島流れ者 - 悪意なき本音

島流れ者 - 悪意なき本音

2003.11.14
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この日記はシリーズになっておりますので、初めてお越しの方は三日前の日記からどうぞ。(注:ちょいと長いのでお仕事中の方はお昼休憩にご覧になることをお勧めします。さもなければ社内のあなたの席が危うくなるかもしれません。万が一のことがあっても当方一切責任関与しかねるのでご了承を。)

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マリアンの家から出て新しい町に引っ越し、次に見つけたのは、4ベッドルームの留学生が何人か住むインターナショナルな家だった。まずこの家の大家の娘で、アメリカ人の父親とトルコ人の母親と19歳までオランダで暮らしたという社会人のポーラと、大学院で地質学を勉強するニュージーランドから来たイングリッド、それから日本人で生物学専攻の大学生、Jちゃんの四人暮らしだった。

この家の半ば持ち主であるポーラがとりあえずは管理人となってルームメイトの面接に当たったが、初めの印象はフレンドリーで、特に問題はなかったし、また、みな同じ世代だったので、いい感じで生活をスタートした。

初めのころは、ルームメイトをよく知るために、キッチンやリビングルームでなるべく会話をして相手の考え方や、どうやったらうまくやっていけるかなどを観察していた。まずは一番重要であるポーラとよく話すようにしていたが、彼女の話し方から、とてもプライドが高く、しかも自分は何でも知っていて、彼女の意見は100%正しいから、みな他の人はそれに従っていくべきというのが見え隠れしていた。彼女のやり方は、あからさまに何かを押し付けるというわけでなく、話の中で私がちらりとでも困った状況にあるといったのを聞けば、一応、あなたはどう思うか知らないけど、私だったらこうするけどといってさりげなくアドバイスをする。それで終わるんならまだしも、そうねといって半分聞き流していると必ず、もっと突っ込んできて、最終的には自分のアドバイスを押し付けるのであった。そんな彼女の性格に嫌気がさしてきたので数ヶ月で彼女とはあまり深い話をしないようになっていった。

彼女は初対面でフレンドリーであるが実はとても冷たい奴だった。ある日ジャックが私に会いに来たが、ベルを鳴らしても誰も出てこないので、ドアに書置きをして帰っていった。実はそのときに私は自分の部屋にいて、ベルが聞こえなかった。それから一時間ほど後にまた来たときにすでに帰っている私に、さっき来たんだけど、誰も出なかったからねというので、“え?ポーラがずーっとその時リビングルームにいたんだけど?”とソファーで本を読んでいる彼女のほうを見ると、“ああ、今日は誰も私に会いに来る人がいないから、無視したのよ”と平然とのたまうのだった。これにはジャックもブチ切れて、外に出た途端、”なんだあの女は!いくら自分の客でなくたって、玄関に一番近くにいるなら出てもイイだろっ!”といってそれ以降、彼女に顔を合わせても社交辞令でニコリとすることすらしないほど、ポーラのことを嫌うようになっていった。

ポーラはマリアンほどではないが、整頓することが嫌いらしく、自分の部屋はもちろんのこと、共有場所のリビングルームまでにも私物が溢れ返っていた。彼女の立場はほぼ大家であったためそれを注意する人は誰もいなかったので、私が入居した時から更に物はどんどん増えていき、豚小屋化していった。今回は、マリアンと一緒に住んでいた時と違って、こんな人のために手伝うのもあほらしいと諦めて、一人部屋に篭って滅多にリビングルームでくつろぐことはなかった。

数ヶ月して、彼女はボーイフレンドと一緒にサンフランシスコに引っ越すことになった。この時点では他のルームメイトもポーラの傲慢で身勝手な性格に嫌気がさしていたので、私たちは皆、手と手を取り合って喜んだ。早速ルームメイト募集の記事を新聞に掲載するとすぐに反応があり、面接が始まった。するとポーラはもう出て行く身であるくせに、この人はちょっとこうだからとか、あの人はここがどうだからと、聞いてもないのに意見を述べて、ルームメイト選びに口出しをしてくるのだった。これに関しては、はっきり言って辞退してもらうように言うと、つまはじきにされたのが気に入らずに、今まで以上に傲慢に振舞うようになった。

新しいルームメイトも見つかって、ポーラが引っ越す一週間ほど前になったころに、荷造りをする彼女がなにやらぶつぶつ言っていた。“もう、会社辞めるってなったらいろんな同僚が、使いもしないガラクタをくれるんだから、荷物になって仕方ないわ!”それをきいていたイングリットと私は目が点になって顔を見合わせていた。その‘ガラクタ’には多分私が彼女の耐熱皿を割ってしまったお詫びに買ってプレゼントした結構高かった陶器の鍋が入っていたに違いないと思うととても腹が立った。



ポーラが引っ越した後に入ってきたエリザベスはとてもいい人で、きれい好きであったので、私たちルームメイトは全員でリビングルームを整理して、ポーラがいたときのそれが同じものであると見分けがつかないほど美しいものになり、四人は何の問題もなく仲良く暮らしていくのであった。めでたしめでたし...





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最終更新日  2003.11.14 15:04:35
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