島流れ者 - 悪意なき本音

島流れ者 - 悪意なき本音

2003.09.05
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楽しかった四年間のアパート暮らしに付いての話でもしようか。始めて入居した頃は、そのアパートの人たちと仲良くなろうと思ってBBQパーティーをしようととある隣人に持ちかけた。そのことをすぐ隣の夫婦に行って参加しないかといったら渋い顔をして断られた。その理由が当日になって分った。1:00pmに予定していたので、彼かのドアをノックすると、なんとまだ寝ていたのであった。その独身のカップルで、彼のトムがレストランで働いていて、夜遅くまでの仕事なので朝起きるのがつらいと言う。そして彼女のマリアもボーっとしながら、“あ、そうか、今日だったのね。”目をこすっている。何とか二時間後に始めたパーティーに集まったのは、このアパートの別の部屋に住む19歳のレズビアン、レネーと、彼らの友達、よく言えば開放的、悪く言えばルーザータイプ(ろくでなし)の人たちであった。

これはまだほんの始まりだった。その後、ちょくちょく顔を合わせるたびに挨拶する程度に近所付き合いは留まっていたが、マリアは話し好きでうちのジャックとあれこれと世間話をするようになった。聞き上手のジャックの雰囲気に飲まれたマリアは、結構個人的な話、例えば暴力家庭に育って家出をするように家を飛び出し、その後若くして妊娠してしまい、生んだ子供を育てられずに彼女の親が面倒を見ているなどと言う込み入ったことまで打ち明けるようになった。

始めは会うとニコニコするようにしていたが、次第に私は彼女のことを遠ざけるようになっていった。それは、彼女が新しい男と住むようになってから、ぽっちゃりしていた体つきが異常に細っそりとしてきて、顔色がだんだんどす黒くなってきたのだった。ランドリールームでばったり会って仕方なく短い会話を交わすと彼女の話し方が普通でないことに気がついた。今までは、マリファナ程度だったのが、新しい男によって影響され、ハードドラッグを使うようになったのは明らかだったのだ。

この新しいマリアのボーイフレンド、ダニーは典型的なホワイトトラッシュで、(教育のない無知無能な白人)仕事もしないでいつもふらふらしていて、ラジコンをうちのベッドルームに面している駐車場でびんびんならして遊んでいるかと思えば、部屋の中でがんがん大工仕事などをしている。そして友達を呼んでは明け方までドンちゃん騒ぎ。

あるときダニーが彼らの部屋のすぐ前にある場所に池を作った。その場所はコの字になったアパートの中心にあるパティオで誰からも目に付く場所だった。当然ルーザーのダニーは水をこまめに替えることなく、だんだん濁って来たその水は、数ヵ月後にはミルク色になるまでに汚くなり、ボーフラなんぞがいて、見るに耐えなかった。何度もその池の水をきれいにしてくれと頼んだのに全く無視していたので、怒ったジャックは在るとき傘の先でそこに張ってあるビニールに穴をあけ無理やり水を流したのであった。

また別のときには、ガレージセールだと言って彼らガラクタを駐車場に何ヶ月も放置したり、共同のゴミ捨て場に落書きをしたりとまるでガキのするような下らない事をして喜ぶこの隣人に私達の怒りは募るばかりであった。アパートの造り上、奴のやることなすこと嫌でも目に入ってくるため、何度となく大家に文句を言っていたが、不思議なことに、この大家、ダニーとマリアのことを至極気に入っていたようだった。そのたびに、彼らに注意はするものの、追い出すようなことをしないだけでなく、たまにはダニーにアパートの修理などを安い賃金を払って手伝ってもらったりしていたのであった。しかし、これだけではなくて、私はこの大家と奴らの関係は、何か裏取引があるんではないかと睨んでいた。

無職のダニーとマリアには安定した収入がなかった。一時ダニーがいいところに就職できたと言ってまだ三ヶ月の見習い期間を終える前にピカピカの新車のトラックを買い、マリアも負けずに新しいマツダの小型スポーツカーを買ったといって自慢げに見せくれた。そうこうしているうちに、ダニーがまず首になり、(当然だと思ったが)その直後、マリアまで無職になってしまった。そして言うまでもなく、彼らの自慢の新車たちはいつの間にか姿を消した。

その後、ダニーがたまにする市内観光バスの運転手の仕事や、他の小さな仕事で何とか生計と立てていたようだが、物価の高いこの町でいったいどうやって暮らしていけるのかと疑問に思っていた。が、その答えはすぐに出てきた。ちょうど同じ時期に、毎日毎日入れ替わり立ち代り来る彼らの訪問者が来るようになったのだ。昼夜問わずドアを叩いているその訪問者達は彼らの部屋に入ったかと思ったらすぐに出て行く。閉ざされたドアの向こうで何が起こっているかは明らかだった。

彼らのする迷惑行為に対してどれだけ文句を言っても何もしない大家に苛々していた私はこれはチャンスと彼らのシークレットディールを匿名で密告したのであった。しかし、警察も確実な証拠を掴むまでは家宅捜査をすることが出来ないようで、半年経っても何の進展もないようだった。しかし其の間もこのアホ男、ダニーは別件で逮捕され2週間ほどジェイルに入れられたようだ。それはなんともくだらない理由、駐車違反のたかだか$30の罰金を何度か滞納した罪で。その事を聞いた私は密かに拘留中に例のドラッグの件を突っ込まれてボロを出さないかと願っていたが、そうは問屋が卸さなかった。



無職の彼らがいつまでもここに長くは住んでいられないだろうと言う私達の予想どおり、それから二ヵ月後にようやく大家が彼らを追い出すことになったのだ。この大家も人がいいんだか、奴らが家賃を滞納していて、再三にわたって請求したがこれが限界と言ってなんと半年も滞納した後、ようやく行動に移ったのであった。このルーザーたち、引越しが決まったと喜んでいる私達を横目に、もちろん最後の迷惑を掛けていくのも忘れなかった。引越しが決まってから彼らは分かれることになり、まずマリアが彼を追い出したので、行く先の無いダニーの荷物がパティオのど真ん中に何ヶ月も放置され、最終的にマリアが出て行ってあいたその後でも彼らの荷物が駐車場の開いたところに半年以上も居座っていたのだった。





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最終更新日  2003.09.06 02:53:20
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