島流れ者 - 悪意なき本音

島流れ者 - 悪意なき本音

2003.09.13
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さて、今日からシリーズで、アメリカに住むアジア人に付いて書いてみようか。他の人種からは見分けが付かないアジアの国の人々。移民の多いこの国で、一般的に礼儀正しく親切であると言われる日本人に対し、正反対の、自己中心的で物事を何でも損得で考えると評判の悪い中国人や韓国人。各国の人の印象は、個人個人の体験しだい。今から書く内容は、私が出会った人たちを基にした、もちろん私の主観を交えての物なので、その国の人たちがみなそうだと思わないで欲しい。単なる独り言と思って聞き流して頂れば有り難い...

***中国人の巻***

初めての外国での仕事はウェイトレスだった。労働許可のない日本人学生にとって一番手っ取り早く稼げるのはなんと言っても日本食レストランで働くこと。日本で極貧生活をしながら頑張って溜めた貯金もそこを付き始めて、何とか学生生活を最低レベルに保つためにはバイトをしなくてはいけなかった。そこであちこちの日本食屋を当たったが、何処も空きがなく諦め掛けていた所、当時一緒に住んでいた日本人ルームメイトのJちゃんが、勤めている一番と言う日本食レストランで、今だったら人を募集しているよと言ってくれた。ルームメイトと同じところで働くのもなあ、と躊躇したが、そんなことは言っていられないほどの状態まで来ていたので、とりあえず面接に行くことにした。

面接とは言えどもすでにJちゃんがチーフウェイトレスに私を紹介してくれていたお陰てすんなり入ることが出来、早速見習い期間としてキャッシャーの仕事から始まった。それは会計の他に、入り口で入ってくるお客さんにテーブルを案内したり、バーに座っているお客さんの飲んでいるお酒やビールの数を伝票につけたりと言う物だった。日本でセースルの経験が長かったため、愛想を振りまくのはお手の物であったが、問題は、この会計の部分であった。何しろ日本で中学生のときに高校生と偽って小さな喫茶店でウェイトレスとしてバイトした時に、レジで金額を何度も間違って打っていた為、自給を下げられるという罰を受け、憤慨し無断で止めてしまったと言う経験の持ち主。当然、得意としない分野なためにこの一ヶ月ほどの見習い期間は地獄であった。

このレストランのオーナー、ミスター・リーは中国人、厳密に言うと台湾人であった。彼のバックグラウンドに付いてはあまり詳しくは知らないが、結構なやり手でこの日本食レストランのほかに、三つの中国レストラン持ち、これらはは家族ぐるみで運営されていた。このファミリービジネスにノータッチの彼の奥さん以外、一番のすぐ隣に構えたチャイニイーズレストランは三十後半の娘、リサが担当し、この日本食レストランは経営以外に寿司シェフとして週にに三回働く婿養子(日本式に言えば)、ピーターが仕切り、少し離れた高級住宅街にあるチャイニーズレストランは三十中半の息子、ヘンリーによって運営されていた。

この家族、息子のヘンリー以外はお金に関して非常にがめつかった。彼等は究極のケチで、まかないのコストを抑えるために安い鶏肉以外は使ってはいけないと決まりを作ったり、従業員が業務用で使う食材を持ち出したりしないかと恐れて、まかないで食べる物を持ち帰ることを禁止していた。また、醤油の仕入れ値が高すぎるといって、まずい中国製の物に切り替えた。当然お客はこの違いをすぐに察し、あるお客はこのオーナーの前で持ち帰りようの醤油を舐めてぺっと吐き出し講義した。その後往生際の悪い娘婿のピーターは俺が自分で醤油を作ってやる、と奮起一統したが、当然出来上がった物は店を潰すほどのまずさで、渋々高い(彼等にとって)日本製の物を仕入れたのだった。

このファミリービジネスに君臨するミスター・リー、血統のケチに加え、猜疑心が強く自分の家族以外は誰も信用しなかった。新米の私がレジで仕事をする際に、本当に文字通り肩越しに私の行動を逐一観察し、閉店後のレジ閉めにはまだ終わってもいないのに、“Mistake?”と間違えるだろうと勝手に決め付けて何度もしつこく聞いてくるのだった。従業員に店のお金をネコババされるという被害妄想から、時にはランダムにわざと二十ドル札をレジに入れ、閉店の最終決算でその差額をきちんと報告するかをテストしたりすると言う、なんとも陰湿なやり方をし、従業員の誰からも嫌われていた。私が彼のすることに対して腹を立てていると、先輩ウェイトレスたちが、“私も入ったときに同じような扱いを受けたけど、暫く経ってきちんと仕事をすると証明できたらもういちいち行動を見張らなくなったの。ちょっとの辛抱だから頑張って。”と励ましてくれたのだった。

暫くは黙ってこのミスター・リーの監視に耐えていたが、ある日ディナーの一番ピークでお客が一杯の中、爆発した。肩に息が掛かるほど、私のすぐ横で仕事を監視するので、つい大声で叫んでしまった。“私のこと気に食わないから嫌がらせしてるんでしょ!まだ入ったばかりだから間違いもするし、あんたの思うように手際よく出来ないけど、これでも一生懸命やってるんだ!慣れるまでのチャンスも与えないで落第点つけるようなことするな!!そんなに私の事気に入らないならもうやめる。今から帰る!”と。すると、ミスター・リー、そんな口答えをされたことがないのか急にうろたえて、”ごめんごめん、いや、ビジネスのことに関しては、自分の娘に対しても厳しくしているから、君に対してだけじゃないんだ。”と謝ってきたので、取り合えず煮えたぎった腹を押さえて留まることにした。その一件以来、彼の監視が収まったのだった。

そして、このミスター・リーの娘、リサもまた、とてもがめついビジネスウーマンだった。正に、この父親にしてこの娘ありだ。このファミリービジネス以外に彼女は不動産業に従事していた。一番の開店当時から勤めているチーフウェイトレスのKさんに、家を買え買えとしつこく口説いていた。彼女の仕事不動産売買の仲介人だったので、誰かが家を買うとその物件価格の2%~6%ほどの報酬が手に入る。Kさんの前に、台湾人の寿司シェフ、Jにかなりの攻撃を掛け、彼に家を仲介した。その当時、不動産物価が急上昇し始めていて、相当のコミッションが彼女の手に入ったのだった。Kさんはガテマラ人の旦那さんを持ち、歯科助手の仕事の傍らウェイトレスをして、地道にマイホーム資金を貯めていたが、あまりにも高くなりすぎたこの街の家はもう買えないと諦めていた。しかし、一年後には、更に手もつけられないほどの値上がりの中、コンドミディアムを、一年前なら一軒家が買えるほどの価格で買う事になった。



幸い、更なる不動産価格の上昇により、Kさんは損するどころか、自分の財産の価値が、たった一年の間に30%以上も上昇すると言う恩恵を受けたので、最終的にはこの決断が間違っていたわけではなかったが、現在リサは、まだこの家を手に入れてたったの一年しか経っていないKさんに、次は家を買えと圧力を掛けているそうだ。そんなリサの言いなりにならなくたっていいのにを思うのだが、貧乏学生の頃から世話になり、学生ビザが切れた後に一年だけ有効な労働ビザが切れた後にも引き続き闇で雇ってくれたこのレストランオーナーには頭が上がらないのだ。だから、立派な本職がありながら、疑り深いオーナー一家に唯一信用されている従業員だという彼女なりの誇りも加わり、リサにうまいこと言い包められて、なんと週に6日間、本職を終えて夜11時まで続く夜のシフトに入っているのである。

***続く***





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最終更新日  2003.09.16 23:51:21
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