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じんさん0219 @ Re[1]:(σ・∀・)σゲッツ!!(07/14) 大悟の妹☆さん >“大悟”ですけどねー(  ̄▽…
大悟の妹☆@ Re:(σ・∀・)σゲッツ!!(07/14) “大悟”ですけどねー(  ̄▽ ̄)
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じんさん0219 @ Re[1]:たどりついた...民間防衛。(02/07) たあくん1977さん >どうもです。 > >こ…
2008年04月02日
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林道春は、さすがに惺窩が、推薦してよこしたことだけあって、小気味よい切れ味を示して、家康の質問のツボをはずさなかった。

そもそも教育というものは人間を万物の霊長と認めたところに根ざしたものだ。それゆえ、新しい世を開こうとするものは、人間尊重の敬謙さがアラユル心構えに先行していなければならないと、二十代で、六十四歳の家康を手きびしく教えようとする口調であった。

「.....その点ならば心得てござる。わしは人間はすべてこれ仏姓を持つものと、若いおりから思うてござる」

家康がそういうと、さらに彼は、思いがけないことをいいだした。

今まで道を失って、戦国の荒野に血刀をひっさげてさまよい歩いた人々を、悉皆(しっかい)聖人につくり直してゆくだけの決意があるかどうか臆面もなく問いただして来るのである。

「.....そうせねば、泰平の世は続くまいでの」

家康は、苦笑したくなった。いおうとすることはよくわかったが、この世の人間が、みな聖人などになれるものでもなければ、出来るものでもないと知っているからだ。

人間に、善悪ともに思案才覚の能力を与えてあるのは、どんな場合にも生き残れるようにという天の配慮で、善と信じて悪を行う者もあれば、悪と思い煩いながら善を行う者もある。これは自分の知恵だけでどんな混沌にも耐えてゆくようにという深い慈悲に違いない。したがって、これこそ正しいなどと頑固な決定を押し付けるのは天を恐れぬもの.....それゆえ学問にもさまざまな流派が出て来るのであろう.....そうした意味のことを言うと、道春は色をなして抗弁した。いや、抗弁というよりも、それは未熟な弟子を叱りつける口調であった。


彼はそこまで言って、憐れむように舌打ちした。

「.....全部聖人に作り変えてやろうと思うても、せいぜい何人かの義人しか作れぬもの.....それを初めから投げてかかって何といたしまする。それでは教学に情熱ひとつ湧きますまい。情熱の伴わぬ教育などは、腐った魚と同様で、中毒こそすれ、何の栄養にもなりませぬ」

家康は、その若々しい情熱を貴(たつと)いものに思った。確かに彼のいうとおりであろう。
時代に筋金を通そうというほどの者は、まず誤りのないよう事前の選択をきびしくして、これでよしと思うたら、全部にそれを施すほどの決意でなければ筋は通るまい。

「よし、それで行こう、日本人全部聖人にしてしまおう」
家康がそういうと、はじめて彼は緊張を解いた。

「では、この同春も、東海の地に聖人国をつくるため、この生涯を上様に捧げまする。上様もまっ先に聖人の道をお踏み下さいまするよう.....」

そこで、聖人家康は、いま交易という金儲けに専心しているわけであった。

泰平の世の暮らし方.....それは槍先で稼いだ稼ぎ方しか知らない者に、まず、別の生き方のあることから、事実で示してゆくよりほかなかった.....

***********************************************No.02
参考 山岡荘八・徳川家康第二一巻/巨樹の思案より



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*この書き込みは営利目的としておりません。
個人的に一人でも多くの方に購読していただきたく
参考・ご紹介させていただきました。m(__)mペコリ





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Last updated  2008年04月02日 10時26分18秒 コメントを書く
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