イタリアいなかまち暮らし

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診断



次の日彼女から「重要な話なので直接来て欲しい」と言う電話が入り、夫は飛んでいった。

以下は彼女の話。

今年はじめにもレントゲンを確認したが、そのとき発見できなくてほんとに申し訳ない。上あごにとても大きなのう胞がある。大きいので原因は複数の歯根が関わっているだろう。歯根端手術をしても成功する可能性は低く、病巣に犯された残っている歯根がとれてくるだろう。すぐにとれてこなくても2,3年のうちにはとれてくるので、どうせなら今全部上の歯の歯根を取り除いて病巣を一切排除したほうがいい。そうしたら再発もない。歯根端手術では再発の可能性がある。

のう胞が歯の土台となる骨を溶かしているので骨の再生をまたなければインプラントができない。今すぐのう胞と歯根を取れば骨の再生もその分はやい。いつになるかわからない大病院での歯根端手術を待っているうちにもっと骨はとけて再生も遅くなる。進行が進むと鼻の骨にまで達する。
自分に任せることを選んでくれるのなら、自分が上の歯根を取り除いて、次に週一で来る専属の口腔外科医がのう胞を取り除く。

病巣のある歯根がブリッジを支えているので、歯根を取るとブリッジはもう使えない。インプラントができるように骨が再生するのを待つ間は、取り外しのできる「入れ歯」で過ごさなければならない。
なお、病巣がないと思われる歯根が二つ残っているが、入れ歯を使っている間に邪魔になるので取ってしまった方がいい。

↑説明ここまで。

上全部総入れ歯ー!?

残せるはずの健康な歯根までなぜ取るの?
現代の歯科治療って、歯を抜かずになるべく残す方向で努力するのが主流じゃないの?
それよりなによりも、今年入れたばかりの8本のブリッジがパァって!?(ゲンキン)

親しくさせてもらってる歯医者さんだけど、これだけは、何が何でも、彼女一人の治療方針では納得できない!!

ってことでとりあえず家庭医のところに飛んでいって、病院の口腔外科にかかれないか、と相談してみた。
しか~し!! 田舎州の州都をなめてはいけな~い!! なんと、 カンポバッソの公共病院には歯根端手術が出来る口腔外科はない!!
( ゚Д゚)唖然!!!

となってるのは私だけで、夫は「だから10年前の手術もローマだったんだ」と、当然という顔をした。
私立の診療所はあるけど歯科治療が主で、夫に必要な比較的大規模な歯根端手術までできるところは少なそう。そもそも自費ではとても手術費を払えない。
ちなみに歯根端手術ができる口腔外科を「Maxillo-faciale外科」と言い、普通の口腔外科Chirurgia odontostomatologicaと区別され、扱う範囲が広いから歯茎の骨まで開く歯根端手術ができる科だ。ほかにも上あご下あごの骨の手術はこの科の領域。

とりあえず家庭医が、有名なMaxillo-faciale科のあるローマの病院を教えてくれた。

ところでここから一番近い都会というとナポリ(約2時間)、ペスカーラ(約2時間)がある。ローマは約3時間だがこの少々の違いで首都、つまりイタリア一かもしれないクオリティを享受できるので、やはり病院はローマだろう。ナポリの病院ってちょっといいイメージがないし。

それからすぐに診療の予約をして、10月はじめの2週にわたって定休日の月曜日はローマに行き、その教えてくれた歯科・口腔外科専門の権威的な病院・EASTMANと、夫が10年前に手術した全く無名の穴場的病院Villabetaniaと、もうひとつ大きな総合病院の口腔外科を訪ねた。レントゲンとCTスキャンを見せて治療法を聞き、とりあえず手術の予約もすれば一石二鳥だ。

EASTMANとはイギリス人の医者で、昔この分野でとても貢献した偉人的な人だそうだ。その名が掲げられているから歯根端手術などお茶の子さいさいだろう。夫が調べたインターネットの掲示板でも評判がいい。

そのEASTMANの口腔外科医は、夫のレントゲンとCTスキャンをチラッと見て、夫の話をふんふんと聞き、「歯根端手術で治る。しかし一つ際立って状態の悪い歯根があるから、歯科医で神経を抜いてもらっておくこと」と言い、速攻の早さで診療を終わらせた。
手術日は翌年2~4月ごろになる。手術予定というのは緊急の患者が入ることにより常に変動するので、近くならないと決まらない。決まったら電話で知らせるとのこと。
ここで夫が図りかねたのが、「ぱっと見て聞いただけで速攻で決定して終わらせるって、信用できない。この医者は大丈夫か??」「いや、それだけ経験と自信がある確かな医者なのか?」。
どちらかというとあまりいい感じは受けない対応だったそうだ。

Villabetaniaは老人介護施設の付属病院で、だれもそんな病院のことは知らない。10年前今の歯科医のお父さんが紹介してくれた。
彼らも同じく悪い歯根を指摘して「これはかかりつけの歯科医に神経を抜いてもらっておきなさい。しかし手術の直前でなければいけない」
手術の予約は翌年1月に取れた。

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