島流れ者 - 悪意なき本音

島流れ者 - 悪意なき本音

2004.01.07
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カテゴリ: 毒舌
ここアメリカに住み始めてから不思議なことに殆ど写真を撮ってない。まだ20代半ばまでは、どこに行っても必ずカメラを持ち歩いてはパシャパシャと典型的な日本人であった。社員旅行なんかになると私の写真を撮り好きを知っていた上司はカメラマンになるようにと命じて、1週間ほどの短い海外旅行になんと8ロールくらい毎回取って帰ってくるほどだった。

そんな私がいつの間にか写真を取ることに興味がなくなり、ここに来てもう6年が経つというのにもかかわらず、アルバムの半分くらいしか取っていない。そんなわけで、もちろん家に飾ってある写真は唯一結婚パーティーに撮ったジャックとの写真しかない。

アメリカ人は写真を飾るのが好きだ。どの家を訪ねても、少なくとも3枚以上は何らかの家族、カップル、またはペットの写真がリビングルーム、廊下などに飾ってあって、もっとひどいと家中の家具、棚にびっしりといろんな写真を立てまくっているジャックの母親のような人もいる。

基本的に私は自分の家に、自分の写真や家族の写真を飾るのは趣味ではない。こう考える人は日本では結構いるんじゃなかろうか。私の実家には子供の頃から一枚の写真すらも飾っていなかった。もっともそれは小さな県営住宅に子沢山の大家族がひしめき合っていたため写真なんぞ置くスペースがなかったせいもあるんだろうが。子供たちがみんな独立した今では両親二人だけなので、多少は寂しくて家族の写真なんか飾るのかと思いきや、それも見たことはない。そんな両親のもので育てられた私としては、写真にこだわらないのも無理はない。

これは常々私が不思議に思っていることのひとつなんだが、友達や知り合いの子供を持つ人たちが、わが子の写真を自慢げに人に見せたがると言うこと。日本からずいぶんと離れて、めったに帰ることも出来ないために、仲のいい友達に手紙で連絡した際に、何年もあっていないので写真を送ってと、どんな風にその友達が変わっているかの興味もあって頼んだことが幾度かあった。すると子供の写真をよこしてきて、彼女やだんなさんの写真は一切入っていないのである。まあ一回目は子供が生まれてそれほど経っていないのでうれしくて仕方がないんだろうと思って諦めたが、それから3年ほどしてまた彼女の写真を送ってくれるように頼んだところ、今度はさらに増えた双子を加えた3人のやんちゃ坊主の写真を送ってきたのだ。私は正直言ってとってもがっかりきた。それは、彼女とは高校時代からの長い付き合いの親友なので、ここに来て一度も顔を合わせていなくて、彼女の様子をせめて写真を当して感じ取りたかったのに、写真を見ても何の感情も浮かばない、あったこともない子供の写真だけを受け取ったからであった。

さらに数年たった今、これは彼女に限ったことではないと言うことをつくづく実感させられる機会に何度か出くわした。初めてアメリカにきたときに知り合った英語学校の先生で、後に友達となったナンシー、彼女も同じように子供の写真だけを送ってくる人の一人だ。日本に一旦帰ってしばらく文通を続けていた頃、彼女が子供が生まれたから写真を送るとある手紙で知らせてきた。そこで久しぶりにナンシーはどんな風になったのか興味津々待っていたら、その写真には彼女の娘だけが移っていた。その後何度かクリスマスカードをよこす彼女だが、いつも同封の写真には自分の姿はなく、娘の写真と、その子の成長振りに感動している文章。確かに子育てをする人にとってはとてもわくわくするその気持ちを誰かと分かち合いたいんであろうが、私自身子供がいない上、その子供のことをあまり知らない場合は、あんまりピンと来ないのが本音なのだ。

そして極めつけは、7歳の男の子と5歳の女の子がいるジャックの妹である。家族を中心とした生活を何よりも大切にする彼女は妙なところで伝統にこだわる。例えばクリスチャンでもないのに子供が生まれたときには、教会で洗礼式を行って、家族全員を招集したり、子供の誕生日になると、バースデーパーティーを平日に開いておきながら仕事があるから参加できないといって断るとへそを曲げたりと、大変な我儘で、自己中心的なところがある。彼女としては、なんでも自分の周りで起こっていることに家族、友達が同じように興味を持って参加してくれることを望み、時にはそれを強要する。

そんな彼女だが、子供はとても愛らしくて、特に5歳になる女の子はとてもお茶目で自分の娘にしたくなるほど可愛い。過去に何度かこの子供たちを預かって面倒を見たりしているので、私にとっては血の繋がりはないが、あまり子供好きではない私にしては、結構可愛がっている。

どこに行っても可愛い可愛いと言われるこの子たちのことが自慢でならないこの母親は、ことあるごとに写真を撮っては、私たちによこしてくる。あるとき、彼女が都合があってどうしても子供の面倒を見てほしいというのでジャックと二人で一日ベビーシッターをした。そして翌日迎えに着た彼女は、私に、“どうもありがとう。これあなたとジャックに。”と言ってくれた封筒を渡された。一瞬、“ちょっとしたプレゼント?なかなか気が利くじゃないの。”と思ったのもつかの間、開いたら、子供たちの写真が入っていた。



いくら子供が可愛いからって、ここまでやられた暁には、子供たちには全く罪はないが、どうでもいいという気になってしまう。その後家に帰った私は、冷蔵庫の表面に磁石で止めてある彼らの写真を取り除き、この額入りの写真と一緒に引き出しの奥のほうにしまいこんだのだった...

こうして書いていながらも、大人気ないなあと反省しているけれど、やっぱり、いとおしいと感じることは個人個人の自然に湧き出る感情であって、他人から強要されて出てくるものではないのではあろうか?たぶん、彼女がちょっと違った性格の人間であったなら、このように日記にぶつくさ文句を書くまでには至らず、わが子を可愛がる典型的な母親として受け止めているだけなんだろうが...

かくしてやられてばかりの子無し、ペット無しカップルの私達にできるリベンジはないだろうかと考えた。こんなのはどうだろう。

A.ジャックと私の妙に気取った‘写真館仕立てのショット’がプリントされたTシャツ
B.仲良くしている隣人、同僚を取った写真集、壁掛け特大額縁入り
C.最近したシャワー室改造工事の施工前施工後の写真付マグカップ

本当にこれをやっても通用する相手ではなさそうだから愚痴るのも今日はこの辺で止めておこう。





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最終更新日  2004.10.13 04:02:17
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