に関しては次のように触れられております。ダムは、川の持つ上下流の連続性を大きく損なうものであり、また、一たん建設されるとその環境等への影響は極めて大きく、かつ不可逆的で、短期にそれを解消することは不可能である、そのため、既存のダム貯水池についても改めて検討するとともに、建設計画中のダム貯水池については、以下の事項を十分考慮し、見直しを行うことと記されておりまして、その考慮すべき点としては、「流域における適正な水需給に基づく計画であること」、「ダム貯水池が上下流に与える影響を検討すること」、「地域の特性を踏まえた検討を行うこと」等を挙げているわけでございます。
あわせて、この淀川水系流域委員会においては、準備会議による委員会の構成メンバーの決定、委員による自主的な運営、審議のプロセス、内容の情報公開、幅広い意見の聴取といった運営の方法がございまして、治水、利水、環境等について検討がされております。
長野県においても、国と同様の取り組みを行っているわけでございます。
続きまして、利水の問題でございます。
既に、多くの御質問をいただき、お答えいたしておりますように、長野市においては水需要の精査、また岡谷市においては新たな水源確保対策など、解決すべき課題がございます。長野県は、こうした課題に対し、関係の市や町と一緒に協調して、協議していくことが必要と考えておりまして、これら協議の中で、答申に示されているように、県として支援できる範囲というものを相談してまいりたく思います。
答申を受けての枠組みの具体化に当たっての説明責任、住民の協力、参加についてという御質問でございます。
今回提示いたしました枠組みは、住民参加と情報公開のもとに運営された条例設置の検討委員会の答申の内容に沿ったものでございます。これは、既に申し上げておりますように、流域住民の皆様の御理解も得られるものと私は確信しているわけでございます。
この枠組みに基づいて、治水、利水の具体案を早期に作成し、市町村や国との協議を行い、流域住民の皆さんへも詳しく御説明をし、御意見にも耳を傾けていくわけでございます。
施策の実施に際しても、住民の皆さんが積極的に協力、御参加いただけるような取り組みを考えてまいります。
あわせて、広く県民の皆さんに対しても、これを新たな長野モデルとして、治水や利水の新しいあり方をお示ししていきたく考えております。
以上でございます。
○土木部長(小市正英君)
順次お答えをいたします。
最初に、全国的に中止になっているダム建設について、基本高水はどのような扱いになっているか等のお尋ねでございますが、ダム建設を中止したことにより河川の基本高水を変更した例は、現在のところ聞いておりません。
次に、全国で中止になったダムの中止後の代替案の策定状況及びその内容、策定時期についてのお尋ねでございますが、現時点で把握している範囲では、代替案を作成している事例はございません。
次に、地すべり地へのダム建設について、建設後の必要な手だては何か、浅川ダムの事例で具体的に予想される事態についてというお尋ねでございますが、浅川ダム建設事業におきましては、十分な地すべり対策を行うこととしておりましたので、建設後に必要な手だては特段想定しておりませんでした。
○衛生部長(菅谷昭君)
長野市や岡谷市との協議についてお答え申し上げます。 先ほど知事からお答えしましたように、長野市には水需要の精査、また岡谷市にありましては新たな水源確保対策など、解決すべき課題がございます。こうした課題に対しましては、利水対策だけではなく、治水対策もあわせて総合的に取り組んでいく必要があると考えております。
したがいまして、今後、関係部局と連携し、検討を行うとともに、関係の市や町と協調してまいりたいと考えております。
以上でございます。
○22番(石坂千穂君)
ダム中止の際の基本高水の考え方の問題について、再度、土木部長に確認をさせていただきたいと思います。
実は、私も検討委員会のメンバーの1人として国土交通省に、例えば浅川が千曲川に合流するわけですが、上流部の千曲川上流ダムが事実上白紙ということです。浅川ダムよりもっと大きな規模の千曲川上流ダムができないということになりますと、千曲川の逆流に苦しんでいる浅川は逆にどうなるのかと、あの小さな浅川にダムを造る、造らないという話ではないということで、全国的に整合性をもった河川整備をという国土交通省自身が次々に全国でダムを止めて基本高水を「棚上げ」にしている、それとの整合性はどうなんだということでご質問をさせていただきましたが、残念ながら、明確なご回答はありませんでした。
従いまして、今月の13日、私自身が国土交通省におじゃまいたしまして、長野県の検討委員会の砥川部会などにもお見えになってご説明をいただきました田村専門官はじめ3人の専門官の皆さまにお伺いをいたしました。そのお答えは以下のとおりです。
土木部長のお答えのとおり、「合理的な理由もなく基本高水を下げることは認められず、基本高水を下げることは治水安全度を下げることにつながるという見解については以前どおりであり、よって、ダムを中止したことによって、また、基本高水を下げたことによってダムを中止した事例はない。ダム中止後、基本高水を下げた事例はない。
しかし、同時に基本高水の問題と、河川整備をダムでやるのか河川改修でやるのか、という選択の問題は全く別の問題である。基本高水は将来の整備目標であり、安全を確保するための治水計画をダムにするのか、河川改修でやるのかの方法論は全く別の問題である。将来の目標としての基本高水を掲げながら、地質に問題があるとか、お金がないからとか、住民の合意が得られないからなどの理由で、つまり、この理由のどれか1つでも良いのだけれども、ダム建設でない方法を選んだ時には、当面、本来設定した基本高水とは別に可能な暫定計画で計画高水を設定して河川改修を行うというということは可能である。」とそういうお答えでした。
現に、全国でダムが中止になった事例を見ますと、全国水源連の調査で、今申し上げました基本高水とは別の当面可能な低い計画高水、整備計画目標流量を設定した河川、例えば北海道の留萌川、ここは基本高水流量1,300立方メートル・毎秒、つまり1,300トンですが、ダムをやめて整備計画目標流量は1,050トン、多摩川は8,700トンだった基本高水を整備計画流量高水は4,500トン、8,700トンを4,500トン、大野川は1万1,000トンを9,500トン、豊川は7,100トンを4,650トン、由良川は6,500トンを3,700トン。つまり、結論から申し上げますと、基本高水はそのまま下げないけれども、現実のダムをとるか河川改修をとるかという方法においては、当面可能な整備目標による計画高水流量を決めてその整備を進めていくという方法は、全国的にダム中止の場合とられている方法である。
それでは、将来目標の基本高水はいつ実現するのかと私は田村専門官にお伺いをいたしました。それは、今、全国的におよそ30年くらいのスタンスで考えている。ですから、30年くらいのスタンスで考え、その後のことは将来の人間たちに考えていただきたい、これが田村専門官のお答えでありました。
設定した基本高水流量が今すぐ実現できなくても、当面可能な計画高水流量で河川整備をやる。これが全国でダム中止を行ったところの圧倒的多数といいますか、すべての共通した事例であるということを確認させていただいていいでしょうか。土木部長にお伺いいたします。
○土木部長(小市正英君)
お答えをいたします。
今お話にありましたように、基本高水、それから河道での整備の計画高水等がございますが、いずれにいたしましても、浅川ダム、下諏訪ダムとも、ダムと河川改修の組み合わせで今まで整備をするべく進めてきた事業でございます。それを変更するに当たりましては、少なくとも、地域の皆さん方に御説明をして御理解をいただく必要がございます。河川改修とあわせて、それにかわるものをできるだけ具体的に策定をして、市町村の皆さんに御理解をいただいて次のステップに進むということで、これからそういう案も含めて検討していくということでございます。
基本的な河川改修につきましては、最低限50分の1を確保しようという基本的なスキームを決めたところでございます。
○22番(石坂千穂君)
お答えいただきまして、ありがとうございました。
続きまして、先ほど土木部長に御答弁いただいた件ですが、ダム中止決定後、発表後と言ってもいいかもしれませんけれども、代替案策定の時期は全国的に中止したダムの場合どうなっているのかお伺いをいたしました。お話がありましたように、中止決定がされて直ちに代替案のあるところは、私の調べた限りでも、どこもありません。
例えば、6月県議会冒頭の6月10日に、岡山県でも、岡山県知事が二つのダムの中止を表明いたしました。一つは国直轄の柳井原堰、もう一つは県営の大井原川ダムの計画ですが、二つ中止になっています。長野県では代替案がないということが大問題になっているのだけれども、岡山県はどうですかとお伺いをいたしましたら、県議会終了後検討に入るという以外の案は何もないというお話でした。
また、最近中止になりました紀伊・丹生川ダム、和歌山県ですが、これは国直轄です。代替案の検討はこれから流域検討委員会でやっていく。徳島県細川内ダム、平成12年、建設省が完全中止をいたしました。今から2年前です。2年間たっていますが、国は何ら代替案を示しておりません。御紹介すればまだたくさんありますけれども、例えば山梨県の笹子ダム、浅川ダムと同じようにつけかえ道路までつくったのですが、ダムは中止になりました。その後、代替案の検討はどうですかと調べてみますと、いまだに何の代替案もなく、もちろん事業費の試算も当然ない。これがいいということを私は言っているわけではありません。
今回、知事から示されました枠組み、この枠組みに沿って、土木部を中心に県庁の各部局が、そして市町村、住民の皆さんの御意見や知恵、御協力をいただきながら具体的な検討に入ると。これは、これらの全国の事例、例えば最近中止になった岡山県の事例に比べましても、より具体的で現実的な案と私は考えております。その辺の御見解について、土木部長に、私の見解でいいのかどうか再度確認をさせていただきます。
○土木部長(小市正英君)
お答えをいたします。
先ほども申し上げましたように、両ダムにつきましては、ダムと河川改修の組み合わせで今まで整備をすべく進めてきました。そういうことで、地域の皆さん方にもそういう計画をお示ししてきているわけです。それを、計画を変更するにはそれなりのきちんとした代替案をお示しして、また、国におきましても、認可を与えるには市町村の意見を聞く、同意を得るということになっております。そういうものがないとなかなか同意が得られません。ですから、今回のケースにつきましては、今お話にありましたケースとはまた違った視点でとらえていかなければいけないというふうに思っております。
○22番(石坂千穂君)
それぞれ具体例が違うことは当然ですが、どこでも、必要な手だてを経て具体策は煮詰まっていくと、中止決定後具体的な検討に入ると、この同じ手順を長野県がとることがなぜ許されないのか。私は、いまだに理解できません。ですから、代替案がないから無責任だと、この論はこれから代替案をスムーズに進めるための協力の、そういう力に変えていくようにお願いを申し上げたいと思います。
地すべり地へのダム対策につきまして、ダム建設後の管理状況、手だてにつきまして、浅川ダムについて特別の手だては考えていないということですので、こんなダムは本当につくらなくてよかったなと思うわけですけれども、なぜこういうことを申し上げるかといいますと、最近、私たちは、明治以来の地すべり地であったけれども、地すべりがとまったということで、今から30年前に群馬県につくりました下久保ダムに視察に行ってきました。
左岸だけが地すべり地です。浅川ダムの周辺の地すべり地帯より半分くらいの小さな地すべり地帯です。しかし、ダム建設後どういうことが起こっているかといいますと、浅川周辺よりもはるかに安全な地域であるにもかかわらず、地中探査を日常的にして、年間10億円程度のお金をかけてコンクリートミルクを注入してダムをもたせているという、こういう状況です。しかも、ダム建設前には下流域だけだった地すべり地が、今はダムの上流域にまで広がって、国直轄で380億円の地すべり対策をしております。地すべり地へダムをつくるということは、そういう負荷をも負担しなければならないことである。安全性の担保はできないものである。
命の安全を言う人たちが、浅川ダムの周辺のこの危険な地質、地盤に対して、中くらいな危険度だからいい、こういうことをおっしゃるのは私は本当に許しがたいと思っております。
安全な場所にダム建設を、ダムがつくれないような危険な場所にはたとえ技術的に可能であってもダムはつくるべきでない、これが私の住民の皆さんの思いを代弁しての原点です、意見です。
今回答申されました枠組みに沿って、一日も早く、具体的なダムなしの、住民が納得できる、圧倒的多数の住民が望んでいる安全な河川改修、治水・利水対策が実現することを心から願って、質問を終わらせていただきます。
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