いつか見た青い空

いつか見た青い空

神々の力



沖津直樹  
28歳、サラリーマン。趣味は少林寺拳法,ドライブ、強い霊能力を発揮できる。沖津家は隔世遺伝で強い霊能力を持った男子が生まれる。

岡村美帆  
24歳、家事手伝い、沖津直樹の恋人。趣味は料理、物凄いやきもち焼き。直樹の能力を誰よりも理解している。

岡村紀子  55歳。美帆の叔母。岡村家の本家を守っている。霊感が強い。

司 洋子  24歳、岡村紀子の娘であり,美帆のいとこ。霊感はない。

司 光   5歳の女の子、直樹に匹敵する霊能力を持つ。
(ひかる)

岡村 涼  28歳。美帆の兄。

沖津幸吉  75歳、直樹の祖父。直樹の数倍の霊能力の持ち主。



直樹は自分の部屋にある神棚の前で正座していた。今も激しい頭痛が続いている。

まだ夕方の5時だというのにとても静かだ。ベットの横にある目覚まし時計が生々しく

時を刻んでいる。その音が直接、脳に響いてくるかのように感じる。

明らかにこの部屋には強い霊気が満ちている。

その霊気に直樹の感覚が少し麻痺しているようだ。この状態で除霊が成功するとは思えなかったが

直樹は静かに目を閉じて合掌をして精神統一を開始した。頭痛がより酷くなった。

「我を守護したまえる不動明王に御願い奉る。我に憑依し、魂を、心を傷つけようとする闇の使い魔を大火炎呪にて降魔し、今一度、我に生きる希望と力を授けたまえ」

直樹は不動明王大火炎呪を心の中で何度も唱えた。しばらくすると、直樹の体温が

上がってきた。炎をイメージしている為なのか、直樹の体内の気が活性化した為なのかは

判らないが、あきらかに血行がよくなっている。

そして、奇跡が起きた。直樹の頭上にある神棚から直樹の頭に向かって光があたった。

すると、直樹の周りの空間が竜巻の中にいるかの様に大きく動きはじめた。

大きな叫び声と共にタヌキの霊の気配が消えた。

直樹の守護神である不動明王が直樹の守護霊である藤原新五郎公清に神界の力を与え

飯橋天山の放った使い魔のタヌキの霊を霊界に強制的に送り込んだのである。

部屋の中に満ちていた強い霊気が消えている。

頭が割れるのではないかと思えるほどの激しい頭痛が無くなっていた。

直樹はベットまで歩き、そのまま倒れこんだ。

「これで美帆に怒られないな。メールしようかな」

直樹が携帯を手にすると、誰かが激しくドアを叩き始めた。

「直樹、開けてよ。中にいるんでしょ。開けてよ。直樹。何かあったの。」

直樹が玄関のドアを開けると、美帆が直樹に抱きついた

「直樹、大丈夫。顔色が悪いけど、熱でもあるの。」

直樹も美帆を優しく抱きしめた。

「大丈夫だよ。神界の力を借りて除霊したから。もう二度とこの世に来て悪さが出来ない様に霊界に送り込まれたはずだ。」

直樹の話を聞いて愕然としていた美帆の兄、涼が直樹に尋ねた。

「私に憑いていた霊は、直樹さんでも手をこまねくほどに強力な霊だったんですか。」

「いいえ。涼さんに憑いていた霊は対した事はなかったのですが、アピタで逢った時に涼さんの後ろに、涼さんの先輩の意識がいたのです。私が彼に気をとられていた時に彼の使い魔に憑依されたのです。私の守護霊の力が及ばない程に強力な動物霊でした。おそらく、彼にコントロールされていたのでしょう。そして、怒りの感情を極限にまで高められてしまったと思います。」

「直樹、もう本当に大丈夫なの。私、直樹がいなくなったら、物凄く悲しいよ。」

「本当に大丈夫だよ。心配かけてごめんな。」

直樹に優しく抱きしめられて泣いていた美帆が振り返った。

「お兄ちゃん、その男の所に連れていってよ。私がほっぺた、叩いてくるから。」

「美帆、落ち着けよ。おまえが行っても何もできないだろう。それに、先輩に会えるのは毎月一回だけなんだ。祭礼がある時だけなんだよ。」

「だって、直樹がこんな目に会ったんだよ。私、許せないよ。お兄ちゃんにも責任があるんだからね。」

直樹が美帆を振り向かせて、再び優しく抱きしめた。

「美帆、お兄さんのせいじゃない。除霊が終わった時に不動明王の意識に怒られた。今回は助けたが、次回も今回の様に不用意な行動をしたら罰を下す、ってね。美帆から話を聞いた時に霊査をしてから行動すべきだったんだ。」

「私の為に、すいませんでした」

涼は頭を下げて謝った。

「あっ、そういえば、直樹、光ちゃんが大変なの。洋子からメールが来て、七人刀が現れたって言ってた。直樹に来てほしいって言ってたよ。」

「何、本当なのか,どうして、もっと早く言わなかったんだ。携帯で連絡してくれ。」

美帆は洋子の携帯にかけるとすぐに洋子が携帯にでた。

「もしもし、洋子、美帆だけど・・・」

「美帆、お願い。直樹さんに連絡して。すぐに来てもらってよ。光が変な白い影みたいな物に体を引っ張られているの。おかあさんと私で光の体を押さえてるけど限界なの。直樹さんにどうにかしてもらって。お願いだから、早く・・・」

携帯が切れてしまった。

「美帆、携帯から聞こえた洋子さんの声で、何が起きているかは大体、判った。今から赤羽根町まで俺の意識を飛ばしてみる。二人とも部屋の中に入って。」

美帆と涼は直樹の部屋に入ってドアを閉めた。直樹は再び神棚の前に正座をして精神統一をして、

愛知県赤羽根町岡村本家に意識を飛ばした。そして見えた光景は恐ろしいものだった。

「直樹、どういう状態になってるの。」

「美帆、落ち着いて聞いてほしい。以前、美帆の部屋の前にいたおばあさんの霊がバラバラに引き裂かれた状態で俺にメッセージを伝えてきた。白狐が突然、現れて光ちゃんに襲いかかったって言ってた。俺に来てほしいそうだ。とにかく、今からおばあちゃんの家に行こう。」

3人が立ち上がった時、神棚の鈴が鳴った。

「わかっています。私の力ではどうにもならない事くらい、判っています。それでも、私は何の罪もない弱い立場の人が攻撃される事を許せないのです。だから、私は行くのです。」

直樹は神棚に訴えかけた。

「直樹、急ごうよ。」

再び、玄関に向かおうとした時、直樹が立ち止まった。

「ん、この霊気は・・・七人刀か、おばあちゃんの家に現れたな。」

すると、神棚から、ドーンという大きな音が聞こえた。かなり大きなラップ現象が発生した。

金山彦ノ神の神棚が金色に光った。その光は、一つの塊となって、鳥の様に飛び立った。

「直樹、今の光、何なの。私にもはっきり見えたけど。ちょっと、直樹、どうしたの」

「間違いない。今の光・・・金山様の使いだ・・・」

直樹はしばらく、体に力が入らなかった。初めて神霊を感じた。直樹はその場で座り込んでしまった。

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