泉忠司のPleasure, Excitement, Happiness, and Love

泉忠司のPleasure, Excitement, Happiness, and Love

Sep 12, 2006
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今日からついに大学が始まりました。と言っても、全部始まったわけではなく、徐々に始まるのですが…。ミュージカル、執筆、プロモーションに加え、授業がドカッとはじまると、ますます忙しくなりそうですが、とりあえずは、文化祭休みの11月目指してがんばります!

さて、昨日からスタートした 泉忠司&晴香葉子『クロスロード-あの日の約束-』 オススメポイント!その2です!



『クロスロード』を書くにあたり、語り手をどうするか悩みました。通常よくあるのは三人称の語り手。要は、あらゆる登場人物の行動や、気持ちを全部知ってる神のような存在がいて、その視点から語っていく方法ですね。この方法の長所は、何でも知ってる神が語るわけですから当たり前ですが、語りの制約がまったくないこと。短所は、どうしても第三者的な視点になるので臨場感に欠けることなんですね。

もうひとつよくあるのが、一人称の語り手。主人公が「わたし」「僕」などの立場から語る方法です。この利点は主人公の生の気持ちを、主人公自身が語るわけですから、臨場感にあふれ、読者も感情移入しやすいということがあります。逆に短所は、主人公が見たり聞いたり感じたりしたことを主人公が語るのが大前提ですから、あくまで、他の登場人物の行動や気持ちは主人公の目を通して見たものにすぎないこと。例えば、

波美は物憂げな表情を浮かべた。

と海都が語ったとして、これはあくまで海都の目にはそううつるだけで、実際に波美がそういう気持ちになっているかどうかは分からないんですよね。ただし、この点は、ブッカー賞作家のKazuo Ishiguroなどが好例を示しているように、うまく活用することも可能です。

ただ、もうひとつの決定的短所は、語りに制約があることなんですよね。例えば、自宅アパートにいる海都には、同じ時間に波美がどうしているのか知る由もないので、語れなくなってしまいます。(三人称の神が語ると、こういうのが普通に可能になるのです)

『クロスロード』では、何より主人公の生の感情を伝えたかったので、一人称を選びました。でも、海都と波美の「すれ違う心」に焦点を当てたい場面を想定すると、ただの一人称ではきわめて不十分だという気がしてならなかった。そこで、海都と波美のダブル一人称を採用することにしました。これによって、語りの制約は一気に少なくなり、同時に、海都と波美それぞれのむき出しの気持ちを伝えることもできるからです。

これは大きなチャレンジでした。難しかったですね…。特に、男性である泉忠司が、女性である波美の一人称で語る部分。通常、男性作家が一人称にする場合、主人公は男性に、女性作家の場合は主人公が女性になるのが必然です。男性である僕が、女性になりきって、その視点で感情や心の揺れを描く…。これってすごい作業なんですよ。「女性の気持ちが分かる」をはるかに超越して、「女性になりきる」ことが必要ですから。生の感情がそのまま伝わる一人称だからこそなおさら、「そんなふうに女性は考えないよ~」と読者から思われたら、一瞬で作品は台無しになってしまう。すごく慎重かつ丁寧な作業を強いられましたが、自分としてはこれ以上はできないほど、ダブル一人称で書ききることができたと思ってます。

ネタバレすると、晴香葉子さんという最高のパートナーの手助けがあったからこそ、可能になったんですけどね☆連載中、毎日のようにチェックしてもらったなぁ~。

「波美はそんなこと言わないから…」

「どうして、そういう行動に…」

なんて具合に。

もっと言うと、海都の語りの部分でも、登場人物に感情移入しすぎる傾向にある泉を制御し、「これは海都の話し方じゃなく、泉さんの口癖…」という具合に、いつも本当にありがたいアドバイスをちょうだいしました。

『クロスロード』の小説技法的に大きな売りとなる「ダブル一人称」も泉忠司ひとりでは破綻して不発に終わったことはあきらかで、泉忠司&晴香葉子ユニットだからこそ、あのクオリティでできたのです!このように、それぞれの原稿をただ持ち寄ってあわせただけではなく、こういう点でも、完全にコラボしているんですよ♪

そして、ダブル一人称だからこそ、海都と波美それぞれのキャラクターが「語りそのもの」からも伝わるように、表記などにもこだわり抜きました。例えば、海都の語りでは海都の聡明さが前面に出るように「螺旋階段」と漢字表記にしている部分を、波美の語りでは優しさが前面に出るように「らせん階段」というふうに平仮名を多用したり。ちなみに、表記法、句読点の位置、「。」「、」「…」「!」などの記号の使い分けも、迷ったときは全部2人で相談して決めたんです。おかげで、毎日のように電話やメールで凄まじい時間を費やし、2人とも慢性的な睡眠不足に陥った連載期間でしたが、妥協しなかったからこそのクオリティを実現できたと自負しています。昨日の日記でも書いたように、これ以上の「共著」はできるはずがないと断言できる所以を垣間見ていただけたのではないでしょうか。

このように、時間とエネルギーを惜しみなく注いで作り上げた『クロスロード』のダブル一人称の語り、ぜひ楽しんでくださいね!





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Last updated  Sep 12, 2006 02:46:36 AM
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