石坂千穂つれづれ日記

石坂千穂つれづれ日記

2002.9月議会代表質問・その1



長野県の未来像について
住民投票条例について
公共事業のあり方について
雇用確保・入札制度改善などについて
生活道路整備について
情報公開と住民参加について
ダム問題について
浅川ダム契約解除にともなう損害賠償について
ダムに代わる治水・利水対策について
森林整備、都市型水害対策、内水対策について
ダムの堆砂問題について
乳幼児医療費窓口無料化等について
社会保障切りすて、負担増について
乳幼児医療費自己負担引き下げについて
福祉医療のあり方検討委員会の提言について
一人親家庭への支援策について
雇用、不況対策について
中小企業の振興について
中小企業向けの官公需の発注について
同和対策・30人学級実施について
部落解放同盟などにたいする補助金について
同和問題に関する研修について
教員加配について
同和対策事業終了について
農業問題について
オリンピック帳簿問題について


 日本共産党県議団を代表いたしまして、知事並びに関係部長に、大きく10点にわたって質問させていただきます。

 日本の地方政治史上、もちろん長野県政史上初めて、公約実行中の知事を、任期半ばで不信任にするという暴挙が行なわれた結果の県知事選挙で、長野県民は理不尽な不信任を認めず、圧倒的な力で田中知事を再選しました。私は、この選挙で発揮された長野県民の良識に心からの敬意を表し、深い感謝を申し上げたいと思います。そして、微力ながら、私たち日本共産党も、この歴史的な選挙戦の勝利に貢献できたことを誇りに思っています。


 去る7月5日の不信任決議案の反対討論の最後を、私は、次のように述べて締めくくりました。
――野次と怒号、議長の制止とマイク切断という異常事態のなか、知事は、「脱物質主義の時代に生きる私たちは今、でき得る限りコンクリートによるダムを造らないという大きな転換点にたっています。『脱ダム宣言』において示した私たちが歩むべき道を後戻りさせることはできないのであります。」と決意を述べています。
 変わり始めた県政の流れを歓迎し、この流れをさらに大きく発展させていく私たちの決意を込めて、矛盾に満ちた、理不尽な不信任決議案に反対の討論とさせていただきます。


 今、改めて、あのときの決意を思い起こし、2期目をスタートさせた田中県政の改革の道筋を本格的に前進させてほしい、そんな思いを込めて、質問をさせていただきます。


長野県の未来像について

 まず最初に、今後の長野県政のめざすべき姿、あるべき方向として、知事は、提案説明の中で、“日本のスウェーデン”、「私たちがめざすべきヨーロッパ型の社会、北欧型の社会」と述べておられますが、具体的には、“日本のスウェーデン”とは、どんな県政をめざすことなのでしょうか。県政のあるべき姿の基本に関わる問題として、知事の描く長野県の未来像、その具体的な内容についての見解をお伺いします。


住民投票条例について


 また、“日本のスウェーデン”の重要な条件でもあり、今回の選挙の知事の公約でもある「8つの宣言」の中の「『誰もが参加』しましょう宣言」のなかで提案されている、「県内在住で18歳以上なら外国籍県民も投票できる常設型の住民投票条例」の具体的内容についてお伺いします。


 今回の県知事選挙は、民主主義の問題として、「民意とは何か」「民意をどう汲み取るか」が問われた選挙でもありました。あの、不信任決議案の提案説明に対し、わが日本共産党県議団の小林伸陽議員が、「世論調査の結果を民意と認めるのか」と質問したことに対して、提案者の当時県政会の下崎団長からは、「世論調査の結果は民意とは言えない。市町村長の考えが民意である。」という、驚くべき答弁をいただきました。
 確かに、市町村長も、私たち県会議員も、選挙で選ばれた県民・市民の代弁者、代表です。しかし、そのことは、選ばれたから何をやってもいい、という全権委任をされたのでは決してありません。個別の重要な課題を解決するときに、その判断を誤らぬように、世論調査をはじめとする住民の意向、意志をできる限りくみ尽くす努力を必要とすることは当然のことです。県民生活に重要な影響を及ぼす事項の決定などにあたり、県民の意思決定を重視する住民投票条例に、その意味で大いに期待するものです。


 建設省が進める吉野川可動堰に住民投票で反対の意思を表明し、国の大型公共事業のあり方に大きな影響を与えた徳島市や、新潟県巻町の原発建設反対、宮崎県小林市の産業廃棄物処理場建設反対などの住民投票のとりくみは全国に広がり、国政を揺るがす大きな動きになっています。住民がみずからの意思を直接政治に反映させる住民投票のとりくみは、地方自治の新しい発展として注目すべきことです。これを安定的に保障するための常設の住民投票条例と考えられますが、現時点で、その具体的な内容について、どのようにお考えか、制定の時期や、制定にいたる経過などについての知事の見解をお伺いします。本郷議員への答弁で「早い時期に」とのことでしたが、今年度中くらいと考えてよろしいでしょうか。

次に、公共事業のあり方の問題についてお伺いします。


 知事は、提案説明のなかで、改めて、「私は、長野県の産業構造を、従来の公共事業依存型から脱物質主義のスウェーデン型へと構造転換させねばならず、こうした哲学にもとづいて全国に先駆け、これまでの公共事業のあり方を見直し、産業構造の転換をはかっていこうとくり返し申し上げてきました。」「1年9ヶ月近い県政を如何にとらえるかの最大争点でもありました『脱ダム宣言』が意味するところは、コンクリートを用いてのダム建設の是非や環境問題にとどまりません。『福祉医療・教育・環境』分野への傾注投資によって、それらの分野における新たな雇用の創出を図り、ひいては長野県の経済や社会の活性化をはかっていこうという意思表示でもあるのです。」と述べています。
私たちも、従来から、「公共事業は大型事業優先から生活・福祉密着型に切り替えて、地元の業者に優先発注するべきだ。」と主張してきている立場から、この方向を大いに歓迎するものです。
 福祉・生活密着型公共事業のいっそうの重点化をどのようにしてはかっていくのか、長引く不況の中での地元業者の雇用の確保や受注機会拡大につながる入札制度の改善なども合わせて、知事の見解をお伺いします。


 そのなかで、生活道路整備の問題についてお伺いします。
 80年代から90年代にかけ、全国でもトップクラスの土木費を使って公共事業を推し進めてきた長野県では、その結果、年間予算をはるかに超える1兆6000億円の借金を作り、借金の実に93%が公共事業によるものです。にもかかわらず、大型事業優先で、身近な公共事業は後回しにされ、生活道路の整備は今なお全国38位と遅れています。
 私は、6月県議会の土木委員会の審議のなかでも、たとえば、豪雪地帯の栄村で、冬期間、村内交通が遮断されてしまう極野地区の五宝木トンネル建設による村内交通確保の問題などを例にあげ、このトンネルが林業予算での林道として計画されていることにも関連して、ただでさえ少ない林業予算、農業予算の大半が公共事業に使われてしまう現状では、林業、農業の本来の振興にとっても考え直さざるをえず、この際、土木部が中心になってイニシアチブをとり、林務部、農政部なども含めて部局横断的な生活道路整備のための新しい発想の体制の検討を土木部長にお願いしたところです。通学路の整備という点で、教育委員会サイドの検討も必要と思われます。
 決して屋上屋を重ねる組織作りではなく、小回りがきき、危険な通学路の信号がなかなかつかない、横断歩道ができない、側溝のふたが壊れたり、狭いままで、危険な道路がなかなか整備されず、子どもたちやお年寄りが身を縮めて歩いている……そんな状態がいつまでも放置され続けることのないような、問題解決型の体制を確立するべきではないでしょうか。知事の見解をお伺いします。


 公共事業を進めていくにあたっては、今まで以上の情報公開と住民参加が必要です。事業が決定してからはじめて説明するのではなく、決定に至る過程での説明責任を果たす問題も重要です。公共事業を進めていくうえでの、情報公開と住民参加をどう進めるか、あわせてお伺いします。


 次にダムに関する問題について、4点をお伺いします。


 最初に、9月25日、本体工事の契約が解除された浅川ダムについてお伺いします。
 多くの皆さんのお力で、私が県会議員として活動するようになってから11年半がすぎましたが、思えば、この11年半は、浅川ダムに反対し続けた11年半でもありました。危険な地すべり地帯へのダム建設は納得できないという素朴な気持ちからの疑問と、「論電ガ谷池の決壊で地獄を見た。わしの身内も死んだし、田畑や牛馬も流された。にもかかわらず、そんなことも忘れて、わしは、ここに家を建てた。頭の上に爆弾を抱えて暮らすような浅川ダムがもし造られてしまえば、わしは孫たちのためにも死んでも死にきれない。」と訴え続ける地元の住民の皆さんの思いが重なって、浅川ダム建設反対の住民運動がはじまりました。


 情報公開が今ほどすすんでいない時代に、浅川ダムの安全性や必要性の問題を解明していくのにも、専門家でもない私たちには多くの困難がありました。
 情報公開で長時間かかってようやく手に入れた資料を何時間もかかってコピーしたことも1度や2度ではありません。国土問題研究会や地元の良心的な専門家の献身的な協力もいただき、私たちは、とにかく現場に何度も足を運んで調査を重ねました。共産党県議団と長野市議団の政務調査費から少なくとも数百万円を私たちは浅川ダムの調査費用に使いました。
 県議会でも、長野市議会でも、浅川ダムに反対するのは日本共産党だけ、という力関係のなかで、多くの住民の皆さんや心ある専門家との協力体制なくしては、ここまでがんばってくることはできなかったことを考えると、コツコツと署名を集めて下さった人、仮排水路まで造られても、1,573人で監査請求を出し、それが却下されたあとは243人が原告となって住民訴訟に訴えて、ともに力をあわせてがんばってきたひとりひとりの皆さんと、「本体工事契約解除」というこの新しい歴史の1ページを、ともに喜びあいたいと思います。


 もちろん、今、私たちが迎えたこの新しい段階は、田中知事の誕生なしにはありえなかったことです。その意味で、1昨年の11月、浅川ダム予定地の現地調査に続いての住民集会で、「浅川ダムの工事をこのまま進めることは、将来に禍根を残す。」と一時中止し、その後の検討を経てついに本体工事の契約解除に至った、知事の英断と、就任以来のさまざまな困難を乗り越えてのエネルギッシュな行動に、そして、これからの私たちがすすむべき方向をロマンを持って指し示してくれた「脱ダム宣言」に、素直に心からの敬意を表したいと思います。
 そして、たとえ田中知事が出現しても、田中知事誕生以前に浅川ダムの本体工事を4回にわたって延期させ、あきらめずに、粘り強くがんばってきた住民の運動がなかったら、浅川ダムはすでに造られてしまっていただろうと思うと、私は、その住民運動に参加してともにがんばってきた一員であることも心から誇りに思うものです。

 さて、浅川ダム本体工事請負契約解除にともなう共同企業体への損害賠償の問題ですが、契約解除通知を受けての業者のコメントを拝見しますと、損害賠償額の提示を県に求めていますが、これはまったく本末転倒です。損害賠償請求は業者がするものですから、損害額をまず業者が算定して提示し、それを発注者である県が検討して対応を決めるべきものです。
 また、その場合、考えられる民法641条、および建設工事請負契約書47条にもとづく損害としては、施工するためにかけてしまった費用と、工事を施工したならば得られたはずの利益のうち一定部分を支払うべきかを交渉することになります。
 施工するためにかかった費用については、すでに平成12年度分約3,300万円、平成13年度分約1,400万円を支払済みであり、残る今年度の9月25日までの分を支払えば基本的に終了です。
 工事を施工したならば得られたはずの利益を発注者の県が支払うべきかどうかについては、弁護士など専門家の間では、全国的に事例がなく、しかも、浅川ダムの場合、施工上の問題点やダム建設による治水効果などに多くの問題点があることが指摘されつづけ、請負業者はこれを把握していたはずであることを考えると、損害の公平な分担の趣旨にもとづき、民法上規定されている過失相殺の趣旨や、信義誠実の原則などから相当の減額がされてしかるべきと言われています。簡単に言えば、県の支払い義務はほとんど生じないということです。
 ましてや、再三にわたる内部告発や、新聞「赤旗」の独自資料入手で談合の疑惑が指摘されており、「談合の事実があったときは、契約を解除されてもやむをえない。」という誓約書も交わしていることを思えば、胸に手をあてて、自信を持って損害賠償を請求できる立場であるかどうかも、私は疑問に思います。
 損害賠償額の提示はあくまで業者から行なうべきであり、仮に提示があったとしても、貴重な県民の税金は、慎重に、納得のいく対応をおこなうべきだと思いますが、知事の見解をお伺いします。

 さて、すでに発足して検討をはじめている、知事を本部長とする長野県治水・利水対策推進本部が、新しい、ダムに代わる総合的な治水・利水対策、環境に配慮された住民の納得のいく対策を具体的に策定していくことに、私は大きな期待をもっています。
 すでに全国で90を超えるダムが次々に中止になっていますが、私がお聞きしている範囲では、その後の具体的な治水・利水対策案が、部局横断的な体制で、総合的に策定されたという事例がまだ、あまり見つからないからです。
 6月県議会では、知事不信任の理由として、「ダムの中止を表明したのに代替案が具体的でなく、無責任だ。」と言う主張が大合唱となり、それに対して私は、その時点で全国ですでに70を越えるダム建設の計画が中止になっているが、ダム中止を決定したときに詳細な代替案があるところはどこもなく、どこでも実情に合わせて、必要な時間をかけて、ダムに変わる代替案、具体策が検討されていることを指摘しました。
 不信任決議案に対する反対討論でも紹介しました幾つかの中止になったダムの代替案が、その後、現時点でどこまで検討されているかを改めて調べてみますと、中止から2年たった宮城県新月ダムは、宮城県河川課のお話によると、代替案はなかなかすすんでおらず、この2年間は測量などの調査を中心に治水上の対応を検討しており、現在河川整備計画基本方針を策定中だが、利水については対応策がまだ見つかっていない、今年度中には何とかまとめていきたいとのことです。
 昨年12月に、付け替え道路まで造って中止した山梨県の笹子ダムは、堤防のかさ上げ、河川の拡幅などについて地元と協議中、今年度中に計画を策定したいとの意向だそうです。中止から2年、あるいは1年たってもまだ計画は出来上がっていないわけです。
 長野県と同じ6月県議会で、国直轄の柳井原堰と県が作る大原川ダムの中止を決めた岡山県の最近の土木委員会(8月29日付)の資料を拝見しても、具体策はまったくこれからです。
 全国のこのような状況のなかで、長野県での治水利水対策推進本部のとりくみをお伺いするにあたって、先日、知事が、浅川ダム本体工事の契約解除の説明に長野市長を訪問した際、マスコミ報道によれば、「浅川では、ダム以外の治水対策は技術的に無理」と言う長野市長の見解が示されたとのことです。本当にそうなのでしょうか、土木部長の見解をお伺いするものです。


 ここで、今回の9月補正予算で組まれている基本高水検証のための流量観測の問題について、一言ふれておきたいと思います。
 どれだけの雨がふったらどれだけの量の水がその河川の流域に流れるかと言う流量観測は、本来、基本高水を決定するときにデータがなければならないものです。ところが、浅川の場合、なぜか、その流量観測が現在までされてきませんでした。流量観測を行い、計算上でてきた基本高水の決定が妥当かどうかを検証して、初めてダム計画が決定し、認可されると言うのが筋だと思いますが、浅川の場合、その観測がされていなかったのに、計画が認可され、ここまで建設がすすんできたと言うのはまったく理解に苦しむことです。検討委員会は基本高水の引き下げを答申しましたが、流量観測さえされていないため、検証できない、そのため、ようやく遅ればせながら流量観測がされることになったのです。
 河川整備計画を作るにあたっては、ダムを造る、造らないにかかわらず、流量観測のデータは必要です。しかし、信頼できる流量観測のデータは、おおよそ10年間くらい観測しないとえられない、しかし、その間治水対策の手をこまねいているわけにはいかないから、現行計画の基本高水のまま、その8割を河川改修で、残りの2割を流域対策で対応すると言う今回の「枠組み」方針は、きわめて現実的で納得の行くものだと思います。

 さて、その流域対策ですが、私は、森林整備については、もっと光が当てられるべきだと考えています。森林の持つ保水効果、貯水能力はすでに折込済みで、これ以上の治水効果の向上は望めない、ということがよく言われますが、私はそれは違うと考えています。間伐の手を入れ、計画的な造林を行ない、土砂流出抑制効果のある山留め工などを丁寧に施すことで、森林にさらに大きな命が吹きこまれて行くことは確実です。
 浅川の場合は、ダムサイトより下流で急速にすすんだ開発によりコンクリートで固められた人口密集地特有の都市型水害への対応と、洪水時に千曲川へ自然流下できないことによる内水災害への対策が決定的に重要です。先ほどもお話がありましたとおり長野市では今年から、新たに個人の住宅などに降った雨を貯めて、庭の散水や洗車などに利用できる家庭用雨水貯留槽に補助する制度を始めますが、治水、節水の効果があり、市民参加の流域対策としても注目される取り組みです。このような取り組みを県としても大いに奨励し、励ましていくことが大切ではないでしょうか。

 また、浅川部会の報告や、検討委員会の答申にも盛り込まれていることですが、ダム建設をやめ、多目的ダムからの取水を他の方法に切り替えた場合、現状では水道事業者である市町村の責任となっている利水対策の費用を、何らかの形で県が支援していくことなど、「脱ダム宣言」にふさわしい、現行の制度を越えた新たな支援策の検討が求められています。20年来進めてきたダム計画を切り替えていくわけですから、住民参加と説明責任は今まで以上に求められることです。なかなかむずかしいとされている農業用水の水利権転用の問題なども、最近の転用が認められた富山市の熊野川ダムの事例も出てきているわけですから新たな視点での検討が必要です。懸案の千曲川との問題解決のため、知事が先頭になって国へのはたらきかけを、関係市町村や住民とともに行なっていただきたいと思います。

 新たに設置された長野県治水利水対策推進本部の任務として、流域対策としての森林整備、都市型水害対策、内水対策をどのように進めるのか。
 利水対策への新しい県の支援策をどう考えているのか。
 住民参加の考え方はどうか。
 国への働きかけも積極的に行なうべきではないか。
 以上、知事の見解をお伺いします。


 ダム問題の最後に、ダムの堆砂問題についてお伺いします。
 先日、裾花ダム、奥裾花ダムの堆砂の現状について調査いたしましたが、予想を越えた深刻な事態でした。堆砂の現状は、80年確率とされている裾花ダムが、計画堆砂容量500万m3に対して32年間ですでに411万3000m3の堆砂がたまってしまい、あと6~7年で満杯と言う状態ですし、100年確率の奥裾花ダムは堆砂容量210万m3に対してすでに21年間で196万3000m3の堆砂、こちらは、もう1~2年の余裕しかなく、事実上満杯です。
 今年からの5か年計画で、本格的な堆砂の排除に取り組むと言うことで、今年度分の事業費3億5000万円とのことですが、この2つのダムの堆砂を取り除き、本来の治水と発電などの目的が果たせる状態にするのには、単純計算でも350億円ほどの費用がかかることになります。せっかく造ったダムが。わずか20~30年で土砂に埋まってしまい、その土砂を取り除くための多額の費用がかかる、それも、そう簡単なことではありません。
 ダムで川の流れをせき止めたことによるよどんだ水、ヘドロ化した土砂、環境や生態系への影響、これらのダムのデメリットにも、今、私たちは正面から向き合っていかなければなりません。
 裾花ダム、奥裾花ダムの堆砂をはじめ、県内のダムの堆砂の現状と解決策についてどのようにお考えでしょうか。土木部長の見解をお伺いします。


 次に、乳幼児医療費の窓口無料化、福祉医療給付事業についてお伺いします。


 ご承知のように、今、経済の舵取り不能になった小泉内閣は、2002年度の予算では、当初公共事業費を10%削減するとか、国債発行を30兆円以内に抑えるとか、「痛みを分かち合うのだから国民も我慢してほしい」と言う建前をとっていましたが、実態は公共事業はわずか3%減で建設資材などの価格下落分が削減されただけです。
 その一方で、2003年度予算案では、「痛み」は国民生活に集中し、大企業向けには新たな財政のバラマキを始めると言う事態です。

 今年から来年にかけて、社会保障のすべての分野で、3兆2400億円と言う史上最悪の負担増が国民に押し付けられる危険があります。
 医療保険では、前国会で強行された医療改悪法案で、高齢者とサラリーマンの自己負担の引き上げ、保険料の引き上げで、1兆5100億円の負担増が押し付けられようとしています。医療改窓口負担増が受信抑制をひどくして、国民的国民的規模での健康悪化がすすみかねません
 介護保険では来年度は3年に一度の保険料見直しの年ですが、厚生労働省の調査では、高齢者の平均保険料は、約11%の引き上げとなり、総額で2100億円の負担増です。
 年金では2000年度から凍結されてきた物価スライドを解除して、財務省の試算では9200億円もの年金給付が減ることになります。現に給付を受けている約3000万人の人の年金を戦後の日本の歴史上、初めて切り下げると言うものです。
 雇用保険では、保険料の引き上げが計画され、6000億円の負担増です。
 病気、老齢、失業など、国民が困ったときに、国民の命と暮らしの支えになるはずの社会保障が、長引く不況の中で国民に襲い掛かろうとしています。社会保障は何のためにあるのか、今、その根本が問われており、同時に地方自治体の役割が問われているのではないでしょうか。このことに対する知事の見解をお伺いします。

 その小泉内閣でさえ、支援せざるをえなかったのが乳幼児の医療費です。3歳未満の乳幼児の医療費の自己負担が3割から2割に引き下げられることになりました。それによる県内への影響額はどのくらいでしょうか。社会部長にお伺いします。

 乳幼児医療費の窓口無料化は、子育て世代の県民の切実な願いです。すでに、なんらかの医療費窓口無料化を実施しているのは全国で38県、乳幼児医療費の窓口無料化は29県が実施しており、この分野では、長野県は残念ながら後進県です。
 今回の提案説明の中で、去る8月5日、「福祉医療のあり方検討委員会」が提出した提言の内容を尊重し、制度改正を行なう知事の見解が表明されました。
 しかし、提言の内容は、市町村役場への、申請手続きを必要としない方式、障害者の対象範囲の拡大、乳幼児の対象年齢の引き上げ、母子・父子家庭の取得制限の緩和、また、今回の補正予算で具体化された養護学校の医療的ケアが必要な子供への看護師の配置などの前進面はあるものの、問題の窓口で支払うということ自体は解決していないばかりか、乳幼児医療費に新たに所得制限を導入することや本来治療の一環である入院給食費の自己負担導入など、見逃すことのできない制度の後退があり、このまま実施されることには、私たちは納得できません。
 そもそも、田中知事になってから設置された各種検討委員会のなかで、少なくともこの委員会だけが、公募もせず、長年窓口無料化を願って運動してきた団体や個人もいれず、市町村長を3分の1も入れるという人選の委員会でした。アンケートをとった、関係者の意見陳述もさせたと言うかもしれませんが、この委員会が、県の市町村長会から、「市町村の意向を無視している。」との申し入れを受け、あまりにも市町村長ばかりを意識した委員会にしたために、県民の声が切り捨てられた委員会になってしまったのではないでしょうか。委員会設置前の昨年度、県の意向調査を受けて、当時101市町村が、「県が踏み切ってくれるなら」と乳幼児医療費の窓口無料化を希望していたのに、大きな後退となる恐れがあります。
 今回の知事選挙の最終盤、堀金村での早朝からの知事の街頭演説に若いお母さんたちが駆けつけました。前回の知事選挙での知事自身の公約でもあった「乳幼児医療費の窓口無料化」を強く願ってのことでした。窓口無料化を切実に願っている県民の声を、知事はどう受け止めておられるのでしょうか。
 今回の提言を受けての制度改正が実施された場合、最も心配されるのは、現状の制度からの後退です。「自動給付方式」を実施した場合、窓口無料化をすでに実施している3町村が後退することのないような保障はあるのでしょうか。知事の見解をお伺いします。


 母子、父子家庭、一人親家庭への支援策についてお伺いします。

 先日、私たちは、母子寡婦福祉連合会の有志の皆さんからご要望を受けました。さまざまな理由で一人親家庭となった親達が、必死にがんばっているけれど、やはり一番の心配は経済的な問題だと言う訴えでした。
 児童扶養手当ての大幅な改正により、現実の母子家庭の収入は激減することになり、北京での世界女性会議でも問題となった日本の女性の男性より極端に低い平均賃金と言う社会的条件のなかで、国に対し、児童扶養手当の見直しを強く働きかけていく決意も述べられました。
 知事としても、早急な国へのはたらきかけをしていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

 その際、離婚した相手の側が約束どおりの養育費の支払いを怠った場合、外国には、それを給料から天引きする国の制度があるところもあるが、日本でも検討してほしい制度だと言う指摘もありました。
 県として、一人親家庭への支援策の一層の充実を考えておられるでしょうか、お伺いします。


 次に、県内でも深刻な雇用、不況対策についてお伺いします。


 まず最初に、今の不況は、どんな立場の人でも小泉不況とよんでいます。大銀行や大企業には大判振る舞い。その一方でお年寄りや障害者をないがしろにして、福祉、くらしをどんどん削った小泉内閣の失政が今の不況の原因であることは常識になっています。
 また、労働者の首を切ったら税金を負けてやるといった法律までつくりリストラを応援してきたのが今の政府です。これを受けて、県内でも富士通などで大リストラがやられています。
 しかし、こうしたなかでも、何とか県民の暮らしや営業を応援しようと、田中県政は、無駄な公共事業は減らし、必要なものは増やしてきました。特別養護老人ホームなど福祉の関係の公共事業に力を入れ、また、生活道路、例えば、山村地域市町村基幹道路整備費は2000年度2億4千万円だったものを2002年度には5億2千万円に2.2倍増やしました。しかも、小規模事業者や地元業者に優先して仕事をまわすように改めてきました。これら生活密着型の公共事業でこそ、地元の中小企業の皆さんに仕事が回ります。
 長野県の失業率は3.3%と全国で一番低い数字です。失業や不況は、全国どこでも大変です。そのなかで長野県民が歯を食いしばってがんばって、そして、県政もこうやって県民を応援してることと、長野県の失業率が全国一低いことは決して無縁ではないでしょう。

 知事は、本定例会議案説明で、長野県の基幹産業たる「製造業・農林業・観光業」が有する潜在能力と、21世紀型の新たな労働集約的産業とも呼ぶべき「福祉医療・教育・環境」の連携と融合を図ることを改めて打ち出されました。また、公共事業についても、治水・砂防・治山・土地改良型の公共事業にとどまらず、事業のための事業、あるいは事業が事業であり続けるために、更には組織や団体の存続のために、といった考えを排し、まさに納税者の目線、地域を担う住民の願いに立ち、より少ない金額でより多くの効果をもたらす望ましき公共事業のあり方を追求することを述べられました。私は、この方向にこそ、長野県内の雇用と地域経済を抜本的に改善していく希望、展望があると考え、その実現に向けて私たちも努力を惜しむものではありません。

 さて、知事は、本定例会議案説明で、中小企業融資制度資金の借り換え制度の延長とともに、公社等を中心にしながら県内外での受注開拓を積極的に推進することを打ち出されました。とりわけ、中小業者の受注開拓は、不況、親会社の海外進出など二重、三重の苦しみの中でがんばっている業者のみなさんの強い要望です。

 全国的にも有名なものづくりの街、東京・墨田区では、業者団体の運動の中、産業政策を持つうえで、「業者の実態がどうなっているか」正確に把握することが、最も大事な問題とし、区内9,313軒の製造業に対し、区の係長以上の幹部職員を総動員して3ヵ月間かけてすべて訪問して取引先とその関係、銀行取引の実態、機械設備の状態、家族の状況など聞き取り調査をおこなって企業台帳を作成しました。このことで、行政において地域の産業を守る決意が高揚し、行政が支援する産業政策の根幹をなしているそうです。
 その上で、中小業者、学者、議会、行政などが参加しそれぞれの立場から議論を展開する「産業振興会議」を設置し「デスクワーク」による施策から実態に即したメニューの創設が施策を発展させています。
 さらに、墨田区では区幹部職員全員を動員して「仕事起こし事業」を展開、関東周辺の430の企業を訪問して受注開拓をおこなって80社から区内業者への発注をとりつけるなど、成果をあげているそうです。中小企業の対策は、なによりも切実な業者のみなさんの生も声をしっかり把握し、地域の歴史や文化、産業特性に応じて政策立案、実施をおこなうことが欠かせません。
 長野県でも、こうした墨田の事例も参考にして、実態調査を実施し、さまざまな立場から議論を展開する場を各地にもうけるべきではないでしょうか。このことを市町村との協力をすすめながら踏み込む必要があると考えますが、知事の所見をお伺いいたします。
 あわせて、こうした中小企業への支援を充実させていくためにも中小企業向けの振興予算を増額していくことも求められているのではないでしょうか。


 次に中小企業向けの官公需の発注についてうかがいます。
 県内の自治体でも、官公需の地元業者への発注などさまざまな努力がおこなわれています。栄村では、村の役場で扱う備品から開発公社の施設で出すお酒まで、村外の大きな資本やディスカウントではなく、多少高くついても極力村内の業者に発注しているとお聞きします。地元業者の仕事を確保し経営を守ることが、ひいては地域経済の発展につながるからです。
 そこで、知事にお聞きしますが、県の中小企業向け官公需の発注率は現在、どれくらいになっているでしょうか。また、明確な目標を持ち発注率を引き上げるための研究や具体的な手立てを講じるべきではないでしょうか。
 大型店の相次ぐ出店、そして既存商店街からの無責任な撤退で、県内でも商店街が衰退しています。長引く不況も商店街を追い込む要因の一つです。しかし、これは、単に小売業者だけの問題ではなく、街が荒廃し、高齢者は住みにくく、子どもたちを育てる環境も悪化するなど、県民の暮らしの基盤にかかわる大きな問題です。
 こうしたなかで、商店街の役割を発揮させるため、駐車場の確保、公共施設の配置、野菜・魚・肉類の生鮮三品を販売する小売店の確保、高齢者への配達など、消費者の要求にこたえた商店街をつくろうという自主的、自覚的な創意ある取り組みや努力もはじまっています。こうした商店街づくりをさらに励ましていくためにも県の支援を充実させることが大切だと思います。
 この点でも、製造業だけではなく、小売業者に関しても実態調査をおこなうなど生の声をつかむ努力、そして、県下各地の街づくりの取り組みの交流や知恵や創意を出し合う場を県としても更に積極的に設けることが必要ではないでしょうか。
 知事のお考えをうかがいます。


 今年から、小学校1年生からの実施が始まった30人規模学級の実施はどこでも本当に喜ばれています。来年度からは2年生までの実施になるとお聞きしていますが、もっと対象学年を拡大してほしいと言うのが県民の願いです。
 国が制度化していないばかりか、義務教育費の国庫負担制度や標準法にもとづく教員の人件費負担まで切捨てを検討し始めた政府の下では、県単独事業としての実施にならざるをえず、財政的に厳しいことは承知しています。しかし、同じ厳しい財政状況の元でも、今年から2004年度までに段階的に義務教育の全学年で30人学級が実施される山形県や、来年度から全学年で実施を決めた愛知県犬山市の例もあります。ひとりひとりの子供たちに先生の目が、手が行きとどいてこそ、学力もつき、不登校を未然に防ぐことができるのではないでしょうか。
 全国的に見ても不登校児の多い長野県では、不登校支援員の配置や、新たにNPOとの協力も検討課題としているようです。それはそれとして重要なことですが、不登校になってしまってからの対応では、本当に厳しいものがあります。もちろん、不登校児の為の居場所作りや、今まで以上の支援策は進めていただくとして、30人学級のさらに早いテンポでの全学年での実施を進めるべきではないでしょうか。


 (次に同和対策についておたずねします。・・・続きはその2へ)











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