JUMP LOG ―at楽天

JUMP LOG ―at楽天

2009.07.22
XML
カテゴリ: 本-小説など色々

降りしきる


 北原亞以子氏の本は、実はそれ程読んだことがない。
 ただ、本のタイトルに惹かれて、何となく手に取った本著――その中で、一番印象に残ったのが、「関宿の女」であった。

 私は江戸時代の江戸の庶民の話を読むのが好きなのだが、明治へ移り変わる際の動乱の時代は好まない。世に言う新撰組だとか、彰義隊だとか、そういった生々しい戦いの歴史を題材とした話を積極的に読もうとは思わない。佐幕派だとか、勤皇派だとか、私には理解不能な動乱(理解の範疇を超える動乱)を、わざわざ紐解いて見てみようとは思わないからだ。

 だから、未だに私はあの動乱期の事をよく分かっていない。新撰組に興味はないし、鳥羽伏見の戦いがいかなるものであったかも知らない。ただ、歴史としてそういう時代があった、というくらいの認識しかなく、これからもそうであろう。
 なのに、私はタイトルだけで、この本を手に取ってしまった。読み始めた以上、余程面白くないもの以外は読み終えるのが信条なので、「しまったなぁ」と思いつつも、頁を捲った。

 この、『降りしきる』という本は、女達の短編物語で成り立っているが、どれも江戸から明治期に移行する頃の話である。私の嫌いな明治期への動乱の話でありながらも、あくまで、か弱くも強い女性視点で描かれている。だからこそ、頁を捲ることが出来たのであろう。
 北原亞以子氏の短編小説は、私の考える物語のラストから、一歩か二歩手前で終わる事が多いように思う。それを時々物足りなく思うこともあるが、いやこれ以上の描写は不要なのだろうとも思う。

 その中で、「関宿の女」が良いと思ったのは、ラストが物足りなくもなく、多くもない地点で筆を置いてあるからである。私の中で丁度良いと思える場所であったから、何の疑いもなく本を閉じることが出来る。そんな感じであった。

 当然、物語の主要人物に恋愛感情が生まれ、発展していく訳であるが、読者としては、出来れば大団円の話であって欲しいと願う。

 だが、それが純愛であろうと、悲恋であろうと、やはり筆者の描写が優れていないと、読んでいてもつまらない。この「関宿の女」は、最初から悲恋であろうと匂わせつつも、もしかしたら違う方向からの幸せが、一時にしろ訪れるのではないか、と胸を躍らせてしまうところがある。現実には、それは許されぬ行為であり、叶わぬ夢であったのだと胸が非常に切なくなったところで、物語が静かに終わる。そういった話であった。

 主人公の志緒も切ないが、何よりも、志緒を思う男達の想いも切ない。
 春秋を知る若者達が多く散っていったあの時代。私は少しだけ第二次世界大戦の、特攻に散っていった若者達を心に思い浮かべながら、本を閉じたのであった。


 ----------------

 と、しかつめらしい書評を書いてみました(笑)



【古本】降りしきる/北原亜以子





お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

Last updated  2009.07.22 13:13:45 コメントを書く
[本-小説など色々] カテゴリの最新記事


【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! -- / --
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x
X

Freepage List

Free Space

【 L i n k s 】



Comments

ksaya @ Re:私も貰いました(08/30) こんにちは~書き込み有り難うございます♪…
kako2236 @ 私も貰いました そのメールは8/22に届いてたのに今日…
ハルタンパン @ Re:到着!「BUZZ-ex*ボリュームMAX福袋」(07/23) なるほど・・・・確かに!! 洗濯気を…

© Rakuten Group, Inc.
X
Design a Mobile Site
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: