2004年08月28日
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 8/27(後編)

 朝、起きると唇がはれていた。久留米の市場の食堂で朝食。羊羹をもらう。
 吹春で子供たちと仲よくなる。カレー、パン、弁当、ビールをもらう。





 ときどき地図を広げて熊本までの残りの距離を計算する。
 山道はなさそうにも見えるが、
 八女と山鹿のまんなかあたりに小栗峠と書いてあるのが気になる。

 さっきまで晴れていたのになんだか雲行きもあやしくなってきた。

 そう思い、さらにピッチをあげて歩くことにした。

 そして二時を過ぎるころになるとだいぶ山勝ちの地形になってきた。
 僕はさらにペースをあげようと思った。
 しかしその前に飯を食うことにした。
 熊本まであと45km。まあとにかく急ぐことだ。


 僕は道沿いの川の川原に下りると、
 毎度毎度の食事をした。
 パンにマヨネーズ、ソーセージというやつである。
 飯を食い終わると空はすっかりくもっていた。

 僕は、再び国道を歩き始めた。
 ここからは時速5km以上で歩かねばならない。

 僕はザックザックと音がしそうなほど急いで歩いた。

 さあ、がんばるんだ。
 自分に言いきかせながら歩き続けて、15分もしたころだろうか。

 お一い、と誰かが呼んでいる。
 ふと右手を見ると空き地があり、

 声の主はこの子供達であった。


 「どこまで行くの。」

 色の黒い男の子が訊いた。

 「鹿児島までなんだけど。」

 僕は答えてやった。
 するとその子は、鹿児島などどうでもいいといったかんじで
 今度はまるっきりちがうことを言った。

 「さっき車で通り過ぎるとき見たよ。」

 彼らには鹿児島というところがどこかよくわからないのかも知れない。
 僕がふーんと答えると、彼らは口々にいろいろなことを言いだした。

 「かっちゃん食堂でご飯たべたと?」

 どうやら、かっちゃん食堂というのは
 このあたりの子供にとってはシンボリックな場所らしい。
 山間の小さな村で何もないようなところなのだ。

 「ああ、そういえばかっちゃん食堂ってあったな。
  でもそこでは食べてないよ。」

 と僕が答えると、おむすびのような顔の形をした男の子が言った。

 「水はどこで飲んでるの。」

 僕は正直に答えることにした。

 「うーん、公園とか、あと川の水とかかな。」

 そう言うと、彼らはいっせいに歓声をあげた。

 「ホイトと一緒や」

 僕はホイトという言葉がよくわからなかった。
 がちょっと考えてみるとわかりそうなものである。

 「ホイトって、乞食のことか」

 尋ねると、うんうん、と彼らはうれしそうにうなずいた。

 「おれは、乞食じゃないぜ」

 僕は苦笑いしながら答えた。
 しかしたしかにやっていることは乞食と変わらない。


 彼らによると、
 そのホイトさんがこのあたりを以前通ったことがあるらしい。

 彼らには珍しかったのだろう。
 ホイトの行状をよく覚えていた。

 「そこの川で水を飲んで、あのお宮で寝ていったんだよ」

 おにぎりあたまの男の子は
 小高いところに建立された神社を指さした。

 ほーっ、たしかにあそこなら寝られるかもしれん、
 と思っていると、
 何か食べ物ないの、と一番背の高い男の子が言った。

 別に腹が減ったわけでもなく、
 ただ訊いてみただけなのだろう。
 僕は羊羹があることを思い出し、やつらに一口ずつ分けてやった。

 それを食い終わると
 やつらは野球をやろうと言いだした。
 ここで何をしていたのかと思ったら野球をやっていたのだと言う。

 だがにわかには信じがたかった。
 たった四人で女の子がひとり混じっている。
 道具はフワフワの空気のぬけたようなゴムのボールと板っきれである。

 野球ごっこだな、僕は思った。
 この小僧たちと話をしている間にかなり時間をつぶしてしまった。
 そのうえ野球につきあっているひまはないところだった。

 だがやつらがあまりに熱心に言うので、
 ついに承諾してしまい野球をやるはめになってしまった。

 僕は時計を眺め、半分、今日の熊本行きをあきらめた。
 こいつらにつかまったのが運のつきだ、そう思った。


 四人の子供達は実は二組の兄弟であるらしかった。
 色黒の男の子と一番背の高い男の子が兄弟であり、
 それぞれ貞行、佑太といった。
 佑太のほうが兄である。

 そしておにぎり頭が弟で女の子がお姉さんということだった。
 おにぎりは、ともゆき。女の子はみほちゃんというのだった。

 四人とそれに僕を加えたメンバーで
 それからしばらく野球をした。
 二十四にもなって、こんなとこで野球ごっこをするとは思わなかった。

 しかしあきっぽい子供のことである。
 めざとく僕の釣り竿を見つけると今度は魚釣りをしようと言いだした。
 僕はもう熊本行きはあきらめていたので、
 とことんやつらにつきあうことにした。

 「しかし、餌がないぜ」

 僕が言うと、貞行が捕まえようと言いだした。
 それで川原に降りると哀れな蜘蛛を捕まえ、
 釣り針にかけて川に垂らした。

 あーあー、これじや絶対、釣れないぜ。
 流れのめちゃめちゃ早い川を見て僕は思った。

 「向こうの方へ行ってみよう。」

 僕は川上を指差して言った。
 あちらのほうが水が溜まっていそうだった。
 うーん、と貞行がうなずいた。


 川上のほうへ行ってみると橋がかかっている。
 僕らはそこから釣糸を垂れた。
 だが事態は絶望的だった。
 川の水が澄んでいて、
 そこには一匹の魚もいないのがはっきりと見てとれた。

 すると貞行は何を思ったのか、
 いきなりその川に飛び込み泳ぎ始めた。
 どんよりとくもって気温はかなり下がっているはずである。
 やがて泳ぎ疲れて陸に上がってきたが、
 服ごとずぶ濡れであった。

 こいつは寒くねえのか、と思い、
 おい寒くないのか、と訊くと
 唇をブルブル震わせながら、
 寒い、と言った。

 僕はやつのTシャツを脱がせてやり、
 タオルで体を拭いてやった。


 「いったん家に帰んな。そのタオルやるからさ。服を取り替えてきなよ」

 と言うと、さきほどまでの元気はどこへやら。
 しおらしく貞行はうなずいた。

 それからしばらく釣糸を垂れていたが釣れるわけもない。

 そのうち貞行が帰ってきた。
 すると奴は思い出したように、羊羹が食べたい、と言った。

 僕にしてみればさっきあげたのは友好のしるしである。
 それをまた食いたいとぬかすとは
 僕はやつらのずうずうしさに閉口した。

 しかしせこいことも言いたくないので羊羹を取り出した。
 するとやつらはたちまち奪い合うようにして全部、食べてしまった。

 疲れたら食おうと思っていたのに、
 僕はその消えゆく羊羹を悲しく見つめながら思った。


 もう今夜はここらに泊まることに決めていたので、
 神社がどんなものか見ておきたかった。
 そこで、お宮に行くことを提案した。

 するとそろそろ帰る時間だから
 家に電話しておきたいとともゆきが言った。
 そこで僕のテレホンカードを使わせてやることにして、
 近くの公衆電話に向かった。

 貞行がもうすっかり元気な様子で、
 けいちゃん、こっち、こっち、と走って行く。


 ともゆきは家に電話をかけ、
 まだ帰らないでいいかと必死に親を掻き口説いている。
 それでようやくOKをもらったらしい。
 それから皆で神社に向かった。

 神社へは石段を昇っていかなければならない。
 そのかわりその上からは村を見渡せる。
 その神社で今度は相撲を取るはめになってしまった。

 まあ小僧が相手のことなのでたいしたことはないのだが、
 それでも三人がかりでかかってこられると
 それなりに疲れたりするわけである。

 とくに裕太は小学三年生ということだったが、
 じっさいの体の大きさは五年生なみであった。

 この裕太という奴がほっておくと何をしでかすかわからないやつで、
 相撲の後で休んでいると、
 僕のリュックをがさがさとさぐり始めた。

 そして「写るんです」を見つけると何やらいじくりまわしていた。
 写真の残りもあとわずかである。
 旅もあと数日で終わりなので、カメラはもう買わないことにしていた。

 そのぶん節約して写真を取らないようにしていたのである。
 ところがこの裕太が写真取ってもいい、というのである。

 僕はダメダメ、と言ってほっておいた。
 どうせ使い方がわからないだろう、とタカをくくっていた。

 ところが裕太はカメラのノブ回すと
 パシャパシャ写真を取り始めたのである。
 僕は慌ててカメラを取り上げた。

 まったくこいつらといるとパワーをすべて吸い取られるような気がする。


 さていよいよ姉弟が帰ると言いだした。
 が今日はカレーライスだからあとでこっそり持ってきてくれるという。
 兄弟も帰ることになった。

 あたりはまだ明るい。
 時刻は五時半であった。
 僕はお宮にひとり残された。

 それから一時間もすると姉弟が現われた。
 ともゆきが手にタッパを持っている。
 どうやら本当にカレーを持ってきてくれたらしい。

 奴は僕にそいつを手渡しながら、
 こっそり持ってこなくちゃならなかったからドキドキしたよ、と言った。
 まるで捨て犬にこっそりエサを持ってゆくような口ぶりである。
 しかし、なかなか可愛いことを言う。

 するとそこへ兄弟が母親をともなって現われた。
 貞行がタオルをもって家に帰ったからだろう。
 こちらは親には内緒にできなかったらしい。

 親子は階段をのぼってきた。
 貞行が手に何か持っていると思ったら弁当とビールであった。
 母親が気をきかせてくれたのだろう。
 僕は彼女に会釈をした。


 子供たちは明日の朝またやって来るという。
 ラジオ体操があるので早く起きるのだそうだ。

 そう言って彼らが去って行った後、
 静かになったその場で腰を下ろしてボーッとしていると
 少しばかり拍子抜けしてしまった。

 それから小高い神社から村を見下ろしながら眠ったのはまだ18:00であった。





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最終更新日  2004年08月28日 23時40分30秒 コメント(1) | コメントを書く


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