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じんさん0219 @ Re[1]:(σ・∀・)σゲッツ!!(07/14) 大悟の妹☆さん >“大悟”ですけどねー(  ̄▽…
大悟の妹☆@ Re:(σ・∀・)σゲッツ!!(07/14) “大悟”ですけどねー(  ̄▽ ̄)
じんさん0219 @ Re:日本代表残念でしたね(o>Д<)o(06/15) プー&832さん 覚えとりますよ。 プーさん…
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じんさん0219 @ Re[1]:たどりついた...民間防衛。(02/07) たあくん1977さん >どうもです。 > >こ…
2006年03月15日
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強右衛門の聞かされていた勝頼は、酷薄残忍な大将ということだった。
それが、心からの感動を面にみせて、八つ裂きにしても足りないはずの自分を、労わって取らせと言ったのだ。

穴山玄蕃頭につきそられて、勝頼の前から本陣わきのお伽(とぎ)衆のたまりへ、強右衛門はなんとなく力抜けのした感じで引き立てられた。

その溜りには医者らしい者や、祐筆らしい者のほかに、坊主頭の同朋(どうぼう)衆などが詰めていたが、強右衛門の知っている顔はなかった。

それらの眼がいっせいに強右衛門へそそがれる。すでにここでも噂になっていたに違いなかった。

「ここへ来て座れ」
穴山玄蕃頭はそういって右隅へ自分も大きく胡坐(あぐら)をかいたが、まだ縄を解かなかった。

「強右衛門」


「おん大将は、ああ仰せられた。その方を性根ある者と見抜かれ、助けたいおぼしめしと相わかった。が、その方を任されたわしとしては、このままは許せぬ」

「ご存分になされても、一向それがしは苦情はござらぬ」

玄蕃頭はそれには答えず、
「これはわしばかりではない。諸将いずれも憤怒している折ゆえ、このまま助けたとあっては、みなが納まるまい」

「そうでござろうなあ」
「そこで、その方に相談じゃが、その方一つここで手柄を立てぬか」

そういわれて強右衛門は何という事なしに、
「やれやれ」と、ため息ついた。

「そんな意味が、おん大将の言葉の裏にあったのならば、これから先のことは言うても無駄とおもられたがよい」

穴山玄蕃頭は一瞬けわしい顔になり、すぐまた平静にもどった。

「おん大将の言葉に裏などあるものか。おん大将は助けよといわれた.....しかし、このまま助けてはほかの者が承知すまい。どこかでその方はなますのように斬りきざまれよう。それゆえわしは、その方が無事であるためには、みなを承服させる手柄が必要だと言っているのだ」



「城内では」と、玄蕃頭は口調を変えて、
「その方の帰りを待っていよう。のろしで、その方が城の近くまで戻ったのはわかったが、それ以上にこまかいことの知りたいのは人情じゃ」

「いかにも」

「それで、わしがその方を城の外まで引き立てる。そこでその方は、城内の者に向かって、こう言わぬか.....援軍はまだまだ来そうもないと。それだけでよいのだ。それだけ言えば、その方へ誰も危害を加えようとする者はあるまい」

強右衛門は、ゆるい水車のように、一つ一つうなずいて聞いていたが、



「そうじゃ。援軍は来ぬ.....といえば、もはや城内の者も城を開こう。さすれば城中五百人の命も無事というもの.....これも一つの慈悲なのじゃ」

「相分かった!なるほど、その慈悲、この強右衛門がつかまつろう」

この答えで、周囲の人々が、ホッと一息つくのがわかった。

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参考 山岡荘八・徳川家康第七巻/決戦前夜より

つづく

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*この書き込みは営利目的としておりません。
個人的かつ純粋に一人でも多くの方に購読していただきたく
参考・ご紹介させていただきました。m(__)mペコリ





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Last updated  2006年03月15日 14時43分25秒
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